映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

映画レビュー2010

映画レビュー「トロン:レガシー」

トロン:レガシー 3Dスーパー・セット [Blu-ray]トロン:レガシー 3Dスーパー・セット [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
シンプルなストーリーを革新的な映像世界が支えるSF超大作。新旧ブリッジスの共演が魅力的だ。 【75点】

 デジタル業界のカリスマ、ケヴィン・フリンの謎の失踪から20年。27歳になった息子のサムは、父からのメッセージを突如受け取る。父の消息を追って迷いこんだそこは、あまりに危険なコンピューターの世界だった…。

 1982年の「トロン」は、本格的にCGを駆使した世界初の作品として名をはせている。今見ると、どこかノスタルジックな香りがするが、コンピューターのシステムの中に放り込まれて、プログラムたちと戦うという世界観は、斬新だった。今やオスカー俳優のジェフ・ブリッジスのやんちゃな姿を拝めるので、本作鑑賞前に予習しておくとより楽しめるが、物語は続編といっても、まったく別物。前作のラストでプログラムの権利を自分のものにし、巨大企業エンコム社のCEOになったケビン・フリン。彼の息子サムが父を追って再びコンピューターの世界に迷い込む。そこは前作とは比べ物にならないくらい、美しく危険な場所だ。サムを待つのは衝撃的な事実だが、そこは現代っ子、あっさりとトロン・シティになじんでしまい、あっという間にバトル開始となる。

 映画ではテクノロジーの暴走はしばしば描かれる素材だが、本作ではプログラムが人間に対して反乱を起こすというからただ事ではない。父ケビンは自分が作ったコンピューター世界の理想郷に、これまた自分が作ったプログラムのクルーによって閉じ込められ、現実世界に戻れなくなっている。完璧を求める独裁者クルーは不完全なものの存在を許さず、トロン・シティと呼ばれる暗黒世界でプログラム同士の死闘ゲームを強いる。本作の一番のウリは、このトロン・シティの風景だ。どこまでも続くグリッドの地平、青とオレンジ、そして黒で統一されたサイケデリックな空間、猛スピードで疾走するバイク“ライト・サイクル”を駆り、持ち主の情報が詰まったディスクを武器にして闘えば、敗者プログラムは、キューブ状の粉末になって木端微塵に砕け散る。なるほど3D超大作と言うだけあって、すべてのデザインがクールで美しい。

 まばゆい蛍光色のバリアが立体的に迫ってくる迫力の映像に目を奪われるが、物語の軸は、米映画が昔から得意とする定番のストーリー、父と子の和解の物語だ。父に捨てられたと思いこんでいたサムが、父が創造したデジタル世界で奇跡的な再会を果たすことで、理解し合っていく。映像の革新性とは対照的に、ストーリーは普遍的で、ディズニーらしい安全性を感じるものだ。物語に驚きはないし、デジタル世界の成り立ちについては、バッサリと省力するなど不満な点はあるのだが、だからこそ集中して革新的ビジュアルを楽しめる。

 完璧な世界を求めるクルーと、不完全なものが存在する世界こそが理想と気付いたケビン。ブリッジスがケビンとクルーの二役を演じるが、クルーは20年前のブリッジスの姿だ。若き日のブリッジスが現在の彼と違和感なく“共演”することこそが、本作の映像の本当の革新性だ。現実世界に戻るポータル(出入り口)へと向かう父子に勝機はあるのか。サムを助ける謎の美女クオラの正体とは。さらにクルーと並ぶ重要なプログラム、トロンはどんな形で登場するのか。ラストには、クオラが渇望した“太陽の光”が優しく降り注ぐ。どれほど完璧でもデジタル・ワールドには太陽はない。慈愛に満ちた太陽が輝くのは、不完全でも愛すべきリアル・ワールドのみ。犠牲を払っても戻らねばならない場所なのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★★

□2010年 米映画 原題「TRON LEGACY」
□監督:ジョセフ・コシンスキー
□出演:ギャレット・ヘドランド、ジェフ・ブリッジス、オリヴィア・ワイルド、他

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映画レビュー「ロビン・フッド」

ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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映画レビュー「武士の家計簿」

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◆プチレビュー◆
下級武士がそろばんで守ったのは家族の絆。古文書のデータから物語を創造するセンスが見事だ。 【75点】

