映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ザ・マミー」「君の膵臓をたべたい」「ファウンダー」etc.

プチレビュー17下旬

君の膵臓をたべたい

映画「君の膵臓をたべたい」オリジナル・サウンドトラック
高校時代のクラスメイト・山内桜良(さくら)の言葉がきっかけで教師になった“僕”は、教え子と話すうちに桜良と過ごした数ヶ月を思い出していた。膵臓(すいぞう)の病気を患っていた桜良は闘病日記“共病文庫”を付けていた。それを偶然みつけた“僕”は彼女が余命わずかなことを知り、桜良と一緒に過ごす時間が増えていく。だが明るく前向きに生きる彼女の日々は、唐突に終わりを告げる。彼女の死から12年後、桜良の親友だった恭子、そして“僕”は、ある事をきっかけに桜良が伝えたかった本当の思いを知ることになる…。

膵臓の病を患う女子高生と同級生の“僕”の交流を描く「君の膵臓をたべたい」。原作は住野よるの小説だ。いわゆる難病ものなのだが、クラスでも人気者の桜良は、人並み以上に明るく前向きで行動的な女の子。目立たない地味なクラスメイトの“僕”を半ば強引に巻き込んで、死ぬまでにしたいことを実行に移していく。難病ものにありがちな、重い病を患っていても、顔色もよく元気一杯に行動し、唐突に体調を崩して死に向かうという、ご都合主義は、本作でも健在だ。桜良が残された時間を懸命に生きようとする姿はなるほど感動的だが、彼女の言動はちょっと自己中心的すぎる感もあり、共感するのは難しい。…というか、このテの話に感動できなくなってきている自分に、うっすらと危機感を覚えたりもする。

気になるのは、原作にはない大人パートの設定が、とってつけたように思えることだ。12年の時を経て桜良の本当の思いが明かされるのだが、細部が甘く説得力に欠ける。詳細は明かせないが、これでは遺書の効果も半減してしまうではないか。ユニークで刺激的なタイトルの意味は最後に明かされる。「私も君も、一日の価値は一緒だよ」。この言葉に、限られた時間の中で、かけがえのない一日一日を大切に生きる願いが込められていた。
【50点】
(原題「君の膵臓をたべたい」)
(日本/月川翔監督/浜辺美波、北村匠海、小栗旬、北川景子、他)
(感動度:★★★☆☆)
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女



中東で古代エジプト文字が刻まれた石棺が発見される。発掘に立ち会った米軍関係者のニックと考古学者のジェニーは、調査のために棺を英国へ輸送するが、途中でアクシデントが発生。ジェニーは何とか助かるが、ニックを乗せた輸送機はロンドン郊外に墜落し、棺は行方不明に。やがて石棺の中から、封印されていた古代エジプトの邪悪な王女アマネットが目覚める。なぜか傷ひとつない身体で助かったニックは王女の呪いに導かれるように棺を探すが、やがてアマネットの想像を絶する復讐が幕を開ける…。

古代エジプトの邪悪な王女が復讐のために現代に蘇るホラー・アクション・アドベンチャー「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」。1932年製作の「ミイラ再生」を最新技術で新たに蘇らせたものだ。モンスター・ホラー映画の老舗であるユニバーサル・スタジオが自社の自前のモンスターを次々に再生させる巨大プロジェクト“ダーク・ユニバース”の第一弾が本作である。ヒーローたちがチームを組むアベンジャーズやジャスティスリーグのモンスター版のような企画だが、その最初のモンスターがミイラというのは、意外というか、渋いというか。ともあれ古代の王女アマネットは、最初はミイラ状態でも、みるみるうちに美しくも恐ろしい姿になり、暴れまわる。4つの瞳、全身タトゥー、傲慢で邪悪、それでいて切ないキャラを演じるソフィア・ブテラは、完全に主役のトム・クルーズを食ってしまって、魅力的だ。

