映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週の気になる映画 ◎
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アシュラ

アシュラ

Asura : The City Of Madness O.S.T
アンナム市の市長パク・ソンべは、立場を利用して、利権と成功のために悪の限りを尽くす悪徳市長。汚職刑事のハン・ドギョンは、そんな市長の悪事のもみ消し役を担っている。一方、市長逮捕に執念を燃やす検事のキム・チャインは、弱みを握ったドギョンを利用して市長の悪事を暴こうと画策。検事と市長の双方から追い詰められたドギョンは、窮地に陥っていく…。

登場人物全員が悪人という韓国発のノワール・バイオレンス「アシュラ」。舞台は韓国の架空の都市。主な登場人事物は、私利私欲に溺れる悪徳市長、正義を捨てた汚職刑事、市長逮捕のためならどんな悪事も厭わない検事の3人だが、脇役すらも全員悪人で、誰もが善悪の見境を失くしている。刑事のハン・ドギョンが市長の後始末と汚職に染まるのは、余命僅かな妻の治療費のためという理由があるが、ズルズルと悪事を続ける彼のモラルはすでに麻痺してしまっているのだろう。この地獄絵図のような物語の中では、妻のためなどという、もっともらしい言い訳も、ささやかな善も、あっという間に泥沼に飲み込まれていくのだ。ひとつの悪事が次なる悪事を生むこの物語、まさに悪の底なし沼で、一度足を踏み入れると抜けだすことは不可能なのである。笑う、泣く、怒る、愛するなど、すべてが過剰なのが韓国映画の大きな特徴だが、本作の暴力描写はとりわけすさまじい。ボコボコに殴られ、流血し、自分も他人も傷つけるバイオレンス描写の連打は、見ていてグッタリと疲れてしまった。主人公を演じるチョン・ウソンの表情が、物語が進むにつれて、焦燥し、歪み、狂気を帯びていくのが見所だ。壮絶すぎる本作だが、落ち着いて考えると、市長、刑事、検事と、皆、公務員。トンデモない!と思いたいが、現在の韓国の政治混迷を見ていると、この修羅の世界もまんざら絵空事ではないということか。
【65点】
(原題「ASURA: THE CITY OF MADNESS」)
(韓国/キム・ソンス監督/ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、クァク・ドウォン、他)
(バイオレンス度:★★★★★)
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アシュラ

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人間の業と生命力を、圧倒的な筆致で描く異色のアニメーション「アシュラ」。こういう作品もまたジャパニメーションの側面だ。

15世紀半ばの京都。飢饉や洪水など相次ぐ天災と応仁の乱が重なり、荒野と化したその場所で、アシュラは生まれた。親からも見捨てられ、ケダモノとしてサバイバルし続けるアシュラは、ある時、心優しい少女・若狭に出会う。若狭の愛、そして生きる節目で出会った法師の教えによって、言葉や笑うことを覚え、次第に人間らしい感情を備えていく。だが、再び起こった天災と貧困によって、世は生地獄へ。人々は人間性を失い、ついに若狭までもが犠牲になろうとしていた…。

原作は1970年代に連載された鬼才・ジョージ秋山の同名マンガ。子供が人を殺し、さらに人肉を喰らうというショッキングな内容で物議を醸し出し、賛否両論の末、有害図書として発禁問題を引き起こした、とびきりの問題作だ。本作は、過激な世界観とカニバリズムというタブーによって絶対に映像化不可能と言われたマンガの映画化だが、不思議なことにR指定は付いていない。直接的な残酷描写を巧妙に避けた工夫が見受けられるが、21世紀の今、時代がようやくこの問題作に追いついたのかもしれない。生きるために人を襲い人肉を食い、野獣のように生きてきたアシュラには一点の迷いもないのに、高僧の教えと少女の優しさを知ったがために混乱していくのが皮肉だ。アシュラは、村人から獣同然に追われるが、やがてその村人たちも、飢えのために互いに殺し合い人肉を喰らうようになる。人間の業、愚かさ、それでもなお生きたいと願う圧倒的な生存本能を、おぞましさスレスレのビジュアルとダークな色彩で描き、強烈な印象を与えている。水彩画をCGよって動かすハイブリッド・アニメーションという斬新な技術にも注目だ。監督のさとうけいいちはロボットアニメが得意という印象があったが、古風な時代劇の枠内で、アクション・アニメーションのジャンルの新たな地平を作り出した。壮絶な描写が多いこのアニメ、好きかと問われると首をかしげたくなるが、圧倒的な印象を残す作品であることは間違いない。
【60点】
(原題「アシュラ」)
(日本/さとうけいいち監督/(声)野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ、他)
(過激度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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