映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ドリーム」「亜人」「僕のワンダフルライフ」etc.

プチレビュー13上旬

アンコール!!

アンコール!! Blu-ray
頑固な老人が愛する妻のために歌声を披露するヒューマン・ドラマ「アンコール!!」。変化を恐れない人はいくつになっても幸せになれるのだ。

ロンドンに住むアーサーは気難しい、筋金入りのがんこ爺さん。息子ジェームズともギクシャクしている彼だが、唯一心を許すのが、車椅子生活ながら、陽気で社交家の妻マリオンだ。ある時、マリオンが趣味で参加している合唱団が国際コンクールの予選に挑戦することになるが、マリオンはガンが再発し倒れてしまう。歌えなくなったマリオンを元気付けようと、アーサーは意を決して合唱団に参加することになるのだが…。

涙あり笑いあり、そして歌ありのヒューマン・コメディは、監督の家族の体験をもとにしているという。老人が主人公だが、まるでシニア版の「gleeグリー」のように生き生きとしている物語だ。陽気で歌好きな老人たちで結成された合唱団は、その名も“年金ズ”。アーサーは頑固者だが、彼を愛してやまない妻マリオンだけには笑顔をみせる。アーサーは、やがてマリオンが自分より先に逝くことを知っていて、それが怖くてたまらないのだ。余命わずかなマリオンがアーサーに歌ってほしいと懇願するのは、自分と正反対の性格ながら心根は優しいアーサーが、自分がいなくなった後も生きる希望を持って、息子らとともに幸せに生きてほしいと願っているからである。マリオンがソロで歌う「トゥルー・カラー」は“私にはあなたの本当の色が見える。怖がらないで本当の色を見せて”と歌い上げる。深い夫婦愛を感じさせるこの名曲のほかにも、劇中にはシンディ・ローパーやビリー・ジョエルなど、ちょっと懐かしい楽曲がたくさん登場する。何より、年金ズが歌う曲が老人らしい静かな曲ではなく、ちょっぴり過激な歌詞のロックやラップというところが面白い。アーサーがステージに上がるクライマックスは感動的だが、彼が実は歌が得意だったという伏線が弱いのが気になる。だが、本作のメッセージである生きる希望は、コンクールの結果や歌の良し悪しよりも、その後のアーサーの変化の中にこそ込められているのだ。クセのある役柄を演じてきた名優テレンス・スタンプが、愛すべき頑固爺さんを苦虫を噛み潰したような表情で好演している。
【65点】
(原題「SONG FOR MARION」)
(イギリス/ポール・アンドリュー・ウィリアムズ 監督/テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジェマ・アータートン、他)
(夫婦愛度:★★★★☆)
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アンコール!!@ぴあ映画生活

ハングオーバー!!! 最後の反省会

ハングオーバー!!! 最後の反省会 ブルーレイ&DVD(2枚組)(初回限定生産) [Blu-ray]
ハングオーバー!!! 最後の反省会 ブルーレイ&DVD(2枚組)(初回限定生産) [Blu-ray] [Blu-ray]
酔っ払ってはバカをやらかす大ヒットコメディシリーズの第3弾にして完結編「ハングオーバー!!! 最後の反省会」。なんだかフツーにまとまってしまった。

タイの刑務所にいるアジア系ボスのチャウは、まんまと刑務所を脱獄。同じ頃、トラブルばかり起こすアランの暴走に堪忍袋の緒が切れた周囲は、アランを施設に収容しようと決意する。だが、フィル、ステュ、アランの義兄のダグらが彼を病院へと送る途中、大物ギャングのマーシャルに襲われ、ダグを人質にとられてしまう。ダグを返してほしければ、金塊を盗んだチャウを連れて来いとムチャな命令が下されるが…。

