映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

プチレビュー15下旬

ディーン、君がいた瞬間(とき)

ディーン、君がいた瞬間 [DVD]
1955年、マグナム・フォトに所属する野心的な若手カメラマン、デニス・ストックは、あるパーティーでジェームス・ディーンという無名の俳優と出会う。彼がスターになることを確信したストックは、LIFE誌に掲載するための密着撮影を持ち掛ける。とらえどころのないディーンを追って、LA、NY、ディーンの故郷インディアナまでともに旅をするストック。最初はぎこちなかった二人は、次第に互いの才能に刺激され、心を開いていく…。

偉大な映画スター、ジェームズ・ディーンと天才写真家デニス・ストックとの出会いを描く青春ドラマ「ディーン、君がいた瞬間(とき)」。わずか3本の主演作で、伝説になったディーンは、本作では華やかなハリウッドに身を置いてはいるが、恋人との私生活もままならない、無名の新人だ。一方、後にやはり天才写真家と呼ばれるデニス・ストックもまた、この頃は、もっと世界をアッと言わせる写真を撮らねばならないと焦る新人で、離れて暮らす幼い息子とどう向き合っていいかわからない不器用な若い父親である。映画は、この二つの才能が出会い、やがて二人の運命を変えることになる、雨のタイムズスクエア前の歴史的写真が生まれるまでを、描いていく。ディーンといえば、反逆の青春、傷つきやすいヒーローといったイメージだが、故郷でみせるやわらかい表情などはとても新鮮。鋭い目つきは似ているが、決して顔だちは似ていないデイン・デハーンが、思いがけず好演する。監督のアントン・コービンは自身も有名写真家というだけあって、写真撮影の演出がとてもリアルだ。特に、苦悩するディーンにカメラを向けシャッターを切る行為は、ある意味、非情ともいえる。だが私たちは、ディーンがわずか24歳でこの世を去ってしまうことを知っているのだ。シャッターの音は、ディーンという伝説を永遠に忘れないという儀式に思えた。本作を見終わったら、ぜひディーンの主演作に触れてほしい。
【60点】
(原題「LIFE」)
(カナダ・独・豪/アントン・コービン監督/デイン・デハーン、ロバート・パティンソン、ジョエル・エドガートン、他)
(青春映画度:★★★★☆)
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完全なるチェックメイト

完全なるチェックメイト [Blu-ray]
1972年、アイスランドの首都レイキャビクで開催されたチェスの世界王者決定戦で、アメリカの若き天才ボビー・フィッシャーと、ソ連の最強王者ボリス・スパスキーが対戦する。フィッシャーはIQ187を誇る天才プレイヤーだったが、その言動には奇行が多く、気に入らないことがあると試合を放棄することさえあった。米ソ冷戦の真っただ中に行われたこの対戦は、国家の威信をかけた両国の代理戦争でもあったことから、世界中の注目が集まる。対局1局目はスパスキーが完勝。フィッシャーは2局に現れず、その後の対局は、フィッシャーは絶対不利と見られたが、極限状態の中で彼は信じられないような戦略をうちたてる…。

変わり者の天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの実話を描く「完全なるチェックメイト」。フィッシャーのことは映画「ボビー・フィッシャーを探して」でも描かれたが、かつて日本でも暮らしていた経緯があり、チェス界から忽然と姿を消すなど、彼の存在そのものが伝説と化している。天才というより神経衰弱と呼びたいフィッシャーは、エゴイストで誇大妄想、自信家でエキセントリックという常識の枠から離脱した人物だ。究極の対戦となると、当然それに拍車がかかる。奇人フィッシャーVS威厳ある王者スパスキーという構図だが、実はスパスキーにも静かな狂気が。つまりチェスというのは、頭脳戦であり、心理戦でもあり、プレイヤーの人格を破壊しかねない“戦争”なのだ。しかも本作で描かれる対戦は、米ソの代理戦争という政治戦という意味まであって、これでは天才じゃなくても、神経が持たない。フィッシャーを演じるマグワイヤの怪演、スパスキー役のシュレイバーの威厳と、役者陣はみな熱演。エドワード・ズウィック監督の演出も緊張感があって素晴らしい。チェスのルールなどはほとんど説明しないし、米ソ代理戦争の政治的演出も極力控えめ。おかげであまりにも個性的なボビー・フィッシャーその人の人物がより際立った。
【70点】
(原題「PAWN SACRIFICE」)
(アメリカ/エドワード・ズウィック監督/トビー・マグワイア、リーヴ・シュレイバー、マイケル・スタールバーグ、他)
(エキセントリック度:★★★★☆)
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クリード チャンプを継ぐ男

