映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

プチレビュー16上旬

裸足の季節

裸足の季節 [Blu-ray]
イスタンブールからおよそ1,000キロの場所にある小さな村で暮らす美しい5人姉妹は、両親を10年前に事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父たちとともに暮らしている。厳格なしつけを嫌う彼女たちは、海で男の子たちと無邪気に遊んだことをふしだらと決めつけられ、家に軟禁状態にされた上に、一人また一人と、見合いさせられ、大人たちが勝手にきめた相手と結婚させられていく。そんな中、末っ子の13歳のラーレは、自ら運命を切り開くため、ひそかにある計画を立てていた…。

トルコ出身の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビュー作「裸足の季節」は、少女たちが古い因習と闘う、甘くてほろ苦い青春映画だ。トルコ生まれフランス育ちの監督の体験が投影されているというが、時代は現代という設定。いくら地方の小村とはいえ、いったいこんな封建的で男尊女卑の世界があっていいのか?!と、思わず怒りがこみあげる。しかし、そんな閉塞的な村でも若さと美しさとエネルギーを持て余す奔放な少女たちの生命力は、誰にも抑えられない。とはいえ5人の運命はそれぞれ大きく異なり、中には取り返しのつかない悲劇的な事態も。強く意志的な瞳を持つ五女ラーレの存在は、姉たちの無念を彼女独自の反逆精神と計画性ではらす象徴なのだ。それにしても、女性差別や古い因習、抑圧に虐待(姉妹たちは祖母や叔父に愛されてはいるが、あえて虐待と呼びたい!)と、描かれるのは社会派に傾く題材なのに、この映画のみずみずしさには思わず目を見張る。登場する5人の“名女優たち”の美しさとしたたかさ、時にユーモアも交えた繊細な演出には、誰もが魅了されるはずだ。10代の美しい5人姉妹の物語といえば、すぐにソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」が思い浮かぶが、本作はただ単に女の子のフワフワとした心情を映し出すだけではない。これは自由を求めて闘う少女たちのファイティング・ムービーなのである。原題の「ムスタング」とは野生の馬のこと。5人姉妹の長い髪は、決して飼いならされることがない野生馬の美しいたてがみなのだ。
【80点】
(原題「MUSTANG」)」
(仏・トルコ・独/デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督/ギュネシ・シェンソイ、ニハール・G・コルダス、アイベルク・ペキジャン、他)
(ガールズ・ムービー度:★★★★★)
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教授のおかしな妄想殺人

教授のおかしな妄想殺人 ブルーレイ [Blu-ray]
夏の日差しがきらめくアメリカ東部の大学に赴任してきた哲学科教授のエイブは、人生の意味を見失って無気力な闇の中で生きていた。ある日、悪徳判事の噂を耳にしたエイブは、自らの手でその判事を殺すという完全犯罪に夢中になる。この妄想は、エイブに生きる活力を与え、みるみる前向きに変わっていく。一方、そんなエイブの頭の中など知るはずもない女子学生ジルは、エイブに対する恋心を募らせていくが…。

人生における不条理を独特のブラックな笑いで描く「教授のおかしな妄想殺人」。毎年1本、律儀に届くウディ・アレンの新作だ。近年のアレン作品では「ミッドナイト・イン・パリ」と「ブルー・ジャスミン」が最高の出来なので、どうしても他作品は軽すぎ、甘すぎ、ユルすぎで見劣りがしてしまう。本作もそんな1本。「マッチポイント」ばりのサスペンスなのだが、テイストはあくまでもコミカルでライト感覚。どちらかというと「重罪と軽罪」に近いだろう。ダメダメな人生をおくるインテリ男というのは、アレン作品ではおなじみの主人公だが、それをホアキン・フェニックスが演じているのが、ちょっと意外だ。アレン作品にフィットしているかどうかは微妙なのだが、何しろこの俳優は何を演じさせても上手い。妻に裏切られ、友情も壊れ、対人関係に疲れ果てた無気力な哲学教授が到達したのは「人生は無意味である」という結論だった。長年の経験に基づく、この哲学的な思考は、思いつきにすぎない完全犯罪とは矛盾するものなのだが、エイブ役のホアキンの異様な存在感でいつのまにか納得させられてしまう。そんなエイブも小さな懐中電灯の前にひれ伏すしかないという不条理…というか悲喜劇が、アイロニカルなアレン節ということなのだろう。さてさて、プロフェッサーの妄想殺人の顛末とは…。それにしてもホアキンの腹の出っぱり具合に、唖然。カメレオン俳優の名に恥じない変貌ぶりだった。
【55点】
(原題「IRRATIONAL MAN」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、パーカー・ポージー、他)
(シニカル度:★★★★☆)
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嫌な女

