映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

プチレビュー10下旬

人生万歳!

人生万歳! [DVD]人生万歳! [DVD]
ウディ・アレンが久しぶりに古巣NYを舞台に描く、恋愛狂想曲「人生万歳!」。アレンの記念すべき監督40作目となる物語の主人公は、皮肉屋のインテリ老人という自身を投影したような男だ。かつてノーベル賞候補にもなった天才物理学者のボリスは、無意味な人生を嘆き自殺するが失敗。妻とも離婚し、職やリッチな暮らしを失うものの、下町のオンボロアパートでの気ままな一人暮らしを楽しんでいた。そんな彼のもとに、ひょんなことから南部の田舎から家出してきた若い娘メロディが転がり込む。親子ほど年の離れた二人はやがて結婚し、それなりに充実した暮らしを送っていたが、そこにメロディの母親や父親がやってきて、事態は混迷を極めていく…。

主人公が、スクリーンの向こうにいる観客に向かって語りかけるユニークな語り口から、すでにアレン節が炸裂だ。どこか名作「アニー・ホール」を思い出すが、それもそのはず、この作品の脚本はアレンが70年代半ばに書いたものだという。皮肉屋で理屈っぽいボリスは、女子供相手でも容赦なく悪態をつきまくる変人だ。だがそんな愛すべき変わり者の存在を積極的に許すのがNYである。雑多な大都会の空気が、はじめは南部の保守的な田舎者だったメロディや彼女の両親の本能を目覚めさせるのに時間はかからない。尺取虫並の脳しか持たないメロディは自分で考える知的な女性へ変化し、母親はアートに目覚め、父親は自分がゲイであることを認めるようになる。登場人物は目を見張るスピードで激変するが、感心するのはその時間描写の上手さだ。ボリスがメロディにベートーベンの「運命」を聴かせ、これを聴けば運命の扉が開くと説明した途端、ドアをノックする音が。メロディが扉を開けるとそこには新しい登場人物がいるという按配だ。こういうところにアレンの洒脱さがある。すったもんだの出来事を経て、それぞれに似合いの相手をみつけ幸せになっていくキャラクターたち。物語は「いろいろあっても、人生は収まるところに収まっていくもの。心配無用だよ」とウィンクしているようだ。ただしそれには、自分とは違う世界の人間とも知り合って交流してみる勇気が大切。活路はいつも思いがけないところから開けていくのだ。主演のラリー・デヴィッドはアメリカでは有名なコメディアン。アレンの世界に見事にマッチし、監督自身の姿を透かしてみせた。アレンらしいハッピーエンドは、いわば“それでも恋するニューヨーク”。悪人が登場しないこの物語には、性善説に基づいた幸福感が漂っている。
【70点】
(原題「WHATEVER WORKS」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、他)
(性善説:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
人生万歳!@ぴあ映画生活

【送料無料】人生万歳!

【送料無料】人生万歳!
価格:3,591円(税込、送料別)

100歳の少年と12通の手紙

100歳の少年と12通の手紙 [DVD]100歳の少年と12通の手紙 [DVD]
自分の命の短さを知る少年と、口は悪いが心優しい中年女性の心の触れ合いが感動を生む佳作。いわゆる余命ものだが、安易なお涙頂戴ではなく、ユーモアとペーソスを交えて描くのがフランス映画らしい。白血病を患う10歳のオスカーは、いたずらをしても笑いも叱りもせず、必要以上に気を使う医師や両親の態度に苛立ち、傷付いていた。そんな時、病院に宅配ピザの配達に来ていたローズと偶然出会う。ぶつかったオスカーに対し容赦ない悪態をつくローズを気に入ったオスカーは、彼女にだけは心を開き、本音で語り合うが…。

