舟を編む 豪華版(2枚組) 【初回限定生産】 [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
辞書作りに携わる人々の静かな情熱を描く「舟を編む」。抑制したタッチが好感度大。 【70点】

 玄武書房に勤務する馬締光也は、卓越した言葉のセンスを買われ、辞書編集部に配属される。携わるのは、略語や若者言葉も取り入れた、今を生きる人のための生きた辞書「大渡海」作り。編集部の個性的な面々と共に、辞書作りに没頭していく馬締は、ある日、大家の孫娘の香具矢に出会いひと目惚れする…。

 原作は、2012年本屋大賞を獲得した三浦しをんの大ベストセラー。個性的なタイトルは、辞書(舟)を編集する(編む)の意味だ。途方もなく地味で長い作業に携わる人々を描くが、仕事に対してはこれみよがしの“頑張り”感はあえて描かない。だからこそ主人公の、恋への“一生懸命”が効いてくる。このバランスの妙が、本作の一番の魅力なのだ。

 馬締(マジメ)は、辞書作りという一生の仕事を見つけ、香具矢(かぐや)という生涯の伴侶を得た、幸福な人間である。そんな彼がさまざまな困難にぶつかりながら、情熱を傾ける辞書「大渡海」は、完成するまでなんと15年。用例採集、見出し語選定、語釈執筆、レイアウト、校正…。映画はそんな辞書作りの工程を丁寧かつユーモラスに描き、決して退屈させない。こつこつとした仕事ぶりは時に美しく、その“行間”には、恋や友情、出会いや別れがある。辞書作りが、次第に壮大なロマンに思えてくる。

 とりわけ、言葉に情熱を傾ける人たちの議論が、実にユーモラスで味わい深い。「右」という言葉の説明から始まり、「恋」の語釈に頭を悩ませ、「ダサい」は実体験に基づく例文がつく。言葉は生きているのだ。

 バラエティに富んだキャスティングは、脇役まで含めて実に味のある役者が揃っている。実は松田龍平を“久しぶりに”「いい俳優だ」と感じた。不器用で変人、親友はネコのトラさんというマジメが、仕事と恋によって成長し、いつしか人ときちんとコミュニケーションをとれる、頼れる編集者になっていくプロセスを、繊細に演じている。才人の石井裕也監督にしては、毒気が足りず、端正すぎるのだが、それが欠点になっていないのがこの作品の力だ。

 調べものはインターネットでサクッと検索が常識の今、この映画は「人によって紡がれる言葉は、人をつなぐ」という役割を再確認させてくれる。主人公は、他者と交わることによって、キラめく言葉の海へと舟をこぎ出していった。淡々としたタッチで途方もない情熱を描く、奥ゆかしい秀作である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)端正度:★★★★☆

□2013年 日本映画 □原題「舟を編む」
□監督:石井裕也
□出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、他
(宮崎あおいの崎は代用文字。 正しくは“たつさき”)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
舟を編む@ぴあ映画生活