ゴーストライター [Blu-ray]ゴーストライター [Blu-ray]
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◆プチレビュー◆
重層的な仕掛けと丁寧な演技で魅せる政治ミステリー。主人公に名前がないのが象徴的だ。 【70点】

 元英国首相アダム・ラングの自叙伝執筆を、破格の報酬で依頼されたゴーストライターは、ラングが滞在している米国のとある孤島へと向かう。取材を重ねると、やがてラング自身の過去に秘密があることに気付くのだが…。

 ゴーストライターとは、他人に成り代わって、文章や作品を代作する人のことを言う。主人公は最初から今回の仕事には乗り気ではないのだが、そのイヤな予感は見事にあたる。曇天の孤島、門外不出の原稿、前任者の不審な死。主人公はラングに初めて会う時、自分をこう紹介する。「僕はあなたのゴーストです」。幽霊なら最初からいないも同然。特別な能力も武器もない彼は無力なゴーストだが、幽霊だからこそ多くの謎に音もなく忍び寄れる。

 小さな手がかりや偶然から、前任者の足跡を追い、やがて驚愕の事実にたどり着くプロセスが実に緻密だ。ラングの戦争犯罪から、CIAとの結託、自叙伝の原稿に埋め込まれた真実を知る頃には、観客は、ピアーズ・ブロスナン演じるラングの顔が、元英国首相トニー・ブレアに見えてくる。国家規模の“身売り”の話に、英国の凄腕スパイ、ジェームズ・ボンド役でならしたブロスナンをキャスティングするなど、ポランスキーもヒネリが効いたことをする。

 英国系の俳優たちの抑えた演技がこの映画の魅力のひとつだ。ゴースト役のユアン・マクレガーの頼りない風情といい、トム・ウィルキンソンの怪しげな気配といい、役者の使い方が上手い。共通するのは、どこか居心地の悪そうな表情だ。パリ生まれのユダヤ系ポーランド人であるポランスキーは、米、英、仏と各国で映画を撮った異邦人。孤独なまなざしは常に作品ににじみ出る。

 ゴーストとは、誰の、いや、何のことだったのか。過去の秘密が染み込んだ原稿が宙に舞うとき、指導者や国家さえ操る不気味な影が見える。本作の主人公には名前がない。ゴーストは普遍的で、代わりはいくらでもいるのだ。大掛かりなCGや派手なアクションは何一つないが、小さな伏線が最後には見事に実を結ぶ、ミステリー映画の王道のような作品で、映画ファンにはたまらない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2010年 仏・独・英合作映画  原題「THE GHOST WRITER」
□監督:ロマン・ポランスキー
□出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、他

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