はれものに触るような愛情ではなく、本気でぶつかってほしい。それが短い人生を生きる少年の願いだ。そんなオスカーに、僅かしかない余命を隠そうとせず、逆に1日を10年と考えて120歳までの人生を生きようと提案をするローズのアイデアがユニークで素晴らしい。最初は病院のピザの注文と引きかえにオスカーの話し相手を引き受けたローズもまた、オスカーと共に自分自身の進むべき道を見出していく展開も、ごく自然だ。上手いのは、神様に宛てて手紙を書くことを提案すること。最初は神様への手紙と聞いて、抹香くさい展開は苦手…と思ったのだが、ストーリーは意外にも宗教にはそれほど偏らない。オスカーが毎日の出来事や自分の正直な思いを手紙の中で吐露することが、医師が彼の病気の症状を知り、両親が子供の本音を知ることにつながっていくことで、実質的で立派な末期治療になっている。しかも、オスカー自身が手紙に自分の気持ちを書く過程で、両親もまた自分からの愛情を必要としていることを幼いながらに理解する。神様宛ての手紙は、まさに“一石三鳥”というわけだ。口が悪く、教養があるようにも見えない中年女性ローズが、「教会なんか信じてないけど神様は信じている」と言うセリフに不思議な説得力があった。物語には難病の子供たちがたくさん登場するが、皆、子供らしさや生意気な恋心をちゃんと持っていて、病院の中で懸命に生きている。そのことを知った大人たちの方が、逆に、わずかな命しかない子供たちから生きる意味を教えられ、成長していく。このビター・スウィートな物語から、思いを言葉にする大切さを教えられた。
【65点】
(原題「OSCAR ET LA DAME ROSE」)
(フランス/エリック=エマニュエル・シュミット監督/ミシェル・ラロック、アミール、マックス・フォン・シドー、他)
(お涙頂戴度:★☆☆☆☆)

人気ブログランキン  グ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

わたしの可愛い人 シェリ

わたしの可愛い人—シェリ 【DVD】わたしの可愛い人—シェリ 【DVD】
ベル・エポックという一瞬の輝きを放った時代にふさわしい、はかなくいびつなロマンスである。1906年パリ。絶世の美女レアは元ココット(超高級娼婦)だが、恋に溺れることもなく、今は引退して優雅な暮らしを送っている。彼女は資産運用にも長けている知的な女性だ。一方、レアの元同業のマダム・プルーは、レアのライバルで友人だが、ある打算のため問題児の一人息子シェリをレアに託す。親子ほど年の離れた二人は、数週間で別れるつもりが6年も一緒に暮らすことに。年頃になってシェリに結婚話が持ち上がり、レアは初めてこの恋が一生一度の愛だったのだと気づくのだが…。

ココットが決して軽蔑の対象ではなく、社交界で超セレブとしてもてはやされた時代が、一瞬だが存在した。それが芸術と女たちが最も輝いたベル・エポックの時代に重なったのは偶然ではないだろう。女性作家コレットの代表作「シェリ」はそんな時代を背景にした甘く苦い物語だ。多才な彼女自身が舞台でレアの役を演じていたという。20世紀初頭の風俗を再現した贅沢な映像美が魅力だが、ココットならではの少し下世話な部分を残した衣装や美術のセンスが冴えている。レアは決して恋に落ちないことで生き抜いてきた。だからシェリを愛していると気づいても、最後の最後で自分を律してしまうのが悲しい。シェリもまたココットの息子で、19歳にして女遊びに飽きるほどの放蕩息子。本当に愛した女性をストレートに求める術が分からない。しかもそこには、ココット時代からレアにライバル意識を抱いて、いつか彼女に“復讐”するチャンスを狙っていたシェリの母の魂胆もある。この物語は、純粋な恋に落ちる人間を決して許さない。レアが言う「ココットは裕福だけど、なぜか同じ職業の人間としか友人になれない」という言葉が、彼女の一生や恋の核心を突いている。シェリとの恋の破局を暗示するのが、彼女の顔に表れたほうれい線。こういう細かい演出にスティーヴン・フリアーズのシビアなまなざしが感じられた。ミシェル・ファイファーは、年齢を重ねても気品があり、それでいてふとした時に老いを感じさせるレアを演じて、ハッとするほど美しい。この女優は不思議とコスチュームものが良く似合う人だ。
【60点】
(原題「CHERI」)
(仏・英・独/スティーヴン・フリアーズ監督/ミシェル・ファイファー、ルパート・フレンド、キャシー・ベイツ、他)
(優雅度:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

