映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

プチレビュー12上旬

サニー 永遠の仲間たち

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現在と過去を同時に描いて女性たちの友情を謳いあげる韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」。ノスタルジックなポップスが効果的に使われている。

夫と娘と共にソウルに住む主婦のナミは、母の入院先の病院で、偶然、高校時代の友人チュナと再会する。チュナは、田舎からソウルの女子高に転校してきたナミを仲間に入れてくれた姉御肌の友人だった。ガンで余命2ヶ月と宣告されているチュナは、もう一度あの頃の友人に会いたいと願っていた。ナミとチュナを含む仲がいい7人の仲間たちは、ずっと一緒にいようと友情を誓いながら、ある事件によってバラバラになってしまったのだ。ナミは“サニー”と名付けたグループのメンバーを一人ずつ探し始めるが…。

40代になった現在と、10代だった1980年代の過去を行き来しながら描く、にぎやかでほろ苦い友情の物語だ。ヒロインのナミは、不自由のない暮らしをする主婦だが、かつての仲良しメンバーを訪ねることで、かけがえのない仲間と過ごした青春時代のきらめきを思い出す。過去のエピソードは、女同士の決闘や、懸命なおしゃれ心、淡い恋など、すべてが微笑ましい。時代は独裁統治が終わりを告げる直前。デモ隊との衝突にもどこか余裕があり、民主化へ移行する自由の空気を、ユーモアを交えてサラリと盛り込んでいるのが上手い。何より、すべてに全力投球で生きる少女たちのエピソードは、勢いのある会話とコミカルな演出の効果もあり、思わず引き込まれる。そんなサニーのメンバーの現在は、意外なほどほろ苦く、だからこそ“あの頃”がより輝いてみえるのだ。サニーで一番の美少女で、事件に巻き込まれたスジの行方が最後まで分からずハラハラするのだが、ラストは絵に描いたような大団円。少々出来過ぎの感もあるが、女性たちの友情の絆の素晴らしさに免じて許そう。タイトルで、グループ名の由来となった“サニー”や映画「ラ・ブーム」で使われた“愛のファンタジー”など、70〜80年代の大ヒット洋楽の明るいメロディが全編を彩り、決してカンペキではない人生でも前向きに肯定する物語のテーマに合致していた。
【60点】
(原題「SUNNY」)
(韓国/カン・ヒョンチョル監督/シム・ウンギョン、カン・ソラ、ミン・ヒョリン、他)
(ノスタルジー度:★★★★☆)
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サニー 永遠の仲間たち@ぴあ映画生活

ダーク・シャドウ

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バートン&デップのテッパンコンビによるダーク・ファンタジー「ダーク・シャドウ」。“浦島太郎”状態のヴァンパイアが笑いを誘う。

18世紀、アメリカ・メイン州の港町の有力者バーナバス・コリンズは、使用人のアンジェリークを失恋させてしまう。彼女は実は魔女で、フラれた腹いせに、バーナバスをヴァンパイアに変え生き埋めにした。200年後の1972年に偶然開放されたバーナバスは、さっそく懐かしい屋敷を訪ねるが、コリンズ家はすっかり落ちぶれ、変人だらけの末裔たちは、それぞれが暗い秘密を抱えて生きていた。当主のエリザベスにだけは真実を教え、他には自分の正体を隠しながら、バーナバスは亡き父の教え「本物の財産は家族だけ」を胸に、コリンズ家再興を目指すことに。だがそこに、憎き魔女アンジェリークが立ちふさがることになる…。

