有名レストランの舞台裏を描く異色のドキュメンタリー「エル・ブリの秘密 世界一予約がとれないレストラン」。料理の研究というより、科学実験を見ているようだ。

世界一予約がとれないレストランとして有名な、スペインのカタルーニャ地方にある三つ星レストラン「エル・ブリ」。独創的と評判のオーナー・シェフ、フェラン・アドリアとスタッフたちは、半年間レストランを休業し、研究用アトリエで来シーズン用の新メニューの研究に没頭する。数多くの食材にさまざまな調理法を試し、すべてを記録する彼らは、先進的な手法を模索しながら新メニューを生み出していく…。

わずか45席しかないそのレストランには、年間200万件の予約希望が殺到するというから驚く。いったいなぜか。天才と評されるシェフといえば、ひらめきや感性で勝負する人に思えるが、フェラン・アドリアの仕事ぶりはまったく違う。ひとつの素材を徹底的に研究し、さまざまな調理法で味を探求し、詳細に記録してデータを集めるその姿は、まるで科学者だ。例えばサツマイモ。生、煮る、焼く、蒸す、揚げる。さらには真空化やフリーズドライなども試みる。解体し構築し、模索して議論を闘わせる。地味な作業の積み重ねと、たゆまぬ努力によって“美味しい”が作られているのだ。フェランが最もこだわっているのが“驚き”。既存のものを組み合わせることに、その真髄を見ることができる。みかんにドライアイスを合わせるのには、驚かされた。味覚、嗅覚、触覚、視覚すべてに新しいものを求めている彼らだが、興味深いのは、日本の食材に精通し、積極的に取り入れていること。聞けば、柚子を世界に広めた功績で知られるそうだ。世界一革新的といわれるシェフに、日本と日本料理が大きな影響を与えていることは、何だか誇らしい。ついに迎えた新シーズンには、アーティスティックな驚きの料理が並んだ。「クリエイティブとは真似しないこと」とはエル・ブリのモットー。すべてのアートに対しての答えだ。無論、映画もまた。
【60点】
(原題「El Bulli Cooking in Progress」)
(ドイツ/ゲレオン・ヴェツェル監督/フェラン・アドリア、オリオール・カストロ、エドゥアルド・チャトルック、他)
(分析力度:★★★★☆)
チケットぴあ


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エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン@ぴあ映画生活