映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

アレクサンダー・ペイン

ダウンサイズ

近未来。爆発的な人口増加で食料・資源不足が深刻になり、人間を縮小することで問題を解決する人類縮小技術が実用化された。片田舎に住む平凡な男ポールは、身長を13cmにすれば資産は82倍、レジャーランドと呼ばれる特別エリアで豪邸に住めると知って、妻オードリーと共に夫婦で小さくなることを選択する。さまざまな準備を経て、晴れて14分の1のサイズになったポールだったが、そこで思いもよらない事実を知らされる…。

人類縮小計画に参加した男が直面する思いがけないドラマを描く「ダウンサイズ」。人間を小さくすることで、食糧・資源不足や住宅問題、経済格差などの問題を解決するというのは、突拍子もないようでいて妙に説得力がある。さらに人を縮小するにあたり、全身の毛を剃ったり、歯などの金属の詰め物を取り除いたりの手順も細かくて、これまたリアル。小さくなってからの暮らしもまた詳細に描かれていて面白い。身長13cmになったポールは、予想外の事態によって孤独に暮らすことになるが、そこで出会うのは、怪しげな隣人や、過激なベトナム人女性活動家(現在は清掃員)らだ。彼らとの出会いが、ポールを思いもよらない運命へと導いていく。

アレクサンダー・ペイン監督は、「サイドウェイ」や「ネブラスカ」などで、市井の人々のささやかだがかけがえのない幸福を丁寧に描いてきた。本作もまた、人生とは、幸福とは、という問題を提示している点は共通している。だが人類縮小計画というユニークな設定がいかされているのは前半で、後半は縮小の問題ではなく、貧困や政治・経済、環境問題へとどんどん話が広がっていき、ついには終末論へと飛躍していくので、どうにも違和感を感じてしまう。これ、何のお話でしたっけ??という疑問がわいてくるではないか。マット・デイモンは好演だが彼が演じる主人公に魅力が乏しいのも残念。いっそ、2つの別々の映画に分けた方が良かったのでは?とさえ思う。そんな不満を払拭するのは、英語が不自由ながら強い意志を持ったベトナム人女性活動家役のホン・チャウの魅力だ。彼女の名コメディエンヌぶりを発見できたのは、本作の最大の収穫だった。
【65点】
(原題「DOWNSIZING」)
(アメリカ/アレクサンダー・ペイン監督/マット・デイモン、クリストフ・ヴァルツ、ホン・チャウ、他)
(詰め込みすぎ度:★★★★☆)


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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 [Blu-ray]
頑固な父と息子が旅を通して絆を育む秀作ロード・ムービー「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」。切なくもとぼけた物語は渋いモノクロの世界が良く似合う。

「100万ドルが当たりました」。誰が見てもインチキと分かる当選通知を信じ込んだ老人ウディは、住んでいるモンタナ州から、生まれ故郷であるネブラスカ州まで歩いて行くといって家族を困らせる。大酒呑みで頑固な父とは距離を置いていた息子のデイビッドは、骨折り損だと分かっていても父をほっておけず、父を車に乗せ、旅に同行することに。4州をわたる旅では、途中、立ち寄ったウディの故郷で賞金を巡る騒動に巻き込まれ、さらには想像もしなかった両親の過去と出会うことになる…。

「アバウト・シュミット」や「サイドウェイ」で知られるアレクサンダー・ペイン監督は、ロード・ムービーの名手だ。移りゆく景色の中で、自分を解放し身近な人の素顔を知る旅は、それがどれほど不恰好でも人間味にあふれ、愛おしいものに思えてくる。あえてモノクロで描く本作の旅も、まさにそんなテイストだが、過去作品以上にペーソスが色濃い。何の特徴もない田舎街の寒々しい風景の中を半分ボケて足元もおぼつかない老人が行く図は、それだけで哀愁が漂っている。しかも賞金当選は誰が見ても嘘っぱちなのに、そんな嘘にでもすがるしかないウディの人生が透けてみえてじんわりと泣けてくるのだ。しかも、そんな彼をとりまく状況がこれまたシビアで、田舎の故郷に住む友人たちは、ウディをばかにしながら欲や嫉妬にあふれ、長年連れ添った妻は誰よりも辛らつだ。口べたで大酒呑みのウディはほとんど自分の心情を語らないが、それでもずっと一緒に旅をする息子のデイビッドは、少しずつ父の人生を理解する。そして終盤に明かされる、賞金にこだわる理由が分かったときには、このくたびれた老人とすでに若くはない息子の父子が大好きになってしまうのだ。生きるということはそれだけで大変なことだが、時には無駄と思える回り道が、思いがけない“当たりくじ”になる。頑固で寡黙、それでいて心優しい主人公ウディをひょうひょうと演じるベテラン俳優ブルース・ダーンの演技が味わい深く、この作品の最大の魅力になっている。
【80点】
(原題「NEBRASKA」)
(アメリカ/アレクサンダー・ペイン監督/ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、他)
(哀感度:★★★★☆)
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映画レビュー「ファミリー・ツリー」