嫌な女 [Blu-ray]
弁護士の徹子は、ストレートで司法試験に合格し、結婚もして、完璧な幸せを手に入れているように見えるが、実際は仕事も結婚生活も上手くいかず、空虚な毎日を送っている。そんなある日、婚約破棄で慰謝料を請求された徹子の同い年の従妹・夏子が、徹子を頼って訪ねてくる。徹子は、自分とは何もかも対照的な、社交的で派手好きな夏子を、子どもの頃から嫌っていたが、この日以来、生来の詐欺師の夏子に振り回される日々を送ることになる…。

桂望実のベストセラー小説を映画化したヒューマン・ドラマ「嫌な女」は、女優の黒木瞳が、監督に初挑戦した作品だ。立場も境遇も性格も、何もかも正反対の女性二人が、ぶつかり合いながらも奇妙な絆を結んでいく様を、コミカルかつシニカルに描いている。ターゲットは黒木監督と同じ、50代だろうか。女性の良いところも悪いところも、ズルいところも、切ないところも、何もかも分かっている年齢のファンが見れば、あるある!の連発かもしれない。嫌な女とは、ずいぶん強烈なタイトルだが、女性なら誰しも“嫌な部分”を隠し持っているもの。弁護士という職業柄もあって、自分にも他人にも本音を見せず、感情を押し殺す徹子に対し、生来の詐欺師である夏子は、同性から嫌われても他人からバカにされても、なりふりかまわず生きている。簡単に相手を分かったり、自分を変えようとはしない女たちのスタンスが、とてもいい。それでも不思議なことに、正反対の力が強くぶつかりあうことで化学反応が生まれてくるのだ。大きな山場である、終盤の結婚式のシーンは、デフォルメされてディティールが甘い気がするが、徹子と夏子の二人の力が生んだ一種の奇跡ということだろう。カタブツの弁護士の徹子をいつも優しく見守るみゆき役の永島瑛子のおだやかな空気感がいい。この人によって徹子はゆっくりと変わっていくので、みゆきの内面にも踏み込んでほしかったのが少し残念。ラスト、竹内まりやが歌う主題歌「いのちの歌」がぴったりハマる。女性による女性のための女性映画。後味は悪くない。
【60点】
(原題「嫌な女」)
(日本/黒木瞳監督/吉田羊、木村佳乃、中村蒼、他)
(女性映画度:★★★★★)
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嫌な女@ぴあ映画生活

TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ

TOO YOUNG TO DIE トゥーヤング トゥーダイ!若くして死ぬ [レンタル落ち]
男子高校生の大助はクラスメートのひろ美ちゃんに片思い中。何とかして告白しようとしていた矢先、修学旅行中の事故で他界してしまう。大助が目覚めると、そこは人々が責め苦を受け続けている地獄だった。「何で俺だけ?!このまま死ぬには若すぎる!まだキスもしたことないのにっ!!」。死んだことを受け入れられずに混乱する大助の前に現れたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)を率いる赤鬼のキラーK。彼によると、えんま様の采配によっては現世に転生できるチャンスがあるという。こうして、ひろ美ちゃんに会いたい一心で、キラーKの鬼特訓のもと、よみがえりを賭けた大助の地獄巡りが始まるのだが…。

