映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

エイドリアン・ブロディ

スプライス

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ホラー風味のモンスターパニックと思わせておいて、実は人間のエゴと狂気を描く心理サスペンス。DVDスルーになっても不思議はないキワモノ映画なのに、確信犯的に演技派俳優を使うミス・マッチが興味深い。科学者のカップルのクライヴとエルサは、ある禁断の実験に身を投じてしまう。最初は難病治療のため、次第に学者としての好奇心と名誉欲も加わったその実験とは、人と動物のDNAを配合して新生命体を創造することだった。実験は成功し、2人は新種の生命体にドレンという名を付けて秘密裏に育てていく。ドレンは急速に成長するが、2人の予想を超える変貌を遂げモンスターと化してしまう…。

人間が新しい種を生みだすのは、神への冒涜。そこには法律や倫理もからむのだが、製薬会社の意図は利益を上げることだし、科学者は実験の成果への好奇心から歯止めが効かなくなる。誕生した新生命体のルックスはかなり強烈なインパクトで、うっすらと嫌悪感を感じる、いわゆる「キモかわいい」系だ。これは製作総指揮に名を連ねているギレルモ・デル・トロの好みが反映されているに違いない。身体はモンスターでも顔だけはだんだんと人間っぽくなる様子や、知識や嗜好を学んでいることから、やがてくる惨劇は想像できる。だが人間とモンスターの両方の顔を持つドレンとクライヴ、さらにエルサとの関係は、グロテスクで異様なものだ。特にエルサの行動は狂気とも暴走ともとれるもので、最初は、実験対象として、やがて子供のような存在として、ついには一種のライバルとしてドレンと対峙していく。エルサがドレンに対して持つ愛情と憎悪が入り混じり、物語はますます禁断のドラマの様相を呈していくのだが、残念なのは、新生命体に執着するエルサの背景がはっきりしないことだ。どうやら幼い頃の母親との関係がトラウマになっているようだが、そのことをほのめかすセリフはあるものの、物語はエルサの過去には最後まで言及しない。これではラストの彼女の“決断”に対して、説得力が薄くなってしまう。ただ「失うものは何もない」とつぶやくエルサの中に明らかな狂気が見えた。監督のヴィンチェンゾ・ナタリは意欲作「CUBE キューブ」で名を挙げたカナダの鬼才だ。タイトルのスプライスとは結合の意味。彼独特の閉塞感が、作品全体に漂っている。
【50点】
(原題「SPLICE」)
(カナダ・仏・米/ヴィンチェンゾ・ナタリ監督/エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック、他)
(キモかわいい度:★★★★☆)

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エクスペリメント

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日本でもヒットしたドイツ映画の問題作「es [エス]」の元ネタの心理実験を題材にしたスリラー。既視感はあるものの、この恐ろしい実験を改めて目にすれば、いかにそれが人間のダークな深層に迫るものだったかを改めて思い知る。失業したばかりのトラヴィスは、日当1000ドルという高額な報酬にひかれて、ある心理実験に参加する。期間は14日間。24名が参加するその実験は、模擬刑務所内で、看守と囚人に分かれ、ルールに沿って生活するというものだった。トラヴィスは囚人役になるが、実験前は穏やかに見えたバリスが看守役として過激な行動に出たことで、次第に対立していく…。

実際に1971年にアメリカ・スタンフォード大学で行われた“スタンフォード大学監獄実験”は、わずか6日目で即刻中止。大学側が厳しい処罰を受けた衝撃的な事件。人間の本性を、あぶりだすのが目的だとしても、それはあまりに残酷な結果を生んだ。実験では、被験者は、囚人と看守という2つのグループに分かれる。一見対立する構図なのだが、実験は24時間カメラによって監視され、暴力行為やルール違反があった場合は即座に中止され、報酬は支払われなくなるというから、報酬が最優先ならば、24人全員が協力し、一致団結せねばならないはず。なのに囚人と看守という“役割”によって人格が豹変、抑圧されていた欲望や暴力性が否応なしに露になる。この実験は、時に人は、金より権力を望み、非常事態に優先されるのは理性よりも暴力なのだと暴露する。物語の流れは基本的に「es [エス]」と同じなので、簡単に予想できるのだが、フォレスト・ウィテカーが演じる、看守側のバリスが過激に豹変していく様があまりにすさまじいので、彼の狂気に目が釘付けになってしまうのだ。特に、頭をスキンヘッドにし、自らの姿に陶酔する場面は背筋が凍る。バリスは、生まれて初めて手にした権力によって暴走するキャラクター。主人公トラヴィスと共に、このバリスだけが実験に参加する前の背景が語られることから、2人が善と悪、正気と狂気という相反する要素を体現していることが分かる。だが、己の欲望のためにしろ、正義を守るためにしろ、2人とも暴力行為に走るのは同じ。そこが最も恐ろしいとところだ。すべてを支配するかのごとく存在する赤いランプは、脅威であると同時に、自分に都合のいいように正義をねじまげる人間のエゴの象徴にも見える。
【55点】
(原題「The Experiment」)
(アメリカ/ポール・シェアリング監督/エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、キャム・ギガンデット、他)
(新鮮味度:★★☆☆☆)