 猪山家八代目・直之は、加賀藩の財政に携る御算用者。同僚から“そろばんバカ”と揶揄されるほどの男だ。直之は一家の借金が膨らんでいることに気付くと、家財道具を売り払い、詳細な家計簿をつけ、家計を立て直そうとする…。

 かつて秀作「家族ゲーム」で現代日本の中流家庭を鋭い視点から描いてみせた森田芳光監督。この人にとって家族とは、つきせぬ魅力のテーマのようだ。本作の原作は、偶然発見された古文書「金沢藩士猪山家文書」の中に残っていた家計簿を、綿密に分析してまとめあげた研修書で、歴史学者の磯田道史のベストセラー『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』。データベースのような学術書から、その行間を読み、ハートウォーミングなストーリーをつむいでみせたアイデアと力量に感服する。

 まず主人公の下級武士・猪山直之の“武器”が、刀ではなく算盤(そろばん)というのがいい。激動の時代・幕末を、会計能力で生き抜く彼は、現代のサラリーマンのよう。ただし、この男、凡百の事務方ではない。彼には、見栄や世間体を重んじる武家社会にあって、どんなにみっともないマネをしてでも、絶対に家族を守り抜くとの決意があった。幸いにも、一芸に秀でたことが、藩の時流と時代の流れに合致。結果的に直之の正直な生き方が、猪山家存続への扉を開く。地味で堅実、そして真摯な生き方が報われる物語に、希望の光を見出す観客は、きっと多いだろう。

 印象的なエピソードは数多いが、直之が、息子の着袴の祝いに、高価な祝い鯛が買えず“絵鯛”で代用する、切実かつユーモラスな場面が、やはり秀逸。それから直之が妻のお駒にプレゼントした櫛(くし)のエピソードも忘れ難い。直之同様、お駒も質素倹約を貧乏ではなく工夫ととらえて楽しむ賢妻だった。幼い息子が絵鯛を「鯛じゃ、鯛じゃ」と無邪気に喜ぶ姿と、それを見守る一家の不思議な幸福感。これだけで、猪山家がいかにポジティブかが分かる。

 借金を返し、倹約し、実直に生きる直之が、幼い息子に徹底的に算術をたき込むのは、それこそが自分たち家族が生き抜く唯一の武器だと信じたからだ。御算用者とは、いわば経理担当の事務職。そこには世間一般の考える武士道の凛々しさはないが、自分の仕事と能力に確固たるプライドを持つ主人公の姿は、不安な時代を生きる現代人に訴えかける強い同時代性がある。そろばん侍・直之は、いかなる時でも家計簿をつける姿を息子に見せることで、確かな芸があればどんな時代も家族を守って生き抜くことができると教えたのだ。

 チャンバラだけが時代劇ではない。物語だけが原作ではない。刀だけが武器ではない。この映画は、固定概念を崩し、物事を違う角度から見直すことで、活路を見出すチャンスがあることを示してくれる。直之の息子・直吉が新時代の明治をどう生きたか。それを知れば、家芸を守りながらしっかりと現実を見据えることの大切さが理解できる。そろばん侍の生き方が、私たちにこんなにもたくさんの生きるヒントをくれるとは。主演の堺雅人をはじめ、出演する俳優たちが皆、絶妙な演技で素晴らしい。何より、監督の森田芳光の的確な演出手腕が光った。このタイムカプセルの中には、家族愛があふれている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)家族愛度:★★★★★

□2010年 日本映画 原題「武士の家計簿」
□監督:森田芳光
□出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、他

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映画レビュー「デイブレイカー」

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◆プチレビュー◆
スタイリッシュなバンパイア映画で、クールな映像が魅力的。現代社会を照射する内容は考えさせられる。 【70点】

 2019年、バンパイアが地球上の大多数を占めるようになった世界。そこでは、人間は血液を供給する食料として飼われていたが、圧倒的に数が足りず絶滅寸前だった。血液学者のエドワードは、代用血液の研究を続けながら、なんとか人間を救おうと考えていたが…。

 バンパイアものとSFという組合せの妙が、この映画最大の勝因だ。本来はホラー映画の枠にいて、恐れられ、孤独な存在であるべきマイノリティのバンパイアが、近未来ではマジョリティとなり、自分たちに適した社会を構築して暮らしている。昼夜逆転の構図といい、人間とのパワー・バランスといい、バンパイアの暮らしぶりのディテールが興味深い。うすら寒い平穏が、今までにないバンパイア映画としてこの作品をユニークなものにしている。

