映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

映画レビュー2006

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

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◆プチレビュー◆
ラストの決着のつけ方など、ハリウッドらしからぬ渋い演出で、トミー親父の今後の監督作に大いに期待だ。メルの死体に塩をヌリヌリする様子など、トボけた笑いを誘う場面が多い。

メキシコ人密入国者のカウボーイ、メルキアデスは、突然、放牧場で銃弾に倒れ息絶える。事件はうやむやにされ遺体は埋葬されたが、米国人の親友のピートは犯人の国境警備員マイクを拉致し、遺体を掘り起こさせ強引に旅に出る。ピートは生前、メルキアデスから頼まれていた。「俺が死んだら故郷のヒメネスに埋めてくれ」と…。

ロード・ムービーにおいて出発点や目的地は大きな問題ではない。旅のプロセスとその旅で訪れる変化こそが目的だ。そこにはたいてい道連れがいるが、この映画のピートには生きている人間と死んだ人間の2人の“相棒”がいる。ピートの中では、生と死の境界線は限りなくあいまいだ。彼の目的は、死んだ親友メルキアデスを故郷に埋葬すること。メルキアデスは合計3度埋められることになる。

ヒメネスを目指す途中に出会う盲目の老人のエピソードが忘れ難い。一人取り残された彼に「何か出来ることは?」と尋ねるピート。老人は「どうか殺してくれ」と頼むが、ピートは丁寧にその願いを断る。追ってきた警備隊に老人は、逃亡者など見ていないと告げるが、その見えない目はピートらの旅の無事を祈っていた。

移民の国アメリカ。特にメキシコからは多くの人々が富を求めてアメリカへと移動する。逆にテキサスからメキシコへと境界を越える目的のほとんどが逃亡だ。だが、メルキアデスとピートの目的は帰郷。強い思いの向こう側に初めて見える真実がある。「国境」がこの映画の大きな鍵だ。国を隔てるその線は、いつしか人と人の間にも壁を作り差別を生む。実際には線など存在しないというのに。無気力なマイクは旅を通して自分を知った。そして、たどり着いたその場所の意味は、形には見えなかった。男の約束を果たすピートの後姿が思わず泣ける。

□2005年 アメリカ・フランス合作映画 原題「The Three Murials of MELQUIADES ESTRADA」
□監督:トミー・リー・ジョーンズ
□出演:トミー・リー・ジョーンズ、バリー・ペッパー、フリオ・セサール・ディリージョ、他

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フーリガン

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◆プチレビュー◆
現実的には、暴れて試合を台無しにするフーリガンが多い。大のサッカーファンの私としては暴力行為には賛成は出来ないが、映画として語り口の新しさを評価。

マットは名門大学でジャーナリズムを学ぶ米国人大学生。だが友人の罠で大学を退学になり、姉の住む英国にやってくる。そこで姉の義弟ピートと知り合うが、彼は熱狂的なサッカー・ファンだった。彼とのつきあいから、次第に危険だが陶酔的な暴力の世界に惹かれていくマット。変わり始めたマットだったがある日事件が起きる…。

サッカーとは呼ばない。フットボールなのだ。蹴球母国の英国から生まれたこの映画は、悪名高い熱狂的サポーター、フーリガンについて描くもの。チームをこよなく愛する気持ちと争いの瞬間に「生」を実感する彼らの生き様は熱い。時には死を招く暴力行為に共感するわけにはいかないが、そこだけが彼らの居場所。言い分を聞いてみる価値はある。

ウェストハム・ユナイテッドというチームの地位や尊敬の意味は分からなくても、チームを愛する者同士の連帯感は伝わってくる。彼らがなぜ戦うのかを知るうちに、主人公の中で眠っていた闘争本能がたぎり、暴力によって生きる意欲に目覚めていく。だが、敵対するサポーターとの間についに争いが起きたとき、そこには繰り返されてきた悲劇が待っていた。それまで戦うこともなく逃げてきたマット。だが彼の中で何かが変わった。ラストの行動では観客はカタルシスを味わうだろう。童顔のイライジャ・ウッドは、いつまでも“フロド”のままではなかった。

映画は全編を通して男らしくハードな空気が漂っているが、監督は意外なことに女性である。サッカーは映画になりにくいスポーツと言われているが、イングランドのプレミア・リーグは英語圏のプロ・リーグのせいか、映画にはよく登場する。試合シーンも大迫力だ。ピッチの外側を描きながら極めてフィールドに近いサッカー映画で、何より切り口が新しい。

