映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワイルド・スピード ICEBREAKE」「無限の住人」「帝一の国」etc.

プチレビュー17上旬

ターシャ・テューダー 静かな水の物語

ターシャ・テューダー 静かな水の物語 オリジナルサウンドトラック
2008年に92歳で亡くなったアメリカの絵本作家ターシャ・テューダーは、4人の子供を育てあげた後、50代で念願の一人暮らしを始める。山奥に建てた18世紀風のコテージでの生活は、現代に生きる多くの人々を魅了した。生前のターシャ本人の映像やインタビューをはじめ、息子のセス・テューダーらも登場し、ターシャの愛したシンプルライフを語っていく…。

絵本作家ターシャ・テューダーの生誕100年を記念し、自然に寄り添うシンプルライフを営んだ彼女の生き方に迫るドキュメンタリー「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」。日本でもファンが多いターシャは、絵本作家、人形作家、料理家、園芸家、アンティーク収集家と、多才な人として知られるが、そのライフスタイルから“スローライフの母”と呼ばれた女性だ。バーモント州の自然豊かな山奥のコテージに建てた18世紀風の家で、大好きなものに囲まれて暮らしたターシャだが、その人生はなかなか波乱万丈である。ボストンの裕福な名家に生まれたが、両親は離婚。華やかな社交界よりも農業に興味があり、同じく農業に関心があった夫トマスと結婚するが、いつしか農業に興味を失った夫とは後に離婚する。絵本作家を志した当初は、NYの出版社を必死に回ってもなかなかチャンスに恵まれないが、ターシャはあきらめなかった。劇中、夫は優しい人だったけど生活力がなかったとの言葉があるように、経済的にも一家を支えていたのはターシャだったのだ。俗世間から離れた癒しのスローライフを手に入れるまでは、努力と忍耐で、懸命に世俗を生き抜いたきたのだと分かる。それにしても彼女の暮らしぶりは、ユニークだ。ターシャには、電気やガス、テクノロジーに頼らない19世紀の農村の暮らしこそ理想という揺るぎない信念があって、頑なにそれを貫いている。衣食住はもちろん、ロウソクから手作りするその暮らしは、自分にとって最適な、ゆっくりとしたペースを保つことこそが人生を豊かにする秘訣だと教えてくれる。そしてユーモアや好奇心を失わないことの大切さも。コーギー犬を相棒にした静かな一人暮らし、ガーデニング、絵本の創作活動などを続けたターシャの美意識が隅々まで感じられ、松谷光絵監督との信頼関係がうかがえる作品に仕上がった。劇中に挿入されるアニメーションも味があってとてもいい。
【60点】
(原題「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」)
(日本/松谷光絵監督/ターシャ・テューダー、セス・テューダー、ウィンズロー・テューダー、他)
(スローライフのススメ度:★★★★★)
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ReLIFE リライフ

ReLIFEオフィシャル・フォトブック
27歳の海崎新太は、就職した会社を退職して以来、ニート生活を送っている。ある事件をきっかけに人と関わることに臆病になってしまった彼は、ある日、リライフ研究所の夜明了と出会い、1年限定で研究所が行う社会復帰実験の被験者になることに。外見だけを若返らせて1年間高校生活を送るというその実験で、再び高校生活を送る新太は、最初はとまどうが、仲間と出会い少しずつ変化していった。やがて成績優秀だがコミュニケーションが苦手な千鶴に惹かれていく。だが、実際には自分は彼女より10歳も年上、実験が終わる1年後には関わった人々の記憶から消えてしまうため、思いを伝えらずに葛藤する…。