無駄にイケメンなフィル、マヌケな歯医者ステュ、大迷惑なヒゲデブのアラン。彼らこそ、1作目はラスベガス、2作目はタイで酔っ払っては記憶を失くし「なんでこーなるの?!」的な珍騒動を巻き起こした、おバカ三人組だ。完結編の本作は、彼らのホームグラウンドであるロサンゼルスでトラブルに巻き込まれる。本作の裏主人公はアジア系ギャングのミスター・チャウで、彼がアランとメル友だったことからコトは始まる。だが、このシリーズのお約束で一番の魅力である“酔っ払った挙句に失くした記憶”をたどる面白さがない。チャウが盗んだ金塊を大物ギャングが素人に探させるというのも、かなり無理がある。とはいえ、おバカぶりは健在で、いわくありげな他人の家に忍び込んだり、警察のやっかいになったり、あげくの果てに、トラブルの原点であるラスベガスへと戻り、不夜城の見事な夜警を背景に空中浮遊というアクションまで登場するからたいしたものだ。もちろん、数え切れないトラブルの果てにめでたしとなるのだが、終わってみればこの第3作は、穀潰し息子アランの成長記。ついに運命の女性に巡りあって、マトモになる決心をするというのは、非常識な友情コメディにしては普通すぎると思うのは私だけだろうか。嬉しいのは、1作目で登場したヘザー・グラハム演じるストリッパーのジェイドと愛息が再登場すること。登場時間は短いがシリーズを見守ってきたファンへの心憎いサービスかもしれない。それにしても、ほんとにほんとに最後なの? エンドロール後のワンシークエンスにはさらなるトラブルも垣間見えるが、まぁ、ここらあたりが潮時だろう。
【55点】
(原題「THE HANGOVER PART III」)
(アメリカ/トッド・フィリップス監督/ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、他)
(成長物語度:★★★★★)
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ハングオーバー!!! 最後の反省会@ぴあ映画生活

ハル

最愛の人を失った人間とロボットとの心の交流を描くSFアニメ「ハル」。近未来的設定と古風な京都の暮らしのミスマッチを味わいたい。

近未来の京都。最愛の人、ハルを飛行機事故で失ったくるみは、ハルとけんか別れしたままの自分を悔い、生きる力を失って心を病んでいた。くるみの笑顔を取り戻すため、ヒト型ロボットQ01(キューイチ)が、ハルそっくりの“ロボハル”として一緒に暮らすことになる。最初は心を閉ざしていたくるみだったが、ハルがくるみが願い事を書いたルービックキューブの色をそろえるたびに、少しずつ打ち解け、頑なだった心もほぐれていく…。

原作は咲坂伊緒の人気漫画。プロダクションI.Gから独立し、制作されたアニメスタジオ、WIT STUDIOが作画を手がけたアニメーションが本作だ。物語は人とロボットの奇跡のようなラブストーリーである。近未来ではロボットが介護を担うなど、生活に溶け込んでいることが基本背景にあり、ケアセンターの荒井博士がハルを作ったこと、人間のハルが幼い頃奴隷同然の環境から仲間のリュウと逃げたこと、貧困の中での生活からお金が第一と考えて、恋人のくるみが大切にしている“思い出の品物”を無常に売り飛ばしたことなどが判ってくる。同時にハルとくるみの幸せな日々の回想や、仲間のリュウとはなにやら危険な状態にあることもぼんやりと判明していく。何しろ上映時間が約1時間と短いので、ストーリーはかなり乱暴に進んでいくのが気になった。とはいえ、丁寧なビジュアルは好感が持てる。何より、ロボットが生活の一部となっている近未来に、京都の古い町並みや日本情緒あふれるアイテムというミスマッチが不思議な魅力になっている。物語は中盤に大きな仕掛けが隠されていて、深い心の傷を負った人間が、大切なものを守ることで再生し、生きる力を取り戻すラストへとつながっていく。もっとも個人的には、最愛の人を失った人間に対して、そっくりさんのロボットをあてがうという発想そのものが、何か間違っている気がしてならないのだが、それは言ってはならないお約束なのだ。Production I.Gやマッドハウスの作品で手腕を発揮してきた牧原亮太郎の初監督作だが、中編という中途半端な長さでは、難しさもあったはず。長編次回作に期待したい。
【55点】
(原題「ハル」)
(日本/牧原亮太郎監督/(声)細谷佳正、日笠陽子、宮野真守、他)
(日本情緒度:★★★★☆)
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ハル@ぴあ映画生活