□2005年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「HOOLIGANS」
□監督:レキシー・アレキサンダー
□出演:イライジャ・ウッド、チャーリー・ハナム、クレア・フォーラニ、他

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ぼくを葬る

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◆プチレビュー◆
きりっと短い81分。ダラダラと長い映画が多い昨今、この潔さがイイ。主人公が身に付ける服がどれも何気なくしゃれている。メルヴィル・プポーはエリック・ロメール監督の「夏物語」の頃から随分大人になったことよ。

若く美しい青年カメラマンのロマンは、突然、余命3ヶ月と宣告される。家族や同性愛の恋人、友人にも言えないまま、彼は日常生活のさまざまなものをデジカメで撮影し始める。治療も拒み、悩むロマンだったが、ただ一人祖母にだけには病気のことを告げ、素直に涙を流すのだった…。

韓流でお馴染みの難病もの。若い命を奪われる悲劇は万国共通だろうが、仏映画界の若き巨匠F.オゾンが描くと、このように美しくも崇高になる。残された日々をどう過ごすか。愛するものへの別れや、提案される「生きた証」も、オゾンのテイスト満載だ。いたずらに涙を誘うことなどせず、静かに主人公のそばに寄り添いたくなる演出なのだ。

残り僅かな命であることを祖母だけに告げたとき「なぜ私に?」と問われて「おばあちゃんは僕と同じだ。もうすぐ死ぬ」と答える場面が印象深い。祖母を演じるのはジャンヌ・モロー。さすがの貫禄で、悲しみをこらえた深い表情がすばらしい。

主人公のロマンはオゾン作品好みの美青年だが、最初はかなりイヤなヤツだ。映画で一般的に描かれるゲイは心優しい場合が多いが、この人は美しくも気高い人種。そんな主人公にオゾンはまるで罰のように若くして逝く運命を与える。だがロマンが彼なりの方法で全ての人に別れを告げたとき、オゾン映画の象徴である海が彼を優しく包んでくれるのだ。タイトルは「葬(ほうむ)る」と書いて「葬(おく)る」と読ませる。ちょっと洒落ている。

□2005年 フランス映画 原題「Le temps qui reste」
□監督:フランソワ・オゾン
□出演:メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、他

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ククーシュカ

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◆プチレビュー◆
強国に支配され続けた歴史を持つフィンランドのことを知りたくなった。ロシア語のパショルティ(くそったれ)という言葉を名前と間違えてそう呼び続けるのが笑える。副題は「ラップランドの妖精」。ラップランドはサンタクロースの故郷だ。

ロシアとフィンランドが敵対関係にあった、第二次世界大戦末期。フィンランドの北部ラップランドに二人の兵士が命を落としかけてたどり着く。互いに敵同士なのだがフィンランド語とロシア語で言葉が通じない。さらに二人を助けた未亡人のアンニはサーミ語しか話せない。全く言葉が通じない3人の、ユーモラスで不思議な暮らしが始まった…。

決して声高にではないが、静かに力強く平和への願いを訴える作品だ。美しい自然描写の中、登場人物のキャラは立っているし、物語は素朴ながら鋭い。ロシア映画のこの小品は、まさに掘り出し物。タイトルのククーシュカとは、ロシア語でカッコーのこと。また狙撃兵という意味もある。

サーミ人の未亡人アンニは、大らかで官能的な不思議な魅力を持つヒロイン。彼女にとって二人の兵士は敵でも味方でもなく、ただの二人の「男」なのだ。この女性の前では争う必要など何もない。フィンランド人のヴェイッコは平和主義者で戦争などまっぴら。ロシア軍のイワンは反体制的な通信文を書いたとの濡れ衣を着せられ、軍や国家にうんざりしている。アンニは元から自然の一部のような人間だ。こんな3人が一緒に暮らすうちに連帯感が生まれるが、戦争はそれさえも打ち砕こうとする。

フィンランドといえばムーミンやサウナ。基本的に地味な印象の国だ。映画的にはやはりアキ・カウリスマキか。この頃日本にもさまざまな形でフィンランドの情報が入ってきている。後半のシャーマニズム的展開は、サーミ人独特の死生観で物語の展開としても絶妙。その儀式が終わるとき、戦争もまた終わりを告げ、感動的なラストを迎える。人間同士が言葉を越えて深いレベルで理解できることを証明する映画だ。

