映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

ウディ・アレン

カフェ・ソサエティ

カフェ・ソサエティ [Blu-ray]
1930年代。ニューヨーク出身の平凡な青年ボビーは、刺激的な人生を求めてハリウッドにやってくる。映画業界で大物エージェントとして成功した叔父フィルを頼って彼の元で働き始めたボビーは、フィルの美しい秘書のヴェロニカ、愛称ヴォニーに心を奪われる。ヴォニーと親しくなったボビーは彼女との結婚を夢見るようになるが、ヴォニーにはひそかに交際中の男性がいることに気付いていなかった…。

NY出身のユダヤ系青年が経験する華やかなセレブの世界と恋の行方を描くラブストーリー「カフェ・ソサエティ」。本作は、1930年代を背景に、ハリウッドの映画業界で働くことになった青年が、やがて生まれ故郷のNYに戻り成功をつかむ物語だ。両方の場所で出会った同じ名前の女性、二人のヴェロニカの間で揺れ動く心情を、軽快なテンポで描いている。前半のハリウッドのパートは、映画業界の狂乱や大スターの豪邸見物など、極めて俗っぽい。後半のNYパートも、ある意味同様だ。ギャングの兄の手伝いとして始めたNYのナイトクラブ経営も、表面はきらびやかだが裏社会との付き合いもあり、虚無的な華やかさに満ちている。それでもNYの方が魅力的に映るのは、やはりアレンのNY愛ゆえだろうか。タイトルのカフェ・ソサエティとは、1930年代に夜ごと都会のおしゃれなレストランやクラブに繰り出すライフスタイルを実践したセリブリティを指す。ボビーが望んだのは、より刺激的で胸のときめく人生。だが人はいつでも“ないものねだり”だ。映画では、好きな人と結ばれても、結ばれなくても、“もしかしたら、存在したかもしれない、もうひとつの人生”に想いをはせる登場人物たちの複雑な心情がにじみ出ている。ジェシー・アイゼンバーグはもちろんアレンの分身。クリステン・スチュワートは美しくファッショナブル。だがNYパートで登場するもう一人の美女ブレイク・ライヴリーの役柄がほとんど活きていないのが残念。80歳を超えた名匠ウディ・アレンは、年に1本のペースで律儀に新作映画を届けてくれるが、作品の出来不出来の波があるのは否定できない。本作はパンチ不足で物足りなさが残るが、シャネルの華やかな衣装と、アレンと初コラボの名撮影監督ビットリオ・ストラーロが映し出す魔法のような光が、人生のほろ苦さを雄弁に語っている。
【60点】
(原題「CAFE SOCIETY」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライヴリー、他)
(ファッショナブル度:★★★★★)
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教授のおかしな妄想殺人

教授のおかしな妄想殺人 ブルーレイ [Blu-ray]
夏の日差しがきらめくアメリカ東部の大学に赴任してきた哲学科教授のエイブは、人生の意味を見失って無気力な闇の中で生きていた。ある日、悪徳判事の噂を耳にしたエイブは、自らの手でその判事を殺すという完全犯罪に夢中になる。この妄想は、エイブに生きる活力を与え、みるみる前向きに変わっていく。一方、そんなエイブの頭の中など知るはずもない女子学生ジルは、エイブに対する恋心を募らせていくが…。

人生における不条理を独特のブラックな笑いで描く「教授のおかしな妄想殺人」。毎年1本、律儀に届くウディ・アレンの新作だ。近年のアレン作品では「ミッドナイト・イン・パリ」と「ブルー・ジャスミン」が最高の出来なので、どうしても他作品は軽すぎ、甘すぎ、ユルすぎで見劣りがしてしまう。本作もそんな1本。「マッチポイント」ばりのサスペンスなのだが、テイストはあくまでもコミカルでライト感覚。どちらかというと「重罪と軽罪」に近いだろう。ダメダメな人生をおくるインテリ男というのは、アレン作品ではおなじみの主人公だが、それをホアキン・フェニックスが演じているのが、ちょっと意外だ。アレン作品にフィットしているかどうかは微妙なのだが、何しろこの俳優は何を演じさせても上手い。妻に裏切られ、友情も壊れ、対人関係に疲れ果てた無気力な哲学教授が到達したのは「人生は無意味である」という結論だった。長年の経験に基づく、この哲学的な思考は、思いつきにすぎない完全犯罪とは矛盾するものなのだが、エイブ役のホアキンの異様な存在感でいつのまにか納得させられてしまう。そんなエイブも小さな懐中電灯の前にひれ伏すしかないという不条理…というか悲喜劇が、アイロニカルなアレン節ということなのだろう。さてさて、プロフェッサーの妄想殺人の顛末とは…。それにしてもホアキンの腹の出っぱり具合に、唖然。カメレオン俳優の名に恥じない変貌ぶりだった。
【55点】
(原題「IRRATIONAL MAN」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、パーカー・ポージー、他)
(シニカル度:★★★★☆)
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マジック・イン・ムーンライト

