映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「あさひなぐ」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「プラネタリウム」「ユリゴコロ」etc.

映画レビュー2005

そして、ひと粒のひかり

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◆プチレビュー◆
生活のためとはいえ、安易に麻薬に走る姿は激しく苛立ちを誘う。南米諸国は生活の末端まで米国の支配を受ける。だが、その米国に入り込みたくましく生き抜くのもまた巧妙な支配なのだ。

田舎町での貧困と閉塞感に苦しみ、さらに望まない妊娠が発覚してから、衝動的に麻薬の運び屋となった17歳のマリア。麻薬を胃の中に飲み込んで密輸する、極めて危険なこの仕事は、ドラッグ・ミュールと呼ばれていた。5000ドルという想像もつかない大金を提示され、ついに彼女は62粒の麻薬を飲み込んでNY行の飛行機に乗るが…。

麻薬を扱った映画というので、重苦しい社会派ドラマを予想していたが、この作品は少し違う。確かにコロンビアの麻薬問題は日本とは比べ物にならないほど深刻で、危険なものだ。だが物語は一人の少女の心の成長に重点を置いて進んでいく。大人でも子供でもない17歳という微妙な年齢の女性の物語は、普遍的なもので、日本人でもきっと共感する部分があるはずだ。

なんとか無事に税関を通過しNYへたどり着いた彼女だったが恐ろしい出来事を目の当たりにして、麻薬を持ったまま逃げ出してしまう。このあたりはサスペンス風に展開するが、ハリウッド映画のようにアクション寄りの展開には決してならない。言葉も通じぬ異国の地で、わずかなつてだけを頼りに奔走するマリアの姿。ここに見える明確な「生きる意思」。主人公の内面は、ここから変わっていく。

ヒロインのマリアを演じるカタリーナ・サンディノ・モレノは、本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされた。見れば納得の名演技で、将来が期待される逸材だと確信する。特に、ラストの表情は印象的で忘れられない。セリフはなくとも表情だけでマリアが希望を胸に人生の再出発を歩むことが伝わってくる。体内に宿った小さな命の尊さに気付いたとき、まさに彼女は21世紀のマリアになった。

□2004年 コロンビア・アメリカ合作映画 原題「MARIA FULL OF GRACE」
□監督:ジョシュア・マーストン
□出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ヴェガ、オーランド・トーボン、他

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SAYURI

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◆プチレビュー◆
ニッポン勘違いムービーを最も楽しめるのは他ならぬ日本人だ。映画を見終わったら、とことんツッコミを入れて遊ぼう。ちなみに原作は10年以上かけて日本の歴史と花柳界を取材した本格的な小説とのこと。

貧しさゆえに置屋に売られた少女千代は、ある日、優しく声をかけてくれた紳士“会長”に恋をする。彼に会いたい気持ちだけを胸に、一流の芸者“さゆり”になった彼女は、再び会長と再会するが、彼女を待つのは過酷な運命と時代の荒波だった…。

この映画を見るときの心得はただひとつ。本当の日本を忘れてしまうことだ。そうすれば、最高にゴージャスでエキゾチックなハリウッド製エンタメ映画を満喫できる。どこか中国と混同した風景描写、箱庭のように美しい日本の花柳界、確信犯的に誤って描く時代考証。数々のおかしな描写を気力で乗り越えて、私はたっぷり楽しんだ。これはハリウッドが思い描く理想の日本の姿だと思っていい。

もっとも、主人公の人物描写がおそまつなのはいただけない。血のにじむ“努力型”でもなく、天賦の才の“天才型”でもないさゆり。たまに小じゃれた会話はするものの、伝説の芸者になるプロセスに説得力がないのが、映画としては致命的だ。彼女の武器は、チョイと可愛いルックスと、強運だけ。激動の半生を描く物語のヒロインとしては少々パンチ不足ではなかろうか。

