夢売るふたり [特装版] [Blu-ray]夢売るふたり [特装版] [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
結婚詐欺をはたらく夫婦の顛末を描く「夢売るふたり」。女の怖さを松たか子が絶妙に演じて上手い。 【75点】

 東京の片隅で小料理屋を営む貫也と里子は、火事で店と全財産を失う。二人は店を持つ夢をあきらめきれず、ある日、貫也の浮気をきっかけに思いついたのが、なんと夫婦で行う結婚詐欺。女たちから金を巻き上げ、資金繰りは順調に思えたが、やがて夫婦の関係に微妙な影がさすようになる…。

 人間の多面性と嘘をテーマにしたオリジナル脚本にこだわる、西川美和監督は、今、日本映画界で最も熱い視線を集める女性監督である。深くえぐるような心理描写と、うっすらと漂うユーモアが彼女の持ち味だ。そこにキャスティングの妙も加えたい。上品な容姿に鬱屈した情熱を隠し持つ松たか子と、さりげない優しさととぼけたユーモアが持ち味の阿部サダヲが結婚詐欺を企てる構図は、それだけで興味をそそる。

 貫也はその生来の優しさで、里子が見つけてきた女たちの心の隙間にスルリと入り込む。結婚したい独身OL、男運の悪い風俗嬢、孤独なウエイトリフティング選手などがターゲットだ。夫婦での結婚詐欺は、滑り出しは順調で、いびつな愛情で結ばれている共犯者のよう。二人は次々に詐欺を成功させていく。

 だが、それまで生真面目に生きてきた夫婦の関係性は、女たちから金を巻き上げるたびにねじれていく。特に、献身的に夫を支えるけなげな妻から、詐欺で亭主を操り屈折した愛憎を秘めた女房へと変貌する松たか子の表情は怖い。夫の裏切りへの怒り、謀(はかりごと)が成功に至る暗い喜び、いつか悪事が露見するのではとの恐れなど、さまざまな感情が渦巻いて、凄みがある。やがて夫婦の結婚詐欺は、二人の、そして騙した女たちの人生の歯車を狂わせながら、係わった人たちを予測不可能な事態へと牽引していく。

 はたして、夫婦での結婚詐欺という、モラルの一線を越えた代償とは? その結末は思いがけないものだ。そこには「面白うてやがて悲しき鵜舟かな」の一抹の寂しさと「どっこい生きてる」したたかさ、そして合縁奇縁の不可思議さが。本作には、過去の西川作品に出演した多くの名優たちが顔を揃える。だが、女性を主人公にしたのは意外にも今回が初めてだ。女たちの深層心理は一種のサスペンスだが、夫婦と女たちの夢という切り口で見れば、ビターなファンタジーのようにも思える。この物語の夢とはいったいなんだろう。犯罪と地続きのそれは、それでも生きると決めた覚悟なのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)女は怖い!度:★★★★☆

□2012年 日本映画 □原題「夢売るふたり」
□監督:西川美和
□出演:松たか子、阿部サダヲ、鈴木砂羽、他

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