マジック・イン・ムーンライト [Blu-ray]
魔術師と占い師の恋の行方を描くロマンチック・ラブコメディ「マジック・イン・ムーンライト」。天真爛漫なラブストーリーは軽やかさが心情。

魔法や超能力など信じないイギリス人マジシャン、スタンリーは、友人からある大富豪が入れあげているアメリカ人占い師、ソフィの正体を暴いてほしいと頼まれ、コート・ダジュールの豪邸へと乗り込む。だがソフィは、実際に会ってみると若くて美しい女性で、スタンリーに対して次々に透視能力を発揮した。悲観主義者のスタンリーは、それまでの人生観を覆され、笑顔が魅力的なソフィに惹かれるようになるのだが…。

前作「ブルー・ジャスミン」での痛々しさから一転、名匠ウディ・アレンが描くのは、1920年代の南仏を舞台に正反対の男女の恋の駆け引きを描くラブ・ロマンス。全編に、明るさとユーモアがあふれている。英国人の魔術師スタンリーは、中国人のフリをして観客を騙すのに自分自身が騙されるのは大嫌い。そもそも魔法なんか信じていないニヒリストだ。一方、アメリカ人の占い師ソフィは、超能力や霊媒を駆使して不可思議な現象を操る女性だが、性格は明るく快活で超ポジティブ。そんな真逆な男女の恋が一筋縄でいくはずがない。もっともストーリーは単純だし種も仕掛けも拍子抜けするような内容なのだが、この映画のテーマは“恋とは魔法のようなもの”ということ。すべてが軽やかなのは見ていて楽しくなるし、1920年代のクラシックで華麗なファッションもまた魅力的だ。思えばアレンの映画には、手品や占い、催眠術や霊媒師などが頻繁に登場する。恋愛をイリュージョンと言いきるのはいささか穿った見方だが、それが人生を幸福へと導くのなら信じてみるのも悪くない。映画だって同じこと。暗闇で見る作りものの物語に心地よく騙される至福を、私たち映画ファンはよく知っているから、この作品が憎めないのだ。
【60点】
(原題「MAGIC IN THE MOONLIGHT」)
(米・英/ウディ・アレン監督/コリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、他)
(ロマンチック度:★★★★☆)
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ジゴロ・イン・ニューヨーク

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にわかジゴロが女性たちを癒す大人のラブ・ストーリー「ジゴロ・イン・ニューヨーク」。“俳優”アレンが絶好調。

祖父の代から続くブルックリンの本屋を潰してしまったマレーは、花屋で働く友人のフィオラヴァンテをくどきおとして、男娼ビジネスを始める。いやいやながらジゴロになったフィオラヴァンテだが、意外なことに、彼は裕福な女性たちに大人気に。ところがジゴロが、正統派ユダヤ教徒の未亡人アヴィガルに本気で恋をしてしまう…。

個性派俳優ジョン・タトゥーロが、監督、脚本、主演を務める本作は、ジゴロをテーマにした、ロマンチック・コメディだ。ジゴロといえば美形の色男と相場が決まっているが、本作のジゴロは、非・美男子、いい歳をして停職もなくバイト中。だがよくよく見ると、ジゴロはクールでダンディだし、何より穏やかで聞き上手だ。マレーがみつけてきたお客は、裕福で奔放な女医と彼女のレズビアンのパートナー、そして厳格なユダヤ教宗派の高名なラビの未亡人という、真逆なタイプである。だが、彼女たちに共通するのは、心の奥に寂しさや虚しさを抱えているということだ。ジゴロは女性を敬愛し、彼女たちの心を理解し、言葉少なにそっと寄り添う。物静かで哀愁が漂うジゴロのタトゥーロとは対照的に、ポン引きのアレンは、いつものマシンガン・トークで笑わせ、好対照になっている。アレンが自分の監督作以外の映画に出演するのは珍しいのだが、本作は、彼の主戦場であるNYが舞台で、粋でしゃれた会話やシニカルな本音、ジャズの名曲に、正統派ユダヤ教コミュニティの描写まであって、まるでアレン映画を見ているような心地よさが漂う。ジゴロに恋はご法度、厳格なユダヤ教の未亡人にとっても恋愛は戒律破りのタブーだ。彼らの恋の行方と、男娼ビジネスコンビの向かう先は、映画を見てぜひ確かめてほしいが、いい感じにユルいラストは、これもまたハッピーエンドなのだと思ってしまう。自分の映画でもそうでなくても、ぴったりの役柄を得ることで、存在感を示すアレン。やっぱりさすがだ。
【65点】
(原題「FADING GIGOLO」)
(アメリカ/ジョン・タトゥーロ監督/ジョン・タトゥーロ、ウディ・アレン、ヴァネッサ・パラディ、他)
(ロマンチック度:★★★★☆)
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ブルージャスミン

