エンディングノート [DVD]クチコミを見る
ガンを告知された父の姿を見守る、笑って泣けるドキュメンタリーの秀作。ユーモアの中に浮かび上がるのは家族の強い絆だ。
大企業の熱血営業マンだった砂田知昭氏は、退職してまもなく末期ガンを告知される。サラリーマン時代から「段取りの良さ」で知られる彼は“エンディングノート”なるものを作成。自分の人生の最期のときまで、すべてを段取ると決め、着々と実行していく。末娘である砂田麻美監督が、丹念にカメラに収めた父の姿は、コミカルにして軽妙、それでいて感動的な家族の記録になっていく。
ガン告知から最期のその時までの記録といっても、重くるしいムードはまったくない。「段取り命!」の父は、まず葬式をする会場を下見し、最後の家族旅行を実行し、孫たちと真剣に遊ぶ。もちろん、遺産分配や葬儀の際の連絡先、銀行引き落としの一覧まで、手抜かりはない。残された短い時間でてきぱきと事を進めるその姿は、文字通りの“終活”だ。もとから明るく前向きな性格の砂田氏の日常はリズミカルで、長年、砂田家のカメラ係だったという麻美監督への完全な信頼からか、非常にリラックスして飾らない表情が印象的である。もちろん、病気のため、肉体的な衰えも克明に記録されてはいるが、それを悲壮感ではなく、父の最期の“プロジェクト”を応援する家族の愛情でくるんだ手法が素晴らしい。エンディングノートとは、遺書よりもカジュアルな覚書のようなもの。無名の家族のパーソナルな記録でありながら、映画を見ていると、いつしか砂田家の喜怒哀楽と寄り添っている自分に気付くだろう。最終的に砂田氏は告知通りに逝く。だが、人々の記憶には、家族に出来るだけ苦労をかけまいと気を配りながら、自分自身の人生を総括した、愛すべき父親の笑顔が残った。この作品は、父と娘、そして家族の感動的な共同作業なのだ。麻美監督自身が亡き父に“なりすまして”語るナレーションも、好感度大。肉親の死を題材としながら、これほどさわやかな感動作を撮り上げる、監督の才能に驚かされる。
【85点】
(原題「エンディングノート」)
(日本/砂田麻美監督/砂田知昭、他)
(エンタテインメント度:★★★★★)

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