 物語の個性はそれだけではない。食料不足によりバンパイアの世界にも格差が生まれ、血液が欠乏すると“サブサイダー”という凶暴なモンスターへと変貌してしまうという緊張感のある設定が上手い。しかも、主人公エドワードは、元バンパイアの人間という例外種のコーマックに出会い、人間に戻ることが治療と気付くことから、話は意外な方向へと転がっていく。その間に、アクションあり、スプラッタありで、まったく飽きることがない。

 興味深いのは、不老不死のバンパイアの世界でありながら、我々が住む現代社会と問題点が酷似していることだ。エドワードの上司である巨大製薬会社社長の頭には、人間の血液を商品とする非情な利潤追求しかない。特権階級と貧困層という構図は、格差社会そのものだし、血液不足によるバンパイアとサブサイダーの抗争は、食料や資源を求めて繰り広げられる戦争を連想させる。

 何よりビジュアルがクールで魅力的だ。全体がスタイリッシュな印象なのは、モノトーンとブルー系の映像で統一されているため。苦悩する主人公がよく似合うイーサン・ホークが、そんな世界にたたずむ様はそれだけで絵になる。同時に、そこはかとないユーモアもある。バンパイアたちは郊外の住宅地から都心のオフィスに出勤し、途中で立ち寄るコーヒー・ショップでは血液入りのブラッド・コーヒーを飲む。「血をめぐんで」と書いた紙を持った浮浪者もいれば、紫外線注意のアラートも鳴り響く。ディテールの細かさが実に楽しい。

 冒頭、少女が遺書を書いている。そこには「不老不死で永遠に生きるなど耐えられない」との言葉が。そして彼女は、夜明けに外に座って太陽を浴び、炎となって自殺する。インパクトのあるオープニングでぐっと観客の心をつかむこの映画、人間のままであろうとバンパイアになろうと、はたまたそれらの種を行き来しようと、そこには格差と争いが必ず存在するというペシミスティックな世界観がベースだ。さらにその選択肢の前に、人間の“成分”そのものが、毒にも薬にもなるというジレンマがある。進化という枠組みでとらえ直してみると、この映画はいく通りもの解釈が可能なのだ。バンパイアものとSFのクロスオーバーの狙いは、案外そこにあるのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スタイリッシュ度:★★★★★

□2008年 豪・米合作映画 原題「DAYBREAKERS」
□監督:ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ
□出演:イーサン・ホーク、ウィレム・デフォー、イザベル・ルーカス、他

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映画レビュー「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 (1枚組) [DVD]ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 (1枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
物語も画面もひたすら暗く、まるでホラー映画。ハリーら3人の真の友情が試される。 【60点】

 17歳になり、魔法学校の最終学年7年生になったハリー。親友のロンとハーマイオニーと共に、宿敵ヴォルデモート卿の不死と抹殺の鍵である“分霊箱”を探す旅に出る。助けや導きは何一つない彼らに、次々と襲いかかる過酷な試練。ついに3人を引き裂く闇の力に屈してロンが離れていくが…。

 長い長いシリーズも第7作で遂に完結!…と言いたいところだが、クライマックスの「死の秘宝」は前・後編2部作で描かれ、本作はまずはPART1。もともとは3D映画になる予定が「完璧な状態でないなら3Dにしたくない!」との理由で2Dとして公開の運びとなった。物語には、魔法や学校生活でのワクワク感はなく、代わりにあるのは流血や拷問なのだから、ほとんどホラー映画だ。

 ダーク・ホラーであると同時に、本作はロード・ムービーでもある。ヴォルデモート卿の策略により、逃亡生活を余儀なくされたハリーたちは、寒々とした荒野や暗い森をさまよう。光など届かない世界に見えるが、そこにポツンと灯がともるテントの存在は、ハリーたちが残された唯一の希望である証だ。そんな彼らが知るのは、今は亡きダンブルドア校長の秘められた過去と、校長が3人に託した遺品が導く古い物語だ。ほとんど忘れられていた伝説「死の秘宝」のストーリーが、アジアンテイストの影絵のような映像で語られ、とても美しい。語られる3つの宝は、すべてが死にまつわるアイテムである。