□2002年 ロシア映画 原題「Kukushka」
□監督:アレクサンドル・ロゴシュキン
□出演:クリスティーナ・ユーソ、ヴィッレ・ハーパサロ、ヴィクトル・ヴィチコフ、他

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デイジー

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◆プチレビュー◆
全編オランダロケの成果で、色彩の美しさは見所。だが、これが「インファナル・アフェア」のA.ラウの作品か?!ラストのアクション場面はさすがだが、切れ味はまるでない。

オランダ・アムステルダム。新進の画家であるヘヨンは、匿名でデイジーの花を贈ってくれる、まだ見ぬ人に恋していた。ある日、広場で似顔絵を描くヘヨンの前に偶然に、デイジーの花を持ったジョンウが客として現れる。彼こそ運命の人と確信するヘヨンだったが、実はジョンウはインターポールの刑事。そして彼が追う殺し屋こそ、デイジーの花の本当の贈り主パクウィだった…。

アンドリュー・ラウ監督と聞けばサスペンス・アクションを思い浮かべるが、そこはやはり韓国映画、極めてラブ・ストーリーの要素が強い作品になった。異国の地で巡り合った男女3人の運命を描くが、ロマンチックな設定をたっぷり盛り込んだ結果、切れ味は失われてしまっている。

一番の欠点はキャラが立っていないこと。特に凄腕の殺し屋であるはずのパクウィの性格付けがユルい。せっかくルックスの良いチョン・ウソンを起用するのに、なぜもっとクールに徹しないのだろうか。いくら一目惚れした女性のためとはいえ、潜伏先の田舎で橋など作っている場合か?おまけに、ずっと影から見守るはずがあっさりと姿を現してしまうとは。元気キャラが似合うチョン・ジヒョンも、こう控えめな性格では魅力は半減だ。そんな中、光るのはイ・ソンジェ。彼は善悪両方の人物を演じ分けられる性格俳優だが、劇中で心に傷を受けて悩む姿は誠実で好感が持てる。

ストーリーの展開に、オランダにロケする必要性などほとんど感じないが、スケールの大きさとゴージャス感はさすがだ。また、絵画の国オランダ独特の光が絶妙で、映像は光り輝き美しい。韓国、香港、オランダ。日本からは音楽で梅林茂が参加している。アジア映画のスケールはますます大きくなっているのだ。

□2006年 韓国映画 英語原題「DAISY」
□監督:アンドリュー・ラウ
□出演:チョン・ウソン、チョン・ジヒョン、イ・ソンジェ、他

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ダ・ヴィンチ・コード

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◆プチレビュー◆
物語の秘密はあくまで仮説。キリスト教徒には大ひんしゅくかもしれないが、神も仏もない人間にはちょっぴり楽しく興味深い、怒涛の2時間30分だ。キャスティングは好みが分かれるだろう。

ルーブル美術館で謎めいた死体が発見される。ダ・ヴィンチの素描を模した形で息絶えた館長のソニエールが残した手がかりの中に、宗教象徴学の権威でハーバード大学教授ラングドンの名前が。そのため彼は容疑者として追われることになる。暗号解読官で館長の孫娘ソフィーと共に、謎を解こうとするラングドンだったが…。

スコセッシの「最後の誘惑」やパゾリーニの「リコッタ(「ロゴパグ」)」など、教会の怒りを買った映画は数多い。時には上映禁止の処置まで取られたが、今回は禁止するにはあまりに話題性がある。いまさら待ったをかけたとて、逆に宣伝効果になってしまうだけ。原作ファンも未読の人も、今年最も気になる映画のはずだ。

謎めいた暗号で解き明かされるのは、人を殺めてまでも守る聖杯の秘密。鍵を握るのはダ・ヴィンチの「最後の晩餐」だ。ここにイエスの重大な謎が秘められている。キリスト教の闇の歴史と宗教象徴学のうんちくが多く語られるが、映画の中での説明はさわりだけ。言葉での説明を省略した分、歴史の再現場面や具体的な映像を見せて情報を提供している。活字とは違う映像の視覚的なメリットを最大限に活かしていて評価したい。また、ルーブル美術館をはじめ、本物の歴史建造物が見事。映画のもうひとつの主役と言ってもいいくらいだ。