アブラクサスの祭

アブラクサスの祭 [DVD]アブラクサスの祭 [DVD]
うつのお坊さんの悩み多き日々を、そこはかとないユーモアで描く人間ドラマ。僧侶とロックという組み合わせが個性的で面白い。かつてはロック・ミュージシャンだったが、今は福島の小さな町で妻子と共に暮らす僧侶・浄念。真面目で不器用な彼は、うつを患い、音楽への狂おしい思いからノイズが聞こえて苦しんでいる。住職の玄宗ら周囲はそんな彼を静かに見守っている。ある日、どうしても音楽への情熱を抑えきれず、町でライブをやりたいと言い出した浄念に、周囲は困惑するが…。

原作は、芥川賞作家で現役の住職である玄侑宗久の小説だ。悟りの境地とは程遠く、切実かつコミカルに悩みまくる僧侶というキャラがまず興味深いが、本人にとっては薬でうつと戦いながら、法事や説法をこなす毎日はさぞ苦しいものだろう。それでも客観的に見ると、音楽への執着から心を病む僧侶の悩みなど、贅沢なものに思える。そもそも悩める人生を送っているのは彼だけではない。静かな田舎町にも生と死のせめぎあいや、生きる苦しみはあふれていた。自分を応援してくれていた友人の突然の死に直面した主人公は、自分にとっては、仏に祈ることも、歌うことも、共に自分に向き合うことだと正直に認めるようになる。そこで浄念は「From Here to Eternity」と、フレッド・ジンネマンの映画のような言葉で自ら決意表明するのだが、僧侶が町でライブをするという行為に対して、応援する人もいれば反対する人もいた。相反する思いの中で決行したライブは、主人公にとっての読経であり祝祭なのだと思う。激しくシャウトする浄念の顔をスローのアップでとらえたショットには、進む道を懸命に模索しながら、自らを解放するエネルギッシュな人間の姿が。この絶叫があるからこそ、次にくる穏やかな表情が活きてくる。主人公を演じるのは、歌手で、映画初主演のスネオヘアー。ラストのライブシーンはさすがの迫力だが、個人的にはエンディングで流れる“ハレルヤ”に感動した。タイトルにあるアブラクサスとは、善も悪もひっくりめた神の名前で、「アブラカダブラ」の語源とも言われている。つらいことや悲しいこともすべて経て、静かな眠りにつく老犬ナムが、不思議な存在感を醸し出していた。
【55点】
(原題「アブラクサスの祭」)
(日本/加藤直輝監督/スネオヘアー、ともさかりえ、小林薫、他)
(煩悩度:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
アブラクサスの祭@ぴあ映画生活
【送料無料】アブラクサスの祭

【送料無料】アブラクサスの祭
価格:3,591円(税込、送料別)

エリックを探して

エリックを探して [DVD]エリックを探して [DVD]
いつもシビアな目線で労働者や移民の問題をえぐってきた社会派ケン・ローチが、ほのぼのとした映画を作った。ちょっぴりファンタジー要素を加えた物語は、ローチ作品初のハッピーエンドなのだから驚いてしまう。郵便局員のエリックは、妻にも去られ、しょぼくれた人生を送っている。ある日、部屋の壁にはった、崇拝する元サッカー選手の大スター、エリック・カントナのポスターに語りかけると、なんとカントナ本人がエリックの部屋に出現。それ以来カントナは、たびたびエリックの前に現れては、つい弱気になるエリックを何かと励ましてくれるのだが…。

