マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 コレクターズ・エディション [Blu-ray]マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 コレクターズ・エディション [Blu-ray]
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◆プチレビュー◆
英国初の女性首相の鋼鉄の意思とその裏側の苦悩を描く「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」。ストリープのなりきりぶりは必見だ。 【70点】

 雑貨商の家に生まれたマーガレットは、父の影響で政治を志す。優しい夫デニスの支えもあり、幸せな家庭を築く一方で、政治家としても階段を駆け上る。夫や子供たちとの時間を犠牲にしながら、衰退した英国を再建するべく、強力なリーダーシップを発揮するマーガレットだったが…。

 いわずと知れた英国初の女性首相マーガレット・サッチャーの半生を描く伝記映画だが、サッチャーはまだ存命、しかも現在、認知症を患っていると公表されている。描き方が難しい素材だが、だからこそ、政治的に賛否両論のリーダーの歩んだ道と、女性としての苦悩、階級社会・英国での呪縛を描き込んだ内容は、興味深い。栄光の過去と、それに対比する現在の孤独や無情の老いが痛々しい。

 牛乳を買いに外出しても、誰も彼女が元首相だとは気付かず、家の中で会話するのは、すでに他界した夫デニスの幻影。理想に燃えた若き日から、政治家としての成功、やがて第一線を退くまでを、過去と現在を行き来しながら描いていく。フォークランド紛争、労組組合改革、経済の立て直しと、多くの難題に取り組む中、彼女が言った言葉は忘れられない。「今まで闘わなかった日は、1日もなかった」。マーガレットは、英国を導くリーダーとして長期政権の座に君臨したが、同時に妻であり、母であり、何より一人の女性だった。

 存命の有名人を演じるのはハードルが高いが、それを乗り切る力がある数少ない演技者が名女優メリル・ストリープだ。役になりきることで有名な彼女が入魂の演技を見せているのだから、その訴求力はハンパではない。引退後のサッチャーを演じる彼女は、特殊メイクでストリープ本人とは判らないほど。だが、驚くのはむしろ全盛期のサッチャーを演じるストリープの説得力だ。サッチャーとストリープは、顔そのものは決して似ていないのに、映画を見ているうちに二人がぴったりと重なってみえる。イギリス人スタッフの中で、ほとんどただ一人の米国人だったという孤立感さえも、この名女優は演技の糧にしたに違いない。本作で見事に、アカデミー主演女優賞を射止めたのも納得だ。

 この映画でマーガレット・サッチャーは、徹底して“青”を着る。淡い水色のワンピースから鮮やかなブルーのスーツ、そして気品あふれる濃紺のドレス。決して折れないその心で、理想に燃えて国を再建し、敵をよせ付けなかった彼女には、この青い色は甲冑の代わりだったのだろう。英国の経済を立て直しながら、格差社会を作った張本人。むしろ否定的なイメージが先行するサッチャーの政治的な立ち位置は、いずれ歴史が判断するだろうが、あらゆる困難に立ち向かった一人の女性の凛とした姿は、観る人すべての心に深く刻まれる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)鉄の意思度:★★★★☆

□2011年 イギリス映画 □原題「THE IRON LADY」
□監督:フィリダ・ロイド
□出演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント、アダム・クーリック、他
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