映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワンダーウーマン」「エル」「関ケ原」「ボブという名の猫」etc.

プチレビュー17下旬

スターシップ9



公害汚染によって地球が死にゆく近未来。エレナは代わりの星をみつけるため恒星間飛行の旅に出るが、一緒に旅立った両親は既におらず、たった一人で旅を続けていた。ある日、スペースシップが故障し、救援信号を送ると、その呼びかけに応じてエンジニアのアレックスがやってくる。二人は一目で恋に落ちるが、エレナはこの飛行が人類の未来を賭けた高度な実験であることを知らなかった…。

滅びゆく地球の代わりの惑星を探すヒロインと彼女が出会った青年の運命を描く異色のSF「スターシップ9」。少し不思議なテイストの作品が多いスペイン映画は、近年ではホラーやダークファンタジーなどの作品群で注目されている。スペイン発のSFというのは日本で目にする機会は非常に少ないが、本作には派手なアクションや奇抜なクリーチャーなどは登場しない。ヒロインの心の旅路を描く内容は、SFよりラブストーリーのテイストが色濃い。8割をコロンビアで撮影しているというのもユニークで、ネットフリックスの人気ドラマ「ナルコス」の制作チームが手掛けている。

出会った瞬間に一目で惹かれあったエレナとアレックスは運命の恋なのだが、エレナの飛行には謎めいた大きな仕掛けがある。宇宙空間でたった一人という設定は過去に何度か映画で描かれたが、女性という点は新鮮だ。ほぼ一人ぼっちで生きてきたエレナが、運命の人とはいえ、初めてリアルに出会う他者や新しい環境にあっさりなじむ様には苦笑してしまうし、ハリウッドのSFを見慣れた目には、本作のビジュアルはあまりにチープ。それでも人類の未来を、変化球ともいえる方法で手繰り寄せるラストはなかなか興味深い。
【50点】
(原題「ORBITA9」)
(スペイン・コロンビア/アテム・クライチェ監督/クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス、ベレン・エルダ、他)
(ラブストーリー度:★★★★☆)
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夜明けの祈り

INNOCENTS
1945年12月のポーランド。若く聡明なフランス人女医マチルドは、負傷した兵士たちを治療し故国へ帰すため、赤十字の施設で医療活動を行っていた。ある日、マチルドは、悲痛な面持ちの見知らぬ修道女から助けを求められ、遠く離れた修道院へと向かう。そこでマチルドが目にしたのは、ソ連兵に凌辱され身籠った7人の修道女たちの姿だった。信仰と現実の狭間で苦しむ修道女たちを救うため、マチルドは、激務の合間を縫って修道院に通い、孤立し苦悩する修道女たちに寄り添うと心に決める…。

ソ連兵に暴行され身籠った修道女たちを救おうと、仏人女医が苦難に立ち向かう姿を描く人間ドラマ「夜明けの祈り」。第二次世界大戦末期にポーランドの修道院で実際に起こった衝撃的な事件がベースになっている。モデルとなったのは実在の医師、マドレーヌ・ポーリアックだ。修道女たちが、専門医を呼ぶべきとのマチルドの提案を拒むのは「これもまた神の意志」という悲痛な思いと、このことが世間に知られると修道院は閉鎖された上に、自分たちの恥をさらすことになる現実に怯えているからだ。秘密を知る唯一の存在となったマチルドは、過酷な状況を理解し、彼女たちに寄り添うと心に決める。医者という職業のためか頑固者で合理的、無神論者のようなマチルドが、修道女たちの希望になっていくという展開が興味深い。

見ていてつらいのは、修道女たちは被害者でありながら、強い信仰心ゆえに、これは自分自身の罪だと自らを責めることだ。信仰と妊娠は決して両立しないのに、出産後に我が子を抱いて芽生える母性が、さらなる葛藤を誘うのも、やるせない。立場の違いから起こった悲劇を経て、生まれてきた尊い命のため、また、共に困難を乗り越え固い絆で結ばれた修道女たちの未来のため、マチルドが提案したアイデアは、現実的かつ画期的な救いだ。美しく知的な女医マチルド役のルー・ドゥ・ラージュ、陶器のように白い肌の横顔が印象的なアガタ・ブゼクら、女優たちは皆好演。何より名撮影監督カロリーヌ・シャンプティエの手腕が大きい。シャンプティエが手掛け、同じく信仰をテーマにした「神々と男たち」にも通じる静謐で荘厳なカメラワークに、魅了された。この物語に登場する女性たちは、国籍や宗教の違いを超えて芽生えた固い絆で結ばれている。間違いなく、アンヌ・フォンテーヌ監督の代表作になるであろう秀作だ。
【80点】
(原題「LES INNOCENTES/THE INNOCENTS」)
(仏・ポーランド/アンヌ・フォンテーヌ監督/ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、他)
(崇高度:★★★★★)
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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章

