映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

プチレビュー17上旬

TAP THE LAST SHOW



天才タップダンサーと呼ばれた渡真二郎は、舞台での事故でダンサーの命である足を痛め引退を余儀なくされる。それから30年。振付師となった今では、酒におぼれ、自暴自棄の荒んだ生活を送っていた。そんな渡のもとに旧知の劇場支配人・毛利が訪れる。半世紀の歴史を誇る老舗劇場「THE TOPS」の看板を降ろすので、その最後を飾るショウの演出を渡に依頼しに来たのだ。気乗りしない渡だったが、とりあえず参加したオーディションで、MAKOTOという名の青年と出会う。パワフルで情熱的な彼のタップダンスのリズムに、渡の止まっていた時間が再び動きはじめる…。

かつての名ダンサーが才能あふれる若手ダンサーたちとの出会いで情熱を取り戻していく姿を描く「TAP THE LAST SHOW」。「相棒」シリーズの杉下右京役で知られる俳優・水谷豊が、約40年前から構想を抱き続けてきたという物語を、自ら初監督、主演して映画化した人間ドラマだ。ショウビジネス界を舞台に、栄光と挫折を味わったかつてのトップスターが、若い世代の才能と出会い、再び生きる気力を取り戻すというストーリーは、国内外を問わず何度も描かれた手垢がついた物語。だが本作の場合、そのシンプルかつ定番のストーリーが逆に効果的だ。なぜなら、この映画の目的は、主人公が演出し有終の美を飾る、ラスト24分に及ぶ本物のタップ・ダンス・ショウを描ききることだから。演じている役者は、正真正銘の本物のダンサーたちで、タップダンスの舞台経験がある彼らだからこそ、ラストの迫力のショウが、劇映画とドキュメンタリーの境をあいまいにしながら、本物として活きてくる。ダンスシーンが連続24分というのは破格の長さなのだが、タップダンスの映画なのだからさほど違和感は感じない。特に、劇場経営に、雑用に、支配人や渡の身辺に配慮してきた、事務員兼受付嬢が、華麗なる姿をみせてくれる場面には引きこまれた。あえて不満な点を言えば、天才ダンサーのMAKOTOは、心優しい普通の青年で、すべてを投げ出してもタップにのめり込む狂気がいまひとつ伝わらないことだろうか。ともあれ、監督・水谷豊の本気を感じさせる1本に仕上がっている。
【60点】
(原題「TAP THE LAST SHOW」)
(日本/水谷豊監督/水谷豊、北乃きい、清水夏生、他)
(エンタテインメント度:★★★★☆)
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おとなの恋の測り方

Un homme a la hauteur (Bande originale du film)
敏腕弁護士のディアーヌは、夫と離婚して3年。だが夫はいまだに仕事上のパートナーで何かと衝突が絶えない。ある日、彼女は置き忘れた携帯を拾ったという男性アレクサンドルから連絡を受ける。優しい声と知的でユーモラスな会話に、ディアーヌは新たな恋の予感を感じてしまう。だが携帯を受け取りに行くと、アレクサンドルはハンサムだが身長136cmの男性だった。自分よりかなり背が低い彼にがっかりしたディアーヌは早々に帰ろうとするが、ひょんなことから二人をデートを重ねるようになる…。

