映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

アレック・ボールドウィン

ボンジュール、アン!

Paris Can Wait
映画プロデューサーとして成功している夫マイケルは、長年連れ添ってきた妻アンに無頓着で、仕事ばかり。いつも寂しい思いをしているアンは、ひょんなことから夫の仕事仲間でフランス人男性ジャックの車に同乗し、カンヌからパリへと向かうことになる。単なる移動のはずが、ジャックは、おいしい食事や、美しい風景などを楽しもうと、半ば強引にアンを連れまわす。最初は困惑していたアンだったが、次第にそのまわり道は彼女の人生を変える、充実したひと時になっていった…。

長年夫を支え、子育ても一段落した女性が、人生の岐路に立ち、パリへの旅を通して自分自身を見つめ直していくヒューマン・ドラマ「ボンジュール、アン!」。監督は、巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の妻、ソフィア・コッポラ監督の母の、エレノア・コッポラで、80歳にして長編劇映画監督デビューとなった。デビューといっても監督としては秀作ドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」などを手掛けている実力派である。本作は、何でもエレノア自身の体験に基づいた物語ということで、ヒロインにはエレノア自身が投影されているそうだ。

仕事人間の夫は妻に無頓着、娘も学校を卒業した今「これから私、どうするの?」と自問していたところに、人生を楽しむ達人のフランス男が目の前に現れる。カンヌからパリへのドライブで見る景色は、美しいラベンダー畑など陽光あふれる風景で、食べ物は、料理も食材もワインもおいしそう。映画を発明したリュミエールの研究所や、世界遺産のサント・マドレーヌ大聖堂を訪ねたりと、名所めぐりのロケーションも第一級だ。そんな旅映画、グルメ映画の裏側にあるのは、ちょっぴりやきもきする大人同士の恋物語。互いに分別もあり、人生の悲しみも知っている二人は、少しずつ距離を縮めていく。そのゆったりとした落ち着きや大人の雰囲気が心地よい。アンはジャックに比べて臆病かもしれないが、アンに積極的にアプローチし人生を楽しむジャックのことは嫌いじゃないのだ。はたして目的地パリに着いたアンが出す答えとは?それは映画を見てのお楽しみだ。ダイアン・レインのナチュラルなたたずまいに好感が持てる。
【60点】
(原題「PARIS CAN WAIT」)
(アメリカ/エレノア・コッポラ監督/ダイアン・レイン、アルノー・ヴィアール、アレック・ボールドウィン、他)
(人生讃歌度:★★★★☆)
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アリスのままで

アリスのままで [Blu-ray]
若年性アルツハイマー病を発症した女性とその家族の葛藤を描く「アリスのままで」。オスカーを射止めたジュリアン・ムーア渾身の演技に目を見張る。

50歳のアリスは名門大学で教鞭を取る言語学者。ある日、物忘れがひどくなり病院を訪れると、若年性アルツハイマー病と診断されてしまう。やがては家族のことも自分が誰であるかも忘れてしまう病気におびえながら、アリスは家族の支えでなんとか暮らしていくが…。

本作は、いわゆる難病ものではあるが、ベタついたお涙頂戴映画などではない。それはヒロインと家族をシビアな視線でみつめているからだ。知的でウィットに富んだ女性アリスは、自分が自分でなくなる病気の恐怖と共に、その病が子供たちに遺伝してしまうことで大きな罪悪感を感じる。最初は小さな物忘れから次第にエスカレートしていく描写も非常に丁寧で、ジュリアン・ムーアの名演も手伝い、若年性アルツハイマー病という病気の性質がしっかり理解できるはずだ。やがてすべてを忘れる自分にビデオメッセージを残すが、症状がかなり進行したアリスがそれを見るシークエンスは、緊張感が漂う。だがこの映画が他の難病ものとはひと味違うのは、インテリ一家のそれぞれのアリスへの接し方にある。医師である夫や優等生タイプの長女がどこか逃げ腰なのに対し、一家では落ちこぼれの次女リディアは母親の病と正面から向き合い、しっかりと支えていく。母と娘という関係性以上に女性として人間として関わっていこうとする毅然とした姿勢が印象的で、クリステン・スチュワートの自然体の演技がムーアに負けずに素晴らしい。例え記憶は薄れても、アリスがアリスであった事実は決して消えることはない。高齢化社会、老い、記憶。いつかは自分や家族にも…と身につまされる観客も多いかもしれない。アイデンティティーと尊厳を、静かなタッチで描く良作だ。
【80点】
(原題「STILL ALICE」)
(アメリカ/リチャード・グラツァー、ワッシュ・ウェストモアランド監督/ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、他)
(女性映画度:★★★★☆)
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恋するベーカリー

恋するベーカリー ~別れた夫と恋愛する場合~ [DVD]恋するベーカリー ~別れた夫と恋愛する場合~ [DVD]
大人の恋愛模様をコミカルな艶笑話風に描くハートフル・ストーリー。ジェーンは大人気ベーカリーを経営する実業家。10年前に離婚したが3人の子供を育て上げ、友人にも恵まれて、充実したシングルライフを送っている。だが心が満たされないと感じることも。そんな時、息子の卒業式に出席するため滞在したホテルで偶然別れた夫ジェイクと再会し、勢いでベッドイン。元サヤを望むジェイクはそれ以来、彼女に猛烈にアタックする。一方で、バツイチの建築家アダムもまた控えめにジェーンにアプローチ。元夫との再会と新しい男性との出会いの両方にときめくジェーン。微妙な三角関係は、思いがけない出来事に発展していくが…。

元夫婦がもう一度恋愛すると、不倫になってしまうというシチュエーションは、当事者には笑いごとではないのだがハタから見ると何とも笑える事態だ。ジェーンにとっては、焼け木杭(ぼっくい)に火が付くかっこうだが、自分から夫を奪った若い美女へのリベンジという側面が、彼女を燃えさせているのは確か。演技派女優メリル・ストリープを中心線に、左右対称に位置するのが、元夫で押せ押せの性格なのに憎めないジェイクを演じるアレック・ボールドウィンと、いつものコミカルな味を抑えて傷つきやすくて繊細なアダムを好演するスティーブ・マーティンだ。ベテラン俳優3人の絶妙な化学反応が、熟年男女の恋の騒動を青春映画のように輝かせる。元夫との隠れた恋愛を女友達に打ち明けて盛り上がる場面など、まさにガールズ・トーク。そんなハイ・テンションな大人たちの一方で、身勝手な親たちへの不満をもらす子供たちの心の傷にもさりげなく触れている。離婚10年目の熟年再恋愛は、勇気と誠実の両方を知る大人の年輪がモノを言う。ジェーンの選択は映画を見て確かめてほしいが、何より、いくつになっても母親や妻よりも「女」でありたいと願うヒロインの、前向きに生きる姿に感服する。原題は「ややこしい!」の意味。まったくそのとおりだが、いろいろあるからこそ人生は退屈しないのだ。
【60点】
(原題「It's Complicated」)
(アメリカ/ナンシー・マイヤーズ監督/メリル・ストリープ、スティーヴ・マーティン、アレック・ボールドウィン、他)
(生涯現役度:★★★★★)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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