映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」オリジナル・サウンドトラック
海沿いの美しい町、杜王町で暮らす東方仗助(ひがしかたじょうすけ)、通称ジョジョは、見た目はリーゼント姿の不良だが、心優しい高校生。仗助は、警察官の祖父と美人の母と共に穏やかに暮らしていたが、杜王町では奇妙な連続変死事件が起きていた。ある日、仗助の前に現れた空条承太郎から、自分がジョースター家の血を引き、スタンドという超能力を操ること、さらに杜王町と仗助に危険が迫っていることを知らされる。事件が、凶悪な殺人犯アンジェロと、彼を影で操るスタンド保持者の謎の兄弟の犯行であることを知った仗助は、彼らとの戦いに巻き込まれていく…。

スタンドと呼ばれる特殊能力によって家族と町を守ろうと戦う高校生の活躍を描く「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」。原作は海外でも高く評価されている荒木飛呂彦の大人気コミックだ。80年代から連載がスタートし、現在も続いている大河ドラマだが、本作で描かれるのは日本が舞台の第4部である。仗助のスタンドは、触れただけで壊れたものを修復し、他人のけがを治すことができる、最も優しいスタンド“クレイジー・ダイヤモンド”。仗助の出自や血縁関係、スタンドの意味など、説明部分が多くなってはいるが、とりあえず原作未読の観客にもわかりやすく作られている。仗助のクラスメイトで繊細な康一、凶悪犯アンジェロ、虹村兄弟など、原作でおなじみのキャラクターが登場し、仗助は、警察官として町を守ってきた亡き祖父の意志を継いで、杜王町を守るために立ち上がるというのが大筋だ。

例によって超がつく人気作の実写化に、原作ファンの手厳しい意見が待ち受けるだろうが、キャストの演技は概ね好演で、家族ドラマをしっかりと描いた点が好感が持てる。日本なのにスペインでロケされた、無国籍風の街並も、映画を見始めてしばらくするとすぐに馴染む。一番の問題は、人気キャラがざっくりとカットされている点で、ここにジョジョ・ファンの不満が集まると予想されるが、タイトルに第一章とあること、さらにラストのその後の、意味深なワンシーンを見れば、次回作には、あの人が登場し、この人が活躍していくれると期待が膨らむはずだ。続編がどういう形になるかは分からないし、物語としてはまだ半分程度を見ただけということになり、現時点では評価が難しい。とりあえず、今まで学園の王子様的な役が多かった山崎賢人が、リーゼント姿で感情むき出しにして戦う姿が新鮮で、彼にとっては新境地と言えるだろう。
【60点】
(原題「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」)
(日本/三池崇史監督/山崎賢人、神木隆之介、小松菜奈、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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トランスフォーマー/最後の騎士王

Transformers: The Last Knight (Music from the Motion Picture)
オートボットの指導者オプティマス・プライムが消息を絶ち、人類とトランスフォーマーの全面戦争が避けられなくなった中、人類は地球を救うためにトランスフォーマーの謎を探ることになる。発明家ケイド・イェーガー、オートボットの新リーダーとなったバンブルビー、謎めいた英国の老貴族バートン卿、オックスフォード大学の女教授ヴィヴィアンらが、チームを組むことに。トランスフォーマーの秘密には、神話のアーサー王伝説が鍵であることが判明する。だが全面戦争を目前に彼らの前に立ちふさがったのは、長年共闘してきたオプティマス・プライムだった…。

