しあわせの雨傘 コレクターズ・エディション<2枚組> [DVD]しあわせの雨傘 コレクターズ・エディション<2枚組> [DVD]
オゾン流の女性讃歌のこの映画、エレガントなイメージのカトリーヌ・ドヌーヴのジャージ姿が見ものだが、それ以上に、平凡な主婦だと思っていたヒロインの意外な奔放さと底力にワクワクする。スザンヌは、ジョギングと詩作が日課のブルジョア主婦。雨傘工場を経営する夫ロベールは、妻は美しく着飾って家にいればいいんだ!という典型的な亭主関白だ。夫の浮気を知っても見て見ぬふりをする母に対し、娘ジョエルは「ママみたいになりたくない」と非難する。そんなある日、ロベールが心臓発作で倒れ、やむをえずスザンヌが雨傘工場を切り盛りすることに。ここから、スザンヌの秘めた本能が目覚め始める…。

カラフルな雨傘が揺れると、思わず若きドヌーヴの代表作「シェルブールの雨傘」を思い出してしまう。だが、悲恋に耐えた可憐な娘は、いつしかたくましく、それでいて天然の可愛らしさを忘れない、愛すべきおばさんに成長していた。何しろ、三本ラインもりりしいジャージ姿でスクリーンに登場するドヌーヴなど初めて見る。ブルジョア主婦ならではのおおらかさで、ストライキで息まく労働者たちをなだめ、芸術家志望の息子ローランに傘のデザインをまかせて雨傘工場を見る見る立て直していくプロセスは、100パーセント楽観主義だ。亭主の浮気相手の秘書までも正妻スザンヌの魅力の虜になってしまうのだから可笑しい。ストーリーは、意外にも先読みを許さない展開で、労働者階級出身の市長とスザンヌの過去の関係に驚くのは序の口。ローランの出生の秘密や、工場経営者からなんと政治の世界へと踏み出す、飛躍した展開は、ミュージカルも顔負けのハイテンポだ。最後にはドヌーヴは歌まで披露してくれる。1943年生まれのこの大女優、全盛期と思われる時代は何度もあったが、ここにきて女優人生のハイライトが訪れているかのように、生き生きとしてみえる。フランソワ・オゾンという監督は、今の仏映画界を代表する俊英だが、規制の枠にとらわれず、硬軟を使い分けるセンスでいつも映画ファンを驚かせてくれる。70年代を背景したことで、フェミニズムへの気配りをチラリと見せるあたりもニクい。原題は仏語で「飾り壺」の意味。ロベールが言う「彼女は飾り壺さ。でも空(カラ)じゃない」とのセリフが効いていた。
【65点】
(原題「POTICHE」)
(フランス/フランソワ・オゾン監督/カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、他)
(ポップ度:★★★★☆)

人気ブログランキン  グ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)