ラストエンペラー
ラストエンペラー
イタリアの名匠ベルナルド・ベルトリッチが、激動の時代に生きた中国の最後の皇帝溥儀(ふぎ)の生涯を描いた歴史大作。
アカデミー賞では、ノミネートされた9部門(作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞)全てでの受賞を達成したことで映画史に輝かしい記録を残している。ヴィットリオ・ストラーロによる華麗な撮影、坂本龍一が俳優として出演しながら音楽も担当するなど、見所は数多い。
映画は、莫大な費用の超大作にふさわしく、スケールが大きな作品となった。中でも北京にある歴代皇帝の居城「故宮(紫禁城)」で世界初のロケにより撮影されたことが大きい。撮影は中国政府の許可を得て、数週間貸切状態で行われた。故宮は、現存する中国最大の木造建築で、現在は、1日に数万人が訪れる一大観光スポット「故宮博物館」になっている。
わずか3歳で皇帝になった愛新覚羅溥儀が、無数の家臣にかしずかれる儀式の場面で映るのが、広大な故宮の中の、政治を司る太和殿とその広場だ。故宮の「三大殿」のなかでも最も重要な建物で、皇帝の即位や誕生、祭日の催し、出兵征討など、明・清両代の皇帝の重要な儀式はすべて大和殿で行われていた。
映画の中では、無邪気で小さな皇帝と、権力の象徴の巨大な広場との対比が効いていて、これから溥儀に訪れる過酷な運命が自然とダブってしまう。
故宮は中国の歴史ものの撮影には欠かせない舞台だが、現在では映画撮影は禁止されていて、故宮を舞台にした映画は、北京の故宮博物館をモデルとして設計された映画撮影のための建造物「明清宮苑」で撮影が行われる。世界遺産でもある重要な建造物が撮影で傷まないためという配慮だが、それ以上やっかいな理由は、故宮博物館周辺には、高層ビルが立ち並び、撮影画面に映ってしまうので、CG処理で消さねばならないこと。手間をかけるくらいならいっそ撮影用の故宮(紫禁城)を建ててしまえという主旨で作られたのが明清宮苑なのだ。まるでチネチッタ並みのスケールで、まさに中国版の巨大映画村。チャン・イーモウ監督の「HERO」など多くの映画撮影で使われている。
終盤、10年の収容所生活を終えて溥儀は特赦され、一市民となる。庭師になって北京で暮らしはじめた溥儀が、紫禁城を訪れるシーンが印象的だ。
(1987年/ベルナルド・ベルトルッチ監督/原題「The Last Emperor」)
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インテリア
インテリア
才人ウッディ・アレンが得意のスラップスティックコメディを封印し、自身が偏愛するイングマル・ベルイマンの作風を徹底的に意識して作った人間ドラマである。ニューヨークの山の手のロングアイランドに住む、裕福だがそれぞれに問題を抱えるファミリー。精神を病んだ母親と三姉妹の葛藤の末に、家族が崩壊してゆく様を描く物語だ。
3姉妹はそれぞれに美しく才能に溢れるが、常に自分の美意識で家庭を支配してきた母親イブの影響を強く受けている。イブは有名なインテリア・デザイナーだが、日本とは比べ物にならないほど、インテリア・デザイナーの地位が高いアメリカでは、誇りに満ちたエリート的職業であることを理解してから鑑賞したい。
几帳面で洗練された美しさを目指すイブの手掛けるインテリアは、すきがなく美しいが、非常に冷たく無機質なもの。結婚した娘の家にある、調度品にまで細かく注文を付け、自分の好みのものに変えようとする。ベットの脇のサイドテーブルやそこに飾る壺に、異様にこだわる場面が印象深い。本来、くつろぎの空間であるべき家や部屋は、イブにとっては“作品”に過ぎないのだ。住む人(娘夫婦)のことを眼中に入れずに美を追求してしまうイブ。ここに彼女の逃れられない孤独が集約されている。30年連れ添った夫から「君の支配と生き方に耐えられない」と離婚を言い渡されるが、彼女は自分の美意識を捨てることができず、ついに心身ともに壊れていく。
およそアレン映画らしからぬシリアスな作品だが、多才なアレンの才能の一面を知る上でも貴重な1本。アレン自身は出演せず、演出に専念している。喪失感やコンプレックスに満ちた家庭崩壊劇の秀作。
(1978年/アメリカ/ウッディ・アレン監督/原題「Interiors」)
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天空の草原のナンサ
天空の草原のナンサ デラックス版
モンゴルの雄大な自然を背景に、羊の遊牧民として生きる家族の絆を描いた物語は、静かだが温かな雰囲気が漂う、心温まる感動作だ。監督は「らくだの涙」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたビャンバスレン・ダバー監督。