とはいえ、何をやらせても俺様キャラのヒーローになってしまうトムも、結構奮闘している。今回は“ハムナプトラ”な環境でのアドベンチャーだが、盗品をさばいて小銭を稼ぐセコい部分や、相棒とのやりとりでコミカルな芝居にも一生懸命に挑戦。もちろんトレードマークである身体をはったアクションも健在だ。舞台をロンドンに移してからは、ラッセル・クロウ演じるジキル博士(とハイド氏)が登場し、事態はにわかに急展開。このジキル博士率いる秘密結社プロディジウムが、今後のダーク・ユニバースの軸になっていく。正直、本作はトム・クルーズじゃなくても良さそうな“贅沢なB級大作”なのだが、大物俳優が揃うこの超大型企画ダーク・ユニバースは確かに楽しみだ。個人的には「大アマゾンの半魚人」に大いに期待!である。
【60点】
(原題「THE MUMMY」)
(アメリカ/アレックス・カーツマン監督/トム・クルーズ、ソフィア・ブテラ、アナベル・ウォーリス、他)
(大型企画度:★★★★★)
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ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走



夫トム、妻ジュリア、9歳の娘と7歳の息子とおじいちゃんというコックス一家は夏休みになり、自慢の新車でバカンスに出掛ける。最新テクノロジーが搭載されている真っ赤な新車は快適で、安全なドライブのはずだったが、突如ブレーキが効かなくなる。自慢のシステムがあっさり故障したハイテク車に乗ったまま、一家は時速160kmで高速道路を暴走することに。全員がパニック状態の中、家族の秘密が次々に明らかになる…。

暴走するハイテク車内を舞台にした密室コメディー「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」。整形外科医のトムは昔は学問に燃えていたが今は美容整形とシワトリ手術で金儲けに余念がない。精神科医のジュリアはキレやすい性格の上で妊婦のため情緒不安定。風変わりな娘は反抗期、やんちゃな息子はアメコミに夢中。一番心配なのはトラブルメーカーのおじいちゃん。こんな一家のバカンスがただで済むはずがない。役にたたない警官や一家の車をしつこく追ってくる男なども加わって、密室コメディーとカー・アクション、おバカな笑いとユルいスリルのノンストップ・ムービーになっていく。

個人的に、ギャグがツボにハマらず、さっぱり笑えなかったのだが、何気なくやっているカー・アクションが実はすごい。仏映画にはカーアクションの系譜があって、このジャンルには自信があるのだろう。CGではなく本気のスタントで演じられているというから、そちらの方がよほどクレージーだ。終盤、一家の行く手には人類史上最悪の渋滞が待ち受ける。さぁ、どうする?!ということで、ある奇策がとられるが、それができるなら、最初からそうすれば?!とツッコミたくなった。「世界の果てまでヒャッハー!」のニコラ・ブナム監督の作品にしては、やや消化不良。それでも家族の絆は強まったのだからヨシとしよう。
【50点】
(原題「FULL SPEED」)
(フランス/ニコラ・ブナム監督/ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ヴィニョ、他)
(暴走度:★★★★☆)
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君はひとりじゃない

Body / Cialo (DVD)
Body / Cialo (DVD) [DVD]
妻を病気で亡くし喪失感に囚われた中年の検察官ヤヌシュは、陰惨な犯罪現場に立ち会っても、人の死に何も感じなくなっていた。娘のオルガは心も身体も病み、摂食障害になっている。父と娘の溝は深まるばかりだ。やせ細ったオルガの様子を見かねたヤヌシュは、精神病院に入院させるが、そこで風変わりなセラピストのアナと出会う。アナ自身も過去に子どもを亡くし心に大きな傷を抱えていたが、アナには死者と交信できる不思議な能力があった…。

家族の死から父と娘が再生していく姿を、超自然的視点からみつめるヒューマン・ドラマ「君はひとりじゃない」。ポーランドの俊英女性監督マウゴシュカ・シュモフスカ監督が、ベルリン国際映画祭で、最優秀監督賞を受賞した本作は、家族愛という普遍的なテーマを、霊媒師や心霊描写(と呼ぶにはあまりにもささやかだが…)を織り交ぜて描くという、かなりユニークな手法をとっている。精神的支柱だった妻の死を受け入れられずに苦悩する父はメタボ体型だが、一方の娘はやせ細りやつれていく。こういう目に見える肉体形状で親子の溝の深さを表すのがまず面白い。父と娘は互いに孤独なのだがどう接していいのがわからないのだ。かなりシリアスな状況なのに、彼らに手を差し伸べるのがなんと“霊媒師”である。この唐突感が、これまた面白い。

