映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

プチレビュー18上旬

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生

Mein Blind Date mit dem Leben: Als Blinder unter Sehenden. Eine wahre Geschichte
ドイツ人の母とスリランカ人の父の間に生まれたサリヤ、通称サリーは、学校を卒業後、立派なホテルマンになることを夢見ていた。だが突然、先天性の視力を失う病気に襲われる。手術後に何とか保てたのは、健常者の5パーセントほどの視力だった。周囲からは障害者の学校への転入を勧められるが、夢をあきらめたくないサリーは、何とか学校を卒業。視覚に障害がある事実を隠してホテルに願書を提出したサリーは、ミュンヘンの5つ星一流ホテルから研修生としてチャンスを得る。母、姉、友人のマックスら、周囲に助けられながら、サリーの、ありえない挑戦と想像を超えた困難の日々が始まった…。

視力の95パーセントを失った青年が、一流ホテルで働く夢を実現させるために大芝居を打って奮闘する姿を描く「5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生」。いくらなんでもありえない!と思ってしまうが、なんとこのお話は実話だ。モデルになったのはベーチェット病を患ったサリヤ・カハヴァッテ。絶望的に困難な状況でも、失わなかった超ポジティブで圧倒的な意志の強さに、ただただ驚いてしまう。見えてないのに見えるふりをするのは確かに“嘘”かもしれないが、サリーのそれは、夢をあきらめないための“武器”になった。

見えるもののほとんどがぼやけた光の集合体という状況で、いったいどうやってホテルマンのスキルを磨くのか? 接客やテーブルセッティング、厨房や客室業務など、山ほどの疑問に、物語は驚きの方法で答えてくれる。上手くいきすぎ? もちろんそれはそうなのだが、懸命に頑張るサリーには強力な助っ人たちがついていた。シリアスな描写ばかりではなく、見えないからこそのエピソードは、時にはクスリと笑える楽しいものも。サリーがストレスのあまりドラッグに手を出すことや、サリーの父の失踪など、中途半端なエピソードが少々気になるが、何しろこの奇跡的な実話は、挫折しながらも決して夢をあきめなかった青年の挑戦を通して、幸せの意味を教えてくれる奮闘記。結果を知っているのに、最終試験の場面はやっぱりドキドキし、ラストのサリーの選択には拍手を送りたくなる。サリーの障害は、私たちの誰もが大なり小なり持つ欠点の象徴だ。ちょっとくらいの困難でヘコんでいる場合じゃない!人懐こい笑顔が魅力の主演のコスティア・ウルマンの好演が心に残る。
【60点】
(原題「MEIN BLIND DATE MIT DEM LEBEN/MY BLIND DATE WITH LIFE」)
(ドイツ/マルク・ローテムント監督/コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、他)
(ハートフル度:★★★★☆)


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西遊記 ヒーロー・イズ・バック

Monkey King: Hero Is Back/ [DVD] [Import]
伝説のヒーロー・孫悟空が、お釈迦様によって五行山に封じ込められて500年。長安の町に妖怪がたびたび現れ、子どもをさらう事件が多発する。修行僧の少年リュウアーは、ある日、妖怪に襲われた女の子・おチビちゃんを助けようとして五行山に迷いこみ、偶然にも孫悟空を解放してしまう。伝説のヒーローを目の前にして大興奮のリュウアーだったが、悟空は本来のチカラを封印され、すっかり自信を失っていた。やがて悟空は、リュウアー、猪八戒と共に、なりゆきでおチビちゃんを助けるが、妖怪の背後には、混沌という悪者がいて、幼い子どもをいけにえにして強大な力を手に入れようと目論んでいた…。

日本でも人気の西遊記の、これまた人気キャラの孫悟空の物語を大胆にアレンジしたアドベンチャー・アニメーション「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」。自惚れ屋で暴れん坊の孫悟空が、自分のためでなく、他の誰かを守るために戦ううちに、本物のヒーローへと変わっていく。過去に何度も映画化された西遊記だが、本作では有名キャラを削り、換骨奪胎しているのが大胆だ。それでも物語は、ヒーロー映画としてテッパンの展開なので、安心して見ていられる。何より、この中国映画のアニメーションは、その独特の色彩や動き、キャラクターの造形や脚本など、意外なほど見所が多い。スピード感あふれるカンフー・アクションをふんだんに取り入れながら、中国武術や京劇、雑技などの伝統要素をも取り入れた意欲作なのだ。