クドカンこと宮藤官九郎による超絶地獄コメディー「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」。本作は、本来2016年2月に公開予定だったものが、劇中に登場するバス転落事故と酷似した悲劇が起こってしまい、被害者やご遺族に配慮という形で延期になっていたものだ。今回、ようやく晴れて公開になったことをまずは喜びたい。物語は、不本意にも地獄に落ちた男子高校生(残念かつ可愛い系)が、赤鬼のキラーK(クールかつお笑い系)の指導のもと、あの手この手で現世に転生しようと奮闘する、ハチャメチャな音楽コメディーである。クドカン映画の例に漏れず、圧倒的な情報量で突拍子もない世界観が描かれる。そもそも、死んでいるのに“成長物語”というところが微笑ましい。出演者たちは、これまた、例によって豪華すぎる俳優たち。中でも今回は、音楽界からのカメオ出演がすごい。ジゴロック(地獄ロックバトルロイヤル)の挑戦者たちは、ぜひチェックしてほしい。ベースは純愛、テイストは特濃。今までのクドカン映画と少し違うのは、地獄パートが意識的に、演劇的に描かれていることだろうか。良くも悪くもクドカン・ワールド全開のこの映画、下ネタ含有率高めのノリの良さについていけないと見るのはツラいかもしれないが、原作ものやTVドラマの映画化があふれる中、オリジナル作品であることが何よりも頼もしい。本格的な音楽活動で男性ファンも多いという長瀬智也のロック魂は、一見の価値がある。
【50点】
(原題「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」)
(日本/宮藤官九郎監督/長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、他)
(ギャグ度:★★★★☆)
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TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ@ぴあ映画生活

日本で一番悪い奴ら

日本で一番悪い奴ら Blu-rayスタンダード・エディション
大学時代に鳴らした柔道の腕を買われて北海道警察の刑事となった諸星要一は、強い正義感を持っていたが、うだつの上がらない毎日を送っていた。ある日、署内随一の敏腕刑事の村井から「刑事の出世に必要なのは点数。点数稼ぐには裏社会に飛び込み、S(スパイ)をつくれ」と刑事のイロハを叩き込まれる。言われるがままにSを率い、ヤクザの黒岩、麻薬の運び屋の太郎、盗難車バイヤーで拳銃横流しのパキスタン人ラシードらを使って、規格外のヤバすぎる捜査を行い、みるみる道警のエースへとのしあがっていく。公私ともに一線を越えた諸星は、上司の命令もあって、やらせ逮捕、おとり捜査、拳銃購入、覚せい剤密輸と危険すぎる捜査を繰り返し、ありとあらゆる悪事に手を染めながら、やがて、税関、道警を巻き込んだ日本警察史上最大の不祥事を引き起こす…。

2002年に北海道で起きた日本警察史上最大の不祥事・稲葉事件をモチーフにした「日本で一番悪い奴ら」。警察と暴力団の癒着、麻薬や拳銃の不正なやりとりなど、あらゆる悪事に手を染め、黒い刑事と呼ばれた主人公・諸星は、最初は、正義感にあふれる、純情でまっすぐな青年として登場する。26年間の間になぜここまで堕ちてしまったのか。映画は、テンポのいい語り口と、クセのある面構えの役者陣でクライム・エンタテインメントとして一気に駆け抜ける。俳優たちは皆好演だが、中でも、群を抜いて素晴らしいのが主演の綾野剛だ。役作りで10kg増減させての熱演もさることながら、どこか愛嬌があるのに善悪の見境を失くし、自らの人脈の悪にまみれながら転がり落ちていく様を演じて最高の演技を見せる。諸星らが行う“悪さ”と、北海道警察内部の腐りきった体質を複眼で見る観客は、どこかで組織を信じて「正義の味方、悪を絶つ」の信念のもとに立ち回る諸星が哀れに思えてならないだろう。「凶悪」で注目された白石和彌監督は、伝統的な東映ヤクザ映画のカラーを尊重しつつ、主人公がさまざまな仲間と出会って別れていく青春映画、何よりも「グッドフェローズ」を連想させる実録クライム・サスペンスの面白さを持つ作品として仕上げた。ちなみに最近性懲りもなく北海道警察の不祥事が明るみにでて、思いがけない“宣伝”になってしまったのは、苦笑するしかない。日本の警察よ、しっかりしてくれ!
【75点】
(原題「日本で一番悪い奴ら」)
(日本/白石和彌監督/綾野剛、YOUNG DAIS、中村獅童、他)
(モラル度:★☆☆☆☆)
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ダーク・プレイス