ハード・ラッシュ

ハード・ラッシュ [Blu-ray]
伝説の運び屋が家族を守るため大勝負に出るアクション「ハード・ラッシュ」。悪役に魅力がないのが難点。

クリスはかつては国際的に暗躍する超一級の運び屋として裏社会に名を馳せていたが、今は、足を洗い、家族とともにつつましくも幸せに暮らしていた。だが義弟がコカイン密輸に失敗したため、ギャングから負債を押し付けられる。家族の命を守るための唯一の方法として、クリスは“ニセ札密輸”を計画。実行するため、刑務所にいる父や、親友に協力を仰ぎ、仲間とともに貨物船でパナマへと向かった。しかしそこでは、地元警察やマフィアなど、すべての者がクリスの目的を阻もうとする。クリスは彼ら相手に一大トリックを仕掛けるが、行く手には思わぬ罠が待ち受けていた…。

最近では「テッド」の大ヒットのおかげで、三枚目路線に傾いていたマーク・ウォールバーグ。もともとのイメージであるアクション映画へ戻ってきたのが本作だ。ただし、仲間とともに華麗なトリックであっと驚く完全犯罪を企てる痛快作というより、しがらみから闇家業に復帰した主人公が、裏切りやアクシデントの中で、泥臭くも捨て身の勝負に出る物語である。主人公クリスは男気あふれる性格だが、義弟アンディは犯罪者としても堅気の人間としても中途半端だし、親友のセバスチャンも何やら怪しい。一大トリックには信頼できる仲間が必須条件なのに、彼の周りは頼りにならないヤツらばかりで、別の意味でハラハラする。ギャングやパナマのマフィア、そして思わぬ裏切り者と、悪役キャラに強烈な個性がないのも迫力不足だ。パナマでの、マフィアとの取引はハプニングの連続で、ニセ札ばかりか名画強奪という事件まで起こってしまう。事件の発端やクリスの綿密な計画は、序盤は断片的でかなり判りづらいし、後半の展開は出たとこ勝負というより破れかぶれの作戦にしか思えない。それでも終盤はつじつまが合うし、ラストにはちょっとした爽快感も。何より、裏切り者を始末するのが、闇社会から足を洗うと決めた主人公ではなく、息子が堅気になったことを誇りに思っている、刑務所の中にいる父親というのがいい。巨大な貨物船を密室に仕立てた舞台設定がユニークだった。
【55点】
(原題「CONTRABAND」)
(アメリカ/バルタザール・コルマウクル監督/マーク・ウォールバーグ、ケイト・ベッキンセール、ベン・フォスター、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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ハード・ラッシュ@ぴあ映画生活

しわ

しわ [Blu-ray]
老いと認知症を扱った異色のスペイン製アニメーション「しわ」。シンプルなセルアニメの魅力に改めて気付かされる。

元銀行マンのエミリオは、認知症の症状が見られるため、息子夫婦から養護施設に送られる。エミリオは、お金に細かく抜け目のない同室のミゲルや、孫のためにバターやティーバックを集めるアントニアらと、次第に心を通わせる。ある日、アルツハイマーのモデストの薬と自分の薬を間違えられたエミリオは、自分もアルツハイマーであることに気付いてしまう。ショックで症状が進行した彼を助けようと行動を開始したのは、したたかで小ズルい性格のはずのミゲルだった…。