ブルージャスミン [Blu-ray]
セレブから転落したヒロインが精神を病む悲喜劇「ブルージャスミン」。ケイト・ブランシェットのなりきり演技がすごすぎる!

ジャスミンは資産家の夫とNYでセレブ生活を送っていたが、結婚生活も資産もすべて失い、サンフランシスコに住む妹ジンジャーの家に身を寄せる。庶民的な妹とは対照的にセレブ気分が抜けないジャスミンは、慣れない生活と仕事で次第に精神のバランスを崩していく。そんな時、あるパーティで裕福な独身男性ドワイトと出会い、彼こそが自分をもう一度上流階級に引き戻してくれると信じ込んだジャスミンは、虚栄と現実逃避から自分の身の上について嘘をついてしまう…。

1年1本の新作をコンスタントに作る巨匠ウディ・アレン。本作は、近年の、ちょっぴり能天気なラブ・コメから一転し、転落人生の中でもがく主人公をシビアに描いている。過去の栄光にすがり精神を病むヒロインの物語と言えば「サンセット大通り」や「欲望という名の電車」がすぐに思い浮かぶが、本作のケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技は、グロリア・スワンソンやヴィヴィアン・リーと肩を並べるほどの熱演で、観客は圧倒されるはずだ。無一文のくせにブランドものに身を包み、華やかなセレブ・ライフが忘れられないヒロイン・ジャスミンの行動は、すべてがちぐはぐで、その言動はあまりにイタい。だが本人は真剣そのもので、そこがまたイタい笑いを誘うのだ。自分のことしか考えないヒロインの悲劇を、どこかコミカルに描いてしまうのがいかにもアレンらしい。さらに、ジャスミンが暮らしていた、優雅だがモラルに欠ける上流階級も、妹が所属する、現実的だが品位に欠ける庶民階級も、両方を冷徹に観察し、そのイヤらしい部分をシニカルな会話で描くのもアレン流だ。悲惨さと滑稽さが同居する難役をケイト・ブランシェットがさすがの演技力で演じていて、オスカー受賞も納得の熱演。名曲「ブルー・ムーン」のメロディが忘れがたい余韻を残してくれる人間ドラマだ。
【80点】
(原題「BLUE JASMINE」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、ピーター・サースガード、他)
(虚栄心度:★★★★★)
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ローマでアモーレ

ローマでアモーレ [Blu-ray]
4つのエピソードで綴るアレン流艶笑コメディ「ローマでアモーレ」。イタリア映画へのオマージュとラテンのノリにあふれた軽妙な1本だ。

娘が突然旅先で結婚を決めたため、アメリカからローマにやってきた元オペラ演出家は、葬儀屋の美声にほれ込んで、さっそくオペラを演出する。ある日突然パパラッチに追われるハメになった平凡なサラリーマンがいる一方で、田舎から出てきた新婚カップルは、成り行きでそれぞれ別の相手と恋に落ちる。恋人の親友で小悪魔的女優に惹かれる建築家の卵には、脇でベテラン建築家がツッコミを入れる。陽光きらめく古都ローマを舞台に、4つのエピソードが同時進行していく。

