映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

プチレビュー18上旬

ワンダーストラック

Wonderstruck /
1977年のミネソタ。事故で母を亡くした12歳のベンは、母の遺品から、会ったことのない父の手がかりを見つける。それは「ワンダーストラック」というニューヨーク自然誌博物館の本で、本に挟まっていた書店のしおりを頼りに、ベンは父のことを探し始める。1927年のニュージャージー。厳格な父に育てられたローズは生まれた時から耳が聞こえず、孤独を抱えていた。ある日、ふたりはそれぞれの思いを胸にニューヨークへと向かうが…。

時代も場所も異なるところで生きる少年と少女が不思議な運命で結びつく壮大でミステリアスな愛の物語「ワンダーストラック」。1977年のミネソタのベンは、会ったことがない父を探すうちに落雷に遭い、その影響で耳が聞こえなくなってしまう。1927年のニュージャージーのローズは、生まれた時から聴覚に障害があった。共に音を失くしているという設定は、脚本の上手さのおかげで、最小限のせりふと忘れがたい映像美を生み出し、観客を魅了する。とりわけローズの幼い頃を無声映画で表現した描写は効果的だ。ベンとローズは、不思議な絆に導かれ旅をすることになるが、行く先々で驚きと幸せに出会うことになる。

原作は「ヒューゴの不思議な発明」で知られるブライアン・セルズニック。ファンタジックな作風だけにトッド・ヘインズ監督との組み合わせは正直、意外だったが、ニューヨークの街の全貌や歴史を教えてくれるジオラマの使い方などを見れば、納得がいく。さらに、自分の居場所と愛する人を失くして彷徨いながら、自ら壁を乗り越えていくという主人公たちの生き様は、ヘインズ監督がこれまで「キャロル」や「エデンより彼方に」で描いてきたテーマと合致するものだ。孤独を抱えていたベンとローズの“冒険の旅”は、最後に思いがけない形でつながり、人生のきらめきを見せてくれる。自身も聴覚に障害を持ちながら圧倒的な存在感を示したローズ役の天才子役ミリセント・シモンズの演技が心に強く焼き付いた。
【75点】
(原題「WONDERSTRUCK」)
(アメリカ/トッド・ヘインズ監督/オークス・フェグリー、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)


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トレイン・ミッション

トレイン・ミッション
10年間勤めてきた保険会社を突如リストラされた60歳のマイケル。今後のローン返済や子どもの学費などが頭によぎり、憔悴しながら、いつもの通勤電車で帰路についていると、突然見知らぬ女から声をかけられ奇妙な提案を受ける。それは、ヒントを頼りに、乗客の中から大切な荷物を持った人物を捜し出すというもの。10万ドルという高額な報酬にひかれて引き受けてしまったマイケルだが、やがてそれはマイケルの妻子をも危険にさらす恐ろしい罠だと知る…。

サラリーマンが通勤電車で恐ろしい陰謀に巻き込まれるサスペンス「トレイン・ミッション」。走る列車の中という密室を舞台にするサスペンスは、ヒッチコックを例に出すまでもなく、面白いものが多い。本作もまたその系譜に連なるもので、ある意図を持って陰謀を企てる犯人にうっかりノセられた主人公の奮闘記としてはなかなか上手くできているし、限定空間と制限のある時間で緊張感があるのもいい。とはいえ、実はツッコミどころも多く、その目的のためなら、もっと確実で簡単な方法があるだろうに…と思ってしまうが、それは言わないお約束だ。

日常的に使う通勤列車で乗客はほとんど顔なじみという設定が効いていて、次々に起こるトラブルと新事実の発覚で退屈はしない。50代半ばにして突如アクション・ヒーローとして覚醒したリーアム・ニーソンが、今回もまたはりきっていて、リストラにあったサラリーマンというくたびれた役柄ながら、元警官という設定でなんとか大活躍のつじつまを合わせている感じだ。ラスト、その人が再び姿を現す必要性はないとはいえ、主人公マイケルの鮮やかな対応でスッキリと終わるのが嬉しい。
【55点】
(原題「THE COMMUTER」)
(アメリカ/ジャウマ・コレット=セラ監督/リーアム・ニーソン、ヴェラ・ファーミガ、、他)
(密室劇度:★★★★☆)