美人で仕事もできるバツイチ女性と知的でハンサムでリッチだが身長が極端に低い男性との恋の行方を描くラブ・ロマンス「おとなの恋の測り方」。外見を気にする、周囲の目を気にする、慣習を気にする。年齢や外見にこだわらず、自由奔放な恋愛を楽しむイメージがあるフランス人だが、案外保守的な部分も捨てきれないのだろうか。バツイチのキャリアウーマンのディアーヌは、低身長ということさえ除けば、ほぼ完ぺきなアレクサンドルとの恋愛に踏み切れない。彼の方は、低身長のハンデをものともせず、恋愛や人生を積極的に楽しんでいる。もちろん彼だって心の奥底では自分の外見に悩んではいるのだが、だからといって卑屈になったり、消極的になることはない。自分との恋に踏み切れないディアーヌに、アレクサンドルが何度も「僕たち、このまま続ける?」と尋ねるのは、むしろディアーヌが自分に過剰に気をつかうのがつらいからなのだ。周囲の好奇の目に打ち勝ち、自分自身の殻を破って二人は幸せになれるだろうか?というのが主なストーリーの流れ。もちろんハートウォーミングなロマコメなので着地点は見えている。だがこのお話、何だか納得できないことが多すぎる。そもそもお互いにバツイチの大人なのに、周りを気にしすぎる。ディアーヌの秘書は敵なのやら味方なのやら立ち位置がはっきりしない。最大の謎は、ディアーヌの母親だ。娘の一番の理解者であるべき境遇なのに、差別用語を連打する始末である。さらに言えば、女性には、外見など気にするなと言わんばかりの展開なのに、男性のアレクサンドルが選ぶのは外見がとびきり美しい女性ディアーヌ。何となく矛盾を感じるのは私だけ…??!!ちょっと安易な展開に苦笑するものの、身長180cmを超えるジャン・デュジャルダンが低身長の男性の役を軽やかに演じているのは興味深い。かつて「赤い風車」で画家ロートレックを演じたホセ・ファーラー(フェラーとの表記も)は、膝に靴を履いて演じたそうだが、21世紀の今は幸いCGがある。便利な時代になった。
【50点】
(原題「UN HOMME A LA HAUTEUR/UP FOR LOVE」)
(フランス/ローラン・ティラール監督/ジャン・デュジャルダン、ヴィルジニー・エフィラ、、他)
(ロマコメ度:★★★☆☆)
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キング・アーサー

King Arthur: Legend Of The Sword
中世のイングランド。両親を殺され孤児になった青年アーサーは、スラム街の売春宿で育ち、たくましく生き抜いてきた。彼の両親の命を奪った暴君ヴォーティガンは、やがて自分を殺すであろう青年を探していたが、アーサーは、まだ、自分がかつてのイングランド王の一人息子であることを知らなかった。やがて聖剣エクスカリバーを手に入れたアーサーは、自らの過去と、亡き父王の代わりに王座を奪還する運命を知り、仲間の力を借りて立ち上がる…。

アーサー王伝説を新感覚で描いたソード・アクション「キング・アーサー」。中世の伝説の英雄アーサー王は、元祖ヒーローと言われ、小説、オペラ、舞台、コミック、アニメ、ゲームとさまざまな形で描かれてきた。映画でも数えきれないほどの作品があるが、本作は、いわばアーサー王の誕生秘話。物語の背景は、人間と魔術師が共存する混沌とした世界だが、主人公のアーサーは、格闘はカンフー仕込み、タフで仲間思いの心優しいストリート系ヒーローである。ガイ・リッチー監督は、手垢がついたストーリーを、主人公のキャラをイマドキ感満載にした上で、格調高さや文学的な趣をバッサリと切り捨てて、スピード感あふれるアクション・エンターテインメントとして描き切った。CGIも気合が入っていて、冒頭の巨大な象が登場するバトルは大迫力だし、セイレーンや湖の乙女の描写は幻想的で恐ろしくも美しい。もっとも“スラムのガキから王になれ”の下剋上的なキャッチコピーは、もともと王位継承者だった主人公の出自を思えばさほど響かず、なるべき人が王になる英国はやっぱり階級社会か…との思いがよぎった。聖剣エクスカリバーを岩から引き抜く重要なシーンで、特殊メイクのベッカムをカメオ出演させた後は、誰もが知っているカタルシスに向かって一直線に突き進む。魔術と権力に取りつかれた暴君ヴォーティガンが「今、ここにいるのもお前が原因だ。お前が俺を創った」と語るが、それがそのままアーサーの口を通して語り直されるとき、伝説や物語特有の因果応報がくっきりと浮かび上がる。華やかでスピーディー、時にコミカルでアクション満載の若きアーサー王の物語は、歴史ものはちょっと苦手な映画ファンにもおすすめの活劇に仕上がっている。
【60点】
(原題「KING ARTHUR: LEGEND OF THE SWORD」)
(アメリカ/ガイ・リッチー監督/チャーリー・ハナム、ジュード・ロウ、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、他)
(下剋上度:★★★☆☆)
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ローマ法王になる日まで

chiamatemi francesco - il papa della gente DVD Italian Import by rodrigo de la serna
2013年。アルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿は、法王選挙(コンクラーベ)を前に自らの波乱に満ちた人生を振り返る。1936年にイタリア移民の子として生まれたベルゴリオがイエズス会に入会したのは20歳の時。神の道を歩むことを決めた彼は、やがて35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命される。だがアルゼンチンは、軍が国を制圧し、1976年に誕生した軍事独裁政権によって暗く過酷な時代を迎える。ベルゴリオは大きな試練にさらされながら、弱い立場の民衆に寄り添って活動を続けるが…。

