プチレビュー2008上旬
2008年06月29日
歩いても 歩いても
ディテールの丁寧さが光る秀作ホームドラマ。長男の命日に集まった家族の一日を描く物語だ。食事、お墓参り、昔話と、特別なことは何もないが、それぞれの心のわだかまりを絶妙な会話で描く。特にどっしりと存在する母親役の樹木希林の、辛らつでユーモラスな演技が秀逸。コンプレックスとプライドが混じる主人公役の阿部寛も好演だ。反目も愛情もすべて含め、家族の歴史は重ねられる。本音を語るときに多用する横顔のショットが印象的だ。【75点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)ユーモア度:★★★★
(日本/是枝裕和監督/阿部寛、夏川結衣、YOU、他)
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2008年06月26日
ブレス
キム・ギドクの才能はいつも観客の既成概念を超えた次元に存在する。自殺を繰り返す死刑囚と絶望した主婦が出会う物語だ。奇妙な愛の形を表すのは、極彩色の映像とフルコーラスで歌う四季の歌。セリフのない難役を演じるチャン・チェンの、生と死の間で狂っていく演技が見所だ。監督自らが神の視点のような役割で出演するのも興味深い。悲しみを抱えて終る悲劇だがギドク・ワールドを満喫できる。ありえない展開も含めて濃密な84分だ。【65点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)唐突感度:★★★★
(原題「BREATH」)
(韓国/キム・ギドク監督/チャン・チェン、パク・チア、ハ・ジョンウ、他)
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2008年06月25日
譜めくりの女
女二人の心理サスペンスだが、仕掛けられた罠はあまりに残酷だ。音楽への夢を断たれたメラニーは、復讐のため高名なピアニストのアリアーヌに近づく。復讐といっても心理的に追い詰めるもの。ヒロインの音楽への思いが何もないので単なる逆恨みに見えなくもないが、静かなたたずまいが、幼い頃に受けた傷の深さを際立たせる。親しみやすくコミカルな演技が持ち味のフロが、珍しくシリアスで情緒不安定な役。この女優は本当に上手い。【60点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)初志貫徹度:★★★★
(原題「LA TOURNEUSE DE PAGES」)
(フランス/ドゥニ・デルクール監督/カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ、パスカル・グレゴリー、他)
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2008年06月24日
シークレット・サンシャイン
しばらく政界に身を置いた名匠イ・チャンドンの新作の主人公は、シングルマザーと不器用な中年男だ。愛する息子を殺害された女性シネが魂の救済を求めてもがく姿を乾いたタッチで描く。見知らぬ土地で懸命に生きる女性の脆さ、理不尽な悲劇、宗教考察と、見所は多い。女が自ら髪を切るのは再生の証。その意味で、一度は心の均衡を失ったシネの最後の姿は、それでも生きていくという決心と希望だ。ドヨン、ガンホ共に名演で見事。【70点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)不条理度:★★★★
(原題「SECRET SUNSHINE」)
(韓国/イ・チャンドン監督/チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、ソン・ジョンヨプ、他)
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2008年06月23日
奇跡のシンフォニー
ピュアな少年を演じさせればピカいちのフレディ・ハイモアの今回の役は、ひたむきな孤児。天賦の音楽の才能を持つ少年エヴァンが、離れ離れになった両親と、音楽を通して奇跡の再会をはたす物語だ。あまりにも偶然に頼りすぎるストーリーはおとぎ話のようで現実味に欠け、感情移入できないのだが、音楽の素晴らしさが欠点をカバーする。特にエヴァンがギターの弦を叩きつけるようにして演奏する場面は、物語のスパイスのように効いていた。【60点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)音楽のバラエティ度:★★★★★
(原題「August Rush」)
(アメリカ/カーステン・シェリダン監督/フレディ・ハイモア、テレンス・ハワード、ロビン・ウィリアムズ、他)
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2008年06月22日
西の魔女が死んだ
おばあちゃんの知恵袋という言葉が浮かぶ優しい映画だ。“西の魔女”と呼ぶ英国人の祖母と、不登校になった少女が過ごしたひと夏の思い出を描く。魔女の力とは、何でも自分で考えて自分で決めること。少女の変化が綺麗事に見えなくもないが、それでも作品に好感が持てるのは、サチ・パーカーの透明感のある演技のおかげだろうか。働いて、食べて、自然に感謝し、ぐっすり眠る。現代ではこんな暮らしこそファンタジーかもしれない。【65点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)ロハス度:★★★★★
(日本/長崎俊一監督/サチ・パーカー、高橋真悠、りょう、他)
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2008年06月20日
春よこい
2008年06月19日
1978年、冬。
まるで冬枯れの風景画のような映画である。だがそこににじむ悲しみこそが中国現代史の記憶だ。文革が終わりを告げた1978年、中国の田舎町で出会った、都会から来た少女と地元の青年の淡い恋を、青年の幼い弟の目を通して描く物語。クローズアップをいっさい使わず、セリフも最小限。登場人物は皆、深い孤独を抱えているが、それがそのまま負のテイストにならないところがこの映画の個性だ。控えめに使われた音楽が効いている。【65点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)閉塞感度:★★★★
(原題「西干道」英語原題「The Western Trunk Line」)
(中国・日本/リー・チーシアン監督/チャン・トンファン、リー・チエ、シェン・チアニー、他)
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2008年06月18日
REC/レック
流行のボイント・オブ・ビュー(主観撮影)の作品だが、プロのTVクルーを役柄に設定したせいかむやみに画像がブレないのがありがたい。アパートで起こる謎の惨劇を描くパニック映画だ。密室の恐怖、スプラッタ描写、恐怖の伝染病の意外な正体と、低予算映画ならではの創意工夫に満ちている。音楽を排除したことや、スター俳優がいないこともリアルに作用した。噛み付いたり、食いちぎったりとエグい残酷描写が多いので苦手な人は要注意だ。【65点】
(シネマッシモ評価:★5つが満点)流血度:★★★★★
(原題「REC」)
(スペイン/ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ監督/マニュエラ・ヴェラスコ、フェラン・テラッツァ、 ホルヘ・ヤマン、他)
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2008年06月17日


国際派女優の工藤夕貴主演の小品は佐賀の漁村が舞台。指名手配のポスターに写る父の写真を見つめる少年の姿を、新聞記者が“感動記事”にしたことから激変する一家の物語だ。田舎町ゆえの人情と偏見が親子を追いつめるが、同時に突破口にもなる。懸命に生きる親子の愛は心温まるものの、物語は古臭く、彼らを助ける周囲の人間の描写も中途半端。ただ、報道による暴力というマスコミ批判を含むなど、意外な鋭さがあった。
飛び込み競技を描いた青春映画だが、腹筋が割れるほど練習したという若手俳優たちの頑張りに注目したい。3人の飛び込み選手がクラブ存続のために五輪代表を目指す物語だ。池松壮亮がクールな少年を演じ、林遣都が明朗な天才を演じる意外性が見所。物語は3人を同等に描くため、やや散漫になってしまったのが惜しい。ダイビングを称して「個人競技は勝つたびに一人になる」と孤独感を表したのが、逆に友情の大切さを感じさせる。
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