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ダンガル きっと、つよくなる

ダンガル きっと、つよくなる
レスリングでインド国内チャンピオンにまでのぼりつめたマハヴィルは、生活のために引退し、若手の育成に励んでいた。心の奥底でレスリングをあきらめきれないマハヴィルは、子どもに金メダルをとる夢を託そうとするが、生まれてくるのは女の子ばかり。それでもケンカで男の子をやっつけた長女ギータと次女ハビータを見て、二人をレスリング選手として鍛えることを決意する…。

レスリングに夢を託した熱血漢の父と二人の娘たちの奮闘を描くインド映画「ダンガル きっと、つよくなる」。インドでこんなにもレスリングが盛んだとは知らなかったが、それはさておき。頑固オヤジのスパルタ猛特訓で、姉妹が才能を開花させ、実績を残したのは事実。その実話を踏まえて作られた本作は、涙と笑いのブレンド具合が絶妙で、感動の家族愛・スポ根ドラマに仕上がっている。最初は娘たちに自分の夢を“無理やり”託す父親が暴君に見えるのだが、実は父親の猛特訓は決してエゴではなく、娘たちへの深い愛情ゆえと分かってからは、感動へと一直線に突き進む。姉妹たちも、元来の負けず嫌い。ナニクソ!とばかりに頑張ってしまう姿がこれまた、実に清々しい。

インドの国宝級スターのアーミル・カーンが27kgの体重増減で役者魂を披露すれば、姉妹役の二人(どちらも美人!)も自らレスリングシーンをこなし、ガッツを見せている。父性愛とスポ根だけなら、よくあるストーリーだが、注目してほしいのが、ここにフェミニズムの視点を盛り込んでいることだ。男尊女卑のインド社会では、女の子は家事だけこなし、親から決められた結婚を強いられるなど古い慣習に縛られている。そんな中、レスリングを通して自我に目覚め、成長していく女子の物語は、まさにタイムリーだ。因習も偏見も、悪徳コーチも世界の壁も、この父娘なら、きっと乗り越えられる。出演作を厳選することで知られるアーミル・カーンの作品はやっぱりハズレなし!である。
【80点】
(原題「DANGAl」)
(インド/ニテーシュ・ティワーリー監督/アーミル・カーン、サークシー・タンワル、、他)
(熱血度:★★★★☆)


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娼年

娼年 (集英社文庫)
大学生のリョウはバーでアルバイトをしながら、退屈で無気力な日々を送っていた。ある日、秘密の会員制ボーイズクラブ、パッションのオーナー、御堂静香と出会ったリョウは、パッションで娼夫として働き始める。さまざまな女性と出会ううちに、リョウは、女性の中の欲望の奥深さを知ることになるが…。

無気力な青年が男娼となることで成長していく官能的なドラマ「娼年」。原作は石田衣良の小説で、舞台と同じ三浦大輔監督と松坂桃李主演で映画化したものだ。大胆かつリアルな性描写が話題だが、女性のヌードより、松坂桃李の脱ぎっぷりの良さが際立っている。女なんてつまらないと考えていた主人公リョウが、肉体と性を通じて、変化していくプロセスは、人間的に成長していくリョウの表情の変化を見れば一目瞭然だ。裸体よりも顔のアップにこだわった映像が多いのもうなずける。女性たち(時には男性も)の性癖のふり幅が広く、思わず吹き出してしまう描写も。あまりにもセックスシーンが多いのでぐったりつかれるが、艶笑描写のおかげでほどよく力がぬけるのがいい。

