ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)
仕事のノルマが厳しく、上司の度重なるパワハラで追い詰められた入社1年目の青山隆は、心も身体も疲れ果て、極度の疲労から駅のホームで意識を失ってしまう。あやうく電車にはねられそうになったところを、幼なじみのヤマモトと名乗る男に助けられる。彼を覚えておらず心あたりもない隆だったが、にぎやかな関西弁と明るく前向きな性格のヤマモトと接するうちに、次第に本来の明るさを取り戻し、仕事の成績も順調に上がっていった。だがある日、隆は暗い表情で墓地行きのバスに乗るヤマモトを見かけ、彼のことを詳しく調べると、ヤマモトは3年前に自殺していたことが分かる…。

ブラック企業で心身ともに疲弊した青年が幼なじみを名乗る謎の青年との交流から、自分の生き方を模索する人間ドラマ「ちょっと今から仕事やめてくる」。原作は第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海の小説だ。ユニークかつ直接的なタイトルが何より印象的だが、重い題材を軽妙な語り口で描くスタイルが面白い。謎めいたヤマモトをさわやかに演じる福士蒼汰、ヤマモトに振り回されながら懸命に生きる生真面目な隆を演じる工藤阿須加の主役二人は好演。パワハラ上司を怪演する吉田鋼太郎、闇を抱える成績優秀な先輩役の黒木華と、脇役も実力派が揃う。ブラック企業で追い詰められた隆を救ったヤマモトは、果たして何者なのか?という謎が前半を引っ張る。ヤマモトの「生きることは希望を持つこと」という人生哲学に感化され、ついにタイトルと同じセリフを口にし会社を辞める隆だが、このシークエンスがちょっと優等生すぎて、つまらない。ハリウッドのコメディ映画よろしく、上司の顔面にパンチの一つも食らわせてほしいところだ。それはさておき、残念なのは、ヤマモトの正体と過去がわかってからの後半(終盤)の展開があまりに長く間延びしてしまったことである。ヤマモトは、もしや天使や幽霊…という期待(?)はあっさり裏切られ、予想通りの展開に。そもそも隆が本当にやりたいことが何なのかが、見えてこないため、すべてを知った後の隆の選択が、現実逃避としか思えない。おかげで天国といわれるその場所の観光PRを見ている気になってしまった。ブラック企業、長時間労働、パワハラ、自殺。タイムリーな題材だけに、このラストのツメの甘さが惜しい。隆の会社のブラックぶりが痛々しいので、見ていてつらいが、現実社会で本当にこんなメに遭っている人々は“映画など見るヒマもない”のだから、それを思うとますますつらい。
【60点】
(原題「ちょっと今から仕事やめてくる」)
(日本/成島出監督/福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、他)
(タイムリー度:★★★★☆)
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