元マンチェスター・ユナイテッドの中心選手で、ピッチの内外で何かと騒ぎを起こすが、同時に多くの人々に愛された仏人名選手。それがエリック・カントナだ。主人公にしか姿が見えないこのカントナを、本人が演じているのがまず愉快である。このカントナという人、実は映画界に係わりが深く、「エリザベス」や「クリクリのいた夏」などで名演技をみせているから、元来パフォーマンス系の人なのだ。本作では自分自身の役を演じるだけでなく、製作にも名を連ねているから気合が入っている。現役時代は素晴らしいゴールを連発した彼が、劇中、サッカーの極意として語るのは意外にもパス。シュートにつながるアシストのパスは、必ずゴールしてくれると、チームメイトを信頼しているからこそ出せるものだ。「仲間を信じるんだ」というカントナの言葉が、物語終盤に、ギャングの陰謀に巻き込まれてしまった主人公とその息子のトラブル解決の突破口になっていく展開が実に上手い。エリックが出したパスを受けた仲間たちのファインゴールとはいったいどういう形で決まるのか。また、今でも最初の妻リリーが忘れられないエリックは、果たして彼女に愛を伝えるシュートを打つことが出来るのか。ハラハラする展開だが、この“試合”だけは負けられない。ケン・ローチは、ドキュメンタリーのようなリアリズムと乾いたタッチが持ち味だが、そのローチがフッと肩の力が抜けたかのように、楽しく優しい作品を作ってくれたことが嬉しかった。チームプレーと個人技の融合であるサッカーの本質を活かしたストーリーに、いかにもサッカー好きの英国人気質が現れている。だが、弱者への優しいまなざしは今まで同様健在だ。マッチョなカントナと好対照の、スティーヴ・イヴェッツのしょぼくれた風情が、実に好ましい。
【70点】
(原題「LOOKING FOR ERIC」)
(英・仏・伊他/ケン・ローチ監督/スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、他)
(友情度:★★★★☆)

人気ブログランキン  グ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
エリックを探して@ぴあ映画生活

チェブラーシカ

チェブラーシカ [DVD]チェブラーシカ [DVD]
巨匠ロマン・カチャーノフ監督の代表作「チェブラーシカ」を、作品に惚れ込んだ日本人監督・中村誠が、リメイクと新ストーリーを併用、新しい作品として作り上げた。オリジナルのロシア・アニメの物悲しいテイストとは異なり、明るく万人向けのファミリー・ムービーに仕上がっている。オレンジの木箱に入っていたのは、猿と小熊の中間のような、茶色で大きな耳の正体不明の生き物。チェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)と名付けられたその不思議な生き物は、ひとりぼっちのワニ、ゲーナと友達になる。やがて彼らは、サーカス団に入るため綱渡りの練習をしている女の子マーシャや、生き別れた孫娘を探している手品師のおじいさんらと知り合い、仲間を増やしていく…。

本作はリメイクである「こんにちはチェブラーシカ(ワニのゲーナ)」と、完全新作の2話「チェブラーシカとサーカス」、「シャバクリャクの相談所」の3話をまとめて1本の物語になっている。「チェブラーシカ」はロシアで最も愛された国民的人形アニメで、かのユーリ・ノルシュテインもアニメーター時代に参加していたという魅力的な作品だ。2001年に日本で初めて劇場公開された時は、ミニシアター系の作品だったことからも分かるように、ほのぼのとした癒し系のビジュアルながら、ちょっと大人向けのアイロニカルなストーリーが人気だった。何しろチェブはいつもひとりぼっちの寂しがり屋、南の国から遠い北国にやってきて、友達もいない。動物園からは受け取りを拒否されて、電話ボックスで寂しく暮らしているという設定なのだから、状況はかなりシビアなのだ。ワニのゲーナも同じくひとりぼっちで、友達募集の張り紙を出したりしている。チェブの魅力とは、可愛らしさの裏側にある、正体不明というアイデンティティーの喪失や、否応ない孤独感に他ならないのだ。だが、今回の新・チェブはとても明るいテイストでまとめられていて、昔からのチェブファンには違和感があるだろう。良くも悪くも、子供から大人まで楽しめる“安全な”内容になった。ストーリーには物足りなさを感じるものの、キャラやセットは非常に丁寧な作りで完成度は高い。チェブの愛らしさは言うまでもなく、どこかノスタルジックなパペット・アニメの優しい雰囲気の手作り感覚は、見ているだけで心がほっこりする。
【50点】
(原題「チェブラーシカ」)
(日本/中村誠監督/(声)大橋のぞみ、北乃きい、土田大、他)
(癒し系度:★★★★★)

人気ブログランキン  グ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

シチリア!シチリア!