オリジナルは1966年代から5年に渡ってアメリカで放送され、カルト的人気を誇ったTVドラマ。白塗りのデップが時代錯誤のヴァンパイアを演じるというこの設定だけで笑いがこみあげるが、何しろ200年も棺桶の中にいたので、時代の流れについていけず、可笑しな言動が止まらない。何をやってもズレまくり、まるで戻ってきた浦島太郎のよう。それでもメゲないバーナバスだが、変わらないのは家族思いという点だ。コトの発端で、使用人の美女を弄んだということは都合よく脇に置いて、200年後の世界を牛耳っているアンジーこと魔女のアンジェリークと対決することになる。顔面蒼白のデップと、これまた白塗りに近い顔で暴れまくるエバ・グリーンの格闘技のごときラブシーンは、映画の最大の見せ場だ。だが物語はバーナバスvsアンジェリークの構図だけでなく、実はコリンズ家の面々がかかえるトンデモない秘密にも言及する。特にクロエ・グレース・モレッツ扮する思春期の娘キャロリンの秘密には絶句した。今一番勢いがある若手スターであるモレッツを使う以上、バートンがタダの可愛い娘で終わらせるはずはないのだ。終盤にはいかにもバートン好みの幻想的なゴシック・ホラー・コメディとなって、家族安泰の大団円へとなだれ込む。バートンとデップの組み合わせは、少々飽きつつあるのだが、それでもこの毒のある笑いは捨てがたい。のほほんとしたラブ&ピースの空気と、ベトナム戦争の泥沼が同居する矛盾だらけの70年代なら、サングラスと日傘のいでたちで太陽の下を歩くヴァンパイアの復活も悪くないという気になる。
【65点】
(原題「DARK SHADOWS」)
(アメリカ/ティム・バートン監督/ジョニー・デップ、エバ・グリーン、ミシェル・ファイファー、他)
(ダーク・コメディ度:★★★☆☆)
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ダーク・シャドウ@ぴあ映画生活

貞子3D

貞子3D  --復活 (角川ホラー文庫)貞子3D --復活 (角川ホラー文庫)
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名作ホラー「リング」の人気キャラ“貞子”が3Dで飛び出してくる「貞子3D」。この映画、方向性を間違ってないか?!

女子高の教師の茜は、自殺を生中継した“呪いの動画”を見たものが死ぬという噂を耳にする。そのサイトを見た茜の教え子も不可解な死を遂げるが、警察は自殺として片付けてしまう。だが、度重なる不審な死の向こう側には、貞子復活を目論む柏木という男の存在があり、警察も異様な気配を嗅ぎ付けて調べ始めた。その動画からは「おまえじゃない…」という声が聞こえることから、どうやらその呪いの動画は誰かを探している様子。茜は自らの忌まわしい過去におびえながら一連の事件に関わっていくが、そんな中、茜の恋人・孝則に危険がせまる…。

ついにこの人までもが3Dで飛び出してしまうのか。Jホラーの名作「リング」では、TV画面から這い出してくる貞子のおぞましい姿に日本中が恐怖におののいたものだ。本作はいくつか作られた「リング」シリーズの最新作で、原作者の鈴木光司によるオリジナルストーリーとなる。TVから、スマホから、街頭ビジョンから、あらゆる所から貞子が飛び出してくるのはいかにもIT時代の恐怖に合致しているのだが、困ったことに、この貞子、さっぱり怖くないのだ。もともとは、世間に恨みを持つ男が貞子復活を目論んだのが事の発端。茜にはある特殊能力があるために、貞子からターゲットにされる。恋人の孝則はそんな茜を深く愛している、という構図だ。こんななまぬるいラブストーリーにホラーテイストをチョイとふりかけただけでは、映画ファンは納得しないし、貞子も浮かばれないというものである。ついに貞子と対峙すると決めたヒロインが絶叫するクライマックスの演出は、完全に「リング」の恐怖とは異質のものだ。しかも、である。ある瞬間から、ありし日の貞子が登場するが、この顔が実に可愛い(はーと)!橋本愛ちゃんが演じる貞子はほとんどアイドルと化している。これでいいのか?!いいわけはない。怖くない貞子に何の存在意義があるというのか。結局「ハンサム★スーツ」の英勉監督は、ホラーとは全く相容れない作り手だったということだ。ただひとつ、冒頭に登場する井戸のシーンはなかなかいい。暗い井戸の底から見た上空は、3Dならではの奥行きで、Jホラーきってのスーパースター・貞子の深い絶望と悲しみが伝わるようだった。
【30点】
(原題「貞子3D」)
(日本/英勉監督/石原さとみ、瀬戸康史、山本裕典、他)
(恐怖度:★☆☆☆☆)
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貞子3D@ぴあ映画生活

ポテチ



わずか68分の中編映画「ポテチ」は、サックリとしたポテトチップスのような味わい。

宮城県仙台市。空き巣を生業とする青年・今村は、同じ年、同じ日、同じ街で生まれたプロ野球のスター選手・尾崎の家に侵入する。今村の恋人・若葉は、さっさと金目のものを見つけて帰ろうと促すが、今村はなぜかテレビを見るばかりで動こうとしない。すると部屋に若い女性から、尾崎に助けを求める電話がかかってくる。ほっておけない今村は、その若い女性が待つ喫茶店へと向かうが…。