世界中で大ヒットを記録するSFアクション大作“トランスフォーマー・シリーズ”の最新作「トランスフォーマー/最後の騎士王」。地球滅亡が迫る中、人類とトランスフォーマーが共闘して危機に立ち向かう姿を描く。本作では、歴史の転換期に深くかかわってきたトランスフォーマーの謎の他、トランスフォーマーの故郷であるサイバトロン星の滅亡の危機や、金属生命体の創造主などが登場し、惑星まるごとの存亡がかかる大規模バトルは、今までの侵略戦争は、単なる前哨戦に過ぎなかったのだと思うほどだ。

オプティマス・プライムが敵になるという衝撃的な展開だが、それには深い事情が。詳細は映画を見て確かめてもらうとして、今回のウリは、トランスフォーマーと、アーサー王と円卓の騎士の伝説が密接にかかわっているという、突拍子もない設定だ。主な舞台が英国ということもあって、華麗な英国貴族の館や、ストーンヘンジなども登場し、派手なアクションもどこか優雅である。新キャストでは、名優アンソニー・ホプキンスが貫禄を見せる一方で、タフで負けん気が強い少女イザベラを演じるイザベラ・モナーが、いい味を出していた。物語そのものは、最初から最後まで、クライマックス状態の大騒ぎ。見終わった後は、見事に何も残らないのだが、この潔さこそがトランスフォーマーの持ち味だ。破壊王ことマイケル・ベイ監督らしいド派手なVFXの映像を楽しむためにも、できればIMAXでの鑑賞をお勧めしたい。
【60点】
(原題「TRANSFORMERS: THE LAST KNIGHT」)
(アメリカ/マイケル・ベイ監督/マーク・ウォールバーグ、ローラ・ハドック、アンソニー・ホプキンス、他)
(全面戦争度:★★★★★)
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ローサは密告された



フィリピン、マニラのスラム街。家族経営の小さなコンビニを夫婦で営みながら、4人の子供を育てるローサは、貧しい生活を支えるため、少量の麻薬を売って生計を立てていた。だがある日、突然警察の男たちがやってきて夫婦は逮捕されてしまう。何者かがローサを警察に売ったのだ。警察署では巡査や巡査部長らが「20万で手を打ってやる。金がないなら、麻薬の売人を売れ」と迫る。ローサは売人のジョマールの名前を挙げ彼は逮捕されるが、警察はジョマールにも金を要求。彼が払えない分の5万をローサ夫婦に支払えと迫った。ローサの子どもたちは、腐敗した警察から両親を取り戻すため、金策に走り回るが…。

フィリピンを蝕む麻薬と堕落した警察の実態、その中で懸命に生きる家族の絆を描く人間ドラマ「ローサは密告された」。国際的に評価が高いフィリピンの実力派ブリランテ・メンドーサ監督による本作は、まるでドキュメンタリーのようにリアルで生々しい。マニラのスラム街で生きるローサは、働き者でご近所でも人気者の肝っ玉母さんのような女性だ。小さなコンビニでは、雑貨や食料品と同じ感覚で麻薬が売られている。あまりにも生活に浸透した麻薬汚染問題は、フィリピンが抱える深刻な病巣だが、スラムで生きる貧しい人々はこの商売で生きているのだ。問題はかなり根深い。

根深いのは、警察の腐敗ぶりも同じだ。さまざまな国の警察組織の汚職や腐敗は繰り返し映画で描かれてきたが、本作の堕落ぶり、モラルのなさは群を抜く。誰かに密告させて逮捕した人間に、法外な口止め料(見逃し金)を払わせ、別の誰かの名前を聞き出し、また逮捕、金を要求。ローサもまた密告されたわけだが、それは繰り返される“おなじみの出来事”に過ぎないのだ。自分や家族を守るためには、誰かを密告するしかない。この負のスパイラルの元凶が警察組織なのだから、もはやため息さえ出ない。降り続く雨の中、両親のために金策に走る子どもたちが金をかき集めるシークエンスでは、マニラの貧困層の、麻薬とはまた別の素顔が浮かび上がる。本作が優れているのは、社会派のテーマを内包しながらも、家族の絆を描くドラマが秀逸で胸を打つからだ。何が何でも家族を守ると決めたローサの生命力と家族愛は、堕落しきった警察の姿と対をなして、鮮烈に記憶に残る。ローサを演じたジャクリン・ホセは存在感が圧倒的で、本作でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。ラスト、瞳にうっすらと涙をにじませるローサだが、それでもやっぱりお腹はすくし、明日もまた生きていかねばならないのだ。厳しい現実の中でもタフなローサに、一筋の希望の光が見えるようだった。
【80点】
(原題「MA'ROSA/Palit Ulo」)
(フィリピン/ブリランテ・メンドーサ監督/ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、マリア・イサベル・ロペス、他)
(リアリティ度:★★★★★)
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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ
1954年、アメリカ。シェイクミキサーのセールスマンである52歳のレイ・クロックは、中西部を回って営業していたが、商品はさっぱり売れずにくすぶっていた。そんな時、一度に8台もの注文が入り、レイはどんな店なのか興味を抱いて店舗を見に行く。ハンバーガーやシェイクなどを提供するドライブインレストランを経営するマクドナルド兄弟は、高品質、コスト削減、合理性、スピード性などにこだわり、小規模だが独自の経営を展開して成功していた。レイは兄弟のビジネスに勝機を見出し即刻契約を交わして商売の中枢に入り込んでいく。やがてフランチャイズビジネスによって成功を収めたレイと、品質にこだわる兄弟との間に大きな溝ができ、対立は避けられなくなっていく…。