1935年生まれのウディ・アレンは、毎年1本の新作を発表する律儀な巨匠だ。近年はヨーロッパの“首都物語”がお気に入りのようで、今回は観光名所とオペラに彩られたイタリア・ローマが舞台である。互いに関連性のない4つのエピソードが同時進行するスタイルは、ローマの街を気ままにスケッチするかのよう。だがそのユーモラスな4つの物語、単純なハッピーエンドとは限らない。かといって暗い結末でもないところが、皮肉屋で才人のアレンらしいところだ。物語は、筋金入りの映画狂であるアレンらしく、随所にイタリア映画へのオマージュを感じさせる。パパラッチの描写は「甘い生活」を彷彿とさせるし、新婚カップルの恋愛騒動はピエトロ・ジェルミのコメディを思わせる。幻のような建築家が脇から意見を述べたり、舞台でシャワーを浴びながらオペラを歌ったり。珍妙な演出も登場し、笑いを誘う。実際この4つのエピソードは、どれもクセがあって、話がどう転ぶか先読みできない面白さがあるのだ。例によってオールスターで賑やかな作品に仕上げているが、中でもセクシーでノリがいい美人のコールガールを演じるペネロペ・クルスが絶品。たとえそれが不道徳であっても、本能に従って生きることが人生を豊かにし人間を成長させるという、楽天主義の象徴が彼女なのだ。演出は確信犯的にユルく、良くも悪くもワンパターン。それでも複雑で味わい深い人間模様を軽妙に描くタッチと、人の生活が息づく街を魅力的にみせる技は、冴えている。型が決まった「寅さん映画」にも似た、愛すべきアレン流マンネリズムと言えようか。
【65点】
(原題「TO ROME WITH LOVE」)
(米・伊・スペイン/ウディ・アレン監督/ウディ・アレン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス、他)
(軽妙度:★★★★☆)
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恋のロンドン狂騒曲

恋のロンドン狂騒曲 ブルーレイ [Blu-ray]恋のロンドン狂騒曲 ブルーレイ [Blu-ray] [Blu-ray]
屈折した笑いに彩られた恋愛悲喜劇「恋のロンドン狂騒曲」。アイロニカルな視点がいかにもウディ・アレンらしい。

ロンドンに住むアルフィはある日突然老いの恐怖にとらわれ、40年連れ添った妻を捨てて若いコールガールと結婚宣言。妻のヘレナはあまりのショックにインチキ占い師に頼りきりになる。2人の娘のサリーは両親を心配しながらも、勤め先のギャラリーのオーナーに胸をときめかせ、サリーの夫で一発屋の小説家のロイは、向いに住む赤い服の美女ディアに心を奪われる。誰もが目の前の相手に不満をいだき、もっと幸せになれるのではと妄想する中、残酷な現実が近付きつつあった…。

複数のカップルの恋の顛末を賑やかに描くのはウディ・アレンの十八番だが、今回はかなりシニカルなムードが漂うコメディである。恋にときめき、新しい未来に向かって一歩歩み出すことは許しても、その後の現実の厳しさで登場人物を翻弄するのは、懲りない大人たちへ戒め、引いては自分の人生への自虐なのだろうか。前作「ミッドナイト・イン・パリ」のようなファンタジー要素がないだけに、キャラクターたちは現実の壁に直面すれば切実なムードに包まれる。特に、珍しく情けない老人を演じたアンソニー・ホプキンスが、若いコールガールに翻弄されたあげく妻に複縁を頼んで断られるエピソードや、一発屋の作家ロイが出来ごころで盗んだ他人の原稿で大絶賛を浴びた後の顛末は、アレン流のギリシャ悲劇のようだ。年甲斐もなく、恋に右往左往する、彼らのバイタリティーに感心しつつも、野心、成功、盗作、密通など、すべては、アレンに言わせれば、広大な宇宙の営みの塵に過ぎない。どうやらウディ・アレン御大、悟りの境地に達しているようだ。
【55点】
(原題「YOU WILL MEET A TALL DARK STRANGER」)
(米・スペイン/ウディ・アレン監督/アントニオ・バンデラス、ジョシュ・ブローリン、アンソニー・ホプキンス、他)
(シニカル度:★★★★☆)
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映画レビュー「ミッドナイト・イン・パリ」

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◆プチレビュー◆
パリを舞台にした幻想的なファンタジー「ミッドナイト・イン・パリ」。ユーモアと皮肉のブレンドが絶妙。 【80点】

 ハリウッドの売れっ子脚本家ギルは、婚約者イネズと共に芸術の都パリにやってくる。作家の夢を捨てきれないギルは、深夜の散歩中に、1920年代の黄金期のパリにタイムスリップ。憧れの作家ヘミングウェイや画家のピカソらと出会う…。