シチリア!シチリア!スペシャル・エディション [DVD]シチリア!シチリア!スペシャル・エディション [DVD]
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の故郷・シチリアを舞台に、喜怒哀楽に満ちた人生を歩んだ男と家族の絆を描いた人生讃歌。トルナトーレが好んで描く町の広場には、今にもトトやマレーナが現れそうだ。1930年代、シチリアの田舎町バーリア。牛飼いの息子として生まれたベッピーノは、貧しいがあたたかな家族に囲まれてのびのびと育った。ファシズムの時代、第二次世界大戦が過ぎ、イタリアが共和国に変わっても、シチリアの住民の暮らしは基本的には変わらない。成長したペッピーノは美しい女性マンニーナに一目ぼれする。駆け落ちのような形で情熱的に結ばれ結婚し、多くの子供をもうける。共産党員として活動するペッピーノは党の中心的存在になっていくが…。

イタリア南部シチリアという土地は、独特の精神風土を生む場所だ。多くの映画の舞台となったが、どの作品にも共通するのは、支配者や政治がどう変わろうとも、シチリアはシチリアであり続けるということ。そこには常に愛憎両方の感情が入り混じる。ヴィスコンティは「山猫」で大貴族を主人公に「シチリアは本質的には変わらない」ことを諦念を込めて描いたが、トルナトーレが半ば自伝のように描く本作の主人公も同様だ。ペッピーノは貧しい庶民だが、因習やマフィア、貧困がはびこるシチリアをより良い方向へ変えようと共産党員として活動する。そんな彼も、心の奥底では「山猫」の主人公と同じ思いを抱いているに違いない。その証拠に、ペッピーノは一生を政治に捧げているように見えるが、映画全体を覆うのは、政治色ではなく、家族愛だ。ペッピーノの、いや、シチリア人の人生観は、愛する家族と一緒に生きる日々こそが、かけがえのない幸せなのだということに他ならない。主人公の子供時代から老年まで、笑いと涙で一気に駆け抜ける一大叙事詩だが、それはまるで少年時代に、お小遣い欲しさに、お使いに行って戻ってくる間の一瞬の出来事のようにも思える。運命の恋、子を失う悲しみ、政治の理想と現実の闇、マフィアによる暴力に、荒々しい大地。それらがまるでシチリアを吹き抜ける乾いた風のように描かれる。数々の試練に見舞われながら、それでもペッピーノはいつも家族への愛を忘れなかった。老いた彼は、シチリアの岩山の伝説が伝える“幸せ”を確かに手にすることが出来たのだと思う。シチリアという土地そのものが主人公のようなこの物語は、希望と絶望が混然一体となって、人間の生命力を肯定するものだ。そんな“シチリア譚”に寄り添う音楽を手掛けるのは、もちろん名手エンニオ・モリコーネ。ドラマティックで土着の香りがするメロディーが耳に残る。
【65点】
(原題「BAARIA」)
(イタリア/ジュゼッペ・トルナトーレ監督/フランチェスコ・シャンナ、マルガレット・マデ、アンヘラ・モリーナ、他)
(家族愛度:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
シチリア! シチリア!@ぴあ映画生活

相棒−劇場版II−警視庁占拠!特命係の一番長い夜

相棒 劇場版II -警視庁占拠!特命係の一番長い夜- <通常版> [DVD]相棒 劇場版II -警視庁占拠!特命係の一番長い夜- <通常版> [DVD]
大人気TVシリーズの劇場版第2弾。スケールは前作に比べ一見小さく見えるが、内容はより大人向けのドラマになった。警察内部の衝撃的な事実は、TVでは描きにくい題材で、劇場版にする意味を感じる。警視庁本部内で、警察幹部12名が人質にとられるという前代未聞の籠城事件が発生する。犯人の動機、要求は不明。偶然犯人と遭遇した神戸尊は、杉下右京に連絡し、犯人が元警視庁刑事であることを突き止める…。