ニートの青年が2度目の高校生活を送る青春ファンタジー「ReLIFE リライフ」。原作は、スマホ・アプリで読めるマンガ・ノベルサービスで大人気の夜宵草の人気コミックだ。27歳でニートという負け組の青年が突如容姿だけ若返り、高校生活を送る…という展開は「セブンティーン・アゲイン」を思い出す。本作で、主人公を奇妙な実験に誘うリライフ研究所の目的は、生きる意欲を失った人間を社会復帰させること。もともと新太は、面倒見のいい明るい性格だったのだが、就職先でのいびつな人間関係を味わって、他者と関わることに怯えてしまうようになった。青春学園ものなので、夏祭りや学園祭、旅行や卒業式などの1年の行事に沿って物語が進んでいくが、恋や友情の素晴らしさを再体験した新太が、ひたむきに“今”を生きる若者たちに感化され、変わっていくという展開は予想通りで驚きはないし、27歳から17歳ではわずか10年しか差がないので、メリハリも希薄だ。一種のタイムリープものだが、自分の過去に戻るわけではなく、現在関わっている人間と出会うわけでもない(リライフ研究所の夜明はお目付け役なので例外)、まったく新しい環境に身を置くという設定では、なぜ今の自分がどん底の人生を送ることになったのかを学べるのだろうか??と首をかしげてしまう。それでも「頑張ることをあきらめない」を思い出すストーリーは、悪くないし、ラストを映画オリジナルにしたのは工夫が感じられる。売れっ子の中川大志をはじめ、高校生を演じるのが自然な年齢の若手俳優が勢ぞろいしているのが見所だが、中でもちょっと風変わりな女子高生を演じる平祐奈が、いい味を出していた。
【55点】
(原題「ReLIFE リライフ」)
(日本/古澤健監督/中川大志、平祐奈、高杉真宙、他)
(前向き度:★★★★☆)
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グレートウォール

Great Wall
世界中を旅する傭兵ウィリアムは、仲間と共に火薬を求めてシルクロードへと赴く。砂漠地帯で馬賊の襲撃をかわして身を潜めていた彼らは、謎の獣に襲われる。多くの仲間を失いながら馬で駆け抜けた彼らの前に巨大な城壁“万里の長城”が現れた。長城防衛の命を受ける禁軍に降伏したウィリアムと相棒のトバールは、戦略を司る軍師ワン、女性司令官リン隊長らから、ウィリアムを襲った獣の正体は2000年前から60年に一度現れ、幾度となく中国を襲ってきた伝説の怪物、饕餮(とうてつ)であり、万里の長城はその獣を防ぐために築かれたことを知らされる…。

遠い昔の中国を舞台に万里の長城に秘められた伝説に迫るファンタジー・アクション「グレートウォール」。人類史上、最大の建造物・万里の長城には数々の謎や伝説がある。本作はその伝説のひとつを壮大なスケールで映像化した中国と米・ハリウッドの合作映画である。超大作の割には、アメリカでの興収はさんざんで、先のアカデミー賞でも司会者が友人のマット・デイモンをこの映画のことでいじり倒していたのが記憶に新しい。それはさておき、荒唐無稽なファンタジーだと割り切ってみると、意外にも楽しめる。金や名声のために働いてきたウィリアムが、自己犠牲の精神で命がけで戦う禁軍の戦士たちの影響で正義に目覚める…というストーリーはありがちで、ドラマとしての深みはほとんど感じられない。だがそれを補うのは、ビジュアルの美しさと迫力だ。長城を守る精鋭部隊は、役割毎に、色分けされ、石弓、空中戦などアクロバティックな戦いを繰り広げる。中でもバンジージャンプのような動きで獣と闘う美女軍団のアクションには目を見張った。そしてそこには西欧社会が渇望する最先端の武器である火薬もあって、圧倒的な破壊力を見せつけるという派手な見せ場も用意されている。知将の軍師ワン、女司令官リンら、際立つ登場人物もいるが、全体的には、個は埋没し、獣も人間も集団としてのイメージしか残らない。すべての人民が犠牲的精神で国家につくすという中国らしい考え方の是非は別問題として、伝説という名前の自由奔放なイマジネーションが爆発するスペクタクル巨編に仕上がった。名匠チャン・イーモウのハリウッド進出作だが、今後、彼はこの路線なのだろうか?? 道を踏み外してほしくない…と心配しつつ見守りたい。
【60点】
(原題「THE GREAT WALL」)
(中国・米/チャン・イーモウ監督/マット・デイモン、ペドロ・パスカル、ウィレム・デフォー、他)
(荒唐無稽度:★★★★★)
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ブルーハーツが聴こえる



恋人の浮気を知って葛藤する女性を描く「ハンマー(48億のブルース)」。宇宙で護送船での危機に遭遇する囚人たちを描く「人にやさしく」。亡くなった少女を救うためタイムリープを繰り返す男が主人公の「ラブレター」。鍵っ子の少年の心情を描く「少年の詩」。最愛の女性を失くした男の物語「ジョウネツノバラ」。福島の元原発作業員の心の揺れを描く「1001のバイオリン」。