「クリード チャンプを継ぐ男」オリジナル・サウンドトラック(スコア)
ボクシングのヘビー級チャンピオンだったアポロ・クリードの息子、アドニスは、保険会社の堅実な仕事を辞めてフィラデルフィアへ向かった。今は亡き父と伝説的な戦いを繰り広げた、ロッキー・バルボアに会うためだった。アドニスは老いたロッキーを捜し出すと、トレーナーになってほしいと頼む。最初は、もうボクシング界から引退したからと断るが、アドニスの中にアポロと同じ才能とファイティング・スピリッツを見出したロッキーは、トレーナーを引き受けることを決心する…。

名作ボクシング・ドラマ「ロッキー」シリーズのスピンオフともいえる「クリード チャンプを継ぐ男」は、ロッキーのライバルで親友だったアポロの息子アドニスという、思いもよらない変化球でスタートする。擬似親子のような関係のドラマや、老ロッキーの苦悩、アドニスのロマンスや成長物語も用意して、新しいファンも、往年のファンも納得する作りだ。ライアン・クーグラー監督はまだ若いが、秀作「フルートベール駅で」でみせた丁寧な演出が光っている。面白いのは、物語の中で不在であるアポロの存在感の大きさだ。鳥を追いかける練習法や星条旗のトランクスなど、心憎いアイテムや演出もたっぷりある。もちろん、ファイトシーンは迫力で、親の七光りと呼ばれたアドニスが驚くべき才能をみせ、次第にスタジアムの観客を味方につける展開は「ロッキー」と同じ。一方で、オマージュをささげながらも、現代ならではの変化もある。病におかされた老ロッキーはもはや、フィラデルデイアの階段を駆け上ることはできなくなったが、ゆっくりと、でも確実に階段をのぼる姿は、穏やかな神話のようだ。新シリーズの続編制作の話もあるとか。世代を超えた熱いファイトに、感動を覚える。
【85点】
(原題「CREED」)
(アメリカ/ライアン・クーグラー監督/シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、他)
(擬似親子度:★★★★★)
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スター・ウォーズ/フォースの覚醒

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 MovieNEX(初回限定版) [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
映画ファンのみならず、全世界を巻き込んだ一大エンタテインメントの様相を呈している「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、エピソード7。A long time ago…で始まるテロップとおなじみの音楽が鳴り響けば、否が応でも胸が高まる。エピソード6から30年後の殺伐とした世界で、孤独なヒロインのレイと敵方の脱走兵士フィンを新キャラに、旧作の主要キャラクター、ハン・ソロ、レイア、チューバッカらがからんで、新たな物語が描かれる。ストーリーはあえて書かない(…というか明かすことは禁じられている)が、何しろ、今、現在の最高の技術を駆使して、映画史でも最も有名で人気の作品の新シリーズを紡ぐことは、決して簡単ではなかったはず。だが、「スター・ウォーズ」ファンを公言するJ・J・エイブラムス監督は見事にやってのけた。

「スター・ウォーズ」の物語のエッセンスは、善と悪の対立や、スピース・オペラ的活劇の楽しさなど。中でもドラマで重要なのは、親子関係だ。本作でももちろんそれは、悪役カイロ・レンを動揺させる要素として登場する。新ヒロインのレイにしてもいなくなってしまった家族を待っているという設定。ただ、レイの背景に関しては、まだまだ謎が多い。これは、今後、新シリーズの中で明かされていくのだろう。

一方で、悪の軍事組織(ファースト・オーダー)も、それに対抗するレジスタンス軍も、ともに探すのは、行方が分からない伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカー。レイやフィンにとっては、ジェダイやフォースの力は、すでに伝説としてしか認識されていない。この神話的感覚が、本作で初めて「スター・ウォーズ」に触れる若いファンの持つイメージと重なっているのがうまい。

いずれにしてもSF活劇の楽しさが十二分につまった極上のエンタテインメントだ。エピソード8と9の公開にはもう少し時間が必要だが、今からたまらなく待ち遠しい。
【85点】
(原題「STAR WARS: THE FORCE AWAKENS」)
(アメリカ/J・J・エイブラムス監督/ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライバー、他)
(興奮度:★★★★★)
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アンジェリカの微笑み