膨大な量の原作の内容を全て語るのはもともと無理な話。その分、映画は心理描写よりスピード感で勝負した。ロン・ハワードの作品で人間描写がほとんどないのはいかがなものか?とも思うが、何しろ、主人公たちは警察と秘密結社の両方に追われながら、謎を解かねばならないのだから、ひとつひとつの余韻にひたるヒマはない。評価が分かれるであろうこの作品。まずは映画を見て自分の目で確かめてほしい。ちなみに私は、賛否両論になることがおもしろい映画の条件だと思っている。

□2005年 アメリカ映画  原題「THE DA VINCI CODE」
□監督:ロン・ハワード
□出演:トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、ポール・ベタニー、他

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ナイロビの蜂

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◆プチレビュー◆
欧米の国家や企業の腐敗など、アフリカという土地が持つ問題性が描かれ、硬派な映画の本領。レイチェル・ワイズはアカデミー助演女優賞を受賞。しかし、出番の少ない彼女の存在を際立たせたのは、レイフ・ファインズの演技力だ。

穏やかな外交官のジャスティンは、情熱的な女性テッサと恋に落ち結婚。アフリカに赴任するが、テッサは救援活動に熱心なあまり何者かに命を狙われて命を落とす。妻の死には製薬会社の陰謀がからんでいるようだった。独自に調査をはじめるジャスティンだったが…。

まずキャスティングが素晴らしい。善悪両方を演じられるレイフ・ファインズと、ハリウッド大作でもインディペンデント映画でも柔軟にその演技力と魅力を発揮するレイチェル・ワイズ。二人に共通するのは演技に品があることだ。

物語は、妻の死の真相を残された夫が探る形で進行する。生前は互いの違いを認めて距離をおいていた彼ら。だが、逝ってしまった妻テッサのことを知るほどにジャスティンは彼女に近づいていく。製薬会社がアフリカの貧しい人々を使って新薬の実験を行っていたこと、妻がそれを阻止しようとしていたこと、さらにテッサは全力でジャスティンを守ろうとしていたこと。全てがスリリングで感動的だ。そして最後にジャスティンがとる行動に気高さと強い愛情が感じられて忘れ難い余韻が残る。

フェルナンド・メイレレスはブラジル出身。雑多な人々がひしめくスラム街や乾いた台地の映像センスが独特でこれが映画の大きな魅力だ。原作は冒険小説を得意とするジョン・ル・カレ。国家の腐敗を描くため発禁本扱いだった小説の映画化を許可したケニア政府の、意外な懐の深さも付け加えたい。

□2005年 イギリス映画 原題「The Constant Gardener」
□監督:フェルナンド・メイレレス
□出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ピート・ポスルスウェイト、他

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ニュー・ワールド

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◆プチレビュー◆
しびれるほど美しい映像だけでも見る価値がある。コリン・ファレルは一見マリック映画にそぐわないように見えるが、意外にも似合っていた。

17世紀の新大陸アメリカ。イギリス人の冒険家ジョン・スミスは、ネイティブ・アメリカンの王の娘ポカホンタスと出会い、恋に落ちる。しかし、イギリス人開拓者と原住民たちの間に争いが起こり、二人は引き裂かれてしまう…。

ゆったりと流れるような音楽と神秘的に美しい映像。さらに瞑想のようなヴォイス・オーバーが静かにかぶる。心地よすぎて眠気さえ誘う映像美だが、描かれる物語は悲劇的なものだ。かつてディズニーでも描かれたポカホンタスの恋と冒険の物語とは、全く異なる映画になっている。

スミスとポカホンタスの恋は破れ、彼女はやがて英国人貴族のジョン・ロルフの穏やかな愛情を受け入れる。英国に招かれ国王に謁見するが、帰国途中で病に倒れる。自然の一部のようだったポカホンタスが、徐々に文明化する姿は、進歩というより喪失感の方が強い。のびやかに走る姿はコルセットで締め付けられた服に変わり、王に謁見する時の悲しげな表情は、全てをあきらめたかのようだ。

極端なロー・アングルでとらえた人物の向こうには、美しい樹木と木漏れ日の映像。水面を滑る船、蛇行しながら奥地へ消える川。自然は人間の行いや全ての物事を見守るように存在している。テレンス・マリックは寡作の監督だが、送り出す作品はどれも質が高い。開拓者たちは平和に暮らす原住民の穏やかな暮らしを奪った。現在のアメリカはポカホンタスの自由と命の犠牲の上に成り立っているというのがマリック監督の解釈だろう。