1995年に解散した伝説のバンド、THE BLUE HEARTS 結成30周年を記念したオムニバスドラマ「ブルーハーツが聴こえる」。6話はそれぞれ別の監督によるもので、音楽、歌詞とリンクしながら、異なる趣の物語が紡がれる。分かりやすいもの、ぶっ飛んだもの、実験的な作品…と、好き嫌いも含めて、それぞれに異なる感想を持つと思うが、改めて感じるのは「リンダリンダ」や「TRAIN-TRAIN」などの名曲を生んだ THE BLUE HEARTS の音楽が、今も色あせないという事実だ。リアルタイムのファンはもちろん、THE BLUE HEARTSのことを知らない世代にも、彼らのメロディーは心に響くだろう。「ハンマー(48億のブルース)」はテンポもよく、切ないユーモアがあって楽しめる作品に仕上がった。SFが多いのは少し意外な気も。そんな中「1001のバイオリン」は、元福島原発の作業員が、新しい環境になじめず苦悩する姿を描き、今も続く東日本大震災の被害者の心の問題を切り取っている。前に進むことが必要と分かっていても、そうできない者がいることを責めることはできない。探していた愛犬の鳴き声が遠くに聞こえ、どんな場所にいようとも生きていかねばならないのだとの思いが伝わり、切ない余韻を残していた。監督、キャストともに、豪華なメンバーが揃っている本作。6話オムニバスというのは、正直、難しいスタイルだったと思うが、音楽と映像のコラボレーションという意味で、興味深い作品となっている。
【60点】
(原題「ブルーハーツが聴こえる」)
(日本/飯塚健,下山天,井口昇,清水崇,工藤伸一,李相日監督/尾野真千子、市原隼人、豊川悦司、他)
(豪華キャスト度:★★★★☆)
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午後8時の訪問者

ベルギーの小都市。小さな診療所で熱心に働く若い女医ジェニーは、ある日、診療時間を過ぎた午後8時に鳴ったベルに応じなかった。翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が発見される。診療所の監視カメラに写っていたその少女は、助けを求めていた。少女は誰なのか。なぜ死んだのか。あの時、ドアを開けていれば…と罪の意識にかられたジェニーは、少女のことを調べ始めるが、死の謎を探るうちに、意外な真実が浮かび上がってくる…。

時間外に診療所に来た少女の助けに応じなかったことで彼女の死に責任を感じる女医の葛藤を描くヒューマン・サスペンス「午後8時の訪問者」。カンヌ映画祭の常連であるダルデンヌ兄弟監督は、しばしば社会の底辺で生きる人々が抱える、貧困、差別、犯罪、移民問題などを題材にしてきた。それらの矛盾した実態を淡々と描くことで、社会問題が浮かび上がるのが作風の特徴だが、決して政治的なメッセージを声高に叫ぶことない。本作でもしかり。亡くなった少女の死に責任を感じるヒロインのジェニーは、自分がドアを開けて応じていれば、彼女の命を救えたかもしれないと考える。それは医者という職業柄もあるが、何よりもジェニーが誠実な人物だからだ。アフリカ系のその少女は不法滞在の娼婦で、いわば誰からも顧みられない存在だ。だが、ジェニーは、せめて彼女の名前を調べて故郷の家族に連絡したいと願って事件を調べ、時に危険な領域にまで入り込んでいく。なぜ少女は殺されたのか、犯人は誰か、という謎解きのスタイルで進んでいくことで、本作は今までの作品に比べてぐっと娯楽性が高まっていて飽きさせない。ジェニーの患者である少年ブライアンの嘘や、彼の両親の思惑、娼婦だった少女の背後にある闇組織などの存在が明らかになり、事件は意外な結末へ。償いの旅をするジェニー自身にも、医者として、人間として、心の変化が訪れるストーリーが秀逸だ。ヒロインを演じる仏の人気女優アデル・エネルの、繊細で寂しげな、それでいて強い意志を感じる表情が忘れがたい。
【75点】
(原題「LA FILLE INCONNUE/THE UNKNOWN GIRL」)
(ベルギー、フランス/ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ兄弟監督/アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)
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T2 トレインスポッティング

