映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

エマ・トンプソン

ヒトラーへの285枚の葉書



1940年6月、戦勝ムードに沸くベルリンで慎ましく暮らす労働者階級の夫婦、オットーとアンナのもとに、最愛の一人息子ハンスの戦死の報が届く。夫婦は悲しみのどん底に沈むが、ある日、オットーはペンを取り「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」とヒトラーへの怒りのメッセージをポストカードに記し、それをそっと街中に置いた。街のあちこちにポストカードを置くささやかな活動は、二人の魂を少しずつ解放させていくが、やがて、ゲシュタポの捜査が二人に迫る…。

ペンと葉書でナチス政権に抗った平凡な夫婦の実話を描く「ヒトラーへの285枚の葉書」。原作はドイツ人作家ハンス・ファラダの小説「ベルリンに一人死す」だ。最愛の一人息子の戦死をきっかけに反ナチの運動を始めた夫婦の運動は、あまりにもささやかなものだ。だがオットーは、筆跡を変え、指紋も残らないようにするなど、かなり周到で、抗議文を書いて街に置く、地味だが危険な行為を長期に渡って続けていく。この間、夫妻が住む団地内での密告騒ぎや、夫妻を追い詰める捜査官の警部の心の揺れ、ナチス高官の理不尽な暴挙などが描かれる。やがて、思いがけない出来事から事態が急変していく。一種のサスペンスともいえる展開だが、物語の語り口はあくまでも淡々としたものだ。

監督のヴァンサン・ペレーズは、「インドシナ」や「王妃マルゴ」などに出演した俳優としても有名だ。スイス出身で、母はドイツ人。叔父がガス室で亡くなるなど過酷な体験をした親戚を多く持つという。本作は監督3作目だが、エマ・トンプソン、ブレンダン・グリーソンといった名優の渋い演技で、小市民の精一杯の正義を、静かに描き出した。ポストカードにヒトラーへの抗議文を書いて街に置くというのは、ネットやSNSを使いこなす現代から見れば、あまりに微弱だし、夫婦のそれは、志の高い抵抗運動というよりも、悲しみや不満の発露に近い。ダニエル・ブリュール演じる捜査官の最後の行動にも、少々疑問が残る。それでも、平凡な労働者階級の夫婦が、見て見ぬふりや、権力に迎合することを拒み、人間の尊厳を守ろうとする姿には心を打たれた。日本での原爆体験同様、ナチスに関わる歴史を知る人々の高齢化が進む今、一般市民の勇気ある行動を語り継ぐ意味でも、意義深い作品だ。
【65点】
(原題「JEDER STIRBT FUR SICH ALLEIN/ALONE IN BERLIN」)
(独・仏・英/ヴァンサン・ペレーズ監督/エマ・トンプソン、ブレンダン・グリーソン、ダニエル・ブリュール、他)
(勇気度:★★★★☆)
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ウォルト・ディズニーの約束

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傑作ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」誕生秘話を描くヒューマン・ドラマ「ウォルト・ディズニーの約束」。映画製作の裏話としても十分に楽しめる。

1961年、ウォルト・ディズニーは魔法を使うナニーが主人公の児童文学「メリー・ポピンズ」を映画化しようとするが、原作者のパメラ・リンドン・トラヴァースはなかなか承諾しない。ついにウォルトは彼女をイギリスからハリウッドまで招き、映画化の詳細を相談しながら、契約書にサインしてもらおうと心を砕く。だが頑固で気難しい性格のトラヴァースは、ウォルトらスタッフが出す脚本のアイディアを片っ端から拒否し、周囲を困惑させる。だが彼女が頑なに原作を守ろうとする背景には、幼い頃に亡くした父親への思いがあった…。

1964年制作の「メリー・ポピンズ」は主演のジュリー・アンドリュースがオスカーを受賞した傑作ミュージカルで、その舞台裏の初期段階を描く本作は、バックステージものと言っていいだろう。物語は、脚本に文句を付け続けるトラヴァース、彼女に振り回されるウォルトやスタッフたちというという構図で進むが、しばしばトラヴァースの幼い頃の回想シーンになり、父親の記憶がトラヴァースと彼女の作品に大きな影響を与えているのが分かる。夢にあふれた楽しいディズニー映画は、その裏側では大変な時間と労力を費やして作られていて、のどかな60年代とはいえ、映画製作の現場は修羅場だ。だが、ウォルト・ディズニー自身のアイデアや絵コンテ、数々のディズニー映画を彩ってきた名作曲家・シャーマン兄弟による音楽など、映画ファン、ディズニーファンならお宝ともいえるエピソードが満載で、ワクワクする。一方で、オーストラリアで生まれ育ったトラヴァースの記憶は苦く、とりわけ大好きな父親が心身ともに追いつめられていく様は痛々しい。メリー・ポピンズが空からやってきたのは、子供たちの世話をするためではなく、厳格な父親で銀行家のバンクス氏を救うためと気付いた時、さらにP・L・トラヴァースの本名を知ったとき、私たち観客は物語と作者を深く理解し、一筋の光を見い出すことになる。トム・ハンクスとエマ・トンプソンという米英二大演技派がガチンコ勝負で演技合戦をするのが見所だが、父親を演じるコリン・ファレル、運転手役のポール・ジアマッティら脇を固める俳優も味がある。久しぶりにミュージカル映画「メリー・ポピンズ」が見たくなった。
【65点】
(原題「SAVING MR. BANKS」)
(アメリカ/ジョン・リー・ハンコック監督/トム・ハンクス、エマ・トンプソン、コリン・ファレル、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ

ナニーマクフィーと空飛ぶ子ブタ [DVD]ナニーマクフィーと空飛ぶ子ブタ [DVD]
団子っ鼻にゲジゲジ眉毛の不思議な魔法使い、ナニー・マクフィーが活躍するシリーズ第2弾。ほとんど意味がない子ブタのシンクロが最高に楽しい。

イギリスの田園地帯。ここで暮らすグリーン家では、戦争に行ったパパの代わりにママが農場を守り、ノーマン、メグシー、ヴィンセントの3人の子供たちもママを手伝いながらパパの帰りを待っている。そんなグリーン家に、戦火を逃れてロンドンから従兄のシリルとセリアがやってきた。田舎育ちと都会っ子は会った途端にケンカばかり。そこに登場したのがナニー・マクフィーだ。この不思議な乳母は、子供たちに5つの重要なことを教えるためにやってきたのだが…。

原作はクリスティアナ・ブランドによる英国児童文学「マチルダばあや」だが、今回のお話はほとんどがエマ・トンプソンのオリジナル脚本。戦争は、子供たちの心に大きな悲しみを与えているが、それは都会からきた従兄も、農場に住む3兄妹も同じだ。むしろ、親の愛情が希薄な裕福な都会っ子のシリルたちの方が事態は深刻かもしれない。ナニーの教えとは、「ケンカしない」「礼儀正しく、分かち合う」「互いに助け合う」「勇敢であれ」、そして「信じること」。最後の教えは子供へのしつけだけでなく、大人に対しても効いてくる。子供たちが仲良くなり助け合う背景として、農場売却の危機あり、敵の爆弾処理あり、とスリル満点。小さな役に、マギー・スミスやレイフ・ファインズなど、英国の名優たちを配した贅沢な作りで、最後の最後にサプライズ・ゲストもある。子ブタが池に飛び込みシンクロナイズド・スイミング、続いて空を飛び華麗に舞うシーンは、実に楽しい。ほとんど必要ないようなこんな場面にたっぷりと時間と予算をかけるのだから、トンプソンのこのシリーズへの思い入れが伝わってくる。「愛されるものはすべて美しい」とはノルウェーの諺だそう。最初、ナニーは醜い容姿をしているが、子供たちが彼女を慕うたびに美しくなっていく。映画のテーマと視覚効果がぴったりとフィットしていた。
【60点】
(原題「Nanny McPhee and the Big Bang/Nanny McPhee Returns」)
(イギリス/スザンナ・ホワイト監督/エマ・トンプソン、マギー・ギレンホール、リス・アイファンズ、他)
(パワーアップ度:★★★★★)
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新しい人生のはじめかた

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大人の恋は、分別があるだけに最初の一歩に勇気が必要。中年男女の諦観や疲労といった心情を名優2人がしっとりと演じている。NY在住のCM作曲家ハーヴェイは娘の結婚式に出席するためロンドンにやってくる。離婚後疎遠だった娘や別れた妻と上手くいかず、仕事のことも気になるハーヴェイは帰国しようとするが、飛行機に乗り遅れてしまう。一方、空港で働くケイトは、婚期を逃して恋に臆病になっている40代の女性。そんな2人が偶然に出会ったことから、ロンドンの街で、1日を一緒に過ごすことになるが…。

ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソン。米英を代表する演技派の本格的な共演は、人生の折り返し地点を過ぎた中高年男女の少し臆病な恋物語だ。どこかやんちゃでわがままなところが残るハーヴェイにはきままな人生もまた良しとの思いがあるが、それでも寂しさは隠しきれない。やるせないのはケイトのキャラクター。大勢の輪に入れず楽しい雰囲気にもなじめずに孤立してしまうのは、新しい出会いによって傷つくのが怖いからだ。恋や夢を諦めてしまうのは、その方が楽だからだと言う彼女は、本当はチャレンジが怖いだけ。ちょっとモッサリとしたエマ・トンプソンがそんな中年女性の屈折を繊細に演じていて上手い。出会いは最悪だし、すれ違いもあった。それでも勇気を出して新しい未来を信じてみたら希望が見えた。こんな渋い恋物語を2大オスカー俳優を使って演出してみせたジョエル・ホプキンスという監督は、これがまだ監督2作目だというから、たいしたものだ。決して華やかな作品ではないが人生の豊かさを感じさせる小品。ロケ地であるロンドンの街のプチ探訪気分を味わえるのも楽しい。
【60点】
(原題「LAST CHANCE HARVEY」)
(イギリス/ジョエル・ホプキンス監督/ダスティン・ホフマン、エマ・トンプソン、アイリーン・アトキンス、他)
(中高年応援度:★★★☆☆)

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主人公は僕だった

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ただのコメディかと思ったらかなりの秀作で驚き。自分の死にどう向き合うかは普遍的な主題だ。ある日、自分の行動を詳細に説明する声が聞こえた男が主人公。なんと彼は小説の中の主人公だったという発想だけで、勝ったも同然だ。フェレルが苦手な人もぜひ。
【90点】
(原題「STRANGER THAN FICTION」)
(アメリカ/マーク・フォースター監督/ウィル・フェレル、エマ・トンプソン、ダスティン・ホフマン、他)
(おすすめ度:★★★★★)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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