映画の中の「食」
2008年06月27日

ファーストフード・ネイション4

ファーストフード・ネイション デラックス版
「食」の問題についての語る映画は多いが、この作品の恐ろしさはハンパじゃない。ファーストフードの代表選手ハンバーガーにかかわる様々な人間を通して、食の問題は、個人や一企業ではなく、消費者も含めた社会構造全体にあると訴える。

利潤追求に余念がないハンバーガー・チェーン店“ミッキーズ”本社のマーケティング部長ドンは、社長命令で自社工場の視察にやってくる。そこには、ハンバーガーが出来るまでの様々なプロセスに係わる人々が、それぞれの事情を抱えながら働き暮らしていた。アルバイトの店員、メキシコからの不法移民の運び屋、劣悪な工場で酷使される移民、環境保護グループに、以前は食肉工場に牛を卸していた牧場主など。ついにドンは、ハンバーガーの冷凍パテがトンデモナイ工程で作られている事実を知るのだが…。

ファーストフードとは日本語の発音表記。英語のつづりは“fast food”で、正しくはファストフードだ。一般にファーストフードという場合は、「アメリカ資本の」「チェーン店の」「安くて」「手軽な」「高カロリー食品」と定義される。具体的には、ハンバーガー、フライドチキン、ドーナツなどを指す。近年ではファーストフード大国のアメリカでも、高カロリー、高脂肪、栄養素の偏りがあるファーストフードはジャンクフードとみなされ、日常的に食べることは健康に良くないと言われている。

映画では、fast(速い)という言葉を裏付けるように、流れ作業を滞らせることなくラインを維持する。作業工程では、衛生も安全も無視されていて驚愕だ。この作品には“世界一運の悪い男”として有名な大スターが登場するが、シカゴ支店の副社長である彼は企業の巨悪をすべて知っていながら容認している。「焼いてしまえば大丈夫」と言い切る彼の言葉はショッキングだ。

観るものに衝撃を与える恐ろしい映画だが、それでも買ってしまうハンバーガー。ファーストフードの怖さとは、圧倒的な安価と逃れられない習慣性に他ならない。日本を含む世界中に存在するチェーン店は、今日も笑顔とともに開店している。ラストシーンを見ると、あぁ、やっぱり…と力が抜けた。

(2006年/米・英/リチャード・リンクレイター監督/原題「FAST FOOD NATION」/出演:グレッグ・キニア、イーサン・ホーク、パトリシア・アークエット、他)

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2008年04月03日

宮廷料理人ヴァテール4

宮廷料理人ヴァテール
17世紀フランスに実在した天才料理人フランソワ・ヴァテールが、ルイ14世のために捧げた3日3晩の大饗宴とその舞台裏を、豪華絢爛に描いた歴史スペクタクル。フランス映画史上空前の40億円の巨費を投じて作られたこの作品は、キャスト、美術、衣装、音楽とすべてが豪華絢爛だ。

17世紀フランス。国王ルイ14世をもてなすために料理人ヴァテールは3日間に及ぶ大宴会を取り仕切るよう命令される。舞台裏での愛と陰謀とは裏腹に、芸術性の高い究極の料理と目を見はる華麗なショーは、国王を多いに満足させるのだが…。

映画の中で、大宴会の準備をするヴァテールは、食材の不足や費用のやりくり、放蕩貴族のわがままなど、次々に降りかかる難題を、持ち前の才気で切り抜ける。その中で、カスタードクリーム用の卵が腐って使えなくなる非常事態が発生。ヴァテールはとっさに、クリームに砂糖を放り込んで、泡立てる。これがホイップ・クリーム(クレーム・シャンティ)の誕生の瞬間だった。この映画の主人公で実在の料理人フランソワ・ヴァテールが発案したとして、料理史にその名前を刻んでいる。今では当たり前のようなクリームは、このような苦肉の策で誕生したのかと思うと面白い。映画に描かれるすべてが史実ではないにしても、料理というのは、アイデア、言い換えれば想像力で作り出される芸術品なのだ。

