さらば復讐の狼たちよ [DVD]さらば復讐の狼たちよ [DVD]
◆プチレビュー◆
豪華スターの競演で描く娯楽活劇「さらば復讐の狼たちよ」。随所に中国近代史への風刺が効いている。 【70点】

 1920年代、辛亥革命直後の中国。金で県知事の職を買った詐欺師マーが乗る列車を、チャンが率いるギャング団が襲うが、マーは県知事に成りすませば必ず儲かると持ちかける。ニセの県知事として街に乗り込んだチャンだったが、そこは、金と暴力ですべてを牛耳るホアンが支配する街だった…。

 冒頭に、印象的なシーンが登場する。馬が引く豪華な列車がギャングに襲われ倒れる場面がそれだ。資料によると、マルクス・レーニン主義は中国語で“馬列主義(マーリエチュ)”と呼ぶそう。その馬列車が映画の最初から転覆するのは、中国の社会主義はすでに倒れてしまっているという暗喩だろうか。深読みし始めたらキリがないストーリーだが、基本はあくまでも大アクション活劇。いい意味でのデタラメさが愉快だ。

 ニセの県知事に成りすまし、ひと儲けしようと企むチャンの思惑は、予想通りはずれてしまう。特に金に執着があるわけでもないチャンだが、町を牛耳る権力者のホアンによって、仲間が死に追いやられたことを知ると、迷わずホアンに宣戦布告。ここから物語は俄然加速する。“成りすます”という複眼構造で効いてくるのが、善悪入り乱れる構図だ。義に厚いギャングが無慈悲な支配者に立ち向かうという逆転構造も含め、このゴチャゴチャ感が、マカロニ・ウェスタンばりの復讐劇に、実によく似合うのだ。

 中国映画で歴代ナンバーワンの興行成績をたたき出したという本作、何といってもキャストが素晴らしい。「鬼が来た!」などの名優チアン・ウェン、ハリウッドでも活躍する国際派スターのチョウ・ユンファ、「活きる」でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞したグォ・ヨウ。トップスター3人が一同に会する豪華さはどうだ。そこにしたたかなカリーナ・ラウや可憐なホアジエの女優陣がからんで、なんとも賑やか。まるで、肉、魚、野菜と何でも放り込んで絶品の味わいを醸し出す、中国料理の寄せ鍋“火鍋子”のようだ。

 辛亥革命は、都会では近代化への正義でも、地方都市では混沌でしかない。突拍子も無い作戦で、権力者に挑むギャングの物語から浮かび上がってくるのは、欧米で評価が高い政治色が強い中国映画と、活劇の勢いを大切にする香港映画を確信犯的にミックスさせ、隠し味として、検閲に悩まされる中国の映画製作への風刺ネタを仕込むしたたかさだ。なんだか正体が分からないものの、その折衷パワーに圧倒される、弾丸のようなエンタテインメントである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)活劇度:★★★★★

□2010年 中国映画 □原題「譲子弾飛/LET THE BULLETS FLY」
□監督:チアン・ウェン
□出演:チアン・ウェン、チョウ・ユンファ、グォ・ヨウ、他

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