現ローマ法王フランシスコの知られざる激動の半生を描くドラマ「ローマ法王になる日まで」。サッカーやタンゴを愛する庶民的な人柄と、ローリングストーン誌の表紙を飾って、ロックスター法王と呼ばれるなど、民衆を熱狂させるフランシスコが、いかにして法王になったのかをできるだけ史実に沿って描いている。宗教界のトップの人生を描くというと、コ難しく、説教くさい映画を想像するかもしれないが、本作は、現法王がブエノスアイレスで活動した若き日のエピソードを通して、ビデラ軍事独裁政権という暗黒時代を耐えたアルゼンチンの近代史を描く、骨太の社会派ドラマに仕上がっている。多くの市民がいわれのない嫌疑をかけられ、捕らえられて拷問されたあげく“行方不明”となって命を奪われた恐ろしい時代は、カトリックにとっても苦難の時代だ。ベルゴリオは軍部と教会の2つの勢力の狭間に立って、どうすれば信仰を守り、人々を救えるかを模索しながら、同時に自分自身が生き延びていくため奔走した。貧しい人に寄り添い続けた彼は、確かに偉大な人物だが、映画はベルゴリオを単なる英雄としては描いていない。恐怖や圧迫におびえ、悩み、弱ささえさらす彼は、時には間違いもおかすのだが、過ちを認める強さを持っている。苦悩し続けたからこそ、ドイツで出会った“結び目を解く聖母”の教えに救われたときの涙は、感動的だ。新法王になってからは、古い慣習を打ち破り、自分に関係する教会の慣例を質素にし、貧しい人々への奉仕活動や、環境問題、人種差別、時には政治や経済にも言及し、世界中の注目を浴びている。ダニエーレ・ルケッティ監督は、そんな宗教界のカリスマを、自分よりもはるかに大きなものにぶつかっていった勇気ある一人の人間として描いた。そのことが、激動の時代を生き抜いた彼の人生に陰影を生み、深い感銘を与えてくれている。
【60点】
(原題「CHIAMATEMI FRANCESCO - IL PAPA DELLA GENTE」)
(イタリア/ダニエーレ・ルケッティ監督/ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ムリエル・サンタ・アナ、他)
(波乱万丈度:★★★★☆)
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ローマ法王になる日まで|映画情報のぴあ映画生活

残像



1945年。スターリンが侵略の手を伸ばすポーランドで、アヴァンギャルドなスタイルで有名なポーランド人画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、情熱的に創作活動を続けていた。だが彼の作品は社会的リアリズムに反するとして当局から迫害を受け、大学教授の職を追われた上、美術館からも作品を破棄されてしまう。ストゥシェミンスキは彼を崇拝する数名の学生たちの援助で懸命に活動を続けレジスタンスのシンボルとなっていくが、食糧配給も受けられずに困窮する生活は次第に彼を追い詰めていく…。

スターリン体制に反抗し自らの信念を貫いた実在の画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキを描く伝記映画「残像」。ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督は、一貫して理不尽な権力への反骨精神を描いたが、本作もまさにその系譜で、レジスタンスの塊のような主人公の生き様は、まるでワイダ自身の肖像画のようだ。先駆的画家・マレービチの弟子になった画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、カンディンスキーやシャガールらとも交流があった前衛画家。祖国を愛してやまないが、その思いは報われない。当局による熾烈な迫害の中で、食べるものもなく、食糧よりも熱望する画材さえ入手できない生活は、主人公にとっては死に等しい。それでも彼は祖国を捨てないし、体制側に迎合もしない。象徴的なのは、娘との関係性だ。まだ幼い娘のニカは、母ではない別の若い女性と親密な父親に、愛憎入り混じる複雑な思いを抱いてる。祖国を愛しながら、芸術を政治に利用しようとする当局に断固として抵抗するストゥシェミンスキの生き方と、この父娘の関係性が重なって見えた。ストゥシェミンスキが非業の死を遂げたのは歴史の事実だが、そのラストは、ワイダの初期の傑作「灰とダイヤモンド」の主人公がゴミ捨て場でぼろきれのようになって死んでいく場面を連想させ、戦慄する。左手と右足のない松葉杖のストゥシェミンスキが、冒頭で、なだらかな草原の丘の斜面を、笑いながら転がり落ちて、目的地に到着する場面がある。それは難しい時代にポーランドで生きる芸術家が幸せを謳歌する幻想のように、はかなく幸福な場面だ。「残像はものを見た時に目の中に残る色だ。人は認識したものしか見ていない」とは、主人公が劇中に学生に語る言葉。アートの表現の自由を決してあきらめなかった不屈の精神が、威厳を持って響いてくる、ワイダ渾身の遺作だ。
【70点】
(原題「POWIDOKI/AFTER IMAGE」)
(ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督/ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフラチュ、ブロニスワヴァ・ザマホフスカ、他)
(反骨精神度:★★★★★)
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昼顔

