映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

アガタ・ブゼク

夜明けの祈り

INNOCENTS
1945年12月のポーランド。若く聡明なフランス人女医マチルドは、負傷した兵士たちを治療し故国へ帰すため、赤十字の施設で医療活動を行っていた。ある日、マチルドは、悲痛な面持ちの見知らぬ修道女から助けを求められ、遠く離れた修道院へと向かう。そこでマチルドが目にしたのは、ソ連兵に凌辱され身籠った7人の修道女たちの姿だった。信仰と現実の狭間で苦しむ修道女たちを救うため、マチルドは、激務の合間を縫って修道院に通い、孤立し苦悩する修道女たちに寄り添うと心に決める…。

ソ連兵に暴行され身籠った修道女たちを救おうと、仏人女医が苦難に立ち向かう姿を描く人間ドラマ「夜明けの祈り」。第二次世界大戦末期にポーランドの修道院で実際に起こった衝撃的な事件がベースになっている。モデルとなったのは実在の医師、マドレーヌ・ポーリアックだ。修道女たちが、専門医を呼ぶべきとのマチルドの提案を拒むのは「これもまた神の意志」という悲痛な思いと、このことが世間に知られると修道院は閉鎖された上に、自分たちの恥をさらすことになる現実に怯えているからだ。秘密を知る唯一の存在となったマチルドは、過酷な状況を理解し、彼女たちに寄り添うと心に決める。医者という職業のためか頑固者で合理的、無神論者のようなマチルドが、修道女たちの希望になっていくという展開が興味深い。

見ていてつらいのは、修道女たちは被害者でありながら、強い信仰心ゆえに、これは自分自身の罪だと自らを責めることだ。信仰と妊娠は決して両立しないのに、出産後に我が子を抱いて芽生える母性が、さらなる葛藤を誘うのも、やるせない。立場の違いから起こった悲劇を経て、生まれてきた尊い命のため、また、共に困難を乗り越え固い絆で結ばれた修道女たちの未来のため、マチルドが提案したアイデアは、現実的かつ画期的な救いだ。美しく知的な女医マチルド役のルー・ドゥ・ラージュ、陶器のように白い肌の横顔が印象的なアガタ・ブゼクら、女優たちは皆好演。何より名撮影監督カロリーヌ・シャンプティエの手腕が大きい。シャンプティエが手掛け、同じく信仰をテーマにした「神々と男たち」にも通じる静謐で荘厳なカメラワークに、魅了された。この物語に登場する女性たちは、国籍や宗教の違いを超えて芽生えた固い絆で結ばれている。間違いなく、アンヌ・フォンテーヌ監督の代表作になるであろう秀作だ。
【80点】
(原題「LES INNOCENTES/THE INNOCENTS」)
(仏・ポーランド/アンヌ・フォンテーヌ監督/ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、他)
(崇高度:★★★★★)
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ハミングバード

ハミングバード [Blu-ray]
人生を捨てた男がある事件をきっかけに裏社会で復讐を遂げるサスペンス「ハミングバード」。アクションではなく演技で勝負するジェイソン・ステイサムが新鮮。

ジョゼフは、かつては特殊部隊を率いる軍曹だったが、戦場で犯した罪から逃れるように、家族からも離れ、ロンドンの暗黒街でひっそりと暮らしていた。ある日、唯一心を通わせていた少女イザベルが拉致され、彼女を救うために裏社会で奔走するが、イザベルはすでに殺されていた。ジョゼフは復讐を誓い、また、自らの人生にも決着をつけることを決めるのだが…。

元アスリート(水泳の飛び込み選手)俳優で、生身のアクションを得意とするジェイソン・ステイサムは、アクションスターとして確固たる地位を確立している。だが本作はちょっと趣が違うのだ。小さなケンカの場面はあるもののアクションの見せ場はほとんどなく“演技者”としてのステイサムがそこにいる。描かれるのは、戦場で背負ったトラウマの苦悩や、ヨーロッパでは社会問題になっている、移民や人身売買などの社会問題。淡い恋の相手も暗い過去を背負ったポーランド人の修道女というから地味な設定だ。監督のスティーヴン・ナイトは「堕天使のパスポート」や「イースタン・プロミス」で脚本を担当した実力派。とはいえ、社会派問題への踏み込みは浅く、本作は、ステイサム演じる主人公が、他人になりすまして裏社会でのしあがり、復讐をとげていくフィルム・ノワールという印象だ。ハリウッド製のド派手な映画の中のステイサムを見慣れたファンには物足りないかもしれないが、こんな渋い英国映画に出演する彼もまた捨てがたい魅力がある。タイトルのハミングバードとは、アフガニスタンで使用された無人偵察機のこと。戦場を離れても“すべてを見通す目”を常に感じている主人公は、自分とその過去に向き合わねばならないのだ。
【65点】
(原題「HUMMINGBIRD」)
(イギリス/スティーヴン・ナイト監督/ジェイソン・ステイサム、アガタ・ブゼク、ヴィッキー・マクルア、他)
(渋さ度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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