映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

オクタヴィア・スペンサー

シェイプ・オブ・ウォーター

シェイプ・オブ・ウォーター(オリジナル・サウンドトラック)
1962年、ソビエトとの冷戦時代のアメリカ。清掃員として政府の極秘研究所で働く口の不自由なイライザは、密かに運び込まれた不思議な生き物の姿を見て心を奪われる。孤独なイライザは、周囲の目を盗んで、アマゾンで神のように崇められていたという“彼”に会いに行き、手話や音楽、ダンスなどで彼とコミュニケーションをとる。やがて二人の心は通いあうが、威圧的な軍人ストリックランドは彼を虐待し実験の犠牲にしようとしていた。それを知ったイライザは、同僚のゼルダや隣人の画家ジャイルズらを巻き込み、彼を研究所から救出しようと試みる…。

不思議な生き物と孤独な女性との種族を超えたラブロマンス「シェイプ・オブ・ウォーター」。童話の人魚姫から、「シザー・ハンズ」「美女と野獣」に至るまで、私たちは種を超えたラブストーリーに常に魅了されてきた。本作もまたしかり。しかもこの作品はファンタジーや恋愛劇といったジャンルにはとうてい収まらない広がりと深みがある。「大アマゾンの半魚人」にオマージュを捧げたモンスター映画、冷戦下の政治サスペンス、さらにはマイノリティ讃歌のドラマなど、多面性を備え、時にミュージカルやバイオレンス、ユーモアをも織り込みながら、最終的には愛の寓話へと昇華していく。異形のものへの愛は「パンズ・ラビリンス」の頃と変わらない。本作はまさしくデロ・トロ映画というジャンルなのだ。

クリーチャーは言うまでもなく、口がきけないイライザ、黒人の同僚ゼルダ、同性愛者のジャイルズなど、登場人物のほとんどは社会からはみだしたアウトサイダーばかり。彼らが緻密かつ大胆な作戦で“正義”を行う後半は一級のサスペンスで、愛の逃避行の行く先は、予想をはるかに超えた幻想譚だった。せりふがない難役を熱演するサリー・ホーキンスと、残忍な軍人の狂気を体現したマイケル・シャノンの名演は見るものの心をつかんで離さないだろう。ロマンチックな音楽や、水をイメージした流麗な映像も秀逸で心に残る。種や美醜を超えて響いてくる妖艶なラブ・ファンタジーは、アメリカが最も不安におびえていた冷戦時代が背景なのに、驚くほど現代社会を射抜いている。天才ギレルモ・デル・トロの特別な芸術作品だ。
【95点】
(原題「THE SHAPE OF WATER」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/サリー・ホーキンス、オクタヴィア・スペンサー、リチャード・ジェンキンス、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)


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gifted/ギフテッド

Gifted [Blu-ray] [Import]
フロリダの海辺の町に住む独身のフランクは、幼くして母を亡くした7歳の姪メアリーと、片目の猫フレッドと一緒に、ささやかだが幸せに暮らしていた。だが、ある日、メアリーに天才的な数学の才能があることが明らかになる。フランクの母エブリンは、孫のメアリーに英才教育を施すためフランクから引き離そうとするが、フランクは頑なに、メアリーの特別扱いを拒む。二人の対立は決定的になり、ついに裁判へともつれ込むが、フランクには亡き姉から託された、ある秘密があった…。

特別な才能がある7歳の少女と彼女を育てる叔父との絆を描く家族ドラマ「gifted/ギフテッド」。タイトルのギフテッドとは、生まれつき持っている高度な能力のことを指す。いわゆる天才少女の物語なのだが、本作ではメアリーの特別な才能が主題ではなく、彼女の存在そのものが、本当の幸せとは何だろうと、大人たちに問いかけ、それぞれが苦い思いを乗り越えてその答えを見つけるストーリーなのだ。祖母は孫娘に歴史に名を残す天才数学者になってほしいと望み、叔父は、特別な才能を持っていたとしても、子どもらしい生活を体験させたいと願っている。親権を争う形で両者は対立するが、明らかなのは、日ごろはケンカばかりしていても、メアリーはフランクのことが誰よりも大好きだということだ。