特命係の杉下と神戸の二人が、意表を突く方法で事件を解決していくが、発端となる篭城事件のディテールがあまりにもいいかげんなのはいかがなものか。いくら犯人が銃を持っているとはいえ、犯人1人に対して人質は12人。人質は縛られるわけでもなく、椅子に座り手を後ろに回しているだけなのに、誰一人犯人に逆らわない。ナンなんだ、これ? もしや篭城事件そのものが狂言なのかとさえ思ったが、やがて犯人はあっさりと射殺され、それは正当防衛として処理される。実は籠城事件には、7年前の国際テロリストによる船舶爆破事件の謎が関係していて、そこから物語は加速していく。事件のプロットは悪くないが、核心に迫るプロセスが早すぎて“分かり易さ”が勝負のTVドラマ的なのが、少々物足りない。一方で、キャストはなかなかいいセンをいっている。事件のキーパーソンである総務部装備課の朝比奈圭子が“あんな場所”で銃を構えるのはいくらなんでも…だが、小西真奈美のゲストヒロインは劇場版ならではの華があった。前作の劇場版と最も変化したのは、杉下の相棒が、肉体派の寺脇康文から頭脳派の及川光博に変わったこと。右京と同じ頭で考えるタイプなのだが、このコンビが意外にも悪くない。神戸の特命係配属にはいろいろとワケがあったのだが映画ではそれは潔く省き、すでに右京とは名コンビぶりを発揮している。警察内部の汚職や人間関係を描く映画は、警察といえども組織であることと、それぞれの駆け引きや立場を浮き彫りにすることでスリリングなドラマになる。と同時に、譲れない正義を貫くことで感動を引き出していく。何より、国民を守るべき立場にいるものが法や人命をないがしろにする様は、単なる犯罪ドラマとは比べ物にならない衝撃があるのだ。ラスト、右京が彼なりの決意で正義を語るその言葉を聞けば、神戸が右京という人間そのものに惹かれて自ら特命係に残った理由が分かる。単純な勧善懲悪ではなく、組織の片隅にいながらも、自分なりの方法で正義を行おうとする人間を描くところに、この作品の“大人”感があるのかもしれない。
【60点】
(原題「相棒−劇場版II−警視庁占拠!特命係の一番長い夜」)
(日本/和泉聖治監督/水谷豊、及川光博、小西真奈美、他)
(シリアス度:★★★★☆)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

きみがくれた未来

きみがくれた未来 [DVD]きみがくれた未来 [DVD]
若手スターのザック・エフロンが得意の歌と踊りを封印してシリアスな演技に挑んでいるのが新鮮。生と死を行き来するファンタジックな要素をからめながら兄弟の絆を描くが、後半には思いがけない驚きが用意されている。ヨットで名門大学の奨学金を得たチャーリーは、高校卒業の夜、運転中に事故に遭う。助手席に乗せていた幼い弟サムが死に、自分だけが生き残ったことで自責の念にさいなまされるチャーリーは、サムの葬儀に耐えられず走って森の中へ。するとそこにはチャーリーにしか姿が見えないサムがいた。毎日夕暮れ時にキャッチボールをする約束をかわす二人。その日以来、大学進学もヨットもあきらめ、サムが眠る墓地の管理人として働くチャーリーの姿があった。そんなある日、ヨットのライバルだった女性テスと再会したことで、新しい愛を知るチャーリーだったが…。

