希望の国(Blu-ray)希望の国(Blu-ray)
◆プチレビュー◆
原発事故に直面した3組の男女を描く「希望の国」。美しい映像、美しい旋律、目に見えない恐怖の中にも希望がある。 【75点】

 20XX年、酪農と農業を営む小野泰彦は、認知症の妻・智恵子、息子の洋一とその妻いずみと共に平穏に暮らしていた。だが大地震によって原発事故が発生する。息子夫婦を自主避難させた泰彦だが、自分は愛着ある家を離れらずにいた。そんな時、いずみが妊娠。彼女は日に日に放射能への恐怖をつのらせる…。

 近未来の架空の県を舞台にするが、そこはまぎれもなく、あの3.11を経験した場所だ。再び起こった原発事故で半径20キロ圏内が警戒区域となり、小野家の庭に避難区域の境界線が設置される。「KEEP OUT」の黄色い帯こそが、この映画の象徴だ。仲が良かった隣人や親と子を隔てるその帯は、生と死、絶望と希望、過去と未来までも、冷酷に隔てている。

 物語に登場するのは、泰彦と智恵子の老夫婦、洋一といずみの若夫婦、そして小野家の向かいの鈴木家の長男のミツルとその恋人ヨーコの3組だ。誰もが地震と原発事故によって、傷つき、価値観を大きく変えていく中で、認知症を患う智恵子だけが、変わらない日常を生きている。智恵子の中には「KEEP OUT」の文字はなく、家に帰るという、望みだけが厳然とある。過去を忘れたものだけが素直に口にできるあまりに悲しい望みだ。

 実際、3.11から1年以上の時が過ぎても、原発事故の収束は未だ見えてこない。住みなれた家を決して離れようとしない泰彦や、放射能が子供に及ぼす影響を怖がるあまり、防護服で過ごすいずみ、警戒区域に強引に入ってまで行方不明の家族を探すヨーコを、責めることなどできない。泰彦が繰り返し口にする「国などあてになるものか」との思いは、上から目線で退避命令を下す職員ですら感じとっている。それこそ現実の被災者すべてが共有する不信感なのだ。

 やがて下される家畜の殺処分と、退避命令。小野家の老夫婦の最後の選択にはさまざまな意見があろう。だがじっくりと長回しで据えたカメラは、揺るぎない信念で彼らを映している。本作には、園作品には珍しい、幻想的なシーンも。がれきの中で“そこにない何か”を懸命に探す行為は、幻のような子供たちの姿とシンクロする。探し当てたのは希望か、あるいは絶望か。だが、黄色い帯で隔てられてもなお、それを越えようとする人々が確かにいる。怒りにも似たその生命力を、この映画を見て観客一人一人が感じ取ることだろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)リアル度:★★★★☆

□2012年 日・英・台湾合作映画 □原題「希望の国」
□監督:園子温
□出演:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、他

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