ダーク・プレイス [Blu-ray]
1985年、一家惨殺事件で生き残った8歳の末娘リビーは、15歳の兄ベンの犯行だと証言。ベンは逮捕され終身刑を言い渡された。事件から28年後、荒んだ生活を送っていたリビーは、過去の有名な殺人事件を検証する「殺人クラブ」のメンバーのライルが申し出た、事件について証言してくれれば謝礼金を出すという言葉と報酬に目がくらみ、嫌々ながらクラブの会合に出席。事件について調べ始めたリビーは、徐々に記憶がよみがえる。あの夜、いったい何が起こったのか。当時のベンの恋人ディオンドラの存在、たびたび金の無心にきていた父親、殺された姉の日記…。過去と向き合うリビーは、やがて衝撃の事実へとたどりつく…。

「ゴーン・ガール」の原作者ギリアン・フリンによるミステリー小説「冥闇」を映画化したサスペンス「ダーク・プレイス」。31歳になったリビーが事件の記憶をたどる姿と、事件当時の映像を交錯させながら描く。あの日、見たものとは? いや、見なかったものとは? 定職もなく、支援金も底をついたことでやむを得ず当時の関係者を訪ね歩くリビーの歩みは、いわば、過去の呪縛からの解放の旅だ。心に深い傷を負ったヒロインは、終始、仏頂面で、態度も投げやり、粗末な服装で化粧っ気もない。社会に適応する努力さえしない、孤独で後ろ向きの人間を、とびきりの美女であるセロンが演じているのが興味深い。実は、幼い頃のトラウマという点では、この主人公と主演のシャーリーズ・セロンには共通点がある。何しろセロンは15歳で、アルコール依存症で暴力をふるう実父を実母が射殺するという衝撃的な事件を体験しているのだ。映画は、ミステリーなので詳細は明かさないが、アメリカ南部で流行した悪魔崇拝、大不況と生活苦がキーポイントであるとだけ言っておこう。不自由な刑務所にいる兄ベンは、妹リビーに対して恨み言ひとつ言わず、誇り高さと諦念が同居する。一方、自由なはずのリビーはずっと過去に囚われたかのような人生を生きてきた。彼らが再び前を向くには、どんなにつらくてもあの事件をたどって咀嚼し、乗り越えていくしかなかったのだ。ラスト、リビーは忌まわしい生家を再び訪ねるが、そこに住む少女に小さく手をふる姿に、かすかな希望と未来を感じる。D.フィンチャー監督の「ゴーン・ガール」のような衝撃はない。だが「サラの鍵」でユダヤ人迫害の真相を描いたジル・パケ=ブランネール監督は、最後に、ずっと暗い場所にいたヒロインにあたたかい光を投げかけている。見ているこちらも救われた気がした。
【70点】
(原題「DARK PLACES」)
(英・仏・米/ジル・パケ=ブランネール監督/シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クロエ・グレース・モレッツ、他)
(呪縛度:★★★★☆)
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レジェンド 狂気の美学

レジェンド 狂気の美学 コレクターズ・エディション [Blu-ray]
1960年代初頭のロンドン。双子のギャング、レジーとロンのクレイ兄弟は、暴力で対立組織を潰すなど、手段を選ばない方法でのし上がっていく。さらにアメリカのギャングと手を組み、有力者やセレブとも密接な関係を築く等、イギリス社会に大きな影響を及ぼしていた。そんな中、レジーは部下の妹である可憐な美女フランシスと恋に落ちて結婚。彼女の願いで堅気になろうとするが、精神を病んだロンと兄弟の母親がフランシスを嫌い、家族間に不協和音が生じてしまう。さらに、組織内での対立、警察の執拗な調査などで、クレイ兄弟は追い詰められていく…。