さゆりのインパクトは乏しいが、その分、彼女をイビる初桃やさゆりを仕込む豆葉などは魅力的。中国映画界の華とも言えるベテラン女優陣はさすがの美しさだ。ご都合主義の展開や、とってつけたようなハッピーエンドには、もはや私は驚かない。この映画から受け取るべき本当のメッセージは、日本の映画界にハリウッド映画の主役をはれる女優がいないという情けない事実を知ることなのだ。猛省すべきである。

□2005年 アメリカ映画 原題「SAYURI」
□監督:ロブ・マーシャル
□出演:チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、他

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Mr.&Mrs.スミス

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◆プチレビュー◆
ブラピとアンジーの公私混同演技もまた楽し。こんなに激しい銃撃戦なのに、ご近所は平気なのか?!…と、こういうヤボなことを言うヤツには、お気楽娯楽映画を見る資格はない。

ジョンとジェーンは運命的な出会いを経て電撃結婚。幸せな夫婦生活だが、最近ちょっぴり倦怠期。二人は表面は普通の生活をしているが、実はお互いに裏の顔を隠していて、二人とも凄腕の殺し屋なのだ。だが、そんなスゴい秘密を隠しとおせるわけはない…。

スターがスターらしい役柄を演じ、観客はそれを思う存分楽しむ。ハリウッドに昔から存在する映画のスタイルで本作はまさにそれ。いちいち派手に格好をつけながら、お約束のハッピーエンドへと強引になだれ込む。小難しい映画評論家からは鼻で笑われても大衆はこんな作品が大好きだ。そして映画は大衆のためにある。

小さなヒネリはあるものの、ストーリーはいたって単純明快だ。最初と最後をカウンセリング場面にしたのが上手い。観客は主演二人から秘密を打ち明けられているように感じて、ワクワクするだろう。お互いの正体を知った殺し屋は相手を消さねばならないが、この闘いを夫婦喧嘩の拡大版と解釈しているところがおもしろい。

殴り合い、銃撃、爆発、カーチェイスと何でもありだが、基本は強気のジェーンとひょうひょうとしたジョンのかけあいのおもしろさ。表面はアクション映画だが、中身はロマンチック・ラブコメディなのだ。それをブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーという美男美女が演じるのだから、おもしろくないわけがない。

□2005年 アメリカ映画 原題「Mr.& Mrs. Smith」
□監督:ダグ・リーマン
□出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ビンス・ボーン、他

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ハリー・ポッターと炎のゴブレット

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◆プチレビュー◆
おしゃれなフランスチーム、マッチョなブルガリアチームなど、キャラの設定もメリハリがあって楽しい。今回の目玉はもしやハリーの入浴シーン?!マートルに迫られアセる姿はファンには必見だ。

ハリー・ポッターは魔法学校の4年生に。今年は100年ぶりに三大魔法学校対抗試合が行われる。それに伴い、学校の代表選手を選ぶが、立候補した覚えのないハリーの名前がそこにあった。親友ロンとも気まずくなったハリーだったが…。

このシリーズは回を重ねるごとに暗くなる。本作は初めて英国人監督を起用し、全編にイギリスらしさを漂わせ、まるでゴシック・ホラーのようだ。冒頭から大迫力のクィディッチW杯の華麗な映像で魅了し、舞踏会では正装姿を見せるハリー達。そして邪悪な“闇の帝王”が遂に登場する。見せ場の連続で2時間37分はあっという間だ。

第4作は魔法版の青春映画といっていい趣。ハリー、ハーマイオニー、ロンは皆、お年頃で、それぞれの淡い恋が微笑ましい。しかも、恋の行方は結構ややこしいのだ。その分、対抗試合に出場する新キャラの描き方はあっさりとしたものになっていて、もっと活躍してほしいところだが、長尺のシリーズではそうもいかない。

炎のゴブレットに導かれたハリーの運命は、遂に邪悪なヴォルデモート卿の復活へとたどり着く。終盤の展開は極めて悲劇的だ。素晴らしい映像も手伝って映画はいよいよ子供より大人のものへとダークに変貌していく。ハリー・ポッターは、もはや子供ではいられないのだ。