原作はスペインの漫画家パコ・ロカの「皺(しわ)」。イグナシオ・フェレラス監督は、幼い頃に日本のアニメを見て強く影響されたのだそうで、日本のオムニバス映画「東京オンリーピック」にも参加した若手実力派のアニメーターである。本作は、スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で長編アニメーション賞と脚本賞の2冠を達成した話題作だ。アルツハイマーを患う老人たちが暮らす施設では、ユニークな老人たちがそれぞれの思い出を持って、日々の暮らしを送っている。1階は穏やかな老人ホームの様相だが、重症の患者は2階へと送られ、主人公のエミリオはそれが怖くてたまらない。老い、認知症、終の住処、現実逃避に居直り、そして死と、残酷な現実を淡々と描いていくが、不思議と悲壮感はない。現代では逆に新鮮な、のっぺりとしたセルアニメのシンプルな描線が、温かさをかもし出しているのがその理由だ。さらに、物語の随所にほのかなユーモアや、時空を超える演出もあって、ファンタジーのような雰囲気もある。苦悩するエミリオに、皮肉屋のミゲルは「ここではきれい事は通用せんぞ」と冷たく言いながらもアルツハイマーの症状が進んだ彼を懸命に助ける。ラストは悲しくやるせないが、現実から決して目をそらさないミゲルこそ、この物語の真の主人公なのだ。虚無的だったミゲルの変化と奥に秘めた優しさに思わず泣けた。手描きセルアニメの素朴なタッチが、誠実でゆったりとした本作に見事なほどマッチしている。地味な題材だが、温かい余韻を残す秀作だ。
【70点】
(原題「ARRUGAS」)
(スペイン/イグナシオ・フェレラス監督)
(社会派度:★★★★☆)
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しわ@ぴあ映画生活

殺しのナンバー

スパイ・コード 殺しのナンバー [Blu-ray]
極秘指令を発信する“乱数放送”を扱った異色サスペンス「殺しのナンバー」。地味な内容だが、素材の面白さと静かなリアリズムがある。

CIAの敏腕エージェントのエマーソンは任務中に目撃者を消すことをためらったミスのため、イングランド東部の人里離れたCIAナンバーズ・ステーション(乱数放送局)に左遷される。そこでの任務は、暗号作成のエキスパートで送信係の女性キャサリンを護衛すること。仕事は平凡だが、心に傷を負ったエマーソンは、キャサリンの温かな人柄に触れ、次第に人間らしさを取り戻していく。だが、ある日、70年間事件など起こらなかった放送局が、謎の武装集団に襲撃された上、世界中の重要な諜報員を暗殺するという偽の指令が送られてしまう事件が発生。間一髪で襲撃を逃れた二人は、なんとかその指令を取り消そうと奔走するが、CIA本部からの指令は、内部事情を知りすぎたキャサリンを抹殺せよという非情なものだった…。

乱数放送とは、特定の時間に謎の数字や文字を送る放送で、各国の諜報機関などがエージェントに指令を暗号化して送信するもの。公共電波をシレッと使って、暗殺、テロ、クーデターなどのトンデモない極秘指令が送られているというからビックリだが、無論、どの国もその存在を認めることはない。乱数放送は、世界のスパイ活動の必須ツールだが、映画にするとなると、機械の前で暗号をコツコツと操るという、ビジュアル的にきわめて地味な作りになる。そんな本作では、謎の武装集団の目的がわからず、困惑する主人公が危機を乗り越えていくプロセスがスリリングだが、描かれるのは、組織の非情な体質だ。敏腕エージェントといえども、歳をとれば使い捨て。サラリーマン社会でのリストラは、スパイの世界では死を意味するのだから、たまらない。非情な掟への憤りは、武装集団の犯人の動機から、そしてキャサリン暗殺を指令したCIA幹部の決断を聞いた主人公からもにじみ出る。すっかりサスペンスの顔と化したジョン・キューザックが、今回も、暗いキャラクターで静かに熱演。派手な立ち回りやワイヤー・アクションではなく、あくまでもリアルに徹した銃撃戦や、イングランドのド田舎の旧アメリカ軍基地内に隠された乱数放送局があるというのも妙にリアルだ。何より、どの国も認めないが実際は「日本人拉致事件」や「大韓航空機爆破事件」の金賢姫元工作員への指令にも使われたと言われる乱数放送を本格的に扱った素材の面白がある。華やかさはないが、なかなか渋いサスペンスだった。
【55点】
(原題「THE NUMBERS STATION」)
(イギリス/カスパー・バーフォード監督/ジョン・キューザック、マリン・アッカーマン、リーアム・カニンガム、他)
(地味度:★★★★★)
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殺しのナンバー@ぴあ映画生活