実在した双子のギャングのクレイ兄弟の半生を描く「レジェンド 狂気の美学」。2人は一卵性双生児、つまり切りたくても断ち切れない関係を持つ運命共同体だ。兄レジーは、ハンサムで頭が切れ、人望があってビジネスの才覚もある男。タフガイだが、まっとうな商売で生きようと試みるのも愛する女性のためという純情も併せ持つ。では弟で片割れのロンはどうか。ぽっちゃりした体形、薬が必須なほど情緒不安定、凶暴で残虐、同性愛者であることを公言する。組織を揺るがすトラブルを何度も起こし、レジーの妻フランシスのことも嫌悪している。結局、レジーは、組織、ロン、フランシスの板挟みになるのだが、頭では何が最善の選択なのか理解していても、生まれる前から結ばれている絆は断ち切れず、自分の肉体の半身であるロンを見捨てられずに悲劇的な運命をたどることになる。一卵性の双子の性(サガ)とは、他人にはうかがい知れないほど特別なのだろう。語り部はフランシスなので、どうしてもレジー寄りになってしまう物語の性質上、ロンの内面に深く踏み込んでないのは惜しいが、双子を一人二役で演じ分けるトム・ハーディの名演があまりにも秀逸だ。もともと上手い役者で、なりきり型のカメレオン俳優だが、今回はまるで自分自身と共演するのを楽しんでいるかのよう。正反対のようでいて、暴力性や狂気という点では結局は共通している双子の潜在的な性質、レジーとロンのどこか笑いを誘うような掛け合い、流行のスーツを着こなし高級車であらわれるさっそうとした美しさと、ハーディの魅力が全開だ。スウィンギング・ロンドンの時代の空気も上手く描き込まれている。実録クライム・サスペンスにして、デフォルメされた伝説、そして残酷なおとぎ話のようなテイストも兼ね備えている異色作だ。
【75点】
(原題「LEGEND」)
(英・仏/ブライアン・ヘルゲランド監督/トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、ポール・アンダーソン、他)
(確執度:★★★★☆)
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貞子VS伽椰子

貞子 vs 伽椰子 プレミアム・エディション [Blu-ray]
女子大生の有里は、偶然手に入れた古いビデオデッキに入っていた、見たら2日後に必ず死ぬという「呪いのビデオ」を手にする。一方、女子高生の鈴花は、引っ越し先の向かいにある「呪いの家」に入ってしまう。2つの呪いを解くために、霊媒師の経蔵と、経蔵の相棒で生まれながら強い霊感を持つ盲目の少女・珠緒は、貞子と伽椰子を激突させ、同時消滅させるという驚くべき計画を立てる。有里と鈴花に呪いの家で呪いのビデオを見るように指示するが、それは想像を絶する戦慄の事態の始まりだった…。

Jホラーを代表する最強ツートップである貞子と伽椰子がまさかの初共演となった「貞子VS伽椰子」。きわもの企画かと思っていたが、見てみたらこれが意外にも良く出来ている。そもそもシリーズものというのは回を重ねるごとに劣化するもので、「リング」も「呪怨」も、続編の質はヒドいものばかりだった。そこに、映画会社の枠を超えた、いわば超党派で、貞子VS伽椰子とは!絶叫ヒロインの2人は、おびえる表情も美しい美女たちなのはお約束通り。脇キャラが見事にたっているのもいい。心霊研究に入れ込んだあまり貞子に呪われて喜んでいる、都市伝説の研究家兼大学教授役の甲本雅裕、安藤政信が演じる霊能界の異端児の霊媒師の乱暴な態度、美少女なのに「ヒメノア〜ル」に引き続きトンデモないメにあいながら熱演する佐津川愛美など、ことごとくいい味で、思わず微笑ましくなってしまうのだ。問題は、貞子も伽椰子もあまりに“おなじみ”すぎて、さっぱりこわくないことである。クライマックスのびっくり仰天の展開は、怖いというより、あきれるやら、感心するやら。どーんとでてくる“それ”に思わず「たまや〜っ」と呼び掛けてしまいそうになった。「フレディVSジェイソン」、「エイリアンVSプレデター」、最近では「バットマンVSスーパーマン」と、映画界ではライバル対決が大流行だ。日本映画としても、このトレンドに乗らないテはない。
【65点】
(原題「貞子VS伽椰子」)
(日本/白石晃士監督/山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、他)
(恐さ度:★★☆☆☆)
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葛城事件

葛城事件 [Blu-ray]
親から受け継いだ小さな金物店を営む葛城清は、念願のマイホームを手に入れ、美しい妻、2人の息子と共に理想の家族を作ったつもりでいた。だが清の強い思いが家族を抑圧し、ついに次男が無差別殺人事件を起こし、死刑囚となってしまう。リストラされたことを言えずに孤立する長男、廃人のようになっていく妻。近所からは、大切なマイホームの壁に、人殺し、死刑などの誹謗中傷の言葉が落書きされている。そんな中、死刑反対の立場から、次男と獄中結婚を望む女性が現れる…。