□2005年 アメリカ映画 原題「Harry Potter and the Goblet of Fire」
□監督:マイク・ニューウェル
□出演:ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、レイフ・ファインズ、他

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銀河ヒッチハイク・ガイド

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◆プチレビュー◆
名作へのオマージュがたっぷりで、映画好きにはたまらないだろう。「さようなら、今までたくさんのお魚をありがとう」。あぁ、冒頭のイルカの歌が耳にこびりついて離れない…。

太陽系の銀河バイパス建設のため、障害となる地球は、あっさりと爆破されて跡形もなくなる。ひょんなことから地球人最後の生き残りになってしまった平凡な英国青年アーサーは、15年来の友人だが実は異星人だったフォードとともに、大ベストセラーの「銀河ヒッチハイク・ガイド」を片手に広大な宇宙へと冒険の旅に出る…。

アメリカ映画ではあるが、テイストは完全にイギリスのそれだ。皮肉なユーモアと風刺に富んだ内容は、幻のSF小説と呼ばれた同名小説の映画化。全編、ナンセンスな設定だが、不思議と哲学的な内容にも思える。

常識では考えられないキャラクターは、銀河系で最も無責任な大統領や、うつ病を患うロボット、限りなくお役所的で融通が利かないヴォゴン星人など、数え切れない。昔、ロンドンのパーティで知り合ったもののフラれてしまった美女トリシアまで加わって、謎に満ちた「42」の真実を求めて波瀾万丈の旅が続く。

主役級の俳優は、ほとんど無名なのに、脇役はアラン・リックマンやジョン・マルコビッチなど超豪華。全世界が長年の悲願であった小説の映画化だけに、すみずみまで気合が入っている。ものすごく才能がある人たちが、超バカバカしいことに、大真面目に取り組むと、こんな愉快な映画が出来るのだ。大作ぞろいの2005年のSF映画群の中で、ひときわ輝いている1本だと思う。

□2005年 アメリカ映画 原題「THE HITCHHIKER'S GUIDE TO THE GALAXY」
□監督:ガーズ・ジェニングス
□出演:サム・ロックウェル、モス・デフ、ズーイー・デシャネル、他

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エリザベスタウン

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◆プチレビュー◆
キルスティン・ダンストは目つきが悪く可愛くない女優だが、おせっかいで変わり者のこの役では、とても魅力的。ただ、業務そっちのけで特定の客の世話をやくスチュワーデスというのは、いかがなものか?!

靴デザイナーのドリューは開発プロジェクトに失敗。想像もできない額の負債の責任をとらされ会社を解雇されてしまう。恋人にも去られ、さらに追い討ちをかけるような父の死の知らせ。自殺も覚悟の失意の彼は、小さな田舎町である故郷エリザベスタウンに向かう。そこで彼が出会ったものは…。

キャメロン・クロウ監督の映画は、いつだって音楽センスが抜群だ。それは彼自身が音楽評論家出身であることとも関係するが、何よりも映像に対する美意識が鋭いのだと思う。みずみずしい感覚は彼の最大の持ち味で、本作でも十分に生かされている。

大仰な役が多かったオーランド・ブルームを、挫折して落ち込んだ現代青年として再構築。本作で、この俳優の資質の素晴らしさが見えるはずだ。天然ボケのコメディセンスさえ感じるのは、独特の雰囲気を持つキルスティン・ダンストとの掛け合いの演技で生まれた魅力だと思う。

都会で生活に疲れ、田舎街の故郷で再生する物語は珍しくないし、展開も少々甘いのだが、その語り口が新しい。この映画は一種のロード・ムービーだが、旅が始まるのはラスト30分からという異例のスタイル。だがその旅はすこぶる内容が濃く、素晴らしくも忘れられないものなのだ。

