映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
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長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

アデル・エネル

ブルーム・オブ・イエスタディ



ホロコースト研究所に勤める40歳のトトは、ナチスドイツの戦犯を祖父に持つ出自から、家族の罪と向き合うために研究に人生を捧げていた。だが、精神が不安定な彼は、2年かけて準備したアウシュヴィッツ会議のリーダーからはずされてしまう。最悪な気分のまま、フランスから来るインターンの女性ザジを迎えにいくが、彼女はホロコーストの犠牲になったユダヤ人の祖母の無念を晴らすために研究に打ち込んでいた。目標は同じだが正反対の立場の二人は最初は反発し合うが、やがてお互いに自分にない何かを求めるように強く惹かれていく…。

ナチスの戦犯を祖父に持つ男とホロコーストの犠牲になった祖母を持つユダヤ人女性が恋に落ちる異色のラブストーリー「ブルーム・オブ・イエスタディ」。ナチスやホロコーストを描く作品は、題材が題材だけにシリアスで生真面目に描かれるのが通常だ。だが本作は、新しいアプローチでそんな常識を打ち破る、変化球のような映画である。トトはキレやすい性格で、ナチス親衛隊員の祖父を告発した本を書いたことで家族から勘当され、妻との間には大きな問題を抱えている、精神的に不安定な男性だ。フランスからやってきた若い女性ザジもトトに負けず劣らずエキセントリックな性格で、突発的にトンデモないことをやらかす型破りな性格。祖母をホロコーストで亡くしているのに、ナチスの暴挙を茶化したりする彼女に、トトは激しく反発するが、やがて惹かれあうことになる二人には、共に秘密があって…というストーリーである。

被害者と加害者が極限状態で愛し合う“衝撃”は、名作「愛の嵐」が代表格だ。精神を病んだ者同士が恋に落ちるのは、映画ではもはや定番とも言える設定。本作はナチス映画に新風を吹き込むもので、過去に囚われるばかりではなく、未来を見据えようというメッセージは理解できる。だが、情緒不安定なトトとザジの言動があまりに極端で、共感することが難しい。さらに、二人が抱えるさまざまな問題など、余計な設定が多すぎてまったく交通整理ができていない。トラウマを背負った被害者と加害者の子孫が恋に落ちる様を、あっさりとしたユーモアで描いてくれれば、もっと好感が持てたものを。ラストには光明が見えるが、ただのラブロマンス化した感もある。ホロコーストの歴史的因縁を背負った男女の恋という“素材”は面白いのに、キャラクターの性格やユーモアのセンスなどの“料理法”を間違ってしまったような映画だった。実に惜しい。
【55点】
(原題「THE BLOOM OF YESTERDAY」)
(独・オーストリア/クリス・クラウス監督/ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、他)
(ユニーク度:★★★★☆)
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午後8時の訪問者

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ベルギーの小都市。小さな診療所で熱心に働く若い女医ジェニーは、ある日、診療時間を過ぎた午後8時に鳴ったベルに応じなかった。翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が発見される。診療所の監視カメラに写っていたその少女は、助けを求めていた。少女は誰なのか。なぜ死んだのか。あの時、ドアを開けていれば…と罪の意識にかられたジェニーは、少女のことを調べ始めるが、死の謎を探るうちに、意外な真実が浮かび上がってくる…。

時間外に診療所に来た少女の助けに応じなかったことで彼女の死に責任を感じる女医の葛藤を描くヒューマン・サスペンス「午後8時の訪問者」。カンヌ映画祭の常連であるダルデンヌ兄弟監督は、しばしば社会の底辺で生きる人々が抱える、貧困、差別、犯罪、移民問題などを題材にしてきた。それらの矛盾した実態を淡々と描くことで、社会問題が浮かび上がるのが作風の特徴だが、決して政治的なメッセージを声高に叫ぶことない。本作でもしかり。亡くなった少女の死に責任を感じるヒロインのジェニーは、自分がドアを開けて応じていれば、彼女の命を救えたかもしれないと考える。それは医者という職業柄もあるが、何よりもジェニーが誠実な人物だからだ。アフリカ系のその少女は不法滞在の娼婦で、いわば誰からも顧みられない存在だ。だが、ジェニーは、せめて彼女の名前を調べて故郷の家族に連絡したいと願って事件を調べ、時に危険な領域にまで入り込んでいく。なぜ少女は殺されたのか、犯人は誰か、という謎解きのスタイルで進んでいくことで、本作は今までの作品に比べてぐっと娯楽性が高まっていて飽きさせない。ジェニーの患者である少年ブライアンの嘘や、彼の両親の思惑、娼婦だった少女の背後にある闇組織などの存在が明らかになり、事件は意外な結末へ。償いの旅をするジェニー自身にも、医者として、人間として、心の変化が訪れるストーリーが秀逸だ。ヒロインを演じる仏の人気女優アデル・エネルの、繊細で寂しげな、それでいて強い意志を感じる表情が忘れがたい。
【75点】
(原題「LA FILLE INCONNUE/THE UNKNOWN GIRL」)
(ベルギー、フランス/ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ兄弟監督/アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)
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