スプライス [DVD]
ホラー風味のモンスターパニックと思わせておいて、実は人間のエゴと狂気を描く心理サスペンス。DVDスルーになっても不思議はないキワモノ映画なのに、確信犯的に演技派俳優を使うミス・マッチが興味深い。科学者のカップルのクライヴとエルサは、ある禁断の実験に身を投じてしまう。最初は難病治療のため、次第に学者としての好奇心と名誉欲も加わったその実験とは、人と動物のDNAを配合して新生命体を創造することだった。実験は成功し、2人は新種の生命体にドレンという名を付けて秘密裏に育てていく。ドレンは急速に成長するが、2人の予想を超える変貌を遂げモンスターと化してしまう…。
人間が新しい種を生みだすのは、神への冒涜。そこには法律や倫理もからむのだが、製薬会社の意図は利益を上げることだし、科学者は実験の成果への好奇心から歯止めが効かなくなる。誕生した新生命体のルックスはかなり強烈なインパクトで、うっすらと嫌悪感を感じる、いわゆる「キモかわいい」系だ。これは製作総指揮に名を連ねているギレルモ・デル・トロの好みが反映されているに違いない。身体はモンスターでも顔だけはだんだんと人間っぽくなる様子や、知識や嗜好を学んでいることから、やがてくる惨劇は想像できる。だが人間とモンスターの両方の顔を持つドレンとクライヴ、さらにエルサとの関係は、グロテスクで異様なものだ。特にエルサの行動は狂気とも暴走ともとれるもので、最初は、実験対象として、やがて子供のような存在として、ついには一種のライバルとしてドレンと対峙していく。エルサがドレンに対して持つ愛情と憎悪が入り混じり、物語はますます禁断のドラマの様相を呈していくのだが、残念なのは、新生命体に執着するエルサの背景がはっきりしないことだ。どうやら幼い頃の母親との関係がトラウマになっているようだが、そのことをほのめかすセリフはあるものの、物語はエルサの過去には最後まで言及しない。これではラストの彼女の“決断”に対して、説得力が薄くなってしまう。ただ「失うものは何もない」とつぶやくエルサの中に明らかな狂気が見えた。監督のヴィンチェンゾ・ナタリは意欲作「CUBE キューブ」で名を挙げたカナダの鬼才だ。タイトルのスプライスとは結合の意味。彼独特の閉塞感が、作品全体に漂っている。
【50点】
(原題「SPLICE」)
(カナダ・仏・米/ヴィンチェンゾ・ナタリ監督/エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック、他)
(キモかわいい度:★★★★☆)
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