映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

アンジェイ・ワイダ

残像



1945年。スターリンが侵略の手を伸ばすポーランドで、アヴァンギャルドなスタイルで有名なポーランド人画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、情熱的に創作活動を続けていた。だが彼の作品は社会的リアリズムに反するとして当局から迫害を受け、大学教授の職を追われた上、美術館からも作品を破棄されてしまう。ストゥシェミンスキは彼を崇拝する数名の学生たちの援助で懸命に活動を続けレジスタンスのシンボルとなっていくが、食糧配給も受けられずに困窮する生活は次第に彼を追い詰めていく…。

スターリン体制に反抗し自らの信念を貫いた実在の画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキを描く伝記映画「残像」。ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督は、一貫して理不尽な権力への反骨精神を描いたが、本作もまさにその系譜で、レジスタンスの塊のような主人公の生き様は、まるでワイダ自身の肖像画のようだ。先駆的画家・マレービチの弟子になった画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、カンディンスキーやシャガールらとも交流があった前衛画家。祖国を愛してやまないが、その思いは報われない。当局による熾烈な迫害の中で、食べるものもなく、食糧よりも熱望する画材さえ入手できない生活は、主人公にとっては死に等しい。それでも彼は祖国を捨てないし、体制側に迎合もしない。象徴的なのは、娘との関係性だ。まだ幼い娘のニカは、母ではない別の若い女性と親密な父親に、愛憎入り混じる複雑な思いを抱いてる。祖国を愛しながら、芸術を政治に利用しようとする当局に断固として抵抗するストゥシェミンスキの生き方と、この父娘の関係性が重なって見えた。ストゥシェミンスキが非業の死を遂げたのは歴史の事実だが、そのラストは、ワイダの初期の傑作「灰とダイヤモンド」の主人公がゴミ捨て場でぼろきれのようになって死んでいく場面を連想させ、戦慄する。左手と右足のない松葉杖のストゥシェミンスキが、冒頭で、なだらかな草原の丘の斜面を、笑いながら転がり落ちて、目的地に到着する場面がある。それは難しい時代にポーランドで生きる芸術家が幸せを謳歌する幻想のように、はかなく幸福な場面だ。「残像はものを見た時に目の中に残る色だ。人は認識したものしか見ていない」とは、主人公が劇中に学生に語る言葉。アートの表現の自由を決してあきらめなかった不屈の精神が、威厳を持って響いてくる、ワイダ渾身の遺作だ。
【70点】
(原題「POWIDOKI/AFTER IMAGE」)
(ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督/ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフラチュ、ブロニスワヴァ・ザマホフスカ、他)
(反骨精神度:★★★★★)
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反骨の映画監督アンジェイ・ワイダ、死去

おくやみ2016年10月9日、ポーランドの名匠、アンジェイ・ワイダ監督が死去しました。

監督デビュー作「世代」、「地下水道」(カンヌ国際映画祭・審査員特別賞)、代表作「灰とダイヤモンド」(ヴェネツィア国際映画祭・国際映画批評家連盟賞)からなる1950年代の作品群の“抵抗3部作”で知られています。

ポーランドの歴史をリアルに描く映画芸術のムーブメントである“ポーランド派”の代表的な監督ですが、1980年代に発表した「大理石の男」「鉄の男」(カンヌ国際映画祭・パルム・ドール受賞)などで連帯運動を描いたことから、反体制的とみなされてポーランド映画人協会長などの職を追われることになります。それでも映画作りへの情熱は消えることはありませんでした。まさに反骨の映画人です。

2000年には、歴史的観点から映画を通して民主主義や自由を訴えた業績により、第72回アカデミー賞で名誉賞を受賞。晩年まで創作意欲は衰えず、父親が犠牲になった、ソ連軍によるポーランド軍将校の虐殺事件を描いた「カティンの森」など、力作を作っています。2013年、ポーランドの民主化への歩みを描いた「ワレサ 連帯の男」が遺作となりました。

不思議な響きのポーランドの言葉の新鮮さとともに、西ヨーロッパの国の映画や、無論、ハリウッドとはまったく異なるテイストのポーランド映画を見て、随分衝撃を受けたのを覚えています。

代表作はたくさんありますが、やはり「灰とダイヤモンド」(1958)は、はずせないところでしょう。ドイツ降服直後の1945年のポーランドを背景に、抵抗組織に属した青年が労働党書記を暗殺しようとすることで起こる悲劇の1日を描く物語です。ゴミ捨て場で虫けらのように息絶えるラストの虚しさとポエティックな美しさの両面で、歴史に翻弄されるポーランドそのものを描いて衝撃的でした。余談ですが、この映画で主人公を演じた俳優の名前はズビグニエフ・チブルスキ。今でこそ、この名前はすんなり言えますが、初めて聞いたときは、舌を噛みそうで、覚えるのに苦労したものです(苦笑)。難しい名前が多いポーランド映画界で、アンジェイ・ワイダという名前は比較的覚えやすかったというのも、彼の名前が日本で認知された理由かもしれません。

ワイダ監督作としては、あまり有名ではないかもしれませんが、「聖週間」(1995)も忘れがたい作品でした。ナチスドイツに迫害されたイメージが先行するポーランドですが、そのポーランド人にもユダヤ人を迫害した罪があるというスタンスの、歴史の暗黒面を描いた勇気ある映画です。奇しくも原作は、「灰とダイヤモンド」と同じイェジー・アンジェイフスキの中編小説です。

