裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]
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◆プチレビュー◆
地味だが渋く、複雑だが緻密な“大人仕様”のスパイ映画「裏切りのサーカス」。ゲイリー・オールドマンがいぶし銀の演技を見せる。 【70点】

 1980年代の東西冷戦下、英国諜報部“サーカス”の元スパイ、スマイリーは、新たな指令を受ける。それは組織の中枢に20年も潜入しているソ連の二重スパイを捜し始末せよ、というものだった。4人の幹部組織の男たちに標的を絞り、容疑者を洗い出していくスマイリーは、やがて意外な真実にたどり着く…。

 派手な銃撃戦に、最新鋭の武器、華麗な立ち回りと美女たち。英国諜報部のスパイというと、どうしても007が思い浮かぶため、ついつい華やかなイメージを抱いてしまう。だが、実際のスパイというのは、ずいぶん地味で勤勉である。神経をすり減らす情報戦の中、登場人物の誰もが疲労感たっぷりなのも頷ける。

 原作は、元・英国情報局MI6諜報員の経歴を持つ作家で、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの代表作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」。彼がMI6在職中に、実際に起こった大事件を基にしているという。

 二重スパイ“モグラ”を探る初老の元幹部スマイリーが、容疑者と目星をつけたのは、組織幹部ティンカー(鍵師)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵士)、プアマン(貧者)。東西冷戦期は、情報こそが最大の武器で、そこに権力闘争がからみ、さらにその先には、男たちの野心と哀愁、悲しい愛と理想の影が浮かぶのだ。

 主人公スマイリーを演じるのは、英国の名優ゲイリー・オールドマンだ。悪役もこなせる彼は、かつてはロックスターのシド・ヴィシャスや吸血鬼ドラキュラを演じるなど、尖がった役を得意とした個性派である。その幅広い演技力はそのままに、本作では、不実な妻を愛し抜きながら、冷静な洞察力と静かな行動力で、二重スパイを洗い出す内向的な老スパイを演じ、見る者を魅了する。ほとんど表情を変えないこの主人公の、非情な世界で生きる決意と秘めた正義感が胸を打つ。

 70年代に名優アレック・ギネス主演で約5時間のTVシリーズになったこの物語は、登場人物が多く、設定もかなり複雑で、一度で細部まで理解するのは骨が折れる。物語は遅々として進まないが、一気に謎が氷解するクライマックスの演出が見事だ。シャンソンの名曲「ラ・メール」のメロディにのって、真相がくっきりと姿を現す。そこにはあまりに哀しいロマンスがあった。残ったのは涙の形の銃痕。これこそ大人のためにある渋いミステリーである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)いぶし銀度:★★★★★

□2011年 英・仏・独合作映画 □原題「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」
□監督:トーマス・アレフレッドソン
□出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、他
チケットぴあ

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