100回泣くこと

100回泣くこと Blu-ray&DVD愛蔵版 (初回限定生産)(オリジナル・レインボー・ミニタオル(Amazon.co.jpオリジナルカラー)付き)
記憶の一部を失った青年と余命僅かな恋人の切ないラブストーリー「100回泣くこと」。設定の無理はこの際忘れて、泣きたい人には最適な1本。

4年前のバイク事故で記憶障害が残り、事故以前の1年間の記憶を失った藤井は、友人の結婚式で佳美と出会い、恋に落ちる。実は佳美は藤井の恋人だったのだが、彼女はその事を打ち明けず、藤井からプロポーズされても、「1年間、結婚の練習をしよう」と言い、一緒に暮らし始めた。幸せな時は続くかと思われたが、佳美に病魔が忍び寄る…。

原作は中村航のベストセラー小説。逆行性健忘症という脳の病は実在し、実話をもとにした米映画「君への誓い」でも描かれていた。つらいのは忘れられた方で、この映画でも恋人の記憶から抜け落ちてしまったヒロインの佳美は、辛抱強く再会の時を待ち、もう一度恋に落ちる努力をする。過去を隠しながらの新しい恋は、嬉しいと同時に、失う怖さをも知っていて不安だらけだ。これだけでも涙ものなのだが、この物語は、涙腺直撃の仕掛けがたくさんある。周囲は二人のためと思って過去を語らず、それは結果として嘘をつくことになるのだが、藤井と佳美の過去を知る友人が「それが本当にいいことなのか」と疑問を投げかけるのも当然だ。このあたりの設定はかなり不自然で、ダメでしょう、というか、無理でしょう、普通、と言いたくなる。たとえどんな過去でも知りたいと願う藤井に対し、佳美はかつて味わった悲しみを二度と繰り返したくない。その上、佳美は重い病に…と、「泣け!」と言わんばかりの展開は、メロドラマの王道そのものだ。だが、演出は過剰な音楽や大げさな演技はなく、むしろ淡々としていて、好ましい。もともと細身の桐谷美玲はさらに痩せ、関ジャニ∞の大倉忠義もスタントなしで大型バイクを運転するなど、主演二人も頑張っている。運命の再会という“偶然”と、死という“必然”が対比する悲恋だが、穏やかなラストシーンには不思議と心が癒された。
【45点】
(原題「100回泣くこと」)
(日本/廣木隆一監督/大倉忠義、桐谷美玲、ともさかりえ、他)
(純愛度:★★★★☆)
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さよなら渓谷

さよなら渓谷 [Blu-ray]
最悪の形で出会った運命の相手との愛憎を描く「さよなら渓谷」。“裏”主人公は監督の実弟の大森南朋演じる記者だ。

緑豊かな渓谷で、幼児が殺害され母親が逮捕されるというショッキングな事件が起こる。母親の逮捕で事件は解決したかに思えたが、隣家に住む尾崎俊介が母親と不倫関係にあると通報され、共犯の可能性が浮上した。通報したのは俊介の内縁の妻かなこ。なぜ妻が夫を告発したのか。なぜ夫婦は世間に背を向けるように暮らしているのか。事件を追う週刊誌記者の渡辺は、尾崎夫妻を調べるうちに15年前に俊介が犯した罪が二人を結び付けていることを知る…。