 だが、もはや子供ではないハリーには、死は必ずや対峙しなくてはならない運命と同じ意味を持っている。強大な闇の力に立ち向かう責任も覚悟もあるハリーだが、それでも大切な仲間の絆が揺らぐのは何よりつらい。分霊箱のロケットが持つ邪悪な力がもたらす亀裂は、思春期特有の嫉妬心や劣等感を突く巧妙なもので、3人それぞれの心のわだかまりにもリアリティがある。余談だが、今回はハリーとハーマイオニーのセクシーなキスシーンがあるのが“事件”だ。ちょっとドキドキするが、同時にこんなに大人になって…と、しみじみとしてしまうのは、この物語をずっと大切に見守ってきたせいだろう。

 第4作「炎のゴブレット」で初めての犠牲者が出て以来、物語は命懸けの戦いの様相を呈している。今回もまたしかり。もの言わぬ心の友で、いつもハリーを見守ってくれた白フクロウのヘドウィグが懸命にハリーを守る場面は胸が張り裂けそうだし、屋敷しもべ妖精ドビーの運命も涙なくしては語れない。

 そんな本作の中にも、ほんの少しだがコミカルな要素がある。ヴォルデモートの追っ手からハリーを安全に逃がすため、不死鳥の騎士団の面々が魔法でハリーに変身し、なんと7人のハリーが登場する。主演のダニエル・ラドクリフ自身が一人7役で演じるこのシークエンスには、思わず吹き出してしまうセリフも。何しろ見た目はハリーだが中身は別人というそのギャップが可笑しい。

 夜明け前は最も暗い。何だかシリーズの5作目以降ずっと、暗い、暗いと言い続けているような気がするが、ハリーの過酷な運命は言うまでもなく、友情も愛情も不確かな本作の暗さはシリーズ屈指だ。シリアスというより悲壮、悲壮というより残酷。そんな殺伐とした空気が全体を覆っている。しかし、より激しい展開とカタルシスが待つであろうPART2への前奏曲が本作。目をそらすわけにはいかないのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ダーク度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS:PART1」
□監督:デイビッド・イェーツ
□出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、他


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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1@ぴあ映画生活

映画レビュー「黒く濁る村」

黒く濁る村 [DVD]黒く濁る村 [DVD]
◆プチレビュー◆
山奥の村という“密室”を舞台にした骨太なミステリー。現在と過去を行き来する展開がスリリングだ。 【70点】

 ヘグクは、長い間音信不通だった父の死の知らせを受け、秘密めいた山奥の村を訪れる。村長のヨンドクが絶対的な権力を握るその村で、父の死因に違和感を覚えた彼は、調べるうちに、父所有の土地の名義が書き換えられ、財産も全額が引き出されていた事を知る。やがて、次々に殺人事件が起こるが…。

 原作は韓国で大人気のウェブ・コミック。映画は、2時間41分という長尺にもかかわらず、見るものをグイグイと引っ張り飽きさせない。韓国映画らしい過剰なまでの暴力シーンや流血描写が盛り込まれているが、それがすべて必然に思える濃密なストーリーだ。そこには、人間の欲望やエゴイズム、信仰の限界など、さまざまな要素が横たわっている。

 秘密めいた村の住人に共通するのは、澱(おり)のようによどむ鬱屈した情念だ。主人公ヘグクの父モッキョンは不思議なカリスマ性のある宗教指導者だが、元刑事のヨンドクに誘われて理想の村を作ろうとした。暴力的で汚職にも手を染めていたヨンドクは、改心しモッキョンを崇めるかに見えたが、彼には別の思惑が。小さなその村は、ヨンドクにとって王国だ。村を一望できる高台に建つ、まるで城のような住まいは、住民を監視する彼の支配欲の象徴である。

 そんな村長の周囲にいる人物は、皆、怪しい。秘密を嗅ぎ回るヘグクの命を狙うソンマンやソンギュには、どうやら汚れた過去があり、村長のカバン持ちのドクチョンはいつも何かに怯えている。この愚鈍なドクチョンが、堰を切ったようにすべての秘密を吐露する場面は、すさまじい迫力だ。ドクチョンもまた、抑圧された日々の中で情念をたぎらせていた。村の秘密を知るもう一人の人物で、雑貨屋を営む美しい女性ヨンジの告白もまたしかり。30年前の祈祷院集団殺人事件の謎が語られ、過去と現在がつながっていく展開に息を呑む。