新たに生まれ変わった西遊記の孫悟空とはいえ、長く赤い布を首に巻き裾をたなびかせた悟空のりりしいビジュアルはきっちりと再現。悟空が赤と金色をベースにした衣装で“正装”して戦う場面は、思わず見惚れてしまう。敵である混沌さえもその動きはなめらかで美しい。驚異的な力を秘めながら自信を失った孫悟空が真のヒーローとして覚醒するこの物語は、成長がテーマだ。幼く無邪気なリュウアーは後に三蔵法師になるに違いない。中国出身のティエン・シャオポン監督は、日本、ハリウッド、そしてアジアのさまざまな国のアニメーションのエッセンスを貪欲に吸収しつつ、中国、ひいては東洋ならではの美学を持つアニメーションを目指したそう。中国アニメは技術的にまだ発展途上だが、これからが楽しみと思える1本だ。
【70点】
(原題「MONKEY KING: HERO IS BACK」)
(中国/ティエン・シャオポン監督/日本語吹替制作監修:宮崎吾朗)
(オリエンタル度:★★★★★)


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目撃者 闇の中の瞳



2007年。新聞社の実習生シャオチーは、ある嵐の夜、台北郊外の山道で高級車同士の当て逃げ事故を目撃する。シャオチーはとっさに犯罪現場とその場から逃走した車の写真を撮るが、その写真がボヤけているという理由で記事にはならず、犯人もつかまらなかった。それから9年後、敏腕記者になったシャオチーは、買ったばかりの中古の高級車が、9年前に目撃した事故車だったと知り驚く。シャオチーは先輩記者マギーの協力を得て、事故の真相を調べ始めるが、それ以降、シャオチーの周囲では不可解な出来事が起こり始める…。

ある交通事故にまつわる謎とその先に待つ恐ろしい真実を描く台湾発のサスペンス・スリラー「目撃者 闇の中の瞳」。主人公シャオチーが記者魂で粘り強く事件を調べるのだが、浮上する謎の数がハンパなく多い。現場から逃走した謎の加害者、事故直後に失踪した被害者女性、自分が撮った証拠写真の一部が削除された痕跡、逃走車の所有者として浮かび上がった意外な人物、すべての謎の周囲にうごめく不気味な影。さらに事故と同じ日に発生した身代金目的の幼女誘拐事件も何やら関わりがある様子。これだけ謎や伏線があるとその回収に苦労しそうだが、ことごとく予想外の方向から真相が浮き彫りになっていくので、一瞬も気が抜けない。シャオチーが簡単に重要ポイントにたどりつくなど、時にはご都合主義もあるのだが、尋常ならざる緊張感の持続で突っ走ってしまう。

台湾映画といえば、歴史を通じて台湾人のアイデンティティーを追求した巨匠ホウ・シャオシェンや、みずみずしい青春映画が得意のエドワード・ヤン監督の作品群が思い浮かぶ。サスペンスやミステリーは時々登場するが、その印象は薄かった気がする。だが、本作はそんな思い込みをあっさりと覆してくれた。事故車にまつわる謎で、これはもしやホラー映画?と思わせておいて、すぐに物語は陰謀めいたミステリーへと変わる。そこで真犯人の解明と華麗な謎解きならば普通なのだが、本作はそこからの“飛躍”がすごい。そこには、想像を超える恐ろしい闇が広がり、人間が持つどす黒い欲望が露わになる。現在進行形の謎解きと回想シーンが巧妙に入り乱れるストーリー展開、手持ちカメラのリアルな映像が、観客をいやがおうでも“目撃者”にするのだ。一筋縄ではいかないエンタテインメントを作ったのは、これが長編第2作となるチェン・ウェイハオ監督。この人の名前は憶えておこう。
【75点】
(原題「目撃者/WHO KILLED COCK ROBIN」)
(台湾/チェン・ウェイハオ監督/カイザー・チュアン、ティファニー・シュー(シュー・ウェイニン)、アリス・クー、他)
(悪夢的度:★★★★★)