それにしても、昨今、俳優として多彩な面を見せてくれる松坂桃李の役者魂はすごい。本作は文字通り、体当たりの演技だが、最近の彼の出演作を見れば、難役に挑むチャレンジ精神に頭が下がる。これからますます面白い俳優になりそうで、彼の出演作から目が離せない。
【60点】
(原題「娼年」)
(日本/三浦大輔監督/松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙、他)
(成長物語度:★★★★☆)

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ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル

Jumanji: Welcome to the Jungle / [Blu-ray] [Import]
Jumanji: Welcome to the Jungle / [Blu-ray] [Import] [Blu-ray]
居残りを命じられた高校生男女4人は、学校の地下室でジュマンジという古いゲームを見つける。プレイしようとキャラクターをチョイスした瞬間、彼らは選んだ人物(アバター)に変身し、ゲームの世界であるジャングルへと移動してしまう。現実とは全く違うキャラクターになった彼らは、カバやジャガーなどの野性の猛獣と遭遇。危険にさらされながらなんとか逃げるが、ゲームをクリアして現実世界に戻らねばこの世界で消滅してしまうことを知り、それぞれのスキルを活かして協力することになる…。

不思議なゲームの世界に入り込んだ高校生たちの運命を描くファンタジー・アドベンチャー「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」。1996年の「ジュマンジ」に続く物語だが、ゲームの世界に放り込まれ、ジャングルの中でサバイバルするという設定を理解していれば、前作未見でも楽しめるように作ってある。4人の高校生の男女は、現実とは正反対のキャラになるため、ルックスもスキルもとまどいながら受け入れていくしかない。ゲームのルールで、3度失敗するとゲームと現実の両方で命を失ってしまう設定なので、なかなかハラハラさせられる。

気弱なゲームオタクの青年が、筋肉むきむきのドウェイン・ジョンソンになっていたり、自分大好きなうぬぼれ美人の女子高生がデブオヤジのジャック・ブラックになったり。もうこのギャップだけで楽しくてたまらない。入れ替わりもの特有の面白さで笑いを誘うが、ゲームの中でサバイバルするうちに、自分自身を客観視し、仲間と助け合い、困難を克服しながら目標に向かって努力することを学ぶ展開は、いたって王道の、しかも出来が良い青春成長物語だったりするのだ。理屈抜きで大笑いしているうちに、知らぬまにじわっと感動させられていたとは。こんなに良くできた楽しい続編は久しぶりだ。ちなみに96年版には今は亡き名優ロビン・ウィリアムズの姿も。本作を見て楽しんだら、ぜひ96年版も見てほしい。
【80点】
(原題「JUMANJI: WELCOME TO THE JUNGLE」)
(アメリカ/ジェイク・カスダン監督/ドウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラック、ケヴィン・ハート、他)
(エンタメ度:★★★★★)


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レッド・スパロー

Red Sparrow
怪我のためにボリショイ・バレエ団でのバレリーナの夢を絶たれたドミニカは、病気の母の治療費のため、叔父のすすめでロシアの諜報機関の訓練施設を訪れる。そこは肉体を武器にするハニートラップと心理操作を専門にしたスパイ、別名スパローの養成機関だった。その美貌と明晰な頭脳を武器に、ドミニカは望まないながらも一流のスパローとなっていく。彼女の最初のミッションは、アメリカのCIA局員ナッシュに近づき、ロシア政府内にひそむスパイの名を聞き出すこと。ブダペストで出会った二人は、やがて惹かれあうが、ロシアと米国両方の危険な駆け引きに巻き込まれ、ドミニカは想像を超える運命に巻き込まれていく…。

肉体と美貌、心理操作で情報を盗む女スパイの危険な運命を描くスパイ・サスペンス「レッド・スパロー」。原作は、元CIAエージェントの作家、ジェイソン・マシューズの小説だ。若きオスカー女優のジェニファー・ローレンスが、ヌードも辞さない体当たりの演技を披露していることでも話題のセクシーなサスペンスで、二転三転するストーリーや、思いがけない敵の存在などにハラハラさせられる。だが、見終わって印象に残ったのは、人間性が欠落した国家のシステムの中で、もがきながら生き抜くヒロインの強い意志だ。ハニートラップ専門のスパイ養成学校の描写や、残酷な拷問シーンなどで、女性が受けるパワハラ、セクハラという視点が生かされ、図らずもタイムリーな作品になっている。