 ヘグクを演じるパク・ヘイルは、ソフトなルックスだが何か得体の知れない強靭さを感じる俳優だ。原作者も太鼓判を押したというだけあり、本作ではひたひたと迫る恐怖に怯えながらも、懸命に真実を探る青年を好演している。また、村の支配者の村長を演じるチョン・ジェヨンは、70代の老人を特殊メイクで演じきり、すばらしい役者魂をみせた。

 30年前の事件と現在の事件は、多くの命を奪った後に一応の解決を見る。事の発端を1978年に設定したこの物語には、賄賂や不正が横行した軍事政権時代の悪しき影響は明らかだが、映画はそのことを声高には叫ばない。すべてが終わった後、村長の家のテラスから下界の村を見つめるヨンジのまなざしが、この物語の最後にして最大の情念だ。幼い頃に受けた凌辱から彼女を救ってくれたのはヘグクの父モッキョンだが、その後の運命は彼女にとってはより惨い地獄だったはず。モッキョンが教祖のように存在しながら、実権はヨンドクが握るこの村に、神は不在なのだ。男たちが欲望の果てに破滅するのを、冷徹な心で見ていたであろうヨンジ。おぞましい村にヘグクを呼び寄せたのは、ヨンジの秘めた情念だったのだろうか。この物語は、男たちに運命を弄ばれた女性の
長い長い復讐譚のような気がしてならない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)濃密度:★★★★★

□2010年 韓国映画 原題「苔/MOSS」
□監督:カン・ウソク
□出演:パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、他

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映画レビュー「マチェーテ」

マチェーテ [DVD]マチェーテ [DVD]
◆プチレビュー◆
フェイク予告編がまさかの映画化。怪優ダニー・トレホが大暴れするバイオレンス映画はB級魂炸裂だ。 【60点】

 凄腕のメキシコ連邦捜査官マチェーテは麻薬王トーレスから妻子を殺され、自らも重傷を負う。3年後、一市民として生きていたマチェーテは、移民嫌いで極右の上院議員マクラフリン暗殺を半ば強引に依頼されるが…。

 タランティーノとロドリゲスが共作したB級映画へのオマージュ「グラインドハウス」の中に登場していた偽の予告編。激しく興味をそそったそのパイロット版がホントに映画になってしまった。これだけでも“事件”だが、主役はロドリゲス作品の常連で、すさまじい悪人顔のダニー・トレホ。しかも、ジェシカ・アルバやミシェル・ロドリゲスら美女たちから激モテなのだからスゴい。もちろん物語は荒唐無稽、エロスとバイオレンスがてんこもりだ。マチェーテが依頼された議員暗殺は実は罠で、その背後には憎き麻薬王が。マチェーテは不法移民たちと協力し、血で血を洗う過激な復讐劇を繰り広げる。

 主人公の名前でありトレードマークでもあるマチェーテとは、スペイン語で長刀のなたのこと。中南米では、農作物の伐採に使われるらしい。そんなモンを武器に戦うのだから、当然接近戦で、その戦いっぷりは、バカバカしくも痛々しい。手や首をバッサリ切り落とし、敵の腹を切り裂いて腸をロープ代わりにダイブするなど、次から次へと残酷描写が登場。マチェーテが行くところには死体の山が築かれるが、そんな中でも主人公や美女たちはほとんど不死身だ。リアリティ無視のムチャクチャな演出はまるでコミックの世界のようで、不思議な爽快感が。骨の髄までB級体質のロドリゲスらしいではないか。

 B級魂はストーリーや演出だけではなく、キャスティングでも炸裂している。移民嫌いのタカ派議員を名優ロバート・デニーロにやらせるのが過激なおふざけなら、麻薬王はB級アクションの権化スティーブン・セガールというニクい配役。なまじ武術の達人だけにセガール一人が浮いているのがビミョーに可笑しい。ラストのマチェーテとの対決には、無駄に本格的なアクションを披露したあげく、日本にゆかりのセガールならではの仰天の落とし前を付けてくれる。