ハンバーガー・チェーン店、マクドナルドを世界最大の大企業にした凄腕の“創業者”レイ・クロックの功罪を描く実話「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」。これがアメリカン・ドリーム、これが資本主義といわんばかりの辛辣な創業秘話に、思わずシェイクを飲む気持ちも萎えてしまいそうだ。野心を胸に秘めたセールスマンのレイは、マクドナルド兄弟の店の権利を店名も含めてたったの100万ドルで買い取り、当然のように“創業者(ファウンダー)”を名乗る。マクドナルド兄弟は、簡単に言えば騙されてしまったのだが、モラルなど二の次にして利益を追求したレイ・クロックという人物こそが、世界中で同じ味を楽しめるマクドナルドのスタイルを築いたのは確かだ。堂々と創業者を名乗るその図太さにはあきれるが、映画は、レイを単なる悪人としては描かず、マクドナルド兄弟の視点も織り込んで、中立的な位置から描いていく。

マクドナルド兄弟から商権をもぎ取り、長年連れ添った心配性の妻を捨て、レイがいよいよその手腕を発揮するのが、不動産の分野である。マクドナルドは、世界中の都市の一等地を買い取り、そこに店を建てることによって、フランチャイズの加盟店からその土地のリース料を徴収していて、それこそが大きな収益となっているのだ。まさかマクドナルド誕生とその成功にこんな生々しい舞台裏があったとは。ハンバーガーやポテト、シェイクを口にしても、もはや素直にその味を楽しめないかもしれない。レイ・クロックを演じるマイケル・キートンの怪演に近い名演は、笑顔や無表情が空恐ろしいほど。ラストにレイがなぜマクドナルドという店名にこだわったのかという理由が明かされ、アメリカで夢を追うことの難しさと、その中で成功をつかんだ彼の野心とタフな生き様がくっきりと浮かび上がった。資本主義の光と影を考えさせられる秀作だ。
【75点】
(原題「THE FOUNDER」)
(アメリカ/ジョン・リー・ハンコック監督/マイケル・キートン、ニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチ、他)
(アメリカン・ドリーム度:★★★★☆)
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東京喰種 トーキョーグール

「東京喰種」オリジナル・サウンドトラック
人間と同じ姿をしながら人を喰らう怪人“喰種”が暮らす東京。人々が恐れを抱きながら生活する中、平凡な大学生のカネキは事故に遭い、ひそかに憧れていた、実は喰種の女性リゼの臓器を移植されて、半喰種となってしまう。自分が喰種化したことに苦悩するカネキは、以前から頻繁に足を運んでいた喫茶店“あんていく”で働くことに。そこは喰種が集まる店で、カネキは、店でアルバイトをする女子高生トーカや、店に集まる客もまた喰種だということを知る。同じころ、喰種を駆逐しようとする人間側の組織CCGの捜査が迫り、人間と喰種の戦いが激化していく…。