監督のマーク・ウェブは長編デビュー作「(500)日のサマー」が素晴らしすぎて、その後、伸び悩んだ印象があったが、本作では丁寧でハートウォーミングなストーリーで本領を発揮している。もはや「キャンプテン・アメリカ」と一体化しているクリス・エヴァンスも、無骨だが誠実な叔父を好演。オスカー女優のオクタヴィア・スペンサーの使い方が表層的なのは少々残念だが、何といっても、オーディションで選ばれたという子役マッケンナ・グレイスが出色だ。数学の天才ぶりと少女のあどけなさ、生意気なのに健気と、難役を天性の感情表現で演じて、不器用な天才少女メアリーを愛さずにはいられなくなる。ハリウッドの子役の才能のすそ野の広さは、やはり桁違いだ。家族という問題には、数学のように、明白な答えはない。人生の豊かさとは何かという“難問”もまた同じ。ただ、この心温まる物語には、人を愛する才能を磨くヒントがある。見終われば、きっと優しい気持ちになれる。
【70点】
(原題「GIFTED」)
(アメリカ/マーク・ウェブ監督/クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、オクタヴィア・スペンサー、他)
(ハートウォーミング度:★★★★☆)
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ドリーム

ドリーム 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]
1960年代初頭、アメリカは、国内では人種問題、対外的には東西冷戦で揺れていた。ソ連との熾烈な宇宙開発競争が繰り広げられる中、ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な黒人女性たちが、理不尽な差別や格差に耐えながら、計算手として働いていた。天才的な数学の才能を持つキャサリンは、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属されるが、白人ばかりの職場の雰囲気は冷たく、そのビルには有色人種用のトイレもなかった。一方、管理職を目指すドロシー、エンジニアを志すメアリーらも、数々の困難の中でひたむきに夢を追い続けていた…。

NASAで宇宙開発に携わった黒人女性たちの功績を実話をもとに描く「ドリーム」。マーキュリー有人飛行計画と言えば「ライトスタッフ」がすぐに思い浮かぶが、本作で描くのは、その計画を支えたのが、ずば抜けた才能を持った黒人女性たちだったという知られざる事実だ。時は1960年代。NASAで働くキャサリン、ドロシー、メアリーの3人の黒人女性は、人種差別と女性蔑視という2つの差別と戦わねばならなかった。こう説明するとシリアスな社会派ドラマに思えるが、本作はあくまでも明るくポジティブな作風で。見れば元気をもらえる痛快エンタテインメント・ムービーなのである。1960年代当時の明るいファッションやポップな音楽が、これまたチャーミングだ。

トイレやコーヒーポットまで非白人用と区別する愚行は、コミカルな描写で笑いを誘い、同僚や上司の嫌がらせには、知性とウィットで対抗する。時に愚痴ったりあきらめかけたりもするが、そんな時の助けは、友情や家族の支え、新しい恋のときめきだ。何よりも彼女たちが本来持つ、明るい性格やあたたかい人間性が、周囲や社会、ひいては時代を動かしたのだと思えてならない。タラジ・P・ヘンソンを筆頭に、俳優陣は皆、好演だが、キャサリンの誠実な恋人を演じるマハーシャラ・アリの柔らかな雰囲気が特に印象的で、オスカーを獲得した「ムーンライト」とはまた違った魅力を発見できる。本作は、いくつもの“最初の扉”を開けたアフリカ系アメリカ人の女性たちのチャレンジを痛快なエピソードでテンポ良く描いてみせた快作だ。人種差別や性差別は今も社会にはびこり、アメリカが今までになく不安な時代を迎えている今だからこそ、彼女たちの知的な勇気がより輝いて見える。
【80点】
(原題「HIDDEN FIGURES」)
(アメリカ/セオドア・メルフィ監督/タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、他)
(歴史秘話度:★★★★★)

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フルートベール駅で

フルートベール駅で [DVD]
黒人青年が鉄道警官に射殺された実話を映画化した「フルートベール駅で」。痛ましい事件だが、告発調にしていないところがいい。

サンフランシスコの郊外ベイエリアに住む、22歳の黒人青年のオスカーは、恋人ソフィーナと、2人の間に生まれた愛娘タチアナと共に慎ましく暮らしている。失業したが、何とか生活を立て直そうと心に誓っていた。大晦日、母親の誕生日を祝い、ソフィーナや仲間たちと新年の花火を見るためサンフランシスコへ行くが、地下鉄の中でケンカに巻き込まれて乱闘騒ぎになってしまう。駆け付けた鉄道警官からフルートベール駅のホームに引きずり出されたオスカーは、何もしていないと主張するのだが…。