日本には“腐れ縁”ものという映画ジャンルが伝統的に存在する。成瀬巳喜男のシリアスドラマ「浮雲」や豊田四郎のペーソスあふれる人情劇「夫婦善哉」などがそのジャンルの一級の代表作だ。一緒にいても幸せにはなれないと知りながら、離れることができない男女。こういう奇妙な関係が逆に強固な絆となる歪んだ恋愛は、見ていて息苦しいが、本作もまたヒリヒリと灼けつくような痛みを感じる。俊介とかなこは、15年前の集団レイプ事件の加害者と被害者なのだ。あえてネタバレしてしまうのは、本作の主軸が過去の事件の謎解きにはないからである。事件は、かなこばかりか俊介の人生さえ狂わせてしまうのだが、この男女は、その忌まわしい出来事を隠す必要がない唯一の相手という意味で、一番“自然”でいられるのだから皮肉なものだ。しかも最悪の出会いをした彼らは悲しいことに運命の相手で、決して離れては生きていけない。壮絶な“業(ごう)”である。週刊誌記者の渡辺もまた、スポーツ選手として挫折し、人生の方向性を見失っている男だが、この歪な純愛を貫く男女に寄り添うことで、生きる力を取り戻していく。この記者の存在が、観客の目となって一筋縄ではいかない男女の愛憎の糸をほぐしていく仕掛けだ。主演の真木よう子が、ヒロインの複雑な感情を、セリフではなく、官能的な演技と繊細な表情の変化で演じていて好演。ねっとりしているはずの夏の暑さの中でも、登場人物たちがどこか涼しげなのが、ビジュアル的には惜しい。それでも、本作の「さよなら」は再びの出会いの始まり。この物語は、ハッピーエンドなのだと思える。
【65点】
(原題「さよなら渓谷」)
(日本/大森立嗣監督/真木よう子、大西信満、鈴木杏、他)
(運命の相手度:★★★★☆)
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さよなら渓谷@ぴあ映画生活

アフター・アース

アフター・アース(初回生産限定) [Blu-ray]
伝説の兵士とその息子のサバイバルを描くSFアクション「アフター・アース」。ハリウッドが伝統的に得意とする父と子のドラマだが、シャマラン監督らしさはまったくない。

人類が別の惑星に移住してから1000年が経った西暦3027年。恐怖心をコントロールできる伝説の戦士サイファと、その息子で、父にあこがれながらも、父との間に距離を感じている13歳のキタイの乗った宇宙船は、事故により見知らぬ惑星に不時着する。そこは、かつて人類が捨てた地球で、今や“最上級危険惑星”となった恐ろしい場所だった。大怪我を負って動けない父に代わり、帰還に必要な緊急シグナル“ビーコン”を捜すため、キタイは荒れ果てた大地へと足を踏み入れるが、彼の前には未知の生物や想像を絶する危険が待ち受けていた…。

ウィル・スミスと実子ジェイデン・スミスが「幸せのちから」以来7年ぶりの親子共演を果たしたSF大作だ。主人公たちが不時着した地球は、一見、緑あふれる豊かな大自然が広がる惑星だが、そこはもはや人類が住むことを拒否する場所。だが物語は、未来の地球は、人類を抹殺するべく進化しているというユニークな設定を、生かしきれていない。人類は異生物とそれらが作った武器“アーサ”と戦っているという設定だが、このアーサは人間の恐怖心を匂いでとらえて攻撃する新型兵器。つまり恐怖をコントロールできるものだけが伝説の兵士になれるというわけで、本作は地球そのものの危険を描くSFというより、未知の敵と戦うときの恐怖と立ち向かうキタイの成長物語といえるだろう。同時に、キタイの姉、センシの死に対して共に責任を感じている父子が、互いの心をさらけだし和解するドラマでもある。監督はM・ナイト・シャマランだが、「シックス・センス」のようなホラーやどんでん返し的なひねりはなく、死んだ姉が幻影として現れる場面にわずかに“らしさ”があるだけ。VFXで創造された未知の動物たちとの戦いはSFアクションとしては楽しめるが、シャマラン風味のスーパーナチュラルなテイストは期待してはいけない。何しろストーリーの原案はウィル・スミス本人なので、シャマランらしさは皆無なのだ。サバイバル劇のほとんどがウィルとジェイデンの二人芝居。父ウィルが“静”の芝居に徹し、息子ジェイデンに華を持たせた“父子もの”映画として楽しむべきだろう。
【50点】
(原題「AFTER EARTH」)
(アメリカ/M・ナイト・シャマラン監督/ウィル・スミス、ジェイデン・スミス、ソフィー・オコネドー、他)
(驚き度:★★☆☆☆)
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二流小説家 シリアリスト