人間を捕食する“喰種”が生きる世界で、半喰種になってしまった主人公の苦悩と闘いを描く「東京喰種 トーキョーグール」。原作は石田スイによる大人気コミックだ。この実写化は、公開前より出演者の清水富美加の出家騒ぎで、作品とは別の意味で大きな話題となってしまった経緯がある。そんなスキャンダルが先走ってしまったものの、重要なキャラクターのトーカを演じるこの清水富美加が、なかなか頑張っていて、いい演技を披露しているのだ。かなりホラー寄りでグロテスクな描写も多いが、異形のものの哀しさや苦悩を、激しいアクションを交えて描いていく。

喰種は水とコーヒーと人体だけを取り込む怪人だが、彼らの中にも様々なタイプがいる。何のためらいもなく人を喰らうものもいれば、できるだけ平和的に生きようとするものも。その中で人間と喰種の両方を生きるカネキは、自らの存在意義に葛藤するわけだが、本作ではその心理描写に割く時間が少ないためか、なかなかカネキの苦悩が伝わりにくい。だが若手演技派の窪田正孝は身体能力も高く、限られた時間の中でかなり健闘しているといえよう。特に自分の中にうごめくリゼの人格が時折カネキを支配する狂気の演技はすごい。さらに、カネキが被る髑髏(どくろ)風のマスクとそこから覗く片目だけの赤い瞳のビジュアルは、恐ろしくも美しく、印象に残る。物語のその先を期待してしまうラストだが、前述の清水富美加の出演が難しい状態では、果たしてどうなるか。ともあれ、自分の身体と一体化した捕食器官を使って闘う独特のアクションと、ダークな世界観を堪能できるユニークな作品に仕上がっている。
【60点】
(原題「東京喰種 トーキョーグール」)
(日本/萩原健太郎監督/窪田正孝、清水富美加、蒼井優、他)
(葛藤度:★★★☆☆)
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君の膵臓をたべたい

映画「君の膵臓をたべたい」オリジナル・サウンドトラック
高校時代のクラスメイト・山内桜良(さくら)の言葉がきっかけで教師になった“僕”は、教え子と話すうちに桜良と過ごした数ヶ月を思い出していた。膵臓(すいぞう)の病気を患っていた桜良は闘病日記“共病文庫”を付けていた。それを偶然みつけた“僕”は彼女が余命わずかなことを知り、桜良と一緒に過ごす時間が増えていく。だが明るく前向きに生きる彼女の日々は、唐突に終わりを告げる。彼女の死から12年後、桜良の親友だった恭子、そして“僕”は、ある事をきっかけに桜良が伝えたかった本当の思いを知ることになる…。

膵臓の病を患う女子高生と同級生の“僕”の交流を描く「君の膵臓をたべたい」。原作は住野よるの小説だ。いわゆる難病ものなのだが、クラスでも人気者の桜良は、人並み以上に明るく前向きで行動的な女の子。目立たない地味なクラスメイトの“僕”を半ば強引に巻き込んで、死ぬまでにしたいことを実行に移していく。難病ものにありがちな、重い病を患っていても、顔色もよく元気一杯に行動し、唐突に体調を崩して死に向かうという、ご都合主義は、本作でも健在だ。桜良が残された時間を懸命に生きようとする姿はなるほど感動的だが、彼女の言動はちょっと自己中心的すぎる感もあり、共感するのは難しい。…というか、このテの話に感動できなくなってきている自分に、うっすらと危機感を覚えたりもする。

気になるのは、原作にはない大人パートの設定が、とってつけたように思えることだ。12年の時を経て桜良の本当の思いが明かされるのだが、細部が甘く説得力に欠ける。詳細は明かせないが、これでは遺書の効果も半減してしまうではないか。ユニークで刺激的なタイトルの意味は最後に明かされる。「私も君も、一日の価値は一緒だよ」。この言葉に、限られた時間の中で、かけがえのない一日一日を大切に生きる願いが込められていた。
【50点】
(原題「君の膵臓をたべたい」)
(日本/月川翔監督/浜辺美波、北村匠海、小栗旬、北川景子、他)
(感動度:★★★☆☆)
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女



中東で古代エジプト文字が刻まれた石棺が発見される。発掘に立ち会った米軍関係者のニックと考古学者のジェニーは、調査のために棺を英国へ輸送するが、途中でアクシデントが発生。ジェニーは何とか助かるが、ニックを乗せた輸送機はロンドン郊外に墜落し、棺は行方不明に。やがて石棺の中から、封印されていた古代エジプトの邪悪な王女アマネットが目覚める。なぜか傷ひとつない身体で助かったニックは王女の呪いに導かれるように棺を探すが、やがてアマネットの想像を絶する復讐が幕を開ける…。

