トランス [Blu-ray]
記憶をテーマにしたスタイリッシュなクライム・サスペンス「トランス」。多彩な引き出しを持つダニー・ボイルらしい不思議な陶酔感が残る作品。

アート競売人のサイモンは、ギャングのフランク一味に協力して、オークション会場からゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」を盗み出す。だがサイモンは予期せぬ行動に出たあげくフランクから頭を強打され、絵の隠し場所を含む記憶を失ってしまう。何としてでも絵を手に入れたいフランクは、サイモンの記憶を取り戻すため、催眠療法士エリザベスを雇うことに。やがてフランクの企みと絵画紛失事件を知ったエリザベスはフランクに手を組むことを申し出て、本格的な催眠療法が始まる。だがサイモンの記憶の底には誰も予想さえ出来なかった“真実”が待ち受けていた…。

「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」「127時間」と、多彩なジャンルの傑作を世に送り出す才人ダニー・ボイル。最近ではロンドン・オリンピック開会式の総監督としてのネーム・バリューが上回ってしまったのはご愛嬌だが、映画ファンには何よりも彼は、スタイリッシュな映像と音楽でファンをしびれさせる映画監督なのである。本作では記憶、潜在意識、心をテーマに、絵画強奪というクライム・サスペンスから始まり、人間の深層心理を巡る3人の登場人物の関係性を、鮮烈なタッチで描いた。物語には大きな秘密が隠されているので、詳細は明かせないのだが、この物語が、初期の作品で、登場人物3人ののっぴきならない関係性を描いた「シャロウ・グレイブ」にどこか似ていると言ったらヒントになってしまうだろうか。さらに、記憶という映画界ではセオリーになりつつあるプロットを利用しながら、他作品のようにSFタッチにはせず、あくまでも会話で記憶を探っていく催眠療法というプレーンな手段を用いるところが逆に新鮮で面白い。この催眠療法を操る女性エリザベスが、超がつくほど優秀でなければこのストーリーは成り立たないのだが、そこには別の仕掛けがあって…と、話はかなりややこしいのだ。サイモンが語り部かと思ったらいつしかエリザベスが心情を吐露しているという語り口のスライドもまた、トリックのひとつである。見終われば「そんなこと、ありえるのか?!」との思いもよぎったが、少なくともこの映画の陶酔感は本物だ。マカヴォイ、カッセル、ドーソンと三者三様に、一筋縄ではいかない役者を配したセンスがいい。キーワードは愛。ダニー・ボイルはやっぱりロマンチストだった。
【70点】
(原題「TRANCE」)
(米・英/ダニー・ボイル監督/ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソン、他)
(どんでん返し度:★★★★☆)
チケットぴあ

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