ポルトガルのドウロ河流域の小さな町。ここに暮らすカメラが趣味のユダヤ人青年イザクは、ある富豪からの依頼を受け、亡くなったばかりの美しい娘アンジェリカの写真を撮影することになる。屋敷に出向き、カメラを向けると、白い死に装束に身を包み、花束を手に抱えて横たわる死んだはずの美しい娘アンジェリカは、突然、まぶたを開き、ファインダー越しにイサクに微笑みかけた。それ以来イサクは彼女に心奪われ恋におちてしまう…。

2015年4月2日に106歳で他界したポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラによる幻想的な恋物語「アンジェリカの微笑み」は、日本の怪談「雨月物語」を連想させる不思議な純愛物語だ。死んだはずの美女に恋する青年が、この世とあの世の境界線をふわりと超えていく手段として使われるのは、一瞬を切り取る写真。絶世の美女アンジェリカをとらえるそのカメラは、葡萄畑を耕す農民たちの素朴な姿をもとらえる。ここでも生と死がごく自然に入り混じっている。印象的なのは、イサクとアンジェリカが抱き合ったまま幸福感いっぱいに空中を浮遊するシーン。ハイ・クオリティなCG全盛のこの時代に、無声映画のようなレトロでキッチュな特撮(トリック撮影だが、あえて特撮と呼びたい)のモノクロ映像は、時代や場所、常識さえも飛び越えて、いつの間にか見る者を幻想の世界へと導いていく。100歳を越えた巨匠が最後に残したのが、こんな甘美なラブ・ストーリーだとは。この不可思議な世界観は唯一無二のものだ。「アブラハム渓谷」でも描かれていた、監督の故郷である古都ポルトのドウロ河流域の美しい情景が、もうひとつの主人公のように記憶に残る。
【65点】
(原題「THE STRANGE CASE OF ANGELICA」)
(ポルトガル・西・仏・ブラジル/マノエル・ド・オリヴェイラ監督/リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、レオノール・シルヴェイラ、他)
(不思議度:★★★★☆)
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orange オレンジ

映画ノベライズ orange-オレンジ- (双葉文庫)
長野県に住む高校2年生の菜穂は、ある日、不思議な手紙を受け取る。差出人は10年後の自分。そこには、26歳の時の後悔、転校生の翔(かける)を好きになること、彼が1年後に死んでしまうこと、自分が取るべき行動などが書かれていた。最初はイタズラかと思ったが、手紙に書いてあることが現実に起こり始め、菜穂は手紙を信じ、後悔しないため、翔を失わないために行動を起こすのだが…。

高野苺の人気コミックを映画化したファンタジーテイストの青春ラブストーリー「orange オレンジ」は、ヒロインが、愛と友情の力で未来を変えてみせる!と奮闘するお話だ。もう、ツッコミどころが多すぎて、どこから手をつけていいのか分からないが、いわゆるパラレルワールドものなのだから、矛盾して当然との考え方もアリだろう。いい人ばかりの美しい友情は、体育祭のリレーの場面に凝縮されていて、見ているこちらが気恥ずかしくなるほど。だが、菜穂を思う同級生の須和(これがありえないほどイイやつだ)の心情がバッサリと切り落とされているのは、理解できない。菜穂と翔が結ばれるように動く未来の須和は、自分の人生を否定することになるのだから、そこには矛盾や葛藤があってしかるべきなのに…。菜穂と翔を演じるのは朝ドラでも共演した若手俳優2人。しかし、土屋太鳳ちゃんは、見た目は可愛いが、どうしてこんなに演技が拙いのか。本作で演じる、奥手で引っ込み思案というキャラクターが彼女にあっていないのかもしれないが、このヒロインに感情移入できない状態での2時間20分は、実につらかった。素晴らしいのは、オール長野ロケで撮影された映像。柔らかな光がファンタジックな物語にフィットしている。
【40点】
(原題「orange オレンジ」)
(日本/橋本光二郎監督/土屋太鳳、山崎賢人、竜星涼、他)
(ベタ度:★★★★☆)
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母と暮せば

母と暮せば 豪華版 初回限定生産 [Blu-ray]
1945年8月9日、長崎に原子爆弾が投下され一瞬にして多くの命が奪われた。それから3年後、助産師をしている伸子の前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二が亡霊となって現れる。それからというもの、浩二はたびたび伸子の前に現われては、思い出話や、将来を約束した恋人・町子のことを話しては去っていく。母子の時間は、奇妙だがとても楽しかったが、いつかは現実を受け入れなければならいことを2人は分かっていた…。