監督デビュー作「その夜の侍」で評価された、劇団THE SHAMPOO HATの旗揚げメンバーで劇作家である赤堀雅秋監督の監督第二作「葛城事件」。清は、典型的な昭和の父親像を体現していて、根っこの部分は悪い人間ではないのだろう。だが家族を抑圧するその姿勢の裏にあるのは、実は自分は親から受け継いだ店の番をしているだけのちっぽけな人間だとの思い。清は、自分でもそのことを理解していて、なんとか虚勢を張ってコンプレックスを隠したいとの思いがありのだ。みんなで食事に行けば、あからさまに店に文句を言う。父親のあるべき姿を自慢げに演説する。この清という父親のキャラが、あまりに時代錯誤に思えた。時代ははっきりとは提示されていないが、いまどきの若者、いや、中年層でさえ、清に共感するのは難しいだろう。だが、そんな少しズレた演出を、強引なまでに納得させるのが、今や日本映画界を代表する演技派となった三浦友和の、怪演に近い熱演だ。この人は本当に上手い。たとえ共感はできなくても、感心してしまうと思っていると、最後の最後に意外な変化球が投げられる。絶望した清は、無表情のまま、ある行動にでるのだが、それさえも失敗してしまう、可笑しさ、切なさ、残酷さ。この映画には正解はない。ただ哀しみが漂うだけだ。。
【65点】
(原題「葛城事件」)
(日本/赤堀雅秋監督/三浦友和、南果歩、新井浩文、他)
(家庭崩壊度:★★★★★)
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クリーピー 偽りの隣人

クリーピー 偽りの隣人 豪華版[Blu-ray]
刑事から犯罪心理学者に転身した高倉は、前の同僚・野上から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。だが、ただ一人の生存者である長女の早紀の記憶の糸をたぐって調査を進めても、事件の核心にはたどりつけずにいた。一方、高倉が妻・康子と共に引っ越してきた新居の隣家の住人、人が好さそうなのにつかみどころのない主人の西野、病弱な妻、中学生の娘・澪の3人は、どこか奇妙な一家だった。ある日、その澪が高倉に 「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です」 と突然告げ、高倉はその言葉に衝撃を受ける。未解決の失踪事件と隣人一家の不可解なつながりが、やがて高倉と妻を恐ろしい事件に巻き込んでいく…。

前川裕の傑作ミステリー小説を映画化した「クリーピー 偽りの隣人」。タイトルのクリーピーとは、気味が悪い、ぞっと身の毛がよだつような、という意味なのだが、本作は、そのエッセンスを十分に映像化している。それは役者陣の演技力であり、黒沢清監督の演出力であり、現代社会とリンクした物語の同時代性のためだ。映画では、精神的に他者を支配する悪意と、それに翻弄される人間たちが描かれるが、こんなことが実際に可能なのか?と思っていたら、日本で、人を支配しての犯罪の実例もあるし、アメリカにいたっては凡例が多すぎて困るほどなのだ。一家失踪事件と奇妙な隣人の西野家とのつながりは、じわじわとわかってくるが、原作と大きく違うのは、高倉の妻の存在である。原作では高倉をサポートする役割だったのが、映画では西野に取り込まれ憔悴し常軌を逸していく役どころで、高倉、西野に続く物語のもうひとつの軸になっていく。演じる竹内結子が好演だ。演技派の香川照之の“クリーピー”な演技は上手すぎて気味が悪いほどである。西野に翻弄され事件に巻き込まれながら真相に近づく高倉も、過去に犯人を目の前での自殺という形で取り逃がしたトラウマを背負っており、心に深い闇を抱えた人間だ。つまり登場人物の誰もが、少し、あるいは大きく心を病んでいる。そんな人間たちが作り出したのが、西野家に内部にある“悪魔のいけにえ”的隠し部屋なのだ。恐ろしいクリーチャーや悪霊は登場しない。だがこの得体のしれない不条理は、底なしの恐怖である。やはり、黒沢清監督はホラーの名手だと改めて感心した。
【70点】
(原題「クリーピー 偽りの隣人」)
(日本/黒沢清監督/西島秀俊、竹内結子、川口春奈、他)
(気味悪さ度:★★★★★)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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