ゼロ・ダーク・サーティ コレクターズ・エディション [Blu-ray]ゼロ・ダーク・サーティ コレクターズ・エディション [Blu-ray] [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
ビンラディン殺害の裏側を描く「ゼロ・ダーク・サーティ」。ヒロインのラストの表情が報復の連鎖の虚しさを物語る。 【80点】

 ビンラディンの行方をつかめないCIAは、人並み外れた情報収集力と分析力を誇るノン・キャリアのマヤを捜索チームに加える。捕虜の証言や現場証拠から核心に迫ろうとするが、成果は上がらない。そんなある時、親しい同僚が自爆テロに巻き込まれて死亡。それを機に、マヤは狂気にも似た執念でビンラディン暗殺という職務にのめりこみ、ついに潜伏先を特定する…。

 テロ組織アルカイダの指導者にして、9.11同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン。彼の捕縛・暗殺作戦は、2011年5月2日に実行され、オバマ大統領は「正義はなされた」と勝利宣言を発表した。だがその作戦の詳細は、長らく明らかにされなかった。この作品では、米国側の情報収集の実態と、作戦の中心人物がCIAの若き女性分析官だったという驚きの事実が描かれる。

 驚きとはいっても、世紀の暗殺劇の結末は世界中が知っているし、ストーリーの大筋は、ビンラディンという悪者を正義のアメリカが成敗するという大捕物にすぎない。それでもこの映画の重量感と緊張感はズバ抜けているし、問題を含む現代史をハリウッドがエンターテインメントとして昇華する“自由度”には、いつもながら感心させられる。何より、きわめて政治的な題材を、マヤという一人の若い女性分析官の変貌を通して描く、語り口が優れている。

 映画冒頭、現場に到着したマヤは、非人道的な拷問に立ち会い、思わず目を背ける。だが、巨費を投じても一向に成果が上がらない作戦の中、同僚の死がマヤを変えた。青い瞳と白い肌の、どこか線の細い美女は、上官に噛み付き、CIA長官にも物怖じせず、冷徹な判断でビンラディンの居所を突き止め、自信たっぷりに精鋭部隊の米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)を動かして、殺害作戦を実行していくのだ。この映画は、非常に特殊な状況ながら、男社会で生き抜く一人の女性の“成長”を描いた物語でもある。

 ヒロインのマヤを演じるのは、映画女優としては遅咲きながら、その演技力が高く評価されるジェシカ・チャステインだ。本作では、マヤの執念と葛藤をドライで抑えた演技で、見事に演じきった。特にラスト、一人飛行機に搭乗した時のうつろな表情は絶品。すべてが終わった後に、報復の不毛や、これからも続くテロとの戦いの虚しさが、彼女の複雑な表情から浮かび上がった。

 タイトルは午前0時半を意味する米軍の専門用語。ネイビーシールズがビンラディンの潜伏先に突入した時刻を指す。映画で描かれるCIAの活躍はどれも派手で、ヒロイックなものが多いが、リアル志向の本作では、地味で地道な情報分析が中心で、突入作戦のクライマックスさえも、カタルシスとはほど遠い。マヤの執念は、テロを聖戦と信じるテロリストに打ち勝つためには、自らも狂気に身を投じるしかないと訴えている。つくづく空恐ろしい作品だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)緊張感度:★★★★☆

□2012年 アメリカ映画 □原題「ZERO DIRK THIRTY」
□監督:キャスリン・ビグロー
□出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、他
チケットぴあ

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