□2005年 アメリカ映画 原題「ELIZABETH TOWN」
□監督:キャメロン・クロウ
□出演:オーランド・ブルーム、キルスティン・ダンスト、スーザン・サランドン、他

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ブラザーズ・グリム

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◆プチレビュー◆
ファンタジーとは本来おぞましいものを内包するものなのだと納得。「赤ずきん」や「白雪姫」などのおなじみのお話がブラックに散りばめられているのがグッドだ。

19世紀、フランス占領下のドイツ。インチキ魔物退治のからくりを見抜かれたグリム兄弟は、代償として森で起きた少女失踪事件の調査を命じられる。イカサマの魔物で賞金を稼ぎ世間を欺いてきた彼らは、本物の怪奇現象に遭遇することになるが…。

何しろ「出来上がった」作品を見せてもらえるだけでも感激だ。テリー・ギリアム監督は「ロスト・イン・ラマンチャ」で映画作りの地獄を味わい、それでも懲りずに映画を作ってくれる。今回は、童話で有名なグリム兄弟が実はペテン師だったという、いかにも彼らしい設定の物語だ。

インチキで魔物を演出していた彼らが本物の「恐ろしいもの」に出会い狼狽するが、その怪現象がどれも素晴らしい。移動しながら人を襲う森の木、実の娘より自分の欲望に忠実な父親はいまは狼の姿。極めつけは500歳の鏡の女王。世界一の美女といっても過言ではないM.ベルッチが、美と醜を使いわけて怪演する様子は必見だ。

幼児期のトラウマから屈折したグリム兄弟は森の魔力に打ち勝つことが出来るのか?現実主義の兄役のマット・デイモンと夢見がちな弟役のヒース・レジャー。本来なら逆の配役が普通だが、あえてミス・キャストにするところがギリアム流。このダーク・ファンタジー、私は大いに楽しんだ。

□2005年 アメリカ映画 原題「The Brothers Grimm」
□監督:テリー・ギリアム
□出演:マット・デイモン、ヒース・レジャー、モニカ・ベルッチ、他

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ヘイフラワーとキルトシュー

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◆プチレビュー◆
かわいい作品だが、世界中の映画祭で山ほど賞をとっているからすごい。パン生地セラピーの場面が最高。

パパはじゃがいもの研究、ママは家事が全くダメ、5歳の妹キルトシューは超ワガママ。こんな一家の中で7歳になるヘイフラワーはただひとりのしっかりものだ。変人のご近所さんとのつきあいも含めて、彼女の負担は大きい。ヘイフラワーは近づいた自分の小学校入学にそなえてなんとか家族をまとめようとするが…。

常識とは無縁の家族をまとめる唯一の“常識人”ヘイフラワーが、我慢の限界を超えた時、彼女のストライキがはじまる。いい子の彼女の反抗スタイルは、全く口をきかず、自分勝手な行動に出ることだ。ヨーロッパらしいのは、親と子どもがある程度、距離を置いて生活していること。子どもに全てを捧げる日本の親とは違って、自分中心の大人たちが笑える。

北欧は児童文学の宝庫だけあって、子どもを描かせると実に上手い。原作の童話は全10巻からなる超人気シリーズで、ノポラ姉妹によるもの。原作者、監督、主人公と全て女性の感性が息づく作品となっている。耳慣れない不思議な響きのフィンランド語が音楽のようだ。

風変わりな大人たちのキャラも楽しいが、衣装や家具など、小道具が最高にポップで可愛い。さらに、おおらかで美しい自然に癒される。日本人にはなじみが薄いフィンランドだが、ムーミンの国といえばピンときた。カウリスマキだけじゃない。なかなか魅力的な国ではないか。

□2002年 フィンランド映画 原題「Hayflower and Quiltshoe」
□監督:カイサ・ラスティモ
□出演:カトリーナ・タヴィ、ティルダ・キアンレト、アンティ・ヴィルマヴィルタ、他