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◆プチレビュー◆
ジョージ・クルーニーが絶妙の演技をみせる「ファミリー・ツリー」。ほろ苦いドラマだが後味はさわやかだ。 【80点】

 ハワイ・オアフ島に住む弁護士マット・キングは、妻と二人の娘と順調な人生を送っていた。だが妻がボートの事故で昏睡状態になった上に、浮気していて、離婚を考えていたことが発覚する。そのことを、長女や友人夫妻までもが知っていたことに愕然とするマット。ともあれ妻の浮気相手に会う決心をするが…。

 洒脱でさっそうとしたナイスガイ。あるいは社会悪に立ち向かう正義漢。はたまたコミカルでクセのある変わり者。ジョージ・クルーニーは変幻自在に役を生きる。そんな彼が父親を演じるのは初めてではないが、今回の役は、実に情けない。妻に浮気され、思春期の長女からは信用されず、文無しの従兄弟たちからは金銭面でのみ頼られている中年男なのだ。

 なんともピリッとしない主人公マットだが、彼が置かれた状況はすこぶるやっかいである。妻の生命維持装置をはずすべきかという決断と、先祖代々の土地を売却すべきかという難題を同時に抱えることになったのだ。マットは、生まれて初めて、自分の人生に正面から向き合うことになる。

 順調な人生を送ってきたかに見えて、家庭は妻にまかせっきり、子供たちとまともに会話したことさえなかったマットは、本当は大切なことに目をそむけて生きてきた。予期せぬ形で転機を迎えることにはなったが、彼は、人生、家族、命の意味を子供たちと共に、不器用に、でも本気で考える。私たち観客もまた、そんなマットに寄り添いながら、彼が出す答えを見守ることになる。

 監督のアレクサンダー・ペインは、寡作ながら上質の作品を送り出す職人肌の監督だ。「サイドウェイ」以来の7年ぶりの監督作となる本作でも、ハワイの独特の風土や歴史を存分に生かした。家族の絆を見直すプロセスを、土地を手放すことが祖先から子孫へのつながりを断ち切ることになると気付く主人公の心の変化に重ねる手腕は見事だ。

 最悪と思った出来事が、意外な形で主人公の人生をリロードし、導いていく。タイトルのファミリー・ツリーとは、大地に根を張り、受け継がれる家族の系譜を指している。ラスト、父娘がソファに座ってTVを見るシーンで、皆がひとつのハワイアン・キルトを足元にかけている場面がとてもいい。それは入院時の母にかけてあげていたキルトだ。誰もが欠点を持ち、誰もが完全には正しくない。互いを補いあう家族だからこそ、それでいい。映画全編をそっと包み込む、柔らかなハワイアン・ミュージックがそう告げている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ペーソス度:★★★★★

□2011年 アメリカ映画 □原題「THE DESCENDANTS」
□監督:アレクサンダー・ペイン
□出演:ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー、他
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ファミリー・ツリー@ぴあ映画生活

サイドウェイ

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◆プチレビュー◆
ワイン好きに勧めたい映画だが、ワインに対する“暴力”描写も多いので要注意。カリフォルニア・ワインの価値は私には計りかねるが、この映画、ワイン大国のフランスやイタリアなどで作ってもおもしろいものになりそうだ。

離婚のショックから立ち直れずウツ状態の国語教師マイルスは、実は小説家志望。親友で俳優のジャックが結婚を前をして、とことん遊びたいというので、二人してカリフォルニアのワイナリーを巡るナンパ・ツアーの旅に出る。中年男二人の気ままな旅は魅力的な女性に出会うことでどう変化するのだろうか…。

売れない小説家と女好きの俳優という、見た目も中身も冴えない中年男達が主人公。非常に地味な題材の映画だと思う。でも実生活にかぶる人も多いんじゃなかろうか。大人になりきれない男たちの自分探しの物語だが、一般人の人生の折り返し地点なんて、輝かしいばかりじゃないはずだ。

何気ない物語を魅力的にしているのは、ロード・ムービーの清々しさと陽光溢れるカリフォルニアの自然。スクリーンはいつもおだやかな空気に包まれているので、見ている観客は心地良い。ワイナリーで出会った二人の女性と一緒に出かけたピクニックの場面は、幸福な時間を過ごす登場人物たちの気分がそのまま伝わってくる。

女性側から見ると、少々腹立たしい設定もあるのだが、ここはおおらかに見ようじゃないか。ヴァージニア・マドセン扮する女性マヤが輝いて見えるのは、愛すべきダメ男を優しく見守る母性を感じるから。マヤみたいな女性なら、旅の途中でも寄り道の価値はある。

オスカー・レースにこんな小品が割って入ったとは驚きだが、アメリカの平均的中年男女の心の内を丁寧に描いて、好感を得たのだろう。随所に笑いを散りばめた軽さもいい。人生のほろ苦さを知る大人向けの作品だ。

□2004年 アメリカ映画  原題「SIDEWAYS」
□監督:アレクサンダー・ペイン
□出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、他

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