□2005年 アメリカ映画  原題「THE NEW WORLD」
□監督:テレンス・マリック
□出演:コリン・ファレル、クオリアンカ・キルヒャー、クリスチャン・ベール、他

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マンダレイ

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◆プチレビュー◆
ブライス・ダラス・ハワードは体当たりの演技で熱演だが、やはりニコールのカリスマ性には負けている。

ドッグヴィルの町を焼き払ったグレースは、アメリカ南部の農場マンダレイにたどり着く。そこでは70年も前に廃止されたはずの奴隷制度が残り、黒人たちは白人に支配されていた。義憤に燃えたグレースは、父の制止を振り切って農場に留まり、黒人を強引に解放して改革を始める…。

床に描かれた線と場所を表す白い文字。舞台のような設定は前作「ドッグヴィル」と同じだ。初めてこのセットを見たときの驚きはもうないが、その分これから起こる異様な出来事を予見して胸が高鳴る。前作は町の閉鎖性がテーマだが今回は人種問題。だが、そこは鬼才トリアー監督。ただの人種差別ではなく、裏側に強烈な毒を塗る。

正義に燃えて一方的に他人の土地に居座り、改革を始める若く美しいグレース。彼女は自分の行いを善だと信じて疑わない。この姿を見て、誰もがアメリカとブッシュ政権を思い浮かべるだろう。「ドッグヴィル」に比べてより強くはっきりと米国の国際政治を批判する演出だ。マンダレイの秘密が明らかになったとき、一人よがりの善行は完膚なきまでに叩き潰される。

理想主義という名の一方的な力の行使。ラース・フォン・トリアー監督は偽善に対して、徹底的に反旗を掲げた。決して心地良さが残る映画とは言えないが、この人の作品には抗しがたい魅力がある。それは確固たる自分の映画スタイルを持つ自信からくるメッセージ性だ。最終章「ワシントン」が実に楽しみになった。

□2005年 デンマーク映画  原題「MANDERLAY」
□監督:ラース・フォン・トリアー
□出演:ブライス・ダラス・ハワード、ウィレム・デフォー、ローレン・バコール、他

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プロデューサーズ

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◆プチレビュー◆
コケる芝居を目指しても、やっぱり芝居に命を懸けてしまうのがショービズの人々。まったくヤクザな商売だ。オリジナルの監督メル・ブルックスが最後にチラリと登場。エンディングまで大笑い。

落ち目のプロデューサーのマックスはお人好しの会計士レオの「時にはショーが失敗した方が儲かる場合がある」とのひと言に目を輝かせる。出資者からかき集めた資金はショーがコケれば配当金を払わずにすむという抜け道だ。かくして、コケる芝居を実現すべく、最低の脚本と演出家、最低の役者探しが始まった…。

ミュージカルに再び光が当たりはじめたのは「ムーラン・ルージュ」あたりからか。「シカゴ」のオスカー受賞がとどめだが、ハリウッドのスターたちが、実は歌や踊りがすこぶる上手いことが分かったことの方が、日本の映画ファンには驚きだった。本作は、もともと映画で、それがブロードウェーに渡り、さらにミュージカル映画となった経緯がある。ほとんどが舞台版の役者で、驚くほど芸達者だ。

自分の懐を潤すため、最初からコケる芝居を打つなど不謹慎の極み。だが映画はそれをゴージャスな歌と踊りで笑いとばす。演目はナチ礼賛の「春の日のヒットラー」だが、この劇中劇が最高に楽しい。出来ることなら全編通して見たいくらいだ。芝居はヒットラーをゲイ風に演じたことがウケてしまい、なんと大ヒットになってしまう。

映画版から加わったのは、頭がカラッポのブロンド美女役のユマ・サーマンと、ヒットラーを熱愛するアブナイ脚本家役のウィル・フェレル。二人ともとことん笑わせてくれる。ミュージカルが苦手という人は多いものだが、この作品は、あくまで上質のコメディ映画。見逃すとちょっと損だ。

□2005年 アメリカ映画  原題「The Producers」
□監督:ス−ザン・ストローマン
□出演:ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユマ・サーマン、他

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