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伊藤くん A to E

伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)
アラサーの脚本家・矢崎莉桜は、5年前に手掛けたドラマが大ヒットし売れっ子になったものの、今は新作が書けず落ち目になって焦っている。自分のトークショーに参加した4人の女性たち(A〜D)の恋愛相談に乗るフリをして、次回作のネタにしようと企む莉桜の前に、彼女が講師を務めるシナリオスクールの生徒で、見た目はいいが口先ばかりの軽薄な青年・伊藤誠二郎が現れる。彼こそ4人の女性たちを振り回している伊藤だった。伊藤は、自分に関わる4人の女たちの物語の企画を提出しようとしていることが判明。そこには莉桜のネタにはない5人目の女(E)も登場していた。伊藤の狙いは一体何なのか。莉桜は次第に追い詰められていくが…。

関わる女性たちを不幸にするイケメン青年と彼に振り回される女性たちの姿を描く異色の恋愛ドラマ「伊藤くん A to E」。原作は柚木麻子の小説で、TVドラマ化もされているが、劇場版では岡田将生演じる“痛男”と木村文乃扮する“毒女”のW主演として再構築している。女たちを振り回す伊藤は、容姿端麗、自意識過剰、無神経、童貞、フリーターでナルシストというとらえどころのない異質のモンスターだ。だが物語は、どうしようもない伊藤を非難はしない。落ち目の脚本家・莉桜が、自分も含めた女たちの本音を通して、伊藤を克服すべき象徴ととらえていくプロセスが面白い。

伊藤にぞんざいに扱われる都合のいい女・A。伊藤から執拗に言い寄られながら自己防衛を貫く女・B。男を切らしたことがない美女ながら愛に飢える女・C。伊藤に処女が重いというという理由でフラれ自暴自棄になるヘビー級処女・D。それぞれキャラが立っているが、誰もがみっともなくて痛いのは共通している。そんな女たちを軽蔑しつつ脚本のネタにするため、もっと無様になるように導いていた莉桜もまた、伊藤の存在によって自らの欲望や欺瞞といった毒を吐き出していく。こうなるともはやラブストーリーではなく、現代社会を投影した人間ドラマだ。しかも身勝手な伊藤が周囲を振り回すのは、自分が傷つくのを防ぐためというのだから、これもまた現代の若者の一面を表している。物語は予想もつかない流れになっていくが、見終わってみれば、どんなに無様でも、どんなに傷ついても、懸命に前を向こうと頑張る女性応援ムービーという印象が残った。軽いトレンディードラマに見えて、なかなか噛み応えのある小品である。
【65点】
(原題「伊藤くん A to E」)
(日本/廣木隆一監督/岡田将生、木村文乃、佐々木希、他)
(痛い度:★★★★★)


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嘘八百

嘘八百
大阪・堺。空振りばかりの古物商・小池則夫が娘を連れてお宝を探しにやってくる。そこで出会ったのは、落ちぶれた陶芸家の野田佐輔。二人はある大御所鑑定士と古美術店主にいっぱい食わされた経緯があり、“幻の利休の茶器”を仕立て上げ、仕返しと一攫千金を目論むことに。やがてそれは、それぞれの家族、仲間、大御所鑑定士だけでなく、文化庁までも巻き込む大騒動に発展していく…。

幻の茶器をめぐって、負け組の男たちが一世一代の詐欺を目論むコメディー「嘘八百」。騙し騙され、そして大掛かりなコン・ゲームへ。この流れは、古くは「スティング」、最近では「ローガン・ラッキー」などがあり、古今東西を問わず人気のジャンルだ。騙したり、詐欺を働くこと自体はもちろん良くない。だが主人公たちが基本的に善人で、腹黒い大物へのリベンジというモチベーションがあれが、観客はいつしか彼らを応援してしまう。大物狙いばかりで空振り続きのしがない古物商・則夫と、腕はいいのに贋作者に成り下がっていた陶芸家の佐輔。千利休を生んだ茶の湯の聖地・堺での、キツネとタヌキの騙し合いは、実力派の中井貴一と佐々木蔵之介、脇を固めるクセモノ役者たちの妙演でテンポ良く進み、軽妙な笑いとペーソスで飽きさせない。