川辺の木で首を吊って死んだ男がなぜかむっくりと起き上がり、どこかへ歩き去る。アパートで転落したはずの少年は、静かに微笑んでたたずんでいる。ここでは死者と生者は当たり前のように同居している。死者は、ホラー映画のようにショッキングに登場するのではなく、ごく自然にそこにいる。まるで自分の死に気付いていないかのように。それはオルガやヤヌシュが、生きていることに無感覚になっている様とも共通する。はたして父と娘の絆は再び結ばれるのだろうか。ラストは、あきれるほどあっけらかんとしていて、場違いなユーモアに満ちている。だがオルガとヤヌシュのまなざしは確かに交錯し、今までお互いの存在に嫌悪感しか抱いていなかった二人はしっかりとみつめあった。この物語の超常現象とは、衝撃的なものではなく、孤独だと思い込んでいた世界は、数多くの命や愛で満ちていると気付かせることなのかもしれない。決して分かりやすい感動はないし、むしろヘンテコな作品の部類に入る。それなのに不思議と心に染み入る。忘れられない映画になりそうだ。
【70点】
(原題「Body/CIALO」)
(ポーランド/マウゴシュカ・シュモフスカ監督/ヤヌシュ・ガヨス、ヤヌーシュ・ガヨス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラ、他)
(ユニーク度:★★★★★)
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ビニー/信じる男



自惚れ屋のボクサー、ビニー・パジェンサは、一度は引退を宣告されながらも、飲んだくれだが優秀なトレーナー、ケビン・ルーニーの指導で徹底したトレーニングを行って勝利をつかみ、チャンピオンになった。だが直後に交通事故により頚椎(せきつい)を損傷するという大怪我を負ってしまう。ボクシングへの道は絶たれたかに思えたが、歩くことさえままならないビニーは再起を決意。ケビンと共に命懸けのリハビリを行って、スーパーミドル級チャンピオンを目指してトレーニングを始める…。

奇跡のカムバックを果たした元ボクシング・チャンピオン、ビニー・パジェンサの生き様を描く実話「ビニー/信じる男」。ロードアイランド出身のビニー・パジェンサは1962年生まれ。ギャンブル好きのお調子者で自惚れ屋だが、ボクシングへの情熱は誰にも負けない。そんな男が大事故からカムバックを果たす物語は、スポーツ映画によくある“再起”の実話だ。だが脊椎損傷からのボクサー復帰は、簡単なカムバックではない。ボクシングはおろか、歩くことさえ無理と言われても、首を固定するためにまるで中世の拷問器具のようなリハビリ装具を付けての生活を強いられても、彼はあきらめなかった。安全な方法の治療を拒否し、命がけのカムバックを目指したのは、ただ寝ているだけの人生に何の価値も見出さなかったからである。

ボクシング界の裏事情やビニーの周囲の雑念もリアルに描かれる。金儲けしか眼中にないプロモーター親子や、息子を愛しながら支配しようとする父親がいる一方で、現実は、トレーナーのケビンでさえ、最初は「危険すぎるから復帰は諦めろ」と言うほど絶望的だった。そんな複雑極まる状況の中、ビニーが言う「本当はすべてのことはとても単純なんだ」という言葉が、ボクシングというスポーツの本質を突いている。四角いリングの上で殴り合い、強いものだけが勝つ。なるほど単純だ。だからこそボクシングの栄光の輝きは無条件に人々を魅了するのだろう。「セッション」で注目された若手実力派マイルズ・テラーは、セコい小悪党からヒーローまで、演じる役柄の振り幅が大きい俳優だが、本作では見事な肉体改造と精悍な表情で役者魂を見せている。実話がもとのスポ根映画として見応えがあるが、何よりも自分を信じ続ける勇気と信念の力強さに心を打たれる物語だ。まさに事実は小説より奇なり、である。
【70点】
(原題「BLEED FOR THIS」)
(アメリカ/ベン・ヤンガー監督/マイルズ・テラー、アーロン・エッカート、ケイティ・セイガル、他)
(信念度:★★★★★)
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心が叫びたがってるんだ。