映画『昼顔』サウンドトラック
互いに家庭を持つ身でありながら、紗和と北野は激しく惹かれあって一線を越えてしまう。二人の関係が知られ、弁護士を交えて示談が成立し、二人は二度と会わないとの約束のもと別れることとなった。それから3年後、紗和は夫と離婚し、誰も知人がいない海辺の町で一人ひっそりと暮らしていた。ある日、蛍に関する講演で北野が町にやってくる。再会した二人は、互いの気持ちを確かめ合うように逢瀬を重ねるが、二人の前に北野の妻・乃里子が現れる…。

既婚者でありながら激しく惹かれあった男女が再会し再び禁断の恋に落ちる恋愛ドラマ「昼顔」。2014年にテレビドラマで放送され社会現象を起こした「昼顔 平日午後3時の恋人たち」は、平日の昼間に夫以外の男性と恋に落ちる主婦を描いて人気を博した。不倫がテーマというと、今の日本では、何かと社会の風当りが強そうだが、許されない恋という設定が人気となり“昼顔妻”なる流行語も生み出している。ドラマでは、不倫はまかりならぬ!ということで無理に引き離された紗和と北野だが、映画では、3年後、再び出会って、抑えきれない想いが再燃し…という、ファンが見たかった“その後”を描いている。紗和と北野、北野の妻の乃里子の3人に絞って物語が進んでいくので、ドラマ未見の観客も比較的わかりやすいだろう。ただこれ、わざわざ劇場版にする意味があるのだろうか?と首をかしげた。紗和はすでに離婚しており、もはやダブル不倫ではない。いけないとわかっていながら惹かれあう…というなら、もっと覚悟のようなものがあってもいいのだがそれも見受けられず、誰に感情移入していいのやらわからないのだ。終盤に大事件、そしてある秘密が明かされる。これで、ドラマファンは納得するのか、聞いてみたい。何かと消化不良の1本だったが、出演者のやるせない熱演は伝わってきた。健康的なイメージの女優・上戸彩の、新たな面を発見できる。
【50点】
(原題「昼顔」)
(日本/西谷弘監督/上戸彩、斎藤工、伊藤歩、他)
(ドラマファン向け度:★★★★★)
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22年目の告白 私が殺人犯です

22年目の告白-私が殺人犯です-
1995年、5人の命が奪われる凄惨な連続殺人事件が発生。新米刑事の牧村は、あと一歩のところまで犯人を追い詰めながら取り逃がし、敬愛する上司まで殺されてしまう。それから22年後。突如、事件の犯人を名乗る男・曾根崎雅人が告白本を手にし、盛大な記者会見を開いて、自分こそが犯人だと名乗り出る。不敵な笑みを浮かべる彼は、時効が成立し法では裁けないことを知って、世間やマスコミの前に姿を現したのだった。この美しくも大胆な犯人に、ネットは熱狂し、賛否両論を巻き起こす。マスコミを引き連れて被害者遺族に謝罪するかと思えば、事件を執念深く追う牧村刑事を挑発する曽根崎。だが彼の行動は、日本中を巻き込む新たな事件の始まりだった…。