うだつのあがらない中年男の悲哀と頑張りを軸に、さりげなく利休愛を盛り込むかと思えば、脇キャラの背景もしっかりと伝える。細部まで気を配ったこの物語が、オリジナル・ストーリーであることを何より高く評価したい。則夫と佐輔が、本物よりも本物らしい偽物作りに情熱を傾け、思いもよらない結果の果てに、自分たちが行くべき“ホンモノ”の道を見出すラストには、思わずにっこり。出演俳優の平均年齢高めのシニア向けムービー?いやいや、利休が愛したわび茶の味わいにも似た、大人のための渋い骨董コメディーだ。
【70点】
(原題「嘘八百」)
(日本/武正晴監督/中井貴一、佐々木蔵之介、近藤正臣 、他)
(軽妙洒脱度:★★★★☆)


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キングスマン:ゴールデン・サークル

Kingsman: the Golden Circle
ロンドンの高級スーツ店を隠れみのにしたスパイ機関“キングスマン”の拠点が、世界の麻薬市場を制覇する謎の敵“ゴールデン・サークル”の攻撃により壊滅してしまう。生き残ったのは、2年前にスカウトされて腕を磨いた若手スパイのエグジーと、教官でありメカ担当のマーリンだけだった。二人は敵を倒すため、アメリカにある同盟組織の“ステイツマン”の協力を求めてケンタッキーへ向かう。コテコテのアメリカ文化にとまどいつつ、エグジーらはステイツマンのメンバーたちと協力しながらゴールデン・サークルの陰謀に立ち向かうが…。

国家に所属しない粋なスパイ組織キングスマンの活躍を描いて大ヒットを記録したスパイ・アクションの続編「キングスマン:ゴールデン・サークル」。演技派コリン・ファースがアクションができるとは!という嬉しい驚きを提供してくれた前作が予想以上のヒットとなり、調子に乗ってしまった(?)この続編は、荒唐無稽な演出もキレ味も、大胆にスケールアップしている。アメリカのステイツマンにビックスターを揃えながら、無駄使いに等しい軽い扱いをするのは、第3作を見越してのことだろうか。その分、光っているのは50年代カルチャーに傾倒する麻薬王ポピーを演じるジュリアン・ムーアの怪演だ。エレガントなサイコパスという矛盾がブラックな笑いを誘ってくれる。

まるで古き良き時代の「007」シリーズを見ているかのような破天荒な展開ながら、カーチェイスや雪山でのハードなアクションなど、スペクタクルシーンの迫力には目を見張る。指名手配で母国に戻れないポピーがカンボジアのジャングルの奥地に作ったカラフルな50年代風のポピー・ランド、そこに囚われている大スター、エルトン・ジョン(本人役)が、せりふはほぼファックのみなのに、意外に大活躍するなど、狂気に近い遊び心がいっぱいで、前作で死んだはずのハリーのビックリの扱いにも驚かなくなる。しかし今回一番グッときたのは、マーク・ストロング演じるマーリンが歌う「カントリー・ロード」だ。最近なぜか映画の中でよく使われるこのカントリー・ソングのテーマは、故郷への愛。命懸けの戦いの中で腹の底から歌いあげる名曲の切なさに、思わず涙ぐんでしまった。型破りでハチャメチャな中に、愛する場所から遠く離れた人々のノスタルジーを織り込んだ点がニクい。なかなかスミに置けない続編だ。
【70点】
(原題「KINGSMAN: THE GOLDEN CIRCLE」)
(イギリス/マシュー・ヴォーン監督/コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、タロン・エガートン、他)
(悪ノリ度:★★★★☆)


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◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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