実写映画「心が叫びたがってるんだ。」オリジナルサウンドトラック
人と本音で向き合うことが苦手な高校3年生の坂上拓実は、ある日、担任教諭から地域ふれあい交流会(ふれ交)の実行委員に任命されてしまう。同じく委員になったのは、幼い頃に負ったトラウマのせいで他人と話すことができない少女・成瀬順、中学時代に拓実とつきあっていたのに自然消滅した優等生の仁藤菜月、甲子園への夢に破れた元野球部のエースの田崎大樹。ふれ交の出し物はミュージカルになり、拓実のある言葉から、順は歌ならば思いが伝えられるかもしれないと、主役に立候補する。それぞれ心に傷を抱えた4人は、ぶつかりあいながらも、少しずつ距離を縮めていったが、本番直前にある事件がおこる…。

2015年に公開され、スマッシュ・ヒットとなったアニメを実写映画化した青春映画「心が叫びたがってるんだ。」。幼い頃、自分が親に言った一言で家族がバラバラになったことがトラウマで、しゃべれなくなった少女・順を中心に、それぞれ悩みや心の傷を抱えた高校生たちが、淡い恋心や友情によって成長していく姿を描く。オリジナルのアニメは通称“ここさけ”と呼ばれ、その繊細な物語と好感度が高い絵柄で人気を博した。そんな作品の実写化のハードルは高いものだが、実写版“ここさけ”は、キャスティングや演出も含めて、かなり成功しているとみた。目の前にいる大好きな人に想いを伝えることができないもどかしさや、音楽を通して気持ちを表現するみずみずしさ、時に人を傷つけ、時に人を励ます言葉というものが持つ大きな力を、本作はオリジナルに忠実に、しっかりと伝えてくれている。

もともと音楽の素養があった拓実を中心に、言葉を話さないことで変人扱いされていた順の懸命な勇気に打たれたクラスメイトたちが、ふれ交のミュージカルに向けて一丸となって頑張る姿は、いかにも青春映画らしい。実写版では、順の言葉を封じる卵の妖精は登場しないが、その代わりに、生徒たちをさりげなく見守る担任が言う言葉が効いている。「ミュージカルでは、古今東西、奇跡が起こるもんなんだよ」。その奇跡とは、心に閉じ込めた本当の気持ちに向き合った4人が起こす相乗効果のミラクルなのだ。SNSなどの普及で情報量は増えたのに、コミュニケーションは自分が傷つかないように、本音を隠して無難に流すのが現代社会。校舎の屋上で“叫ぶ”のは気恥ずかしいが、相手の目を見て、しっかりと思いを伝える勇気を思い出させてくれる。“ここさけ”はやっぱり切なくてあたたかい。
【70点】
(原題「心が叫びたがってるんだ。」)
(日本/熊澤尚人監督/中島健人、芳根京子、石井杏奈、寛一郎、他)
(片想い度:★★★★☆)
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怪盗グルーのミニオン大脱走

Despicable Me 3
悪党を廃業し正義のために働くグルーは、怪盗バルタザールを逃したことで、妻のルーシーともども反悪党同盟をクビになってしまう。ミニオンたちから再び悪党になるように説得されるグルーだったが、それをきっぱりと断ったためミニオンたちは家を出て行ってしまう。そんなある日、見知らぬ男が現れ、グルーに双子の兄ドルーがいることを告げる。ドルーは大金持ちでフサフサの金髪だが、ワルの才能がないため、大悪党だった父親の意志を継ぎたいとグルーに悪の教えを懇願する。その頃、新しいボスを求めて街をさ迷っていたミニオンたちは、ひょんなことから刑務所送りに。グルーはバルタザールが盗んだダイヤを取り戻すため、ドルーにワルのレクチャーをしてダイヤを取り戻し、反悪党同盟に復帰する計画を思いつくが…。

怪盗グルーと謎の生命体ミニオンの活躍を描く人気アニメーション・シリーズの第3弾「怪盗グルーのミニオン大脱走」。今や正義の味方となったグルー、家族となった幼い3姉妹と妻という新しい家族に加えて、生き別れとなった双子の兄弟との再会、ワルを廃業したグルーに失望し家出したミニオンたち、そして80年代の栄光を生きる怪盗バルタザールという新しい悪党の登場。こう書くと、見所てんこもりで、にぎやかな内容に思えるが、ストーリーは意外性がなく、何とも物足りない。