未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件の犯人が世間に現れたことで新たな事件が巻き起こる「22年目の告白 私が殺人犯です」。オリジナルは韓国映画の秀作サスペンス「殺人の告白」だ。オリジナル既見のファンには、前半の、犯人である曾根崎の言動の真意については察しがつくだろうが、この日本版リメイクは、その先にもうひとつのどんでん返しを用意している。1995年といえば、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した年。ギラギラした怒りや恨みが際立った韓国版に対し、日本版には深い哀しみと嘆きが漂うのは、国民性もさることながら、理不尽な大惨事が続発した1995年を背景にしたことと無縁ではないだろう。謎解きの詳細は映画を見て確かめてもらうとして、なかなか意欲的なリメイクであることは認めるが、終盤の展開は、どうも納得できない。自分への罰、あるいは歪んだ虚栄心、はたまた心の奥底のトラウマが判断を狂わせたと考えるべきなのか。ともあれ、時効への法制度の変化の意味や、天災、人災、戦争、テロなどが人間の心をいかに深く蝕むかを改めて考えさせられた。藤原竜也、伊藤英明、両名の抑制のきいた熱演には、思わず感服したが、個人的には韓国映画の衝撃に軍配をあげたい。
【60点】
(原題「22年目の告白 私が殺人犯です」)
(日本/入江悠監督/藤原竜也、伊藤英明、野村周平、他)
(どんでん返し度:★★★★★)
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パトリオット・デイ

Patriots Day
2013年4月15日。ボストン警察の刑事トミーは、アメリカ独立戦争開戦を記念した“愛国者の日(パトリオット・デイ)”に毎年開催されるボストンマラソンの警備にあたっていた。約3万人のランナーと50万人の観客で賑わう中、突如、ゴール付近で大爆発が発生し、歓声は悲鳴へと変わる。FBIはテロと断定。監視カメラに写った、不審な“黒い帽子の男”と“白い帽子の男”の存在が、容疑者として浮上する。多くの負傷者を目の当たりにしたトミーは、犯人への怒りを抱えながら、生存者に丁寧に聞き込みを開始し、手がかりを探していく…。

ボストン・マラソン中に起きた爆弾テロ事件の顛末を描く実録サスペンス・ドラマ「パトリオット・デイ」。ボストン・マラソンで大規模な爆発テロが起こり、犯人はイスラム過激派思想にそまった兄弟だったことは知っていたが、事件解決へ向けて、ボストン市民や警察の数々の勇気ある行動があったことを、本作で初めて詳細に知った。主演のマーク・ウォールバーグとピーター・バーグ監督は3度目のタッグで、すべて実話がベースになっているが、本作が最も出来がいい。ただ前2作でウォールバーグが演じたのは実在の人物だったが、本作で演じた警察官のトミーは架空の人物。事件解決に奔走した警察の、さまざまな思いや勇気、葛藤や悲しみを体現する人物として描かれている。登場人物は非常に多いのだが、ボストンの街に精通したトミー、立場上慎重に動くFBI捜査官、老保安官のような警察巡査部長など、主要キャラが立っていて分かりやすい。さらには、犯人であるツァルナエフ兄弟、ツァルナエフ兄の妻、事件で大怪我を負うカップルや、人質になる中国系の青年など、周辺の人物たちのドラマも丁寧で、観客は事件を俯瞰しながら、緊迫した犯人逮捕の瞬間へとスムーズに導かれる。途中で絶妙に挿入されるニュースや監視カメラの映像が緊張感をより高めて、実録サスペンスとしても群像劇としても見事な演出だ。何よりも、テロには決して屈しないと決意したボストン市民が一致団結して戦うクライマックスは感動的である。特殊能力を持つ一人のスーパーヒーローが活躍するのではなく、テロによって傷ついたボストンの街を愛する平凡な市民それぞれが、自分の役割を愚直に果たすことで最大の勇気と奇跡を呼び寄せた。語り継ぐのは悲劇ではなく希望。昨今、何かと評判が悪いアメリカの警察が、正義を守るために命がけで戦う姿にも間違いなく希望がある。ラストに登場する、当事者たちの今の姿とコメントが深く心に響いた。
【70点】
(原題「PATRIOTS DAY」)
(アメリカ/ピーター・バーグ監督/マーク・ウォールバーグ、ケヴィン・ベーコン、J・K・シモンズ、他)
(愛国心度:★★★★★)
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怪物はささやく

Ost: a Monster Calls
イギリスに住む13歳の少年コナーは、難しい病気を抱えた母と二人で、墓地が見える家で暮らしている。コナーは毎晩のように悪夢にうなされていたが、ある夜、樹木の姿をした怪物がやってくる。怪物はコナーに3つの真実の物語を語るから、4つめはコナーが隠している物語を話せと迫る…。