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ライフ・イズ・ミラクル

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◆プチレビュー◆
クストリッツアの不思議ワールドに突入したら、154分の長さは感じない。サッカー場のエピソードがかなり笑える。音楽はノースモーキング・オーケストラ。

1992年のボスニア。ルカは国境近くの片田舎に住む鉄道技師だ。妻と息子と3人で暮らすのんびりした村での生活が大いに気に入っている。しかしそんなのどかな村にも内戦の嵐がやってきた。息子は戦争に駆り出され、妻は突然、男と家出。ルカは取り残されながらも、どこか開放感を味わう。そんな中、ムスリム人の看護婦のサバーハが捕虜として村にやってきた…。

多くの犠牲を生んだユーゴの激しい内戦も、最初はただのケンカ騒ぎのように思われていたのだろうか。だが、その後の悲劇は世界中が知っている。ムスリム人のサバーハは、戦争で敵の捕虜となったルカの息子と交換する、価値ある人質だ。彼女とルカはやがて恋に落ちるが、愛する女性か、愛する息子かの選択はあまりに酷だ。実際にセルビア人男性の身に起きた、同様の話があるというから、笑えない話である。

まるで二人の守り神のように、多くの動物たちが登場する。家の中で入浴中の熊。ケンカ友達の犬と猫。悲運に見舞われるニワトリ。中でも重要な役目を果たすのは、失恋して絶望しているロバだ。このロバの起こす行動が、ラストに奇跡を生む。

悲しくて、可笑しくて、現実的だが、おどぎ話のような映画。クストリッツアの作品は、常に不思議なおおらかさに満ちている。希望こそ、彼の作り出すミラクルだろうか。ボスニア紛争の地で生まれた彼だからこそ作れる、愛の奇跡の物語だ。

□2004年 フランス・セルビア=モンテネグロ合作映画 英語原題「Life is a miracle」
□監督:エミール・クストリッツア
□出演:スラブコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック、ヴェスナ・トリヴァリッチ、他

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亀も空を飛ぶ

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◆プチレビュー◆
悲惨な中にもうっすらと漂うユーモアがこの監督の作品の魅力。怪しげな英語で大人たちからも頼りにされる主人公が、適当に訳すニュースが笑える。

2003年。イラク北部のクルディスタン村に住む孤児のサテライトは、村の子供たちを集めてアルバイトの元締めをやっている。ある日、村に、赤ん坊を連れた少女アグリンが、両腕がない兄ヘンゴウとともにやってくる。サテライトは彼女に一目惚れするが、アグリンは心を閉ざしていた…。

腕や足のない子供、目が見えない子供がなんと大勢登場するのか。これがイラン・イラク国境地域の真実の姿なのだ。なぜなら、主人公サテライトと仲間たちのアルバイトとは、村に埋められた地雷を除去して売るという極めて危険なもの。アメリカびいきの彼は米国製の地雷にこだわっているが、そんな問題ではないだろうといいたくなる。だが、命がけの作業で得る僅かな代金は、彼等の貴重な現金収入なのだ。

村にやってきた難民兄妹に惹かれるサテライト。兄には予知能力があるという設定がマジカルだが、中東には「孤児は預言者だ」という考え方があるらしい。しかし、彼の見る未来は、あまりにもつらいものばかりだ。どうしても超えられない悲しみを経験してしまった難民兄妹の姿が、目にやきついて離れない。

汚れた文化といいつつ情報は米国に頼るしかない。さらに、戦争を終わらせるためには大国の力が頼りだが、米国の介入に希望がないことも、彼らは知っている。まさに悲劇だ。自身もクルド人であるゴバディ監督は、いつも弱者に視線を向けて映画を作る。戦争の被害者はいつだって子供たち。それでもくったくなく、たくましさを感じる彼らの姿が、物語の唯一の希望だ。

□2004年 イラン・イラク合作映画 英語原題「Turtles can fly」
□監督:バフマン・ゴバディ
□出演:ソラン・エブラヒム、ヒラシュ・ファシル・ラーマン、アワズ・ラティフ、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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