ジェニファー・ローレンスは、タフでセクシー、最終的には自分を陥れた相手にしっかりと償わせる策略家の女スパイを熱演して絶妙だ。国家に絶対的な忠誠を誓う女教官を、かつて「愛の嵐」で究極の愛を体現したシャーロット・ランプリング、バレリーナ時代のドミニカの相手役を天才ダンサーのセルゲイ・ポルーニンが務めるなど、何気なく豪華キャストを配しているのも見所。それにしてもハニートラップ専門のスパイとは恐れ入るが、ソ連時代には実在した国家諜報機関だそう。今も昔もロシアという国は底知れない。そんな伏魔殿のような国で、サバイバルする美しき女スパイ。なかなか興味をそそるスパイ映画だ。
【60点】
(原題「RED SPARROW」)
(アメリカ/フランシス・ローレンス監督/ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、シャーロット・ランプリング、他)
(体当たり度:★★★★★)


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ヴァレリアン 千の惑星の救世主

ヴァレリアン 千の惑星の救世主 《2枚組》【帯&解説付輸入盤国内仕様】
西暦2740年。連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌは、宇宙の平和を守るため、銀河をパトロールしている。任務のひとつを終えた彼らは、あらゆる種族が共存するアルファ宇宙ステーションに戻るが、アルファで広がる放射線汚染を対処していた宇宙連邦司令官フィリットが突然謎の集団に連れ去られてしまう事件が発生。フィリットを護衛していた二人は後を追うが、やがて、この騒動の裏にある邪悪な陰謀を知ることになる…。

宇宙の平和を守るエージェントたちが、巨大な陰謀に立ち向かうSFアドベンチャー「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」。原作は、フランスの人気漫画、いわゆるバンド・デシネだ。日本のマンガやアメリカのコミックにも影響を与えたバンド・デシネには熱狂的なファンが多い。本作の原作「ヴァレリアン」は、かの「スター・ウォーズ」にも影響を与えたというから、その人気、奥深さがうかがえる。ただし映画は、ライト感覚でポップなスペースオペラだから、気楽に楽しめる作りだ。

ヴァレリアンは、一流のエージェントだが、チャラいプレイボーイで、四六時中相棒の美女ローレリーヌをくどいている。一方のローレリーヌは、ヴァレリアンを相手にせず着実に任務をこなすクールビューティー。この美男美女コンビが痛快だ。多種多彩な種族が共存する惑星が舞台のため、ユニークなクリチャーたちの造形や、愉快なガジェット、謎めいた種族パール人の神秘的なヴィジュアルと美しい暮らしぶりなど、美的センスもいい。脇役まで何気に豪華キャストなのも驚きだ。このSF、製作費が膨れ上がり、結果、興行的には失敗したらしいが、お気楽なSFエンタテインメントと割り切れば、見所満載で飽きさせない。そもそもリュック・ベッソン監督という人は、肩ひじ張らない娯楽で人を楽しませる名人。そのベッソンの夢がつまった本作は、まるでおもちゃ箱のような楽しさに満ちている。ひとつだけツッコミを入れるなら、副題にある“ 千の惑星の救世主”はちょっとピントがズレているのでは? そんなトボけた味も含めて、何ともおちゃめな作品だ。
【60点】
(原題「VALERIAN AND THE CITY OF A THOUSAND PLANETS」)
(フランス/リュック・ベッソン監督/デイン・デハーン、カーラ・デルヴィーニュ、クライヴ・オーウェン、他)
(エンタメ度:★★★★★)