 女性キャラもしかり。ロドリゲス作品の女性は、常にセクシーで刺激的だが、移民関税執行局職員役のジェシカ・アルバのシャワーシーンなど何の必要性があるのだろうか?と首をかしげる。女戦士ミシェル・ロドリゲスが持つ銃が常識はずれにデカいのも同様だ。だが、このデフォルメがロドリゲスの持ち味である。ついでに注目は、お騒がせセレブのリンジー・ローハン。ヤク中の金髪娘という役どころは、私生活とダブりすぎて苦笑ものだが、ヌードや尼僧姿のコスプレなど、ヤケクソ気味の気合が入っていて笑わせる。ジェシカ、ミシェル、リンジーの3人のキャラは、ぜひスピンオフで観てみたいものだ。

 復讐と贖罪を2本柱にしたマチェーテの戦いに味方するのは、面構えもりりしい不法移民たち。ガトリング銃付きのバイクを駆るマチェーテを助けるべく、車の車体をブンブン揺らして気勢をあげる。彼らが長刀を振り上げ銃をぶっ放すクライマックスは、ほとんどファンタジーだ。史上類をみないアウトローを誕生させたラテン・バイオレンスの快作は、マジメに“不真面目”をやっている。通俗的という意味ではこれ以上はないだろう。これぞB級映画の心意気だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)バイオレンス度:★★★★★

□2010年 アメリカ映画 原題「MACHETE」
□監督:ロバート・ロドリゲス/イーサン・マニキス
□出演:ダニー・トレホ、ジェシカ・アルバ、スティーヴン・セガール、他

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映画レビュー「ソウ ザ・ファイナル 3D」

ソウ ザ・ファイナル アンレイテッド・エディション [DVD]ソウ ザ・ファイナル アンレイテッド・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
人気シリーズ完結編は3Dで登場。意外なあの人の登場はやはり第一作が最高だったのだと確信した。 【50点】

 ジグソウの仕掛けた殺人ゲームから奇跡的に生還した人々は、心に深い傷を負っていた。そんな彼らが救いを求めたのが同じく生き残りで精神的指導者ボビー。だが実は彼には大きな秘密が。一方、ジグソウの妻ジルとホフマン刑事はジグソウの遺品を巡って激しく争っていた…。

 低予算ながらその奇想天外なアイデアと衝撃的な残酷描写で大ヒットシリーズとなった「ソウ」。限られた状況下に置かれた人間の極限状態をスリリングに描く“ソリッド・シチュエーション・ホラー/スリラー”というジャンルを確立した記念碑的作品だ。とはいえ、本当に唸る面白さだったのは最初だけ。その後は、肝心のジグソウが死んだあとも、だらだらとハロウィンシーズンの季節行事のように作品が公開され続けて、正直辟易していた。義務感だけで見続けてきたが、それも今回で終了となる。生きることと命の大切さを、過激すぎる方法で教えるジグソウの殺人ゲームで「ゲームオーバー」を宣言できる人物とは。つまり生き残るのは誰かということが最大の興味となるわけだ。

 第一作が2004年となるとファンといえども記憶が薄くなる。そこで映画冒頭にはご親切に“復習コーナー”が設置されている。名付けて「ソウ集編」。1作から6作までの経緯をざっとおさらいして本作に望むわけだが、今までの殺人ゲームの生き残りたちがこの完結編で鍵を握ることに。本作の中心人物であるボビーは、過酷なゲームから奇跡的に生還し、妻の愛によって再生したという設定だが、はて、彼はいったいどこに出てたっけ? しかもボビーはその著作によって大成功を収めているというではないか。この「あれ、こんな人、いた?」感が、今回のゲームのポイントだ。

 ついにファイナルを迎えた高揚感からか、初の3D導入の喜びからか、いつにも増して、恐怖と痛みの描写はすさまじい。ソウシリーズの人気は不条理かつ複雑な殺人マシーンにあり、冒頭からド肝を抜く残酷描写が用意されているのがお約束。だが、いくらファイナルだからといっても今回のプロローグはちょっとやりすぎだ。そもそも、いったいいつ、だれが、どうやってこの複雑な装置を作ったのかという疑問は、第1作目からあるのだが、それは人目につかない密室だからこそなんとか許せた。しかし本作のプロローグの殺人は公衆の面前で行われる。ストーリーの中での殺人の必然性よりも、いかに手の込んだ方法で処刑するかばかりに目がいくようになったシリーズの悪しき経緯を思わせるものだった。注目の3Dも残念ながら期待したほどではない。血しぶきが舞い、肉片が目の前に飛んでくる場面はあるにはあるが、ソウの殺人場面はゆっくりとじわじわと行われる“いたぶり系”のスプラッタ。スピード感や奥行きで効果を発揮する3Dはさほど必要だったとは思えない。