たくましいお父さん、優しいお母さん、幼い弟と暮らす少女ナンサが主人公である。6歳のナンサは草原から子犬を連れ帰ったが、父親は飼うことを許してくれない。子犬にツォーホルと名前を付けてこっそり飼いはじめたナンサだったが…。
モンゴルの遊牧民は、水や草を求めて家畜を追う移動生活が定め。果てしなく広がるモンゴルの草原に暮らす遊牧民は、生活必需品を買い求めるために町へも行くが、基本的に草原で暮らしている。彼らの住居は移動式住居であり、解体できる丸屋根の家で、ゲル(モンゴル語で家の意味)、中国語でパオ(包)と呼ばれるもの。シンプルな構造のテント式住居は、木や布、動物の皮などでできていて、釘や金具は基本的には用いない。平均組み立て時間は2〜3時間。熟練すると1時間以内で組み立て可能という説もある。冬は温かく夏は涼しいという合理的なものだ。家族全員の距離が近く、必要最小限のものだけを持って生活するモンゴル高原の遊牧民。ナンサの家族がみんなで助け合い、信頼しあって暮らせるのは、いつも互いの顔が見えるこんな家で暮らしているからなのだ。消費社会の私たちから見ると、うらやましくも美しい暮らしに見える。
名犬ツォーホルがカンヌ映画祭でパルムドッグ賞(最優秀主演"犬"賞パルムドール賞をもじった賞)を受賞しているのがうれしい。迷子になりかけたナンサを助けた遊牧民のおばあさんが話してくれる、モンゴルの草原に伝わる「黄色い犬の伝説」が印象深かった。
(2005年/ドイツ/ビヤンバスレン・ダバー監督/原題「The Cave of the Yellow Dog」) ←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/
満月の夜
Full Moon in Paris (Sub) 満月の夜【字幕版】パリ郊外で同棲しているカップルが主人公。ルイーズは夜遊びしたいがためにパリに部屋を借りる。自由を謳歌し、妻子持ちの男性やパーティで知り合った年下の青年と時を過ごすが…。
主人公ルイーズはインテリアデザイナー。主演のパスカル・オジェが劇中の室内装飾も担当している。近未来的な郊外の家。建物の色彩は青と白の二色構成だ。映画の中のパリの部屋はどれも素敵に見える。
“2人の女を持つ者は魂を失い、2軒の家を持つ者は理性を失う”。この格言をロメール風に掘り下げたのがこの映画。スノッブな若い女性を皮肉る視線が随所に見られる。
(1984年/フランス/エリック・ロメール監督/仏語原題「Les Nuist de la Pleine Lune」)
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アメリカン・サイコ
アメリカン・サイコバブル絶頂期の1980年代のNY。若きエリートのパトリックは、全てに満たされた生活を送っているにもかかわらず、精神的に満たされない。そんな彼の唯一の解放は殺人だった…。
ウォール街の一流会社に勤めるパトリックの住まいは高級マンション。バブル期のNYの嗜好を反映して部屋の中はモノトーンで統一されている。エクササイズの道具も揃え、壁にはロバート・ロンゴの絵画が飾られている。
典型的なヤッピーの生活をデフォルメして描く本作は、あまりにショッキングな内容のため、映画化は不可能とまで言われていた。病んだ彼らの救いは主にドラッグだが、それは物質的な豊かさがまいた種なのだ。
(2000年/アメリカ/メアリー・ハロン監督/原題「AMERICAN PSYCHO」)
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家族の肖像
家族の肖像 デジタル・リマスター 無修正完全版ローマの優雅な豪邸に住む老教授は他人との接触を嫌って孤独に暮らしていたが、肖像画を媒介として間借り人を受け入れることに。彼の平穏な生活は崩れ、混乱に巻き込まれていく…。
老教授の屋敷の壁一面には、コレクションである家族団らんを描いた絵が飾られている。暴漢に襲われた同居人の青年を介抱する部屋は、戦時中に亡命者やユダヤ人をかくまうために母親が作らせた、秘密の隠れ部屋の書斎。
全編が室内で撮影されている本作。ヴィスコンティ自身を投影するような孤独感、家族への憧憬、若い世代との葛藤に溢れ、まさに敗北のドラマが展開する。
(1974年/イタリア・フランス/ルキノ・ヴィスコンティ監督/原題「Conversation Piece/ Gruppo di Famiglia in un Interno」)
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