きっと ここが帰る場所 [DVD]きっと ここが帰る場所 [DVD]
ショーン・ペンの怪演と意外性たっぷりのストーリーで綴るロードムービー「きっと ここが帰る場所」。パオロ・ソレンティーノ監督、ただものではない。

アイルランド・ダブリンの豪邸で、妻と共にひっそりと暮らす元ロック・スターのシャイアンは、30年以上音信不通の父の危篤の報を受けアメリカへ渡る。臨終には間に合わなかったが、ホロコーストを生き延びたユダヤ人の父が、元ナチス親衛隊員のランゲを探すことに、生涯をかけて執念を燃やしていたことを知る。シャイアンは、わずかな手掛かりを頼りに、ランゲを探してアメリカ横断の旅に出るのだが…。

「“これ”とは言えないけど、何かがヘンだ」が口癖のシャイアンは、引退したロック界の元スーパースターだ。長い間音楽からは遠ざかっているが、株で大儲けしながら豪邸で静かに過ごし、ごく限られた親しい人だけと接しながら、自分の世界で暮らす、初老の引きこもりである。彼の風体は、ゴス・ファッションに、ボサボサの逆毛、濃いアイラインに真っ赤な口紅という異様なもの。中身はいえば、どこか大人になりきれないアンバランスな人間なのだ。こんなつかみどころがない元ロック・スターが、広大なアメリカ大陸の原風景の中を、ゴロゴロとキャリーバッグを引きずりながら、ナチの残党狩りに赴くなどというストーリーを思いつくだけでも、天才的だと感心してしまう。監督のパオロ・ソレンティーノは、ショーン・ペンがカンヌ映画祭で審査委員長を務めた時に“発見した”逸材だが、なるほど、この浮遊感といい、オリジナリティといい、ただものではない。計算された構図の映像や音楽のセンスの良さ、オスカー俳優ショーン・ペンを見事に変身させただけでなく、実力派の名優たちを絶妙に使うキャスティングにも驚かされる。ミステリアスな人探しの旅と、とぼけたエピソードの数々を通して描くのは、父と子の時空を超えた和解。さらには、自分自身に向き合うことだ。シャイアンのハイセンスな復讐と、ラストにみせる素顔の穏やかさには、完全にヤラれてしまった。タイトルはトーキング・ヘッズの名曲から。デヴィッド・バーンのライブが挿入されるというあまりに贅沢な演出には、映画ファンと共に音楽ファンも驚くだろう。類まれな物語とキャラクターの個性に魅了されるオフビートな復讐劇。久しぶりに、新鮮な驚きを感じる映画だった。
【85点】
(原題「THIS MUST BE THE PLACE」)
(伊・仏・アイルランド/パオロ・ソレンティーノ監督/ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、他)
(オフビート度:★★★★☆)
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