映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

エレン・ペイジ

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 [DVD]
ニュージャージー州オーシャン郡。20年以上仕事一筋に生きるベテランの女性刑事ローレルは、ステイシーという若い女性と出会う。年齢も環境も違う二人は惹かれあい、郊外の家を購入して一緒に暮らすようになる。だが、幸せな生活は長くは続かず、ローレルにガンが見つかり、余命半年と宣告される。ローレルは自分が死んだ後も、愛するステイシーが思い出がつまったこの家で暮らせるように、遺族年金を残そうとするが、同性のパートナーには法的にそれが認められなかった。病気が進行する中、ローレルは、自分たちの権利を訴えて法制度改正を求める活動をはじめるが…。

同性のパートナーに遺族年金を残すため法制度や世間の偏見に挑んだ女性の実話「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」。本作はドラマ仕立てだが、ベースになっているのは、第80回アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した「フリーヘルド」だ。女性刑事ローレルは、ずっと同性愛者であることを隠してきた。オーシャン郡が保守的な土地柄で、これまた保守的な男性社会である警察組織で、生き残っていくために、やむを得なかった。彼女に好意を持つ相棒のデーンにも打ち明けていない。そのことで自分への信頼を疑うデーンに、ローレルが言う「あなたは、白人で、男性で、ストレート。私とはスタート地点が違う」という言葉が、彼女が置かれた立場の弱さを物語る。女性というだけですでにハンデなのに、さらにLGBT(性的少数者)では、どれほど勤勉で優秀でも、仕事でまっとうな評価は得られないのだ。それでもローレルは戦う。ガンで憔悴しきった彼女の訴えは、次第に影響力を増すが、彼女自身は単に遺族年金を恋人に残すという平等を求めただけ。だが周囲の人々、ゲイの権利を主張する活動家たちによって、社会的ムーブメントになっていく。この時のローレルとステイシーのとまどいがリアルだ。もしもローレルが健康なら、彼女たちはできるだけ静かな人生を送ることが望みだったのかもしれない。LGBTの権利は、先人たちのひとつひとつの努力と勇気と犠牲によって積み重ねられてきたのだ。当たり前のことを当たり前に要求することの難しさが、ローレルとステイシーのカップルの姿から痛いほど伝わってくる。演技派のジュリアン・ムーアは安定の名演、若手のエレン・ペイジはボーイッシュなステイシーを繊細な演技で好演している。終盤、病が悪化し声が出なくなったローレルに代わり、ステイシーが法廷でスピーチするシーンが感動的である。本作はLGBTの映画であると同時にフェミニズムの映画でもあるが、不当に奪われた権利を守るために戦った勇気ある人々の実話として、男女を問わず見てほしい。
【65点】
(原題「FREEHELD」)
(アメリカ/ピーター・ソレット監督/ジュリアン・ムーア、エレン・ペイジ、マイケル・シャノン、他)
(勇気度:★★★★☆)
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映画レビュー「ローラーガールズ・ダイアリー」

ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]
◆プチレビュー◆
ワイルドなローラーゲームの躍動感とエンタテインメント性にビックリ!エレン・ペイジが好演だ。 【70点】

 テキサスの田舎町に住む17歳のブリスは、母親のために美人コンテストに出場しては落胆する自分自身に飽き飽きしていた。そんなある日、年齢も境遇もさまざまな女性たちが行なう“ローラーゲーム”に心を奪われる…。

 ドリュー・バリモアが「E.T.」で天才子役として名を馳せてから、どれほどの年月が経っただろう。その後の彼女はスターのお決まりで、ドラッグやアルコールなど、あらゆる悪癖を経験したが、10代にしてしっかりと蘇った。更正する強さを持ったドリューは、単に名門芸能一家に生まれたという運だけでなく、賢さとしたたかさを持った現代女性だ。既に製作は数多く手掛けている彼女が、念願の初監督に挑んだのが本作。選んだ題材が彼女らしく、青春スポ根エンタメと女の子の心の成長物語を組み合わせた明るい物語は、好感度が高い。

 ローラーゲームとは、ローラースケートとアゴ紐付きのヘルメットを付けた選手たちが集団になって狭いトラックを猛スピードで駆け抜けて得点を競う、アメリカ発祥のチームスポーツ。ワイルドなプレーや、セクシーな衣装、個性的なリンク名など、興行としての色合いが濃い。平凡な少女ブリスは、母親が女の幸せと信じて疑わない美人コンテスト優勝ではなく、流血も辞さず激しくぶつかり合うローラーゲームの中に自分の居場所を見い出して行く。

 トラックを一周回るたびに成長していくブリスは、生傷の絶えない日々の中で、年上のチームメートと友情を育み、ライバルチーム打倒に闘志を燃やすガッツ溢れる女の子へと変わっていく。バンドマンの青年との恋にもしっかりと自己主張するブリスの変化が微笑ましいが、引っ込み思案だった彼女に情熱をもたらすのはあくまでもローラーゲームだ。だが、家族に内緒にしていたチーム参加と、年齢を偽ったウソがばれてしまい、事態は思わぬ方向へ進んでいく。