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プレデターズ

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最強の地球外生命体プレデターとの戦いは完全アウェイでの死闘。ゲーム的展開ながら独創的なストーリーは映画として見事に成立している。不気味なジャングルに人間の男女8人が放り出される。そこは未知の惑星で、恐るべき地球外生命体・プレデターの人間狩りの場だった。傭兵やスナイパー、特殊部隊やヤクザなど、戦闘のプロたちは、自分たちが狩りの獲物としてこの星に連れてこられたことを知る…。

アーノルド・シュワルツェネッガー主演の1987年の「プレデター」は異色のサバイバル・アクションとして強烈なインパクトを持つ作品だった。本作は、ジャングルでの壮絶なバトルと、強敵プレデターの武器である、カモフラージュやカギ爪、プラズマ砲などの特徴をオリジナルから継承しつつ、プレデターの本拠地での人間狩りという新しいサバイバル劇として再起動している。いわばホーム・アンド・アウェイの闘いで、単なるリメイクや続編とはまったく違う世界観が面白い。しかもオリジナルのプレデターは南米のジャングルで“一人暮らし”だったが、今回、タイトルが複数形。敵は過激に進化・増殖しているというわけだ。

物語は、いきなり空から放り出される兵士たちという冒頭のシークエンスが素晴らしいが、クドクドとした説明などなく一気にサバイバルに突入する展開が小気味良い。何しろプレデターたちの目的は、地球侵略とか人類征服などという面倒なことではなく、とにかく最強の敵と戦う快楽を貪ること。人類が最強かどうかはさておき、獲物である人間たちが抵抗すればするほど燃えてくる。一方、選ばれた人間たちもまた究極の殺し屋だけに、生き残るために足手まといになる者は平気で見殺しにする非情さも。終盤には人間側にちょっとした驚きも用意されている。見た目は醜悪で性格は残忍だが、剣豪の侍のような孤高の精神を持つ最凶の異星人プレデター。彼らと人間とのバトルは、闘争本能と生存本能という勝負なのだ。これには一種の様式美さえ漂っている。本作で製作を務める鬼才ロバート・ロドリゲスの、プレデターへの偏愛が生んだ魅力的なオリジナル・ストーリーで、意外なほど楽しめるアクション劇だ。
【70点】
(原題「PREDATORS」)
(アメリカ/ニムロッド・アーントル監督/エイドリアン・ブロディ、トファー・グレイス、ローレンス・フィッシュバーン、他)
(サバイバル度:★★★★★)


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プレデターズ@ぴあ映画生活

キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語

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音楽は時に個人の人生を変えるが、国や時代までも変えてみせたのがブルースではあるまいか。本作は、1950年代を中心に、シカゴの名門ブルース・レーベル「チェス・レコード」の創設とそこで輝いたミュージシャンの隆盛を描く物語だ。ポーランド系移民のレナード・チェスは、ギタリストのマディ・ウォーターズとハーモニカ奏者のリトル・ウォルターの二人の天才を雇う。黒人差別が激しい時代にチェスは人種を超えて彼らの音楽を愛し、導いた。女性シンガー、エタ・ジェイムズも加わり大成功をおさめるが、次第に彼らは酒やドラッグに溺れていく。

人種差別が音楽史に与えた影響は、決して小さくない。時には白人に曲を“盗まれる”ことも。だが、怒りや悲しみを音楽にぶつけ、魂を搾り出すように歌い上げる名曲の数々を聴くと、良くも悪くもブルースは差別によって飛躍した面があると気付く。それらはやがてロックを生み現代のヒップホップまでつながっていく音の潮流だ。ただ、華やかな成功と裏腹に、不幸や不安を薬で紛らわせるアーティストの刹那的な生き方の描写はステレオタイプ。人種にこだわらないレナードの価値観や背景も、ほとんど分からない。しかし、そんな不満をシビレるほど素晴らしい音楽がすべて吹き飛ばす。特にエタ・ジェイムズを演じるビヨンセの熱唱は心を揺さぶるもので、名曲「At Last」を聴くだけでもこの映画を見る価値があるというものだ。個人的にお勧めは、劇中で涙をためて歌う「All I Could Do Was Cry」。何度聴いても泣けてくる。
【70点】
(原題「Cadillac Records」)
(アメリカ/ダーネル・マーティン監督/エイドリアン・ブロディ、ジェフリー・ライト、ビヨンセ・ノウルズ、他)
(ブルース堪能度:★★★★★)