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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」オリジナル・サウンドトラック
ベトナム戦争が泥沼化しつつある1971年、アメリカでは反戦運動の気運が高まっていた。国防総省(ペンダゴン)はベトナム戦争についての客観的な調査・分析した膨大な文書を抱えていたが、その一部をニューヨーク・タイムズがスクープする。ライバル紙に先をこされたワシントン・ポスト紙では、女性発行人キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドリーの二人が残りの文書を独自に入手し、真実を伝えるため全貌を公表しようとする。だが、それはニクソン大統領率いる政府を敵に回す危険な行為だった…。

ベトナム戦争時に政府が隠した機密文書を公表するべく奔走した新聞記者たちの姿を描く社会派ドラマ「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」。最高機密文書のペンタゴン・ペーパーズとは、アメリカ政府とその4代にわたる歴代大統領が、ベトナム戦争に勝機はないとことを知りながら、それを隠したまま戦争になだれこんだた不都合な機密文書を指す。政府と大統領による隠ぺい工作とは、あきれてものが言えないが、これがアメリカ現代史の真実である。だからこそ、スティーヴン・スピルバーグは、トランプ政権誕生の瞬間に映画化しようと決意し、たった1年という短期間で見事に骨太な政治ドラマを作り上げた。まさにタイムリーな映画なのである。

映画は、政府の圧力に屈せずに報道の自由を勝ち取り、真実を公表する使命に燃えたジャーナリストたちを描くが、スピルバーグが偉大なのは、それだけにとどまっていない点だ。物語はサスペンスフルだが、政府が機密文書を隠ぺいした事や、潰しにかかったワシントン・ポスト紙が今も健在なこと、このことが後のウォーターゲート事件の引き金になった史実を私たちは既に知っている。既視感がある事実に、もう一つのタイムリーな視点、フェミニズムを持ち込み、それを軸にした点が上手い。アメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハムは、父や夫の亡き後に新聞社を継いだ人物だが、社交は好きでも控えめな性格で、仕事では無能な経営者と思われていた。そんな彼女が、徐々に殻を破り、文字通り命がけで政府にケンカを売る決断をするプロセスは、まさに女性の成長物語そのものだ。そんなグラハムを演じる名女優メリル・ストリープの演技が、力演や熱演ではなく、静かで淡々としているのがいい。一人の女性の勇気ある決断が、アメリカを、ひいては世界の歴史を変えてみせた。大きな政治的事件を取り扱っているが、同時に、弱さや迷いを持つ生身の人間の視点を忘れない。スピルバーグが巨匠と言われる理由がよくわかる作品だ。
【80点】
(原題「THE POST」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、他)
(フェミニズム度:★★★★☆)


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ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (オリジナル・サウンドトラック)
第2次世界大戦勃発後の1940年、ヨーロッパでナチス・ドイツが猛威をふるうなか、イギリスでは、チェンバレンの後任としてウィンストン・チャーチルが英国首相に就任した。フランスは陥落寸前、英仏軍がダンケルクの海岸に窮地に追い込まれる絶対絶命の中、政界で敵が多いチャーチルは、ヒトラーとどう向き合うかの選択を迫られる。和平か、徹底抗戦か。街で市民の声を聞いたチャーチルは、国会で議員たちに向かって演説を始める…。

第2次世界大戦下のイギリスで、苦渋の選択を迫られるウィンストン・チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの4週間を描く伝記ドラマ「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」。対話か、抗戦か。ヒトラーという分かり易い絶対悪が存在していた時代、ここでの抗戦は正義の選択だ。だがそれは後の世の人間だから言えること。人間としても政治家としても欠点が多く、政敵だらけだったチャーチルは、不安と絶望の中で、国民に犠牲を強いる苦渋の決断をすることになる。歴史の渦中にいたチャーチルの決断に、今の私たちを含む全世界の運命がかかっていたのだ。本作は“DARKEST HOUR(最も暗い時)”に立ち上がることができる人間だけが真のリーダーなのだと教えるドラマなのである。