そもそもワルだからこそ魅力があったグルーが正義の味方になってしまうという展開に、限界を感じるのだ。むしろ、いつの時代にも最強最悪のボスに仕えてきた、ミニオンたちの方が主人公にふさわしいシリーズになってしまっている。バナナに似たルックスに不思議な擬音の声で会話するミニオンは、今回は歌のオーディションに乱入して熱唱したあげく、不法侵入で逮捕されるという大ピンチ。それでもグルーとの絆が深い彼らは意外な活躍を披露し…と、ミニオンのファンとしては嬉しい活躍ぶりだ。80年代の人気子役バルタザールが自分を忘れた世間に復讐するというストーリーは、なかなかアイロニカルで、彼の80年代ファッションやダンス、音楽などが微苦笑を誘う。ただ色彩豊かな映像とスピード感あふれるアクションは健在。とりあえずミニオンファンにはおすすめだ。
【50点】
(原題「DESPICABLE ME 3」)
(アメリカ/カイル・バルダ、ピエール・コフィン監督/(声)スティーヴ・カレル、クリステン・ウィグ、トレイ・パーカー、他)
(カラフル度:★★★★☆)
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彼女の人生は間違いじゃない



東日本大震災から5年後の福島県いわき市。市役所に勤めているみゆきは、週末になると、仮設住宅で二人で暮らす父親に、英会話教室に通うと嘘をついて、高速バスで東京へ行き、渋谷でデリヘル嬢として働いていた。ある日、みゆきは、元恋人から連絡を受け、やり直したいと言われるが、返事はせず言葉を濁す。亡き母との思い出に浸りながら、生きる目的を見失った父に対しても苛立ちを募らせる。そんなみゆきは、福島と東京を往復する日々の中で、さまざまな現実を目にするが…。

東日本大震災の傷を抱えながら生きる女性とその周囲の人々を描くヒューマン・ドラマ「彼女の人生は間違いじゃない」。廣木隆一監督自身による小説が原作で、自らメガホンを取った渾身作だ。中心になるのは、震災で母や家を失ったヒロイン・みゆきの、いつも満たされない心情である。なぜ身体を売るデリヘル嬢なのかという理由は明かされないが、震災以降、福島と東京が、実際の距離以上に遠のいてしまった溝と同じように、彼女の心の中の喪失感、憤り、悲しみ、不安は深く複雑なのだろう。映画は彼女の生き方を決して責めない。ヒロインは何を求めているのか。彼女はどう生きるべきか。簡単に出る答えなどない。

「ヴァイブレータ」や「さよなら歌舞伎町」などの廣木作品には、自分の居場所を求める人々がしばしば登場する。近年の作品には東日本大震災の影が投影されることが多いが、未来が見えずに生きる不安というモチーフには、普遍性がある。ヒロインを演じる瀧内公美の演技が繊細で素晴らしく、終始、彼女から目が離せなかった。みゆきと心を通わせるデリヘルの従業員役の高良健吾、自らも被災しながら懸命に生きる市役所の同僚役の柄本時生らも丁寧な芝居で好演。光石研演じるみゆきの父親が、自分なりの方法で妻の死に折り合いをつける場面は、本作の大きなクライマックスで、思わず涙ぐんだ。補償金を遊びにつぎこむ人、霊感商法の壺を売る男、卒論で震災を語ろうとする学生。それらはすべて実際のエピソードだという。そんな“負”の側面も、前向きに頑張る“正”の感情も、どちらも等しく存在する現実である。これは5年間の日常の絶望と希望が積み重なってできたストーリーなのだ。
【75点】
(原題「彼女の人生は間違いじゃない」)
(日本/廣木隆一監督/瀧内公美、光石研、高良健吾、他)
(リアル度:★★★★☆)
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パワーレンジャー

パワーレンジャー(オリジナル・サウンドトラック)
紀元前。世界の運命を左右する大きな戦いが起こり、死闘の末、地球は5人の戦士たちによって守られた。時は流れて、現代。小さな町、エンジェル・グローブに暮らす平凡な高校生たち、ジェイソン、キンバリー、ビリー、トリニー、ザックの5人は、運命に導かれるように出会う。突如、超人的なパワーを与えられ困惑する彼らの前に、古代の地球を守っていた5人の戦士パワーレンジャーの一人、ゾードンが現れ、悪の戦士リタ・レプルサが世界を滅ぼそうとしていること、そして5人がリタと闘うパワーレンジャーとして選ばれたことを告げる。たが、5人はなかなか自らの使命を受け入れられず、秘めたパワーを解放できない。それぞれが葛藤する中、世界の危機が迫り、ついにその力が目覚めるが…。