T2 トレインスポッティング -オリジナル・サウンド・トラック
麻薬の売買でつかんだ大金を仲間たちと山分けせずに逃亡したレントンは、20年ぶりにオランダから故郷のスコットランド・エジンバラに舞い戻る。実家では、母親はすでに亡くなり、父親が一人で暮らしていた。悪友たちのその後が気になったレントンは彼らを訪ねる。表向きはパブを経営しながら、売春、ゆすりを稼業とするシック・ボーイ。家族に愛想を尽かされ、孤独に絶望しているジャンキーのスパッド。刑務所に服役中のベグビーは、脱走を画策中。モノ分かりの良い大人になれずに荒んだ人生を送る彼らは20年の時を経て再会するが…。

90年代のポップ・カルチャーをけん引し社会現象を巻き起こした映画「トレインスポッティング」の20年後を描く続編「T2 トレインスポッティング」。監督のダニー・ボイルは今やオスカー監督の名匠。再集結した主要キャストたちも、それぞれ年齢を重ね、ユアン・マクレガーにいたっては「スター・ウォーズ」に出演するほどの大スターになった。一方、物語の中の4人は、誰一人大人になりきれず、悪あがきばかりしている。だが彼らにはそれが似つかわしい。実際、20年という時は、彼ら4人にも観客にも等しく流れた時間であって、そこには変わってしまったものと変わらないものがあって、当然なのだ。両方をきちんと描いてこそ、続編を作る意味があるのである。大金を持ち逃げしたレントンは皆の恨みを買ってはいるが、それでも何かと理由をつけ、仲間とつるんで遊ぶ姿は、シック・ボーイの恋人ベロニカがやきもちをやくほど。このブルガリア娘のベロニカが絶妙にからむストーリーが巧みで、今の時代の空気をしっかりとつかみとっている。ダニー・ボイルの音楽センスや映像センスも冴えわたり、レントンたちが年をくって冴えないオッサンになってしまっても、それなりのスピードでの疾走感を維持してくれているのが、微笑ましい。まっとうではない金を持っていても幸せにはなれなかった。何とかして事業を始めて変わろうとしても、世の中はそう甘くなかった。社会の底辺で生きるクズどもはぶざまにもがくばかり。それでも人は生きていかねばならないのだ。ほろ苦くて懐かしい同窓会に出席したような気分である。
【70点】
(原題「T2 TRAINSPOTTING」)
(イギリス/ダニー・ボイル監督/ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ロバート・カーライル、他)
(疾走感度:★★★★☆)
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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女 オフィシャルガイド
京都。大学のクラブの後輩である“黒髪の乙女”に想いを寄せる“先輩”は、なるべく彼女の目にとまる作戦(頭文字をとってナカメ作戦)を実行し彼女の気を引こうとしている。ある夜、酒豪の乙女は飲み歩き、先輩は、春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくばかりで乙女との距離はいっこうに縮まらない。さらに先輩は、仲間たちや不思議な老人による珍事件に巻き込まれていく…。

京都を舞台に、大学の後輩の黒髪の乙女に恋する先輩の恋模様を摩訶不思議な世界観で描くアニメーション「夜は短し歩けよ乙女」。原作は「四畳半神話大系」の森見登美彦の同名小説だ。何しろ「MIND GAME(マインド・ゲーム)」の奇才監督・湯浅政明の13年ぶりの新作アニメというだけでワクワクしてしまうが、期待通りの“自由な”作品である。酒好きの乙女が京都の街を飲み歩くが、彼女に恋する先輩はことごとくタイミングが合わない。奇妙なエロおやじ、個性的な大学生、謎の老人と、次々にヘンテコな登場人物が現れるが、乙女は、時に愛あるパンチを繰り出しつつも、すべての人に優しく礼儀正しい。時間や空間の概念が覆される物語もさることながら、のっぺりとしたイラストのような絵柄とカラフルな色彩のビジュアルが非常に新鮮だ。形も色も動きさえも、自由すぎるほど変幻自在に変わるそのテイストは、リアルとは対極にある。今やアニメーションは、いかに実写に近づくかを目指して奮闘している感があるが、本作は、アニメーションの特権である自由奔放さを爆発させている。このマジカルな心地よさは、酒豪の乙女が際限なく飲む酒に酔いしれるかのような、酩酊感とでも言おうか。ゲリラ演劇のミュージカルパートにいたっては、完全に酔いが回って幻覚を見ているような気さえする。そして恋する男女の運命には、最高の着地点を用意しているのだ。先輩の声を担当する星野源が、膨大なセリフをまくしたて、存在感を示す一方、他のキャストは実力派の声優たちで手堅い作りだ。93分、稀有な映像体験が味わえる逸品である。
【75点】
(原題「夜は短し歩けよ乙女」)
(日本/湯浅政明監督/(声)星野源、花澤香菜、神谷浩史、他)
(酩酊感度:★★★★★)
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ゴースト・イン・ザ・シェル