日本美術に強い影響を受けたとして、ポーランドの古都クラクフに日本美術・技術センターを建設するなど、たいへんな親日家だったアンジェイ・ワイダ監督は、東日本大震災の際に、被災者と日本を励ます、力強くも心優しいメッセージを送ってくれたことを、付け加えておきます。

享年90歳。ご冥福をお祈りします。合掌。

灰とダイヤモンド [DVD]
ズビグニエフ・チブルスキ
紀伊國屋書店
2012-08-25



アンジェイ・ワイダ DVD-BOX 1 (世代/地下水道/灰とダイヤモンド)
タデウシュ・ウォムニツキ
紀伊國屋書店
2011-02-26

カティンの森 [DVD]
マヤ・オスタシェフスカ
アルバトロス
2010-05-07





聖週間【字幕版】 [VHS]
ベアタ・フダレイ
朝日新聞社
1997-10-17

← DVD化されてないことを、初めて知りました…。


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ワレサ 連帯の男

ワレサ 連帯の男 [DVD]
連帯の指導者ワレサの闘いの日々と夫婦の絆を描くヒューマン・ドラマ「ワレサ 連帯の男」。記録映像を大胆に使い、当時の熱気を再現している。

1980年代初頭、ソ連の支配下にあるポーランドのグダンスク。レーニン造船所で電気工として働くレフ・ワレサは、西側のジャーナリストの取材を受ける。ワレサは、70年代から権力側に抗議し、幾度となくストライキに参加しては投獄されるなど、政治活動にのめり込んでいた。若く美しい妻ダヌタと大勢の子供たちと共に、質素なアパートに住みながら、政府の弾圧にも負けず活動を続けるワレサは、反体制側の象徴となり自主労組「連帯」の委員長となる。だが、ついに政府によって自由を奪われ軟禁状態となる…。

社会主義下のポーランドに誕生した、国家の民主化を訴えた独立自主管理労組「連帯」は、自由と権利のために闘い続け、東欧民主化の口火を切った。その連帯の指導者で、後にポーランド大統領にもなり、ノーベル平和賞も受賞したレフ・ワレサは今も存命。そんな偉人を描くにあたり、名匠アンジェイ・ワイダ監督は、連帯の指導者としての顔と、家庭人としての顔を交互に描くことで、ワレサという人物の多面性をあぶりだした。カリスマ性と政治的嗅覚は誰よりも優れている。だが頑固で一筋縄ではいかない意固地な面も。それでいて、どれほどの窮地に立たされようともユーモアと希望を忘れない。タフで、矛盾に満ちたワレサの人物像を、決して美化せずに描くことに成功している。ワイダ監督もまた、ポーランドの歴史を描きながら、映画という武器で戦ってきた闘士なのだ。1926年生まれで80代のワイダの感性は今も瑞々しい。特に反体制の活動に当時にニュース映像を大胆に組み合わせた映像が独特の熱気を生み、さらにそこに80年代当時流行した激しいロックを流すという、エネルギッシュな演出に引き込まれた。自由のために戦う夫を支えた妻ダヌタの勇敢な生き様もまた忘れがたい。本作は伝記映画、ポリティカル映画であると同時に、支えあった夫婦の絆を描いたドラマでもあるのだ。
【65点】
(原題「WALESA. MAN OF HOPE」)
(ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督/ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホウスカ、マリア・ロザリア・オマジオ、他)
(不屈度:★★★★★)
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ワレサ 連帯の男@ぴあ映画生活

カティンの森

ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダの渾身の力作は、暗い感動に満ちて息がつまりそうだ。第二次世界大戦中、ソ連の秘密警察によって1万5千人以上のポーランド軍将校が虐殺された「カティンの森事件」。この悲劇を、捕虜になった将校たちと、彼らの帰還を待ちわびる家族を通して描いていく。戦後、ソ連の衛星国となったポーランドでは、長い間、この事件は独軍によるものとし、真実を語ることはタブーとされていた。事件で父親を殺されたワイダ監督は、本作で、ついに歴史の暗部に正面から迫り、後世に真実を伝えようとしている。

ポーランドという国名は“平らな土地”という意味だそうだ。平和なイメージだが、その地形は、ヨーロッパの列強に簡単に侵略されることを意味する。第二次世界大戦では、ヒトラーのドイツとスターリンのソ連がポーランドを分割・占領。劇中に、赤と白のポーランド国旗を二つに引き裂く場面があるが、これこそが映画の象徴に思えた。夫のアンジェイ大尉を待ち続ける妻のアンナを中心に、多くの悲劇が語られるが、ラストにアンジェイの手帳に記されていた信じがたいほどむごい虐殺には、言葉を失った。戦争とは、いつの時代も理不尽な悲劇を生むが、これほど悲惨な出来事が、真実を語ることさえ許されず、国民は沈黙を強いられていたとは。本作こそ、祖国ポーランドの歴史を常に見つめてきたワイダの集大成と言ってもいいだろう。冷え冷えとした暗い映像が圧倒的で、眼をそむけてはいけないと観客に語りかけてくる。
カティンの森 (集英社文庫)【75点】
(原題「KATYN」)
(ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督/マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ、ヴィクトリャ・ゴンシェフスカ、他)
(衝撃度:★★★★☆)

カティンの森 (集英社文庫)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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