しわ [Blu-ray]
老いと認知症を扱った異色のスペイン製アニメーション「しわ」。シンプルなセルアニメの魅力に改めて気付かされる。

元銀行マンのエミリオは、認知症の症状が見られるため、息子夫婦から養護施設に送られる。エミリオは、お金に細かく抜け目のない同室のミゲルや、孫のためにバターやティーバックを集めるアントニアらと、次第に心を通わせる。ある日、アルツハイマーのモデストの薬と自分の薬を間違えられたエミリオは、自分もアルツハイマーであることに気付いてしまう。ショックで症状が進行した彼を助けようと行動を開始したのは、したたかで小ズルい性格のはずのミゲルだった…。

原作はスペインの漫画家パコ・ロカの「皺(しわ)」。イグナシオ・フェレラス監督は、幼い頃に日本のアニメを見て強く影響されたのだそうで、日本のオムニバス映画「東京オンリーピック」にも参加した若手実力派のアニメーターである。本作は、スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で長編アニメーション賞と脚本賞の2冠を達成した話題作だ。アルツハイマーを患う老人たちが暮らす施設では、ユニークな老人たちがそれぞれの思い出を持って、日々の暮らしを送っている。1階は穏やかな老人ホームの様相だが、重症の患者は2階へと送られ、主人公のエミリオはそれが怖くてたまらない。老い、認知症、終の住処、現実逃避に居直り、そして死と、残酷な現実を淡々と描いていくが、不思議と悲壮感はない。現代では逆に新鮮な、のっぺりとしたセルアニメのシンプルな描線が、温かさをかもし出しているのがその理由だ。さらに、物語の随所にほのかなユーモアや、時空を超える演出もあって、ファンタジーのような雰囲気もある。苦悩するエミリオに、皮肉屋のミゲルは「ここではきれい事は通用せんぞ」と冷たく言いながらもアルツハイマーの症状が進んだ彼を懸命に助ける。ラストは悲しくやるせないが、現実から決して目をそらさないミゲルこそ、この物語の真の主人公なのだ。虚無的だったミゲルの変化と奥に秘めた優しさに思わず泣けた。手描きセルアニメの素朴なタッチが、誠実でゆったりとした本作に見事なほどマッチしている。地味な題材だが、温かい余韻を残す秀作だ。
【70点】
(原題「ARRUGAS」)
(スペイン/イグナシオ・フェレラス監督)
(社会派度:★★★★☆)
チケットぴあ

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