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ハリウッドランド

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実話に基づく未解決事件を、羅生門スタイルで描く語り口が巧みなサスペンスの佳作。TV版スーパーマンの俳優ジョージ・リーブスの謎の死は米映画界では有名だ。大味な印象のベン・アフレックが上手さを見せる。スキャンダルには事欠かない映画界。まさに仁義なきハリウッドだ。
【85点】
(原題「HOLLYWOODLAND」)
(アメリカ/アレン・コールター監督/エイドリアン・ブロディ、ベン・アフレック、ダイアン・レイン、 他)
(映画界覗き見度:★★★★☆)

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戦場のピアニスト

戦場のピアニスト [DVD]戦場のピアニスト [DVD]
◆プチレビュー◆
放置されたピアノの調律は狂っているだろうし、食うや食わずの暮しでは指もなめらかに動かないはず…と、頭では判っていても、あまりに素晴らしい演奏シーンにただただ涙だ。想像上の鍵盤で演奏するシーンが泣ける。

第二次世界大戦下のポーランド。ピアニストのウワディスワフ・シュピルマンとその家族は、ユダヤ人居住区に強制移住させられる。隣人や友人が虐殺され、家族が収容所に送られる中、シュピルマンは奇跡的に救われるが、死と隣り合わせの逃亡生活を続ける彼にも危険が迫る…。

ユダヤ系のポランスキー監督が、ついに自身の過去と向き合い、原体験と重ね合わせたリアリズムで描く本作は、押えた演出ながら説得力と執念がにじみ出て、非常に完成度が高い。出演俳優の演技力と、CGとセットを駆使した光景、深遠な人間描写など、見応えも充分だ。巨匠ポランスキーが満を持して放つ、渾身の一作と呼んでいいだろう。

シュピルマンが生き延びる姿は、捕らわれるも地獄だが、生き残るも地獄と思わせるほどで、ただ一人で身を潜め、逃げ続ける彼の恐怖と孤独が痛いほど伝わってくる。シュピルマンにヒーロー的要素は皆無で、家族に許可証を調達したり、抵抗活動を間接的に助けたりはするが、彼自身は痛々しいほど無力だ。力仕事もこなせず、身を隠すにも不器用すぎる彼には、ピアノを弾く才能以外、何もない。まさに、奇跡的にホロコーストの狂気をかいくぐる。

前半に描かれるナチスの残虐な行為に派手な演出はなく、無表情なのは銃を頭に突きつけるナチスも殺されるユダヤ人も同じだ。あまりにも日常化した死がそこにある。一面廃墟と化したワルシャワの光景は、巨大なセットを使った上にCGを駆使したもので、奥行きといい色彩といい、出色の出来栄えだ。この無慈悲な映像を、美しいと表現するのは不謹慎だろうか。

戦況が刻々と変わる中、シュピルマンは遂に一人のドイツ人将校に見つかってしまうが、結果的にピアニストであることが幸いする。廃墟に響くショパンの旋律。妙なるピアノの調べは、シュピルマンの命の周辺で流された無数の血を思い起こさせて、言いようのない感動を生む。繊細な主人公を演じるA.ブロディの熱演と共に、ドイツ人将校役のT.クレッチマンも出番は少ないが好演だ。

人間は本来、善と悪を併せ持つ存在。被害者の悲劇や加害者の蛮行だけでなく、物語の視点が公平なのが目を引く。善悪の単純な区分けの民族主義など存在しない。あくどいユダヤ人や、音楽を愛するドイツ人を登場させるのは、ゲットーの非人間性を、実体験として知っているからこそ生まれる深い人間観だろうか。ラスト4分間に及ぶ演奏が胸を打つ、カンヌ映画祭パルム・ドールの名に相応しい傑作だ。

□2002年 ポーランド・フランス合作映画 原題「The Pianist」
□監督:ロマン・ポランスキー
□出演:エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、フランク・フィンレイ、他

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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