近未来。凄惨な事故に遭って、脳以外は全身義体となった、世界最強の戦士・少佐。彼女が自ら率いるエリート捜査組織・公安9課は、最先端テクノロジー企業のハンカ・ロボティックス社を狙うサイバーテロ組織が引き起こした、ハンカの研究員連続殺人事件を捜査する。テロ組織と対峙するうちに、少佐の脳にわずかに残った記憶が蘇り、やがて彼女は自分の記憶が操作されたという事実に気付く。自分はいったい何者なのか。その答えを求めて奔走する中、少佐の存在を揺るがす衝撃の事実が浮かび上がってくる…。

脳とわずかな記憶を残し、全身サイボーグ化した最強の戦士・少佐が謎のサイバーテロ組織を追う「ゴースト・イン・ザ・シェル」。原作は士郎正宗のSFコミック「攻殻機動隊」で、押井守監督による劇場版アニメなどによって知られている。「攻殻機動隊」が世界の映画作家に与えた影響は計り知れず、その筆頭が「マトリックス」だということもまた、広く知られているところだ。そんな偉大な原作、アニメ映画の実写版となると、期待より心配が先に立った。しかも日本アニメのハリウッド実写版では何度もがっかりさせられている。そして本作は…というと、なかなか健闘しているではないか!アニメ史上最も魅力的なヒロインの一人、少佐(草薙素子)を演じるスカーレット・ヨハンソンはアクションが得意な魅力的な女優で、今のハリウッド・スターの中ではベストな選択に思えた。物語は、サイバーテロ集団のリーダーで、謎のハッカー・クゼの正体を追う少佐が、ハンカ・ロボティックス社の思惑と、予想もしない真実にたどりつくというもの。バトーやトグサ、荒巻ら、おなじみのメンバーが登場するストーリーは、かなり原作(及びアニメ版)に忠実なものだ。その意味で、新鮮味はないのだが、目新しいのは、少佐の過去が明らかになることで、これはなかなか興味深い。香港ロケや、無国籍風ニッポンの描写、最先端CGを使ったスタイリッシュなアクションと、映像的な見所も多い。世界的に熱狂的なファンを持つ「攻殻機動隊」のハリウッド実写映画化には、ファンならずともさまざまな意見があろう。まずは作品を見てほしい。そして、一人の肉体の中で人間と機械がせめぎ合いながら、あくまでも人間であろうとする意味を考えてほしいのだ。テクノロジー主流の世界での人類の役割を問う。そんな未来はそう遠くないところまで来ているのだから。
【65点】
(原題「GHOST IN THE SHELL」)
(アメリカ/ルパート・サンダーズ監督/スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、他)
(無国籍度:★★★★★)
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LION/ライオン 25年目のただいま

「LION/ライオン~25年目のただいま~」オリジナル・サウンドトラック
サルーは、5歳の時、インドで迷子になり、孤児と認定されて、オーストラリア、タスマニアに暮らす夫婦に養子として引き取られる。利発な彼は、すぐに夫妻と新しい土地になじむ。だが、成人して本土の大学に進学したサルーは、インドにいて今も自分を探しているであろう本当の母や兄への思いが日に日に募っていた。家族を見つけることを決意したサルーは、わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索を始める…。