山田洋次監督が井上ひさしの遺志を継ぐ形で作り上げたファンタジー風味のドラマ「母と暮せば」。故・井上ひさしの名作で広島を舞台にした「父と暮せば」と対になるような作品で、井上は長崎を描きたいとずっと切望していたそうだ。強い印象を残す場面が2つある。ひとつは映画序盤に、大学で授業を受けている浩二のガラスのインク壺が一瞬で溶ける様子で原爆の強烈さを見事に表した場面。原爆を直接的に描くのはこの場面だけで、監督がこだわったというだけあって、強く脳裏に焼き付いた。もうひとつは、セリフだが、浩二が自分が死んで恋人が生き残ったのは“運命”だと言うと、母の伸子はそれに強く反発し「運命ではない。あれは人間が計画して行った大きな悲劇なのだ」と断言する言葉だ。この2つに山田監督の反戦メッセージが凝縮されているように思う。息子の死を受け入れられない母親と、現世に無念を残す息子の関係が切ないが、「父と暮せば」にも登場した、生き残ったことへの後ろめたさを体現する恋人の哀しみもまたやるせない。ただ、あのラストはちょっとなぁ…、と思う。長崎はキリスト教が根付いた風土なので、あのような演出だったのは理解できるが、何ともいえない違和感を感じてしまった。それはさておき、原爆投下の日を知らない世代が年々増えている昨今、二宮和也ファンの若い世代が戦争の悲劇を感じてくれるのが、この映画の最大の役割だろう。もちろん、あたたかいタッチのファンタジーなのでどんな世代が見ても感動できる丁寧なドラマに仕上がっている。
【70点】
(原題「母と暮せば」)
(日本/山田洋次監督/吉永小百合、二宮和也、黒木華、他)
(反戦度:★★★★☆)
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母と暮せば@ぴあ映画生活

わたしはマララ

わたしはマララ(特別編) [DVD]
1997年、マララ・ユスフザイは、詩人で学校の経営者である父と、文字の読めない母の長女として生まれた。パキスタンのスワート渓谷で育つが、やがてこの地はタリバンの支配下に置かれる。マララは、実名を伏せて、BBC放送のブログ上で、タリバンの圧制による実情と女子教育の必要性を訴えたが、身元が割れてタリバンの標的に。15歳のときに下校途中に友人とともに銃撃されてしまう。一命をとりとめた彼女は英国で治療を受けリハビリをこなした後、屈することなく、世界規模での活動を続けていく…。

2014年に史上最年少17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイの素顔に迫るドキュメンタリー映画「わたしはマララ」。マララという名前は、民族の英雄である少女マラライにちなんで付けられた名前だ。イギリスに侵攻されたアフガニスタンを救うため「奴隷として百年生きるより、獅子として1日を生きたい」と叫んだという勇敢なマラライは銃弾に倒れ命を失ったが、マララは強い生命力で蘇る。現在はイギリスで暮らすマララは、素顔は普通の女の子だ。兄弟たちとふざけあい、学校では異邦人として少し緊張し、ブラッド・ピットのファンだというマララの姿には、親近感を覚える。女子教育を訴える世界的な活動家になったきっかけは、おそらく教育者である父の影響だろう。父親へのインタビューで名前の由来や、娘の特別な資質を認める発言はあっても、マララが児童教育への強い情熱を持つにいたった経緯が分かりにくい。彼女の情熱の源を、もう少し詳しく掘り下げてほしかった。それでも、マララの強い意志と世界をまたにかけて活動するバイタリティには頭が下がる。しかも山岳地帯の素朴な村で育った少女が、時にメディアを利用して声を拡散するしたたかさまで身につけているのだ。誰もが彼女と同じ行動を起こせるわけではない。ただ、タリバン武装勢力から今も命を狙われながら、1本のペンが世界を変えると力強く宣言する少女マララ・ユスフザイと同じ時代に生きていることを、誇らしく感じるはずだ。
【60点】
(原題「HE NAMED ME MALALA」)
(アメリカ/デイヴィス・グッゲンハイム監督/マララ・ユスフザイ、他)
(不屈度:★★★★★)
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わたしはマララ@ぴあ映画生活