 才人ウディ・アレンがNYの次に愛する都と公言するパリを舞台に、奇想天外にしてロマンティックなファンタジー・コメディーを創り出した。文化・芸術が花開いたゴールデン・エイジのパリで出会うのは、ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ピカソ、ダリ、ブニュエルなど。百花繚乱の天才たちとのおしゃれでアナーキーな会話には、ユーモアと遊び心が満載だ。とりとめのないおしゃべり、そぞろ歩き、自虐的な自己分析といったアレンお得意のエレメントを散りばめて、ウソとマコトが楽しげにシャッフルされる。

 主人公ギルは、コンプレックスを抱えたインテリで、例によってアレンの分身キャラだ。彼は憧れの1920年代で、アドリアナという女性に出会う。彼女はモディリアーニの元恋人で、ピカソの愛人でもあった魅惑的な美女。ギルはたちまち魅了されるが、単純なロマンスへと進まないところがアレンの知的なところだ。現代と1920年代のパリの間で揺れ動くギルは、時代と同様に、婚約者イネズ、芸術家のミューズのアドリアナ、のみの市で出会ったキュートな女性ガブリエルら、魅力的な女性たちの間で揺れ動く。

 俳優たちは今回もまた豪華キャストが集結してにぎやかだ。ギルを演じるオーエン・ウィルソンは、いい意味で軽さがあり、悩める主人公を好演している。何より、アドリアナを演じたマリオン・コティヤールが醸し出す雰囲気がいい。ファンタジックな世界でさまよいながら、幸せを探す主人公に“もうひとつの人生”の素晴らしさと、決して満たされない人生の皮肉の両方を教えるのが彼女なのだ。

 華やかなパリとその周辺の観光スポットをたっぷりと取り込みながら、それを物語に絶妙に生かす美技に酔いしれるのは、観客にとって至福だ。クセがあるコメディ・センスと大量のセリフ、皮肉と自虐が満載のアレンの作品は、見る人を選ぶ。だが本作は、アレン初心者にも優しい、ソフトな作りなので、安心して楽しんでほしい。夜な夜なタイムスリップを繰り返しながら、主人公が知るのは、過去がどんなに素晴らしくても、自分は現在を生きるしかないということ。“今”にこそ希望がある。なかなか筋が通ったメッセージが込められているのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ロマンティック度:★★★★★

□2011年 スペイン・アメリカ合作映画 □原題「MIDNIGHT IN PARIS」
□監督:ウディ・アレン
□出演:オーウェン・ウィルソン、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムス、他
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人生万歳!

人生万歳! [DVD]人生万歳! [DVD]
ウディ・アレンが久しぶりに古巣NYを舞台に描く、恋愛狂想曲「人生万歳!」。アレンの記念すべき監督40作目となる物語の主人公は、皮肉屋のインテリ老人という自身を投影したような男だ。かつてノーベル賞候補にもなった天才物理学者のボリスは、無意味な人生を嘆き自殺するが失敗。妻とも離婚し、職やリッチな暮らしを失うものの、下町のオンボロアパートでの気ままな一人暮らしを楽しんでいた。そんな彼のもとに、ひょんなことから南部の田舎から家出してきた若い娘メロディが転がり込む。親子ほど年の離れた二人はやがて結婚し、それなりに充実した暮らしを送っていたが、そこにメロディの母親や父親がやってきて、事態は混迷を極めていく…。

主人公が、スクリーンの向こうにいる観客に向かって語りかけるユニークな語り口から、すでにアレン節が炸裂だ。どこか名作「アニー・ホール」を思い出すが、それもそのはず、この作品の脚本はアレンが70年代半ばに書いたものだという。皮肉屋で理屈っぽいボリスは、女子供相手でも容赦なく悪態をつきまくる変人だ。だがそんな愛すべき変わり者の存在を積極的に許すのがNYである。雑多な大都会の空気が、はじめは南部の保守的な田舎者だったメロディや彼女の両親の本能を目覚めさせるのに時間はかからない。尺取虫並の脳しか持たないメロディは自分で考える知的な女性へ変化し、母親はアートに目覚め、父親は自分がゲイであることを認めるようになる。登場人物は目を見張るスピードで激変するが、感心するのはその時間描写の上手さだ。ボリスがメロディにベートーベンの「運命」を聴かせ、これを聴けば運命の扉が開くと説明した途端、ドアをノックする音が。メロディが扉を開けるとそこには新しい登場人物がいるという按配だ。こういうところにアレンの洒脱さがある。すったもんだの出来事を経て、それぞれに似合いの相手をみつけ幸せになっていくキャラクターたち。物語は「いろいろあっても、人生は収まるところに収まっていくもの。心配無用だよ」とウィンクしているようだ。ただしそれには、自分とは違う世界の人間とも知り合って交流してみる勇気が大切。活路はいつも思いがけないところから開けていくのだ。主演のラリー・デヴィッドはアメリカでは有名なコメディアン。アレンの世界に見事にマッチし、監督自身の姿を透かしてみせた。アレンらしいハッピーエンドは、いわば“それでも恋するニューヨーク”。悪人が登場しないこの物語には、性善説に基づいた幸福感が漂っている。
【70点】
(原題「WHATEVER WORKS」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、他)
(性善説:★★★★☆)