 繰り返して言うが「ソウ」は第1作が一番面白い。そんなファンの叫びが聞こえたかどうかは定かではないが、ボビーの試練と、ジルとホフマン刑事の死闘の後に、意外な人物が登場して「ゲームオーバー」を宣言する。自ら痛みを引き受け犠牲を厭わない人物だけが生き残るということなのかもしれない。ジグソウの死後の経緯や後継者という設定など、いろいろと文句はあるが、このシリーズを見続けてきた以上、ファイナルを見逃すわけにはいかない。僅かな予算から特大ヒットシリーズを生み、長年ファンを喜ばせてきた作り手たちの労をねぎらうためにも、見届けるのが礼儀なのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)3D効果度:★☆☆☆☆

□2010年 アメリカ映画 原題「Saw VII 3D」
□監督:ケヴィン・グルタート
□出演:トビン・ベル、ケアリー・エルウェズ、コスタス・マンディラー、他

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映画レビュー「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」

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◆プチレビュー◆
ワイン作りに人生を賭ける男を導くのは謎めいた天使。ブルゴーニュの風景が圧倒的に美しい。 【60点】

 19世紀のフランス・ブルゴーニュ地方。若く才能あふれる葡萄農夫のソブランは、最高のワインを造ることを夢見ていた。そんな彼の前にある夜、天使のザスが現われ葡萄の苗木を授けた。彼らは年に一度、同じ場所で会うことを約束する。ソブランはやがて醸造家になり、結婚して子供にも恵まれるが…。

 キリストの血とも呼ばれるワイン。とりわけブルゴーニュのそれは宝石に例えられるほど愛好家垂涎の逸品だ。ワイン好きなら、葡萄とワインに魅せられた主人公が、葡萄の苗木をひとつひとつ布で守り、生活費を削ってでもワイン作りの高みを目指す生き方を理解するだろう。そして自然が相手の葡萄の育成には人間の力とは別の、天の恵みが必要ということも。それを象徴するのが、不意に大空から現れる天使ザスだ。ナポレオンが君臨しやがて敗れ去るその時代、ブルゴーニュの田舎にまで戦争が影を落とすが、そこにはまだ天使のようなスーパーナチュラルな存在を許す豊かさがある。

 この映画の個性は、非常にアンバランスな印象を持つことだ。物語はシャルドネやピノ・ノワールといった葡萄の品種や、ワイン作りそのものについて深くは言及しない。主人公ソブランは才能ある醸造家だが、彼ならではの醸造の独創性もごく表層的な描き方だ。激動の時代に変化する階級問題にもほとんど目を向けない。さらにどこか同性愛の香りがする天使ザスとの関係や、やがてザスが下す驚きの決断や運命も納得しがたいものだ。一方で、物語の背景となるブルゴーニュの風景は抒情的な美しさで、すべての時間、すべての季節がまるで絵画のよう。見ていていつまでも飽きることがない魅力がある。物語の核心の曖昧さと、あまりにも美しいビジュアルはまったく異質で戸惑ってしまう。

 しかもストーリーは相当に波乱万丈だ。戦争、子供の死、精神を病む妻、壊滅的な葡萄病害。長い年月、ソブランはワインと関わりながら、人生の夢や挫折を経験する。だが同時にいつもそこには愛情があった。子供を産み情熱的な愛をソブランに注ぐ妻セレスト。高貴な美しさと知性を兼ね備えソブランを魅了する男爵夫人オーロラ。天国も地獄も知る中性的な天使ザス。肉体と精神、魂の3つが出会って初めて奇跡の土壌が誕生することを、ワインを作るソブランに教えるのが、この3人の存在なのかもしれない。ニュージーランド出身のニキ・カーロ監督は、マオリ族の少女のチャレンジの物語「クジラの島の少女」では、伝統と革新のバランスをテーマにしたが、本作ではさらにスピリチュアルなレベルも含めて人生の不可思議と豊饒との調和を描いている。