原作は、仙台市を拠点に活躍する人気作家・伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」に収録された同名中編小説。伊坂作品を過去にも多く映像化した中村義洋監督が、これまた伊坂作品には欠かせない俳優の濱田岳を主演に作った中編映画だ。空き巣の今村、おかしな縁で彼の恋人になった若葉、今村の先輩でクールな黒澤の3人を軸に、どこか奇妙な物語が展開する。何の関係もなさそうな物事、人物が、不思議な縁でつながっていくのは、伊坂作品でおなじみのモチーフだ。空き巣という悪事から始まり、無邪気な悪意、さらに出生の秘密までがからみ、筋書きは飽きさせない。若葉と今村の母・弓子のやりとりは唐突で、不自然に感じるのだが、クライマックスの野球の試合での、周到な“奇跡”へとつながる語り口は、絶妙だ。実は私は、伊坂幸太郎原作の映画は、根底にあるアンモラルな設定がどうにも性に合わないのだが、いつものスタッフ、キャストで、たった8日間で撮影されたというこの小品には、好感を持った。おそらく、無駄に冗長な映画ばかりが多い最近では珍しく、さっぱりとした味わいに仕上がっているからだろう。野球場のシーンでは、地元のボランティアのエキストラの方々が200名以上集まったという。多くの人に支えられた作品なのだ。
【50点】
(原題「ポテチ」)
(日本/中村義洋監督/濱田岳、木村文乃、大森南朋、他)
(さらり度:★★★★☆)
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ポテチ@ぴあ映画生活

ロボット

Boom Boom Robot DaBoom Boom Robot Da
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マサラ・ムービーならではのでたらめさが楽しい「ロボット」。あぁ、もう、頭が爆発しそう!

天才ロボット工学者のバシー博士は、10年の歳月をかけて理想のロボット“チッティ”を完成させるが、人間の感情をインプットされたチッティは、博士の恋人サナに恋してしまう。だが、サナはチッティをきっぱりと拒絶。さらに博士の怒りをかったチッティは、廃棄処分に。悪徳科学者によってゴミ処理場から拾われたチッティは、破壊チップを組み込まれてしまう。殺人プログラムと、サナへの断ち切れぬ恋心から、チッティは暴走をはじめ、殺人マシーンになって暴れまわる…。

1998年に大ヒットした「ムトゥ 踊るマハラジャ」を初めて見たときの驚きは今も忘れられない。その過剰なまでのサービス精神と極彩色の世界に、金縛り状態になったものだ。あれからテクノロジーは大きく進化し、最新のVFXを手に入れたマサラ・ムービーのパワーは、ただ事ではない。天才工学博士とロボットの一人二役を熱演するのは、「ムトゥ」にも主演していたラジニカーント。確か60歳を過ぎているはずだが、そのエネルギッシュなことといったら、さすがはインドを代表するスーパースターである。1994年のミス・ワールドで、絶世の美女のアイシュワリヤー・ラーイとの年の差ロマンスなど序の口。ターミネーターばりの激しいアクションを連発するのだから恐れ入る。それだけではない。終盤に殺人マシーンと化し、暴走するチッティは、自分のコピーを無数に量産し、合体・変形。まるで運動会の組体操のごとき形状で、大蛇や巨大ドリル、球体になって暴れまくる。奇想天外…というよりムチャクチャである。こんなアクションをいったいどうやって思いつくのだろうか。ハリウッドムービーではまずお目にかかれないVFX使いのセンスだ。しかも!この高性能の殺人ロボットが、メタボ体型でおっさん顔なのだから、笑いがとまらない。無論、マサラ・ムービーなので、絢爛豪華な歌と踊りは絶対条件。唐突にはじまるミュージカル・シークエンスは、ロボットものらしく、金と銀が多用され、目がくらみそうだ。監督は「ジーンズ 世界は2人のために」のシャンカール。完全に突き抜けた域に達した娯楽作で、でたらめさを楽しむのが正しいお作法だ。昔の泥臭いインド映画を思えば随分と洗練されたものよとしみじみしつつ、マサラ・ムービーの王道を満喫させてもらった。
【60点】
(原題「ENDHIRAN THE ROBOT」)
(インド/シャンカール監督/ラジニカーント、アイシュワリヤー・ラーイ、他)
(やりたい放題度:★★★★★)
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レンタネコ