二流小説家 シリアリスト(コレクターズ・エディション) [Blu-ray]
売れない小説家がにわか探偵になって事件を解決する「二流小説家 シリアリスト」。思わせぶりなキャラクターが多数いるが謎解きは案外まっとうだ。

売れない中年小説家の赤羽一兵のもとに、12年前に連続猟奇殺人事件を起こし死刑が確定して獄中にいる呉井大悟から告白本の執筆を依頼する手紙が届く。この仕事を引き受ければ、一流の小説家になれる。そう考えた一兵は呉井に面会に行くが、そこで呉井は「自分と自分の信者の女性たちをモデルにした官能小説を、自分のためだけに書け。そうすれば事件の内容を話して聞かせる」という条件を出す。しぶしぶ承知する一兵だったが、彼が女性たちに取材にいくとその先々で、12年前の事件と同じ手口の殺人事件が起こる…。

原作は、デイヴィッド・ゴードンの同名小説。日本の海外ミステリランキングで史上初の三冠に輝いた人気作だ。売れない小説家とカリスマ死刑囚。主人公である二流の一般人が“一流の犯罪者”に出会い、事件に巻き込まれ、自らの無実を証明するために奔走する姿を追うストーリーだ。女性の頭部を切り落とした裸体を真っ赤なバラの花びらで飾り立て、写真に収める呉井は“シリアル・フォト・キラー”と呼ばれ、多くの信者(ファン)がいる。自分を一流のアーティストだと信じている呉井には、独自の美意識、価値観、さらに秘められた過去がある。一兵がひとつ謎を解決するたびに、新たな謎や事件が浮かび上がる展開は、かなりスピーディだ。謎めいた行動を取る遺族の美女、呉井が憎む里親の老婆、呉井の無実を主張する高圧的な態度の女性弁護士と、周囲は怪しい人物だらけ。さらに事件が起こるたびにエキセントリックになっていく呉井の真意と彼を呪縛する暗い過去と、焦点があちこちに飛びながら、ラストのどんでん返しに突入する。とはいえ、謎解きそのものは、終わってみれば、さしてひねりがあるわけではない。むしろ、一兵も呉井も互いに本音と打算を駆け引きしながら向き合うため、彼らの面会室での一対一のやりとりの方が、エキサイティングな場面に思えた。特殊能力などない普通の人物が、徹底的に病んだキャラクターと向き合うことで、二流のもの書きに甘んじていたぬるい日常を脱却し、命がけで“書く”情熱に目覚めていく。このミステリーの極意は、そんな主人公の内面の変化にある。上川隆也と武田真治が熱い演技バトルを繰り広げるが、曇天や霧など、どこか幻想的な自然描写が謎めいたストーリーを効果的に演出していた。
【65点】
(原題「二流小説家 シリアリスト」)
(日本/猪崎宣昭監督/上川隆也、武田真治、片瀬那奈、他)
(どんでん返し度:★★★☆☆)
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二流小説家−シリアリスト−@ぴあ映画生活
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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