杉原千畝 スギハラチウネ

杉原千畝 スギハラチウネ Blu-ray通常版
1934年、満州。外交官の杉原千畝は、語学力と情報網を武器にソ連北満州鉄道譲渡の交渉を優位に成立させる。その後、千畝は、1939年にリトアニアの日本領事館への勤務を命じられ、ポーランド人のペシェを新たな相棒として一大情報網を構築し、激動のヨーロッパ情勢を分析、日本に発信していく。やがて第二次世界大戦が勃発。混乱の中、ナチスに迫害され国を追われた大量のユダヤ難民のため、千畝は、自らの危険も顧みず、日本政府からの了承がないまま難民たちに通過ビザを発給することを決断する…。

“日本のシンドラー”と呼ばれた外交官の壮絶な半生を描く歴史ドラマ「杉原千畝 スギハラチウネ」。この人物に関しては、かつて「ビザと美徳」というドキュメンタリー映画で取り上げられたことがあるので、ユダヤ難民のためにビザを発行した美談としては知っていたが、杉原千畝が極めて優秀な“インテリジェンス・オフィサー(諜報外交官)”だったこと、その力を恐れたソ連から警戒され“ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)”に指定された日本初の外交官だったことを、この映画で初めて知った。いわゆる歴史秘話という感じだが、前半は諜報活動で仲間を失うなど苦い経験が語られ、本来、モスクワ大使館勤務を希望していたのに不本意ながら領事代理としてリトアニアに赴任した経緯も描かれる。千畝という人は自らが希望しない状況下でも、最善を尽くす現実的な人物だったのだ。優秀な分析力から戦争を回避しようと動いていたことを知れば、日本が彼のような人材を活かしきれなかったことが改めて悔やまれる。詳しい資料などがないためか、妻の幸子さんの扱いはステレオタイプで、どこまでも従順で明るく健気という描き方だが、この杉原夫人の内に秘めた芯の強さが、千畝を支えていたのだろう。大掛かりなポーランドロケなど、スケールを感じさせる一方で、時折登場するCGがあまりに稚拙なのが際立ってしまったのは残念だ。映画は生真面目な作りだが、決して退屈ではない。それは杉原千畝その人の人生があまりに劇的だからだ。歴史の裏側で活躍した日本人を知るいい機会である。
【65点】
(原題「杉原千畝」)
(日本/チェリン・グラック監督/唐沢寿明、小雪、ボリス・スジック、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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杉原千畝 スギハラチウネ@ぴあ映画生活

海難1890

海難1890 [Blu-ray]
1890年。オスマン帝国から日本へ派遣されていた親善使節団をのせた軍艦エルトゥールル号が座礁して大破、和歌山県串本町沖で沈没する。乗組員500名以上が海に投げ出され、そのほとんどが命を落とすが、医師の田村と助手のハルら、地元住民が総出で救出活動にあたり、69名の命を助ける。1985年。イラン・イラク戦争中のイラン・テヘランでは、空爆が続き、日本政府は危機的状況を理由に在イラン日本人の救出を断念する。そんな中、トルコ政府は日本人のために救援機を差し向けることを決断する…。

日本とトルコの友好の絆を“1890年エルトゥールル号海難事故編”と“1985年テヘラン邦人救出編”の2部構成で描く「海難1890」。日本とトルコの間にこんな歴史秘話があったことを、私はこの映画で初めて知った。いわゆる美談という類の話だが、1890年、まだ外国人の姿さえ珍しい時代に貧しい村人が「人を助けたい」という思いだけで、救助活動を行う真摯な姿は感動的で胸を打つ。一方で、1985年のテヘランからの脱出劇は、近過去ということもあって、リアルでサスペンスフルだ。2015年は日本とトルコの友好125周年にあたる。日本・トルコ両国の全面協力で作られた本作は、人が人を思いやる気持ちには国境など関係ない、両国の交流は政治レベルより民間レベルが支えていて、それは今も続いているというメッセージが込められている。全面的に賛成だし、映画はもちろん、いい話だ。だがひとつだけひっかかるのは、イラン・イラク戦争の時、日本政府があっさりと邦人救出をあきらめたことに、ほとんど触れていない点だ。資料には、就航便がなかったことがその原因とあるが、政治的な理由があったにせよ、日本政府の対応に失望を感じるのは私だけではないはずだ。一方で、フセインの暴挙の前で、日本人に手を差し伸べてくれたトルコ政府の決断は、まさに英断。感謝の言葉しかない。忽那汐里とトルコ人俳優ケナン・エジェの両俳優が、1890年編と1985年編の両方に出演することで、大切なメッセージが時と場所を越えてつながったように感じられた。
【65点】
(原題「海難1890」)
(日本・トルコ/田中光敏監督/内野聖陽、忽那汐里、夏川結衣、他)
(美談度:★★★★☆)
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