映画は、重責を負いつつ料理という芸術に邁進する天才料理人のプライドが絢爛豪華な映像の中で描かれた。かなわぬ恋に身をこがすという設定が物語の流れに上手くマッチしていないのが残念だが、歴史考証家マリ=フランス・ノエルによって、再現された当時のレシピと次々に登場する料理が素晴らしい。

出演は、ジェラール・ドパルデュー、ユマ・サーマン、ティム・ロスなど。

(2000年/英・仏/ローランド・ジョフィ監督/原題「VATEL」)

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2008年02月28日

フォーチュン・クッキー4

フォーチュン・クッキー 特別版
ひょんなことから心と体が入れ替わってしまった母と娘の姿を描くコメディだ。ケンカばかりだった二人が、慣れない生活を送ることで、母として娘としての相手の苦労を知り、次第にお互いに思いやる気持ちになっていくハート・ウォーミングな物語である。

出演はジェイミー・リー・カーティスとリンジー・ローハン。娘役のカーティスが、バイクに乗ったりバンドで演奏したりと熱演を見せるが、今ではゴシップばかりが目立つリンジー・ローハンが母と娘の役をきちんと演じ分けている点も見逃せない。1976年のジョディ・フォスター主演作「フリーキー・フライデー」のリメイク作だ。

お互いの体が入れ替わるきっかけになるのが、母と娘が中華料理店で食べるフォーチュン・クッキーと呼ばれるお菓子。アメリカの中華料理店ではほとんどの店で食後に出されるもので、クッキーの中には、運勢の書かれた紙片が入っている。ラッキーナンバーや、翻訳された中国の文章、ことわざなどが書かれていることもある楽しいイベントのようなお菓子だ。

フォーチュン・クッキーは中国のものと思われているが、意外なことに、元々は日本生まれらしい。北陸地方の神社で配られていた辻占煎餅に由来するという説が有力。石川県金沢市では、正月に配るこの辻占煎餅を、縁起物として家族で楽しむ風習がある。日本人庭師で、サンフランシスコの日本庭園を設計した萩原眞がアメリカに普及させたとされている。中国ではフォーチュン・クッキー自体知られていないとのことだ。

「ナインハーフ」の中でもフォーチュン・クッキーを買う場面が登場するなど、このお菓子は、さまざまな映画にさりげなく登場する。ちなみに、ややこしいのは題名。ビリー・ワイルダー監督の「恋人よ帰れ!わが胸に」の原題は「フォーチュン・クッキー」。ロバート・アルトマン監督作品のタイトルは「クッキー・フォーチュン」。原題、邦題ともに混乱必須なので要注意だ。

(2003年/マーク・S・ウォーターズ監督/原題「Freaky Friday」)

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2006年08月08日

アマデウス ディレクターズ・カット版5

アマデウス ディレクターズカット スペシャル・エディション

天才音楽家モーツァルトと、彼の才能に嫉妬する当時の宮廷作曲家サリエリ。サリエリはモーツァトの音楽を誰よりも愛しながら、次第に狂気に駆られていく…。

ウィーン菓子は有名だが、イタリア人で甘党のサリエリはいつもケーキや菓子を欠かさない。伊人のサリエリは訪ねてきたモーツァルトにマスカルポーネを出す。これはクリームチーズにグラニュー糖を混ぜ、ラム酒で香りをつけたもの。

謎が多いモーツァルトの死をサリエリによる暗殺説という大胆な仮説で構成。84年のオリジナル版はオスカーも獲得した。絢爛豪華な映像と音楽が素晴らしい。天才と凡才のそれぞれの苦悩を、格調高く演出した傑作音楽映画にして文芸大作。

(2002年/アメリカ/ミロシュ・フォアマン監督/原題「Amadeus」)

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リストランテの夜3

Big Night リストランテの夜(字幕)