古代エジプトの邪悪な王女が復讐のために現代に蘇るホラー・アクション・アドベンチャー「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」。1932年製作の「ミイラ再生」を最新技術で新たに蘇らせたものだ。モンスター・ホラー映画の老舗であるユニバーサル・スタジオが自社の自前のモンスターを次々に再生させる巨大プロジェクト“ダーク・ユニバース”の第一弾が本作である。ヒーローたちがチームを組むアベンジャーズやジャスティスリーグのモンスター版のような企画だが、その最初のモンスターがミイラというのは、意外というか、渋いというか。ともあれ古代の王女アマネットは、最初はミイラ状態でも、みるみるうちに美しくも恐ろしい姿になり、暴れまわる。4つの瞳、全身タトゥー、傲慢で邪悪、それでいて切ないキャラを演じるソフィア・ブテラは、完全に主役のトム・クルーズを食ってしまって、魅力的だ。

とはいえ、何をやらせても俺様キャラのヒーローになってしまうトムも、結構奮闘している。今回は“ハムナプトラ”な環境でのアドベンチャーだが、盗品をさばいて小銭を稼ぐセコい部分や、相棒とのやりとりでコミカルな芝居にも一生懸命に挑戦。もちろんトレードマークである身体をはったアクションも健在だ。舞台をロンドンに移してからは、ラッセル・クロウ演じるジキル博士(とハイド氏)が登場し、事態はにわかに急展開。このジキル博士率いる秘密結社プロディジウムが、今後のダーク・ユニバースの軸になっていく。正直、本作はトム・クルーズじゃなくても良さそうな“贅沢なB級大作”なのだが、大物俳優が揃うこの超大型企画ダーク・ユニバースは確かに楽しみだ。個人的には「大アマゾンの半魚人」に大いに期待!である。
【60点】
(原題「THE MUMMY」)
(アメリカ/アレックス・カーツマン監督/トム・クルーズ、ソフィア・ブテラ、アナベル・ウォーリス、他)
(大型企画度:★★★★★)
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ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走



夫トム、妻ジュリア、9歳の娘と7歳の息子とおじいちゃんというコックス一家は夏休みになり、自慢の新車でバカンスに出掛ける。最新テクノロジーが搭載されている真っ赤な新車は快適で、安全なドライブのはずだったが、突如ブレーキが効かなくなる。自慢のシステムがあっさり故障したハイテク車に乗ったまま、一家は時速160kmで高速道路を暴走することに。全員がパニック状態の中、家族の秘密が次々に明らかになる…。

暴走するハイテク車内を舞台にした密室コメディー「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」。整形外科医のトムは昔は学問に燃えていたが今は美容整形とシワトリ手術で金儲けに余念がない。精神科医のジュリアはキレやすい性格の上で妊婦のため情緒不安定。風変わりな娘は反抗期、やんちゃな息子はアメコミに夢中。一番心配なのはトラブルメーカーのおじいちゃん。こんな一家のバカンスがただで済むはずがない。役にたたない警官や一家の車をしつこく追ってくる男なども加わって、密室コメディーとカー・アクション、おバカな笑いとユルいスリルのノンストップ・ムービーになっていく。

個人的に、ギャグがツボにハマらず、さっぱり笑えなかったのだが、何気なくやっているカー・アクションが実はすごい。仏映画にはカーアクションの系譜があって、このジャンルには自信があるのだろう。CGではなく本気のスタントで演じられているというから、そちらの方がよほどクレージーだ。終盤、一家の行く手には人類史上最悪の渋滞が待ち受ける。さぁ、どうする?!ということで、ある奇策がとられるが、それができるなら、最初からそうすれば?!とツッコミたくなった。「世界の果てまでヒャッハー!」のニコラ・ブナム監督の作品にしては、やや消化不良。それでも家族の絆は強まったのだからヨシとしよう。
【50点】
(原題「FULL SPEED」)
(フランス/ニコラ・ブナム監督/ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ヴィニョ、他)
(暴走度:★★★★☆)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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