政治家の伝記映画だが堅苦しさはなく、新人秘書の目を通すことによって、老政治家チャーチルの私生活や家庭人としての側面、風変わりな仕事ぶりなどを描いたのが効果的だ。無心で猫とたわむれたり、トレードマークのVサインの意外な誕生秘話など、微笑ましいエピソードも楽しめる。何より偉大なチャーチルを、チャーミングな変わり者として演じ切ったゲイリー・オールドマンの名演抜きに、この映画は語れない。彼が今まで演じてきた、ロックスターや悪役などのアウトローの妙演は、政界一の嫌われ者と言われたチャーチルと不思議なほど共通点があるのだ。演説のシーンはどれも見事だが、地下鉄の中で庶民に直接声を聞くシークエンスが素晴らしく感動的である。名もなき国民こそが本当に強く願っていたのだ。「断じて降伏はしない!」と。ジョー・ライト監督は、奥深い人間描写でチャーチルとその周辺の人物たちを見事に描いている。そして特殊メイクの辻一弘の突出した才能が、魅力に満ちたチャーチルを作り上げたことも忘れずに付け加えたい。
【80点】
(原題「DARKEST HOUR」)
(イギリス/ジョー・ライト監督/ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)


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BPM ビート・パー・ミニット

BPM(Beats Per Minute)
1990年代初頭のフランス・パリ。エイズ・アクティビストの団体“ACT UP PARIS”は、エイズへの偏見や、政府・製薬会社の不当な対応を正そうと、過激な抗議活動を繰り返していた。新メンバーで内向的な性格のナタンは、HIV陰性ながら、積極的に活動に加わるようになる。ある時、差別的な言葉を投げかけられたことがきっかけで、行動派のメンバーのショーンがナタンにキスし、二人は急激に惹かれあっていく。だが、HIV感染者であるショーンの身体は、確実に病魔に蝕まれていた。一向に治療薬の開発が進まない中、やつれていくショーンを、ナタンはただ見守ることしか出来なかった…。

エイズに対する偏見や不当な扱いに抗議した活動家たちを描くドラマ「BPM ビート・パー・ミニット」。1990年初頭は、HIV/エイズの脅威は広がっていたが、正しい知識を持つものは少なく、政府は見て見ぬふり、製薬会社も治療薬のデータを公表しないなど、感染者にとって、あまりにもシリアスな状況だった。監督のロバン・カンピヨは、実際に当時ACT UPのメンバーだったそうで、本作は自らの体験をもとにしているという。90年代を舞台に、HIVを取り扱った作品といえば、同じフランス映画でシリル・コラールの「野生の夜に」を思い浮かべるファンも多いことだろう。エイズの衝撃は広く世に伝わりながらも、治療に革命が起きるには1996年の新治療の発表まで待たねばならない。

映画の前半はACT UPの活動をドキュメンタリータッチで紹介するもので、人工の血糊をオフィスに投げつけたり、許可なく学校を訪れてコンドームを配ったりと、時に過激すぎる彼らの行動は、全面的に共感できるものではない。それでも、躍動的で華やかなデモやパレード、エネルギッシュなクラブでのダンスシーンは、限りある生を謳歌する輝きに満ちている。後半は、ナタンとショーンのラブストーリーになるが、HIV陽性のショーンの病状が悪化し、命が尽きていく過程があまりにもつらく悲しすぎて思わず涙した。特に、本能的に愛を渇望するショーンの頬を伝う一筋の涙が忘れがたい。90年代はHIV/エイズ治療に先が見えない、苦しい時代だが、それでもこの時代こそ無理解や無関心を打破する扉が開かれた歴史的な瞬間だったのだ。セクシュアリティを題材にし政治的なカラーが強い作品だが、見終われば切ない青春映画のような残像が残っている。
【70点】
(原題「120 BATTERMENTS PER MUNITE」)
(フランス/ロバン・カンピヨ監督/ナウエル・ペレース・ビスカヤート、アルノー・ヴァロワ、アデル・エネル、他)
(切なさ度:★★★★☆)


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