映画『レンタネコ』 オリジナル・サウンドトラック映画『レンタネコ』 オリジナル・サウンドトラック
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猫を通して人と人との絆を描く「レンタネコ」。猫好きにはいささかビミョーな設定が気になる。

都会の片隅の平屋の一軒家で暮らすサヨコ。幼い頃から猫に好かれた彼女は、「寂しい人に、猫、貸します」と呼びかけながらレンタネコ屋を営んでいる。サヨコは、心に寂しさを抱えた人の気持ちを汲んで、猫を貸し出すのだ。そんな彼女に、上品な老婦人が「猫を貸してほしい」と声をかける…。

主人公のサヨコは、どこか浮世離れした女性で、株、占い、作曲など様々な職業と並行して、貸しネコ屋という風変わりな仕事を営んでいる。彼女は猫を貸し出す人を審査するのだが、彼らは誰もが、心に寂しさを抱えた人たち。夫と愛猫に先立たれた老婦人、単身赴任中の中年男、自分の存在意義を見出せないレンタカー屋の女性。そしてサヨコとは浅からぬ縁で、とある組織から追われるの男性。彼らは、期間限定で猫を借りることで、孤独を癒していくのだが、その孤独を“穴ぼこ”と表現するのが面白い。ゼリー、靴下、ドーナツにある穴が寂しさの象徴だなんて、なんともユニーク。こういう独特のセンスが荻上監督の個性だと思う。猫という物言わぬ同居人との暮らしからは、無償の愛を、「レンタ〜ネコ、ネコ、ネコ」というユーモラスな響きからは、ゆったりと自分を見つめなおすことの大切さが伝わるようだ。もっとも、私を含め、愛猫家に言わせれば、この癒し系のストーリーには、ちょっぴり苦言を呈したくなる。そもそも猫をレンタルするというシステムはどうなのか?!との疑問はぬぐえないし、人には決して媚びない猫の習性や、自由を愛する猫の性格をまったくストーリーに組み込まず、人間の側にだけ都合のいい癒しを追求する立ち位置には、首をかしげたくなる。つまりこれは、猫によって癒されるのではなく、人との出会いやつながりによって前向きになる物語なのだ。祖母が死んでひとりぼっちになったサヨコこそ、一番大きな“穴ボコ”を抱えた人間だったのかもしれない。
【55点】
(原題「レンタネコ」)
(日本/荻上直子監督/市川実日子、草村礼子、光石研、他)
(ユーモア度:★★★★☆)
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レンタネコ@ぴあ映画生活

キラー・エリート

キラー・エリート (ハヤカワ文庫 NV)キラー・エリート (ハヤカワ文庫 NV)
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実話をもとにした犯罪アクション「キラー・エリート」。3人のスターがそれぞれおいしい役だが、ステイサムが一番役得。

特殊任務の残酷さに疲れ、愛する女性のために稼業から身を引いた凄腕の殺し屋ダニー。だが、師匠であり良き相棒でもあったハンターを人質にとられ、やむを得ず現役に復帰する。ダニーがハンター解放の条件として請け負う仕事とは、戦争で英国特殊部隊(SAS)に息子を殺されたオマーン首長の復讐という危険なものだった。ターゲットは、国家レベルの秘密結社“フェザー・メン”によって守られているSASの兵士たち。困難な状況下、ダニーは決死の行動に出るが…。

原作は、元SAS(英国特殊部隊)隊員で、冒険家としても知られるラヌルフ・ファインズのノンフィクション小説。英国で出版されて以来、“国家レベルの秘密結社”は本当に存在するのかと物議をかもし続けているという。SASのオマーン戦争関与や、英国政府までも絡んだ極秘組織の存在有無など、どこまでが実話かはさておき、本作は、裏社会に生きる、プロ対プロのハイレベルな犯罪活劇として楽しめる。オマーン首長の復讐のリクエストは手が込んでいて、事故に見せかけて標的を殺せというもの。用意周到な計画は、少々無理な設定もあり、また、ダニーの恋人アンが不自然にストーリーにからんでくるのが違和感がある。それでも、主演のジェイソン・ステイサムは、元トップ・アスリートだけあって、CGに頼らないキレのあるアクションを披露してくれるし、中東の憎悪や欧州の損得が絡み合う政治謀略劇として見ると、なかなか興味深いドラマなのだ。ステイサムが扮するのは、クールなプロフェッショナルで、男気あふれるキャラクター。毎度おなじみの役柄なのだが、やはりこの人にはこういうキャラが良く似合う。デ・ニーロは余裕で脇にまわり、クライヴ・オーウェンは、形としては敵役なのだが、クライマックスには見せ場が用意されている。3大スターに配慮したソツのないアクション・ドラマと言えよう。
【60点】
(原題「KILLER ELITE」)
(米・オーストラリア/ゲイリー・マッケンドリー監督/ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロ、他)
(生身アクション度:★★★★☆)
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キラー・エリート@ぴあ映画生活