はじけるような笑顔が魅力のザック・エフロンが、心に傷を負い、未来への扉を閉ざして生きる主人公を演じるのは、アイドルから俳優へと脱皮するチャレンジといえる。本作でのエフロンは、歌わず踊らず、バスケットもしない。これはエフロンが演技だけで勝負する初めての作品だ。死者の姿が見えることから主人公は変人扱いされているが、それは彼が亡くなった人たちのことを深く深く愛しているから。この死者が見える能力は、後半の展開に意外な形で活きてくる。弟との夕暮れ時のキャッチボールは日課になり、二人は楽しい時を過ごすのだが、死んでもなお天国へ行くことを拒むサムと毎日過ごすことは、生という観点から見れば、極めて後ろ向きなことだ。弟のサムの存在は、ゴーストともチャーリーの妄想や願望ともとれる。だがサムの正体が何にせよ、兄弟の絆が何よりも強いことは確かだ。そんなチャーリーは、かつて恋心を抱いたテスに再会したことで、自分自身の生き方を見つめなおすことになる。呪縛を解くのは、いつも新しい愛なのだ。後半、ヨットで外海に出たテスを助けると決めたチャーリーの顔には、確かな決意が見える。と同時に、私たち観客は、物語に隠された意外な驚きを知ることに。事故の時にサムを助けた救命士がいう「人間は決して希望を捨てない」という言葉の意味は、喪失から再生へのサイクルの中でこそ効いてくる。原作はベン・シャーウッドの小説。深い絶望の中でも、前向きに生きることを知る瞬間が本物の奇跡を呼ぶ。ポジティブなイメージのエフロンを主役に据えたことで、物語が過度に湿っぽくならず、さわやかな余韻が残った。キム・ベイシンガーやレイ・リオッタなど、豪華な顔ぶれが脇でしっかりと物語を支えているのも見逃せない。
【65点】
(原題「CHARLIE ST. CLOUD」)
(アメリカ/バー・スティアーズ監督/ザック・エフロン、アマンダ・クルー、キム・ベイシンガー、他)
(家族愛度:★★★★☆)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!


人気ブログランキン  グ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
きみがくれた未来@ぴあ映画生活

ばかもの

ばかもの [DVD]ばかもの [DVD]
不器用すぎる恋は10年たってようやく本物の愛へと変わる。再会してからの部分がとても魅力的だ。群馬県高崎市。中途半端な大学生活を送る19歳のヒデは、偶然出会った強気な年上の女・額子(がくこ)と出会い、彼女の積極的な誘いで結ばれる。ヒデは額子の部屋に毎日通うほどのめりこんでいくが、ある日、額子は「結婚する」と一方的に言ってヒデを捨てる。卒業し就職し新しい恋人もできたヒデだったが、心のどこかで額子が忘れられず、虚しい気持ちを埋めるようにアルコールに溺れていく。一方で、額子も事故で人生を変える大怪我を負っていた。数年後、二人は変わり果てた姿で再会する…。

遊びのつもりで誘った年上の女。初めての女性を一途に愛する年下の男。ひどい仕打ちで唐突に別れを告げる額子という女性は、あまりに身勝手に見えるが、彼女は、これ以上一緒にいては自分がヒデにのめりこんでしまうことを知っていて、それを恐れたに違いない。物語前半のヒデは、どこにでもいる大学生で好きな女性と一緒にいられればそれだけで幸せというピュアな魅力がある。だが徐々にアルコールに溺れていく様はまさに転落人生。最初はビールのような軽いもの、次第に焼酎やウィスキーなどの強い酒がヒデの周りに転がっていく。ヒデというキャラクターにとってアルコールは、暴力を生むよりも、気力を奪っていくものなのだ。ヒデがアルコールから立ち直るプロセスがあまりにあっさりしていたので拍子抜けするのだが、最後に助けてくれるのは、家族と共に、本当に自分を愛してくれていた額子だったのが泣けるところだ。ひどい事故にあい離婚して一人で暮らす額子とヒデが再会してからの展開が魅力的で、ひきこまれる。額子の頭が白髪になっていて、それは実はヒデを心配したためだと知ったとき、自分の気持ちに素直になれなかった男女が、深い場所で結ばれていたことが分かる。複雑なキャラクター額子を演じる内田有紀が独特の存在感で素晴らしい。原作は、芥川賞作家・絲山秋子の同名小説。劇中、何度か相手のことを「ばかもの」と呼ぶが、それぞれに意味が違う。ラスト、光溢れる楽園のような場所で聞くこの言葉が、不思議なほど優しく響いた。
【60点】
(原題「ばかもの」)
(日本/金子修介監督/成宮寛貴、内田有紀、白石美帆、他)
(共感度:★★★☆☆)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
おすすめ情報
おすすめ情報

おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
タグクラウド
  • ライブドアブログ