怪物が語る奇妙な真実の物語を通して人間の本質に迫っていくダーク・ファンタジー「怪物はささやく」。原作は児童文学で、シヴォーン・ダウドの未完の遺作を、パトリック・ネスが引き継いで完成させた。ネスは本作で脚本も担当している。スペイン出身の監督J.A.バヨナは長編デビュー作「永遠のこどもたち」同様、本作でも母親と息子の関係性に重点を置いて、現実と空想の間を行き来する不思議なストーリーを作り上げた。主人公のコナー少年が生きる現実は、とてつもなく過酷である。母はガンのためゆっくりと死に向かっており、母と離婚した父は遠いアメリカで新しい家庭を持っている。怖い祖母とは折り合いが悪い。学校ではいじめを受けている。彼の周囲は苦難に満ち、居場所がないコナーは毎晩悪夢にうなされているのだ。そんなコナーに、巨大なイチイの木の姿をした怪物が語る物語は、決して単純なおとぎ話ではない。3つの真実の物語は、どれも意外な結末でコナーを翻弄し、現実の不条理をつきつける寓話である。怪物は、安易なハッピーエンドや単純な善悪でコナーを子ども扱いせず、人間としてしっかり現実と対峙できるよう導こうとしているのだ。そして、ついにコナーが心の奥底にひた隠す真実の物語を話すときが訪れる。コナーが話す“告白”は、衝撃的だが切なく、激しく胸が揺さぶられるものだ。何千年も生きて、人間の美醜のすべてを見てきた怪物は、決して恐ろしいだけの存在ではない。コナーのメンターであり、コナーの心の奥底にある潜在意識であり、母親からのメッセンジャーでもある。幻想的なアニメーションの素晴らしいビジュアル、怪物の声を担当するリーアム・ニーソンの深くしみいるような声、コナーを演じるルイス・マクドゥーガル少年の繊細な演技が心に残る。そして原作にはない新たな結末が深い余韻と感動を残してくれた。物語の力を描く映画は数多く存在するが、本作の物語はどれも複雑で深く、考えさせられるものばかりだ。不安な現代を生きるための沢山のヒントが隠されている秀作である。
【85点】
(原題「A MONSTER CALLS」)
(米・スペイン/J・A・バヨナ監督/ルイス・マクドゥーガル、フェリシティ・ジョーンズ、リーアム・ニーソン、他)
(大人向け度:★★★★☆)
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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ

「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」オリジナル・サウンドトラック
2017年、東京。美香は、昼は看護師として、夜はガールズバーで働きながら日々をやり過ごしていた。言葉にできない不安や孤独を抱えながら生きる美香は、ある日、偶然、工事現場で日雇い労働者として働く慎二と出会う。二人はその後もさまざまな場所、さまざまな場面で出会いながら、少しずつ距離を縮めていく…。

大都会の片隅で生きる孤独な若者たちの出会いと恋の予感を描く「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」。物語のベースになっているのは独特の感性で人気を博す詩人・最果タヒのベストセラー詩集だ。詩がベースの映画というのは珍しいが、この人の詩は暗いのにどこか前向きになれる不思議な雰囲気を持っている。何でもタヒという名前は死という言葉を意味しているとか。そう思うと、本作のキャラクターが死の気配を濃厚に感じ取っているのも理解できる。物語は、都市を舞台にしたボーイ・ミーツ・ガール(あるいはガール・ミーツ・ボーイ)のストーリーだ。大都会・東京にうごめく無数の人々の中で言葉にできない不安を感じて生きていた二人は、おそらく互いに同じ思いを感じ取ったのだろう。愛なんか信じない。生きづらさを常に感じている。そんな二人は他人に甘える術さえ知らないが、それでも二人は出会った。この出会いに未来への希望を託しているのだ。渋谷や新宿でゲリラ撮影されたという映像や、抽象的な言葉も多数ある演劇的演出など、どちらかというと実験的な要素が強いこんな小品を、若くしてベテランの風格が漂う石井裕也監督が作ったというのが少し意外だ。安定した上手さをみせる若き演技派の池松壮亮と、石橋凌と原田美枝子の次女で、演技経験がほとんどない石橋静可という不思議な組み合わせが、孤独な男女のぎこちなさにフィットしていた。
【60点】
(原題「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」)
(日本/石井裕也/石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、他)
(孤独度:★★★★☆)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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