幸せの教室

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トム・ハンクスの監督第2作「幸せの教室」。ハリウッドお得意のウェルメイドな作品で、安心してハッピーになれる。

地元の大型スーパーで同僚や常連客からも親しまれているベテラン従業員ラリーは、ある日突然、大学を出ていないという理由でリストラされてしまう。仕事が大好きだったラリーは落ち込むが、気を取り直して、心機一転、地元の大学に通うことに。年齢も境遇も異なる生徒が集まるキャンパス・ライフを満喫するラリーだったが、そんな彼が選択したスピーチクラスの教師のメルセデスは、私生活のトラブルもあり、教えることへの情熱をすっかり失った教師だった。ラリーとメルセデスの出会いは、やがてお互いの人生を大きく変えていくことになる…。

トム・ハンクスが1996年の「すべてをあなたに」以来の監督に挑んだ本作は、彼が短期大学に通った経験から着想を得たという。主人公が通うことになるコミュニティ・カレッジ(通称CC)とは、18歳以上で高校を卒業してさえいれば、誰でも入学できる米国の大学システムのひとつ。入学試験はないが、学生は自分の目的をしっかりと持って、さまざまなクラスを選択して単位を取得する。ラリーは経済学とスピーチクラスを選び、リストラ後の再就職に役立てようという考えだ。仕事のためのステップアップは、やがて元来前向きなラリーが、自分自身の可能性を再発見することにつながっていく。トム・ハンクスほど善人が似合う役者はそうはいないが、本作でも彼の好感度がストーリーに大きな説得力をもたらしている。仕事熱心で、逆境にもメゲす、新しい仲間たちと共にさっそうとスクーターを飛ばす前向きなラリーを見ていると、いつも仏頂面でアルコール片手に暴言を吐くメルセデスが、次第に教えることへの情熱を取り戻すのが自然に思えてくるのだ。トム・ハンクスとジュリア・ロバーツはかつて「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」で共演し、今回も息があったところをみせる。物語は決して大それた成功物語ではない。失敗や悔いがある過去を美化もせず、否定もしない。欠点だらけの、でも愛すべき人間が、新しい自分に気付き、明日を信じるストーリーなのだ。ラリーとメルセデスの間に芽生えるロマンスも、控えめで上品。これから先の幸福を想像させる終わり方がさわやかで、余韻を残してくれた。
【60点】
(原題「LARRY CROWNE」)
(アメリカ/トム・ハンクス監督/トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、ブライアン・クラストン、他)
(健全度:★★★★☆)
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幸せの教室@ぴあ映画生活

キリング・フィールズ 失踪地帯



実在する犯罪多発地区を舞台にしたクライム・サスペンス「キリング・フィールズ 失踪地帯」。作品は地味だが、旬の俳優たちが豪華競演している。

テキサス州テキサスシティの殺人課の刑事マイクは、短気だが正義感が強い。NYから転属してきた相棒のブライアンは信心深く仕事熱心。そんな二人が担当するのは、少女失踪事件だ。懸命な捜査にもかかわらず手掛かりがつかめずにいたが、マイクの同僚で元妻が追う事件と彼らの事件が絡み合う。やがて新たに少女が犠牲になる事件が発生。さらに、ブライアンが気にかけ面倒を見ていた、保護観察中の少女アンが事件に巻き込まれてしまう…。