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映画レビュー「それでも恋するバルセロナ」

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◆プチレビュー◆
人生は貪欲に楽しむべし。バルセロナの街の魅力を堪能できるアレン流のラブ・コメディーだ。 【65点】

 夏のバカンスでバルセロナを訪れた親友同士のヴィッキーとクリスティーナは、セクシーな画家フアン・アントニオと知り合う。積極的なクリスティーナと慎重派のヴィッキーは共に彼に惹かれていくが…。

 いきなりサッカーの話で恐縮だが、08−09シーズンの欧州チャンピオンズ・リーグは、FCバルセロナが制した。勝利至上主義のサッカー界で、このチームが頂点に立ったのは、誰もが魅惑的なフットボールを渇望した帰結ではなかろうか。バルサのファンはたとえ勝ってもつまらない試合は許さない。美しく楽しいサッカー。それがバルセロナの魂だ。前置きが長くなったが、1−0で勝つのがお行儀のよい恋愛だとすると、アレンが描くこの艶笑話は、4−4で引き分けたが、観客も選手も最高に楽しんだ試合によく似ている。

 さて本題の映画だが、舞台は官能の香り漂う夏のバルセロナ。異邦人には、情熱的で少し危険な街だ。そんな場所で繰り広げられるのは、男一人に女二人の三角関係、いや、四角関係。いやいや、正確に言えば3.5角関係の大騒ぎである。男優冥利につきる役を演じるのは、ハビエル・バルデムだ。このデカくて濃い顔のモテ男を奪いあうのはいったいどんな女性たちだろう。

 婚約中のヴィッキーは堅実型。彼女を基準に物語を眺めると、恋愛観の振り幅がよく分かる。出会ったばかりのフアン・アントニオの「旅行に行こう。そして3人でワインを飲んでセックスしよう」の言葉に憤慨しながらも心が揺れる。平穏な人生こそ望みだが、ちょっぴり“罪深さ”に憧れるその気持ち、多くの女性が頷くはずだ。一方、クリスティーナは前述のフアン・アントニオの提案に大喜び。奔放より尻軽という言葉が思い浮かぶが、なぜだか憎めない。親友同士の危険な三角関係になりかけるが、自由なクリスティーナは彼とさっさと同棲してしまい、一応の決着を見たかに思えた。だがそこに、もう一人の女が登場し、別の三角形が出現する。話が俄然面白くなるのはここからだ。

 その女とはフアン・アントニオの元妻で、激情型の天才画家マリア・エレーナだ。美しくエロティックで、激しくて優しい。まるで竜巻のような彼女の参戦で、修羅場になるかと思いきや、なぜだか落ち着いてしまうから、まったく恋とは異なものだ。3人だとうまくいく。別れた夫婦が愛し合う。女同士でも惹かれあう。いったいこの恋、どうなるの?!それは見てのお楽しみだ。ペネロペ・クルスが、スペイン語でまくしたて、気性が荒い美女をコケティッシュに演じて抜群に魅力的。世界中の女優がアレン作品に出たがるのは、この自意識過剰でインテリの監督が、女優を輝かせる術を熟知しているからに違いない。

 物事の本質を見極めるためには、奇数でなくては。多数決だって偶数ではラチが明かない。このセオリーを恋愛に応用してしまうから洒脱だ。私生活でも不埒な恋愛騒動を演じてきたアレンには、愛する女を一人に決めるなんて所詮無理な相談だろう。だから彼の物語はいつも“地球は女で回ってる”。「僕らは生きている。ステキじゃないか」。「成就しない愛だけがロマンチック」。劇中には印象的なセリフが満載だ。NYからロンドン、そしてバルセロナへ。おしゃべりしながら歩きたくなる美しい街がある限り、アレン節は健在である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)名セリフ度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「Vicky Cristina Barcelona」
□監督:ウディ・アレン
□出演:スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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