日本発のスーパー戦隊シリーズをハリウッドが実写映画化したSFアクション「パワーレンジャー」。元は子ども向け特撮テレビドラマだが、ハリウッドがスケールアップして作った本作は、あえて登場人物たちの年齢を高くし、大人の鑑賞にも耐えうるものになっている。主人公は男子3人、女子2人の計5人の平凡な高校生たちだ。白人2人、黒人、アジア系、ヒスパニック系とさまざまな人種の5人が抱える悩みは、将来のこと、友情、いじめ、家庭、貧困など、現代社会にフィットした多様性を見せる。物語はSFヒーローものだが、若者たちが悩み、決断し、成長する姿は、青春映画のセオリー通り。オタクやサブカル的な会話や笑いも入れながらのストーリーは、共感を生むだろう。

もどかしいのは、超人的なパワーを与えられても、なかなかパワーレンジャーとして覚醒しないことだ。本物のヒーローになるために必要な覚悟や犠牲、勇気が試されているのだろう。だが、そんな“タメ”が長い分、ついにパワーレンジャーに変身して戦う場面は、なかなかのカタルシスを味わえる。ハリウッド大作らしいスケールで、アクションやVFXなどを駆使した映像は、かなり贅沢なもの。人間サイズで戦い、巨大マシンに搭乗して戦い、さらにはそのマシンと合体して戦う頃には、気分は完全にスーパー戦隊シリーズに入り込んでいるはずだ。日本でスーパー戦隊ものといえばイケメン俳優の登竜門。どうやら本作はシリーズ化されるという噂だし、今のうちに、本作の若手キャストの名前を覚えておくといいかもしれない。
【70点】
(原題「POWER RANGERS」)
(米・カナダ/ディーン・イズラライト監督/デイカー・モンゴメリー、RJ・サイラー、ナオミ・スコット、他)
(青春成長物語度:★★★★☆)
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カーズ/クロスロード

カーズ/クロスロード オリジナル・サウンドトラック
真っ赤なボディのスポーツカー、マックィーンは、これまで数々のレースで優勝し華々しく活躍してきたが、ベテランとなった今は、最新型のレーサーに勝てず苦戦を仕入れらている。焦ったマックィーンは無理なレース運びで大きなクラッシュ事故を起こしてしまう。運にも世間からも見放され、自信も喪失、引退という言葉が脳裏にちらついていた。引退か、再起か。人生の岐路にたたされたマックィーンは決断を迫られるが…。

車を主人公にした大人気アニメーションシリーズの第3弾「カーズ/クロスロード」。クロスロードとは、人生の岐路の意味で、華やかで天才的なスター・レーサーであるライトニング・マックィーンが、ベテランとなり引退を考えて苦悩するが、新たな相棒やかつての仲間の助けで再生していく姿を描く。ディズニーのアニメーションはいつも物語が秀逸で、現代社会をしっかり照射しているが、今回はズバリ“老い”だ。アニメの主要ターゲットである子どもたちが知るはずもない、人生のやるせなさを描いて、完全に大人モードである。

過去の栄光、世代交代、自らの体力、技術、モチベーションの低下…。直面する問題は山積みで、主人公のマックィーンは文字通り、人生の岐路(クロスロード)に立たされる。マックィーンは、果たしてどんな道を選ぶだろうか。終盤の驚きの展開は、おそらく大方の予想を裏切るものだ。しかも、それが実に心地よい。マックィーンの相棒となるトレーナーで、イエローのボディがキュートな新キャラ、クルーズ・ラミレスとのやりとりが楽しくも感動的だ。レースシーンの迫力や雄大な自然描写、表情豊かな車たちの魅力は健在である。映像は緻密、キャラクターは個性的、メッセージは深い。やっぱりこのシリーズは秀作揃いだと再認識した。日本語版のエンドソングは奥田民生が歌う「エンジン」。“夢の続きに行ってみよう”と、軽やかに歌いあげる。そう、“明日も目の前に道は続いている”のだ。この映画に励まされる大人はきっと多いだろう。
【80点】
(原題「CARS 3」)
(アメリカ/ブライアン・フィー監督/出演(声)オーウェン・ウィルソン、他)
(大人向け度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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