イタリア移民の兄弟が経営するレストラン。芸術家肌の兄は、味に対して妥協せず、アメリカ人好みの料理を断固として拒否するが…。

美食で知られる街ボローニャ出身の兄弟が作る料理は、様々な食材を詰めたパスタ包み焼ティンパーノ。名前の由来はティンパニーで、洗面器で作る非常に豪快な郷土料理。もともとは残りものを詰めていたらしい。

店の宣伝のために、なけなしの金をはたいて催す豪華なパーティ。兄弟それぞれの恋模様もからむ。いろいろ意見は違っても、やっぱり強い絆を確かめ合う兄弟の姿がいい。

(1997年/アメリカ/スタンリー・トゥッチ及びキャンベル・スコット共同監督/原題「BIG NIGHT」)

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活きる4

活きる 特別版

40年代の中国。賭けに負けて全財産を失った資産家の息子フークイとその妻、そして子供たち。歴史の波に翻弄され、幸せと悲劇が交互に訪れながらも、一家は前向きに生きていく…。

子供たちの大好物は餃子。中国では蒸し餃子が一般的なようで、暮らし振りが貧しくなってからもアルミのお弁当箱に入れて、餃子を食べている。亡くした子供の墓に備えるのも、やはり湯気のたつ餃子。

一庶民の家族愛を軸に、現代中国史の流れを的確に描写。夫婦と2人の子供の姿には涙を誘われる。チャン・イーモウ監督の映画の中でも非常に完成度の高い作品。

(1994年/中国/チャン・イーモウ監督/中国語原題「活着」)

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ショコラ4

ショコラ【廉価2500円版】
この映画の重要な食べ物はチョコレート。タイトルもそのまま、チョコレートを意味する「ショコラ」となっている。

フランスの田舎街で、小さなチョコレート屋を開いた女性ヴィアンヌ。彼女が売る不思議なチョコレートが、因習に閉ざされた村の人々を幸せに導いていく、あたたかいファンタジーだ。ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、レナ・オリン、アルフレッド・モリーナ、ジュディ・デンチなど、国際的な豪華キャストが贅沢だ。

主人公ヴィアンヌは客との会話から好みを探り、また、彼らに何が必要かを考えて、絶妙のチョコレートを選んで薦める。また、彼女が作るチョコレートはどれも独特の味付けがなされているのだが、特に驚くのは、唐辛子を入れたチョコレート。ホット・チョコレートにチリ・ペッパーを入れたりもする。映画の中では、これが「愛の妙薬」として効果を発揮した。

チョコレートは、かつての高級品カカオを使うことから、中世の欧州では上流階級の特権的食べ物だった。手軽に庶民の口に入るようになった今でも、生活を、時には人生を、少しだけ幸せにしてくれる不思議な味は変わらない。

チョコレートは、映画の中で、可愛くて華やかな、また重要な小道具として登場することが多い。映画「フォレスト・ガンプ」では“人生はチョコレートの箱のよう。食べてみなけりゃ中身はわからない”という名セリフがあった。他に「チャーリーとチョコレート工場」もチェックしたい。

(2000年/アメリカ/ラッセ・ハルストレム監督/原題「Chocolat」)

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サラーム・ボンベイ!3

Salaam Bombay!: Music From The Original Motion Picture Soundtrack
サラーム・ボンベイ!

サーカスに出稼ぎに出された子供は、逃亡して大都会ボンベイへ。そこで紅茶売りとして、たくましく生きていく。なんとかお金を貯めて故郷へ帰りたいと願うが…。

少年は紅茶を売る仕事で生計を立てている。呼ばれるときも名前ではなく“お茶売り”と呼ばれていた。インドの紅茶はミルクティー。マサラ・ティーと呼ばれる香料の強い独特のもの。

インドのストリート・チルドレンのリアルな様子が印象的。麻薬、売春、警察騒ぎ…。彼らのたくましさは日本にはないものだが、あまりに悲惨な環境は、やるせなさだけが残る。

(1988年/インド/ミラ・ナイール監督/原題「Salaam Bombay!」)

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