映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

オダギリジョー

世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶

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ヴェルナー・ヘルツォーク監督がショーベ洞窟を3Dでとらえたドキュメンタリー「世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶」。3万年以上前のアートと現代の最新技術3Dが融合するのはまるで奇跡のよう。

1994年南仏で発見されたショーヴェ洞窟。仏政府により、遺跡を守るために研究者や学者のみしか入場できなかったこの洞窟に初めてカメラが入った。ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督率いるスタッフは、洞窟の奥に残された古代人の手による絵画を3D映像で美しく立体的に表現していく。

恥ずかしながらこの作品を見るまでショーヴェ洞窟のことは何も知らなかった。文化財保護の観点から、私たち一般庶民は、決して入れないショーヴェ洞窟。その内部は、驚くべき芸術の宝庫だ。牛、馬、サイ、ライオンなどの多くの動物画はとても3万年前のものとは思えないほど上手い。しかも技巧に富んでいていて、岩の凹凸を利用して、見る位置によって絵が変化する“トリックアート”まであるのには驚いた。技法は、スタンプや吹き墨など。動物を描く画家にはシャガールやピロスマニがいるが、彼らの芸術の原点を見る思いがする。思えば個性的な作風で知られるヘルツォークの映画には、「アギーレ 神の怒り」や「フィッツカラルド」「彼方へ」など、原初的な自然と人との関係性をテーマにした作品が多い。本作は、3万年以上前の人間が残した芸術作品に、最先端の映像テクニックで挑む、現代と過去のコラボレーションだ。このモチーフがいかにもヘルツォークらしい。ショーヴェ洞窟と内部の壁画に関しては、現在も調査・研究が進行中。幻想的な音楽と共に、スクリーンで時空を超える体験ができたのは貴重だった。日本語版のナレーションは、ヘルツォークのファンであるオダギリジョーが担当。静かで深みのある声が作品を魅力的にしている。
【65点】
(原題「CAVE OF FORGOTTEN DREAMS」)
(アメリカ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/ヴェルナー・ヘルツォーク、日本語版ナレーション:オダギリジョー)
(アート度:★★★★☆)
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世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶@ぴあ映画生活

マイウェイ 12,000キロの真実

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圧倒的な戦闘シーンからすさまじい生命力を浮き彫りにする「マイウェイ 12,000キロの真実」。韓国映画らしい過剰な描写と力技に圧倒される。

1928年、日本統治下の朝鮮・京城(現ソウル)。憲兵隊司令官の祖父を持つ日本人の辰雄と、朝鮮人の使用人の息子ジュンシクは、共に走ることが好きな少年だ。成長し、オリンピックを目指すライバルとなるが、ある事件をきっかけに2人は憎しみ合うようになる。やがてノモンハンの戦場で、日本軍に強制徴用されていたジュンシクは、守備隊長の辰雄と再会する…。

第二次世界大戦期、日本とソ連とドイツの軍服を着て、生き抜いた男たちがいた。荒唐無稽に思えるこの設定、実話が基だというから驚く。驚くのはそれだけではない。この映画の戦闘シーンの迫力は、ハリウッドの「プライベート・ライアン」に匹敵するほどダイナミックなのだ。日本人と韓国人二人の愛憎半ばの友情という感動のツボを、あえて薄味にしてまで、こだわり抜いたド迫力の戦闘場面はすさまじいの一言である。大量の人と物を動員し、さらにアジアからヨーロッパへ大陸を横断して撮影を敢行、圧倒的なスケールで演出したカン・ジェギュ監督は、今までのアジア映画にはない迫力を生みだしている。オダギリジョーとチャン・ドンゴンのダブル主演だが、走ることだけを信じ決してブレないジュンシクに対し、オダギリ演じる辰雄は悪役で分が悪い。だが、戦争の不条理と生死の極限状態で、信じていた国から裏切られた辰雄の心が変化する様は、逆に人間らしくも思える。対照的なジュンシクと辰雄に共通するのは、どんな状況でも生きると決めたこと。満州、ソ連、ドイツ、フランス・ノルマンディーと、どれほどの危機に瀕してもしっかり生き残る展開には苦笑するのだが、歴史の大きなうねりに翻弄されながらも、生き抜く生命があるというメッセージは力強い。サミュエル・フラーが監督した傑作「最前線物語」の中の“戦場では生き残ることがモラルだ”という名セリフが思い出される。
【65点】
(原題「My Way」)
(韓国/カン・ジェギュ監督/オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビン、他)
(スペクタクル度:★★★★☆)
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マイウェイ 12,000キロの真実@ぴあ映画生活

映画レビュー「奇跡」

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◆プチレビュー◆
“奇跡”を願う子供たちの成長物語の秀作。まえだまえだの2人が自然体で素晴らしい。 【85点】

 両親の離婚により、母の実家の鹿児島で暮らす兄・航一と、父と一緒に福岡で生活する弟の龍之介。二人は、両親が仲直りし、再び家族4人で暮らす日を夢みていた。そんな時、九州新幹線全線開通にまつわるある噂を耳にする…。

 フランソワ・トリュフォー、アッバス・キアロスタミ、そして是枝裕和。彼らに共通するのは、子供の使い方が抜群に上手いということだ。本作でも、主人公の兄弟を演じる小学生お笑いコンビ“まえだまえだ”の演技の素質を見抜いた是枝監督の眼に狂いはなかった。大人びているようで本当はナイーブな兄と、寂しさを笑いに変える力を身に付けた、実はしっかり者の弟。自然体で演じる2人を、大人の俳優たちがしっかりと支え、バランスが絶妙だ。

 離れて暮らす兄弟が願いを託したその噂とは、九州新幹線が全線開業する日、博多発と鹿児島発の2つの新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を目撃すれば、すごいエネルギーが発生し奇跡が起きて願いが叶うというもの。列車が行き交う場所・熊本に行こうと、子供だけで始めた無謀な旅行は、見ていてハラハラする。だが、そんな旅はいつだって子供を成長させるのだ。「友だちのうちはどこ?」や「スタンド・バイ・ミー」がそのことを証明してくれている。

 航一と龍之介の背景を丁寧なエピソードで積み重ねたことで、彼らの願いと心の成長がスムーズに感じられる。さらに、懸命に生きる大人の姿も盛り込み、その土地の魅力が立ち上るご当地映画としても第一級の作品になっている。新幹線をあえて脇役に据えたことが、人間ドラマを際立たせた。

 家族が一緒に暮らすには桜島が大噴火すればいいとのトンデモない願いは、旅を通してどう形を変えていくのか。両親の離婚で深く傷つきながらも、自分の力だけではどうしようもないことがあり、それを受け入れることを学んでいく二人。まだ思春期にも満たない少年たちは、仲間との小さな旅を通して世界に思いをはせ、少しだけ、でも確かに大人になった。是枝監督は「冒険から帰ってくる子供を玄関先でさりげなく待っている大人でありたい」と語っている。梅雨の雨の後、紫陽花の花が美しく色づくように、子供と大人、それぞれが小さな希望の花をみつける物語だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)成長物語度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「奇跡」
□監督:是枝裕和
□出演:前田航基、前田旺志郎、大塚寧々、オダギリジョー、他
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奇跡@ぴあ映画生活

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PLASTIC CITY プラスティック・シティ

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オダギリジョーが主演だが、世界各国から多才なキャストが集まったことで、無国籍なムードが漂った。育ての親である中国人ユダとブラジルの闇社会で生きるキリンは、日系ブラジル人。ある時ユダの命が狙われたことでキリンもまたマフィアの抗争に身を投じることになる。血よりも濃い義父と息子の関係を軸に