2009年の元日、サンフランシスコのフルートベール駅で、22歳の黒人青年オスカー・グラントが鉄道警察に銃で撃たれて死亡した。丸腰の彼が撃たれる様子は、居合わせた他の多くの乗客が携帯で撮影。人種差別によって引き起こされたその事件の映像はネットに流れ、全米で抗議集会が行われるなど、大きな波紋となって広がった。本作は、事件の犠牲者である青年オスカーの“人生最後の1日”を描くものだ。前科がありドラッグの売人の経験もあるオスカーは、失業したことで一度は麻薬の売人に戻ろうとするが、良き夫、良き父親になるため、踏みとどまる。彼は、より良い人生をおくりたいという希望を胸に抱いた、ごく平凡な心優しい青年なのである。オスカーのこのキャラクターは、観客に「自分の近くにもオスカーはいる」と思わせ、共感を呼ぶはずだ。事実、これが最後の1日になるとは知らずに過ごす、オスカーの日常は、思い悩みながらも、小さな喜びや幸福感に満ちている。そんな中、印象的な場面は、ガソリンスタンドの前でひき殺された犬を抱きしめるシーンだ。無抵抗なまま命を奪われるその犬は、オスカー自身に他ならない。フルートベール駅のホームで、手錠をかけられうつぶせの状態で白人警官に射殺された黒人青年オスカーの事件は、波紋を呼ぶが、白人警官に下された罰は懲役2年でわずか11ヶ月で釈放されている。これがアメリカの法の実態だ。作り手は大きな憤りを胸に秘めているが、映画は決して告発調には傾かない。不条理に命を奪われた一人の青年の、ささやかだが愛おしい人生を見つめた演出が好ましい。低予算でわずか20日間で撮影された本作は、サンダンス映画祭他、世界中で高く評価された。米国の黒人を扱う映画の多くは主人公は偉人や有名人でドラマチックな歴史を背負うことが多いが、本作の主人公は名もない青年。だからこそ彼の短かすぎる人生が多くの観客の胸にリアルに迫る。
【65点】
(原題「FRUITVALE STATION」)
(アメリカ/ライアン・クーグラー監督/マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペンサー、他)
(不条理度:★★★★☆)
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映画レビュー「ヘルプ 心がつなぐストーリー」

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◆プチレビュー◆
女性たちの勇気と友情に感動する「ヘルプ 心がつなぐストーリー」。真面目なテーマを軽やかに語る演出が好感度大だ。 【75点】

 1960年代の米国南部・ミシシッピ州。作家志望のスキーターは、黒人メイドがいるのがあたり前の上流家庭で育った。だが、大人になり、南部の保守的な因習に疑問がわく。インタビューで黒人メイドたちの本音に迫ろうとするが、社会からの報復を恐れ誰も答えてくれない。そんな時、メイドのミニーが不当に解雇されたことから、ミニーの親友エイビリーンが取材に応じてくれることになる…。

 人種差別。女性解放。社会変革。シリアスになりがちなテーマを内包するのに、この作品の軽やかさはなんと心地よいことか。公民権運動は時代の大きなうねりだが、当時の黒人たちには、大義も大事だが、日々の仕事を確保し、生活していくことが最優先事項だ。この映画は、そんなメイドたちの地に足がついた生活や、虐げられた日常の中でも決して失わない誇りとユーモアを丁寧に描いている。

 ヘルプとは、白人家庭で、育児や家事をこなす黒人メイドのことだ。進歩的な考えを持つ女性・スキーターの育ての親である老齢メイドがなぜいなくなったのかという謎を隠れたけん引役にして、60年代らしいカラフルな風物の中、女性たちの勇気ある物語が紡がれる。ただし、社会の矛盾を声高に叫ぶのではなく、語り口はあくまでも軽やかに。

 女優たちのアンサンブル演技もまた魅力的だ。エマ・ストーンやヴィオラ・デイヴィスら、皆、輝いている。中でも料理上手のメイドのミニーを演じ、アカデミー助演女優賞を受賞したオクタヴィア・スペンサーの存在感は素晴らしい。毒舌家のミニーが、差別主義者のヒリーを、あるトンデモない方法でノックアウトするくだりには、思わず拍手しそうになる。本作が好感度が高いのは、社会派に傾かず、キャラクターの性格や心理をあたたかい視点で描いているからなのだ。

 原作は、NYタイムズで書籍ランキング1位のベストセラー小説。著者のキャスリン・ストケットは、本作の監督テイト・テイラーとは幼馴染だそうだ。色鮮やかな衣装、おいしそうな南部料理、女たちのにぎやかなおしゃべり。小さな勇気が、時代に風穴を開けるストーリーは、最後まで楽観的だ。彼女たちは、その後の苦労も、きっと持ち前のしなやかさでやりすごしていくことだろう。偉人ではない、名もなきメイドたちの声に、とことん前向きになれる感動作である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)女性映画度:★★★★★

□2011年 アメリカ映画
□原題「THE HELP」
□監督:テイト・テイラー
□出演:エマ・ストーン、ヴィオラ・デイヴィス、ブライス・ダラス・ハワード、他
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