 天使のザスは、ワインの奥深さを“凶作があるから豊作がある”との言葉で表した。喜びと悲しみが、寄せては返す波のように繰り返す人生を、ワイン作りに重ねた物語の原題は「ワイン醸造業者の幸運」。主人公の幸運とは何だったのか。思うに、天使と出会ったことよりも、ブルゴーニュという土地に生まれたことではないか。多様性と気品とを併せ持つ“神に愛された土地”。ワイン作りに大切な環境をテロワールと呼ぶが、その言葉は、単に土壌や地質だけではなく、気候や地形、風土、そこに暮らす人々までも含めた生育環境を指す。まさにそれは人生そのもの。偉大なテロワールだけに許される幸運は、壊滅的な状況の中にも小さな緑の芽を残すミラクルだ。主人公が3つの違った愛と関わりながら、ブルゴーニュを愛し続けた理由がよく分かる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ファンタジー度:★★★★☆

□2009年 ニュージーランド・フランス映画 原題「THE VINTNER'S LUCK」
□監督:ニキ・カーロ
□出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ヴェラ・ファミーガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、他

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映画レビュー「エクスペンダブルズ」

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◆プチレビュー◆
アナログ感覚で勝負する豪華キャストのアクション映画。悪役に大スターがいないのが惜しい。 【50点】

 バーニーは最強の傭兵軍団“エクスペンダブルズ”のリーダー。ナイフの達人のリーやマーシャルアーツの天才のヤンらと共に危険な仕事をこなしてきた。ある日、謎の人物から、南米の島国ヴィレーナで圧政を敷いている独裁者の殺害依頼が舞い込むが…。

 監督・脚本・主演を務めるシルベスター・スタローンが、映画界でいまだアクション俳優のトップとしてリスペクトされていることが、この作品で証明された。何しろ、彼のツルの一声で、主演級のスターたちが大集合している。スタローンの脇を固めるのは、ジェイソン・ステイサムとジェット・リー。ブルース・ウィリスと現カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーの二人がアクションを披露しないのは残念だが、その代わりに格闘界からスターが参加して暴れまくる。よくまぁこれだけの面子が揃ったものだ。この映画、全員がセンター・フォワードのサッカーチームのようで、無論、フツーの試合、すなわち物語重視の作品は成り立たない。

 独裁者をやっつけるために大暴れ。ストーリーを説明するならばこれだけで事足りる。一応、CIAがらみの陰謀はあるものの、そのことを深く追求するわけでもない。一応、島の下調べには行くものの、本番に向けての上手い作戦があるわけでもない。いいのか、これで?! いいのである!目的は各々のスターに見せ場を用意しつつ、シンプルな勧善懲悪で溜飲を下げること。ヘタに複雑な物語などないほうが気分がいい。アクションは、これまたいまどき珍しいほどアナログ感覚に満ちていて、CGやワイヤーアクションはいっさいなし。肉弾戦と火薬が炸裂し、陸、海、空と縦横無尽に飛び回る。

 男臭い豪華キャストの中で、ひと際おいしい役は、刺青師ツール役のミッキー・ロークだ。元エクスペンダブルズの最強戦士で、今はバーを経営する彼は、皆が疲れた体を癒す港のような存在だ。争いの虚しさを誰より知るツールだが、それでも戦わずにはいられない男たちを温かく見守っている。だからこそ、女に裏切られたとき、友と決別するとき、命懸けの仕事を追えたとき、エクスペンダブルズはここに帰ってくる。自身も元ボクサーだったロークは、やろうと思えばアクションもこなせただろう。だが“静”に徹したことが逆に筋肉合戦の娯楽作の中で、いぶし銀のように光った。残念なのは、悪役にスタローンと同等レベルの俳優を配せなかったこと。ドルフ・ラングレンが一瞬“狂う”が、結局は…という程度では物足りない。やはり魅力的な悪役がいてこそヒーローは輝くものだ。いくら単純な物語でも、そこだけは押さえてほしかった。

 エクスペンダブルズとは消耗品の意味だ。老いたりとはいえスタローン健在を印象付けた夢の競演、これだけのコマは二度とは揃わないかもしれないが、続編の期待は高まる。大味だが目的がはっきりしているこういうアクション映画こそ活劇の醍醐味。日常のモヤモヤなど、どこかへ吹っ飛ばしてくれる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)命知らず度:★★★★★

□2010年 アメリカ映画 原題「THE EXPENDABLES」
□監督:シルヴェスター・スタローン
□出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイスン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、他


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