タイトルのキリング・フィールズとは、米国・テキサスに実在する犯罪多発地帯のこと。監督は、「インサイダー」や「ヒート」など、骨太の傑作で知られる巨匠マイケル・マンの実の娘アミ・カナーン・マンで、これが初長編監督作となる。ドライなタッチと重厚な演出は、徹底した作品世界構築で知られる父マイケル譲りだ。テキサスのさびれた田舎町や、湿地帯は、昼でもどこか薄暗く、そんな場所で暮らす少女たちが歌う縄跳び歌の歌詞は「油断するとゴブリン(鬼)に捕まるよ」と、何とも不気味。アンの母親は娼婦で、兄やその仲間も怪しげだ。母が商売をしている間はアンは家から追い出され、危険地帯をさまようしかない。犯人の目星が早々についてしまうことや、登場人物のキャラクター描写があいまいなこと、終盤に物語がバタバタと駆け足になることなど、不満はある。だが実際に60年前に起こった事件とは、このように矛盾をはらんだものだったのかもしれない。テキサスに実在する荒廃した犯罪多発地区の不穏な空気は、この暗いサスペンスの最大の持ち味になっている。「アバター」のサム・ワーシントン、「ツリー・オブ・ライフ」のジェシカ・チャスティンと、豪華なキャストが揃うが、何といっても、当時13歳だったクロエ・グレース・モレッツがいい。傷つきやすく、それでいてふてぶてしい表情が素晴らしく、作品毎にまったく違った顔を見せる彼女は多彩かつ多才。やはりただものではない。
【60点】
(原題「TEXAS KILLING FIELDS」)
(アメリカ/アミ・カナーン・マン監督/サム・ワーシントン、クロエ・グレース・モレッツ、ジェフリー・ディーン・モーガン、他)
(ダーク度:★★★★☆)
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キリング・フィールズ 失踪地帯@ぴあ映画生活

誰も知らない基地のこと



世界各地に存在する米軍基地の実態を取り上げたドキュメンタリー「誰も知らない基地のこと」。肝心の米国での劇場公開は、現時点では未定だそうだ。

現在、世界の約40ヶ国に700ヶ所以上の米軍基地が存在する。コソボの基地の取材から始まり、2012年に沖縄返還から40年を迎える普天間、2007年に基地拡大への反対運動が起こったイタリアのビチェンツァ、基地の建設のために島民が出ていかざるを得なかったインド洋のディエゴ・ガルシアの3箇所を中心に、基地に悩まされる住民や、各界の著名人へのインタビューを交えて、米軍基地と軍産複合体の問題を暴いていく。

めったに取材が許されないという基地だが、最初に登場するコソボのボンドスティール基地では珍しく内部を詳細に見ることができる。そこには、身体を鍛えるジムやファストフード店のバーガーキング、映画館などの娯楽施設が完備し、広報担当者の説明や対応は実にソツがない。多くの民間企業が入り込み、まるで商業施設のようで驚かされた。アメリカでは戦争と産業はほとんど同義。この記録映画は、都合が悪いことはほとんど表ざたにしない基地の実態を詳細に追った力作なのだ。中でも、インド洋のディエゴ・ガルシアの島民が「基地を作るから危ない」という理由で追い出され、今そこで米兵たちがリゾート気分で過ごしている様子は、初めて知る事実で、怒りというよりあきれてしまう。インタビューに答えるのは、学者や退役軍人、思想家のノーム・チョムスキーや、作家のゴア・ヴィダルなどの著名人だが、やはり強く印象に残るのは、沖縄で静かな抗議運動を続ける住民たちだ。大学構内のヘリの墜落、米兵による婦女暴行、騒音問題など、沖縄の問題には解決策はまったく見えてこない。しかも他地域に比べ、沖縄の基地は住民が暮らす街のド真ん中にあるという理不尽。むろん、基地に依存せざるをえない住民の声を拾っていないことなど、偏った部分も見受けられる。だが“抑止力”という言葉のからくりや、石油ルートに沿って基地が建設されたということ、米国内には他国の基地は存在しないという指摘など、まさに“知らなかったこと”だらけで、はっとさせられた。共同監督のエンリコ・パレンティとトーマス・ファツィは、資金難などもあり、製作には3年の月日を費やしたそうだ。まだ30代の若い映画人が、戦争の前後にある基地という問題にフォーカスし、改めてなぜ基地が存在するのかを問うたことが、何よりの功績だろう。
【60点】
(原題「STANDING ARMY」)
(イタリア/エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ監督/ゴア・ヴィダル、ノーム・チョムスキー、チャルマーズ・ジョンソン、他)
(まずは知るべき度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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