5歳の時インドで迷子になりオーストラリアで養子として育ったインド人青年が25年の時を経て本当の家族を探し当てるまでを描く驚きの実話「LION/ライオン 25年目のただいま」。迷子になったのは1986年。その25年後に主人公サルーが家族を探す手助けをしてくれるのはGoogle Earthだ。IT技術が進んだとはいえ、あまりに遠い距離の“ホームカミング”がそんなに簡単に成功するものなのか?!と首をかしげたくなるが、これが実話だというから驚いてしまう。サルーはオーストラリアで幸福に暮らしているのだが、心にぽっかりと空いた穴を埋められない。愛してくれる養父母がいるのに、本当の家族を探すのは、一見身勝手にも思える。しかしそれはDNAレベルでの喪失感に基づく行為なのだ。実話なので彼が本当の家族と巡り合うことは分かっているのだが、それまでのプロセスが非常に面白い。サルーのおぼろげな記憶にあるのは、大好きだった揚げ菓子と、駅のそばの給水塔だけ。列車の中で眠り込んだ時間から距離を割り出す。給水塔のある場所から範囲を絞り込む。数字やデータを使っての検索は徐々に真実への道を照らし出していく。同時にサルーや養母の心情も丁寧に描かれる。インドで迷子になった時期は、よくまあ無事で…と思うほど波乱万丈なのだが、危険な場所や悪い大人を敏感に察知しながらたくましく生き延びる様には、サルーの中に原初的に備わる生命力を感じるし、本当の家族を探すことには自分とはいったい何者なのかを模索する、普遍的な命題が見て取れる。もっとも、養母が語る、サルーを養子にした理由が「神の啓示を受けたから」というのは、無宗教の自分には理解不能なのだが…。それでもこの驚きの実話には素直に感動を覚えた。それはデヴ・パテルやニコール・キッドマンの説得力のある名演技と、子ども時代のサルーを演じるサニー・パワールの圧倒的な存在感があるから。ラストに登場する本物のサルーの映像には思わず涙ぐんだ。そして初めてこの映画のタイトルがなぜ「ライオン」なのかが分かる。壮大な“探し物”には、沢山の奇跡と愛がつまっていた。
【70点】
(原題「LION」)
(オーストラリア/ガース・デイヴィス監督/デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、他)
(驚きの実話度:★★★★★)
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暗黒女子

映画「暗黒女子」オリジナル・サウンドトラック
裕福な家庭の子どもたちばかりが通う名門女子高・聖母マリア女子高等学院で、学院の経営者の娘で、全校生徒の憧れの的だった白石いつみが屋上から落下して死亡する事件が起こる。彼女の手にはすずらんの花が握られていた。事故なのか自殺なのか謎に包まれる中、いつみは、彼女が主宰していた文学サークルの誰かに殺されたのでは…という噂がたつ。いつみの親友で、いつみに代わってサークルの会長となった澄川小百合は“白石いつみの死”をテーマに自作の物語を披露する、定期朗読会を開催する。会員はそれぞれ犯人を告発する作品を発表するが、物語の内容はすべて異なっていた…。

名門女子高で起こった美少女転落死事件の真相を巡って少女たちの心の闇と意外な真実があぶり出される学園ミステリー「暗黒女子」。原作は秋吉理香子の同名小説で、読後の後味の悪さを感じるイヤミスとして話題の原作だ。ひとつの事件をめぐって、それぞれが違う犯人と犯行の動機を語り、やがてその先にある真実へとたどりつくという展開は、いわゆる「羅生門」スタイルである。同じ場面、同じ登場人物が何度も出てくるので、シーンに工夫が必要なのだが、この作品の場合は、ポップではあるが、ちょっと表層的だ。その分、美少女だらけのビジュアルの魅力でカバーしている。優雅で美しいはずのお嬢様たちの日常は、裏側では、壮絶な嫉妬や策略、秘密やかけひきがくりひろげられていて、そのドロドロ状態は、それなりに見応えがある。スクールカーストのトップにいた、いつみへの愛憎入り乱れる感情は、純粋で残酷、エゴイストでナルシストの10代の少女そのものだ。ミステリーなので詳細と結末は映画を見て確かめてほしいが、キャッチコピーにある“驚愕のラスト24分”は、なるほどブッ飛ぶ。これはもはや、ミステリーというよりホラーである。そもそも、セレブのお嬢様学校の文学サークルの伝統が闇鍋って、何これ?!と違和感を持って見ていたが、それがこんな形で結実するとは。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、美少女たちの怪演は一見の価値ありだ。
【55点】
(原題「暗黒女子」)
(日本/耶雲哉治監督/清水富美加、飯豊まりえ、千葉雄大、他)
(残酷度:★★★★★)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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