 それにしてもエレン・ペイジはなんて魅力的な女優だろう。彼女は今まで風変わりで強気な女の子を演じてきたが、内向的で繊細な、いわば真逆な役を演じた本作では、丁寧な役作りが光った。母親の夢を壊すまいと必死なブリスは、たくましく変化しながらも、周囲を傷つけたくないと願う優しい女の子。そんなナイーヴなヒロインを“ジュノ”が演じているから面白い。ペイジの素直な演技が、ブリスのママを演じるオスカー女優マーシャ・ゲイ・ハーデンの名演と絶妙に絡み合う。自らの挫折感からブリスに幸福の価値観を押し付ける母親が、最後に娘にみせる愛情にはグッとくる。こんな母娘だから、ブリスが母のことを書いたスピーチ原稿に、本物の愛情を感じて感動してしまうのだ。

 70年代に人気だったローラーゲームは実は今も盛んで、この競技の中心地ロサンゼルスでは、女の子に特に大人気だそう。世界中に400以上のアマチュア・ローラーダービーリーグが存在することも始めて知った。過激なパフォーマンスで個性を主張する彼女たちは、誰よりもタフで美しい。この物語は、予想さえしなかった場所で輝いていくヒロインを通して描く、元気印の女性賛歌だ。転んで出来た青アザが、誇らしげな勲章に見える。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)自分探し度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「WHIP IT」
□監督:ドリュー・バリモア
□出演:エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジュリエット・ルイス、他

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映画レビュー「JUNO/ジュノ」

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◆プチレビュー◆
10代の少女の望まない妊娠を、微塵の暗さもなく描く快作。里親制度も含め、日本との違いが面白い。 【85点】

 興味本位のセックスで妊娠してしまった16歳のジュノ。中絶は思いとどまり、親友の力を借りて、養子を希望しているヴァネッサとマークという夫婦を見つけて里親の話をつける。それからジュノと周囲の人々の珍騒動が始まった…。

 望まない妊娠を描く映画は、シリアスになりがちだ。だが本作には、重苦しい空気はまったくない。風変わりな高校生ジュノのあっけらかんとした態度にとまどうやら笑うやら。でもそんな彼女の内面にも実は色々な葛藤があって…。この内側の悩みと外側の軽味の絶妙なバランスが、リズミカルで心地よい。

 何しろ、主人公ジュノが素晴らしくユニークで魅力的なキャラなのである。みんなと一緒が安心の没個性文化の日本では、なかなかこんな女の子には出会えない。妊娠という一大事に対するジュノのビジョンは「これは自分の責任」と腹をくくること。暴言すれすれの発言だって、彼女流のクールな決意表明なのだ。やせ我慢を含むにしても、相手に責任など求めず、泣き言も言わない。実に根性が座っている。娘の妊娠を知った両親が、彼女や相手を責めず、養子に出すという娘の決断を尊重する姿も、日本と違って大いに感心させられる。親と子の関係は、この映画を理解する重要アイテムだ。

 この物語には、いくつかの形の親が登場する。実の父と義理の母。二人は共に娘を愛している。さらにジュノが新聞広告で見つけた“親として理想的な”夫婦。里親制度の普及と利用法は、現実的でいかにもアメリカ風だ。弁護士立会いで書類を作り、テキパキと物事を決定する。とはいえ、すべてがドライに処理されるわけではない。理想的と思った夫婦の意外な姿が見えてくるあたりが、この作品の非凡なところだ。ホラー映画やパンクロックの話で盛り上がるマークとジュノの微妙な関係を見せつつ、子供を切望するヴァネッサの切なさを語ることも忘れない。ヴァネッサがジュノのおなかを触る場面は、女同士の母性のつながりを感じさせるものだ。それを伏線にジュノの勇気ある決断へとつなげていく巧みな展開にうなる。予定外のことが起こった時、何を最善とするか。観客も主人公と一緒に考えることになろう。

 簡単に先を読ませないヒネリの効いたストーリーを生み出したのは、新鋭脚本家ディアブロ・コーディ。元ストリッパーという超変わり種だ。主演のエレン・ペイジとジェイソン・ライトマン監督と共に、三位一体で観客の心をつかむ。センスのいい音楽やポップなアニメなど、魅力は尽きないが、サラリと描くのは、人が大人になる時に味わう痛みと優しさだ。見かけによらず懐が深い。

 最終的にはジュノの隣には誰がいるのだろうか。確かなのは、周囲の愛情と、やっと見えてきた本当の自分の気持ちだ。父親が言う「今度は自分のためにここ(産院)に来るんだよ」という言葉がグッとくる。もはや血縁だけでは家族を構成できなくなった米国社会。その片隅で奮闘する愛すべき女の子ジュノ。この物語は、そんな少女の心のアドベンチャーなのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)音楽センス度:★★★★★

□2007年 アメリカ映画 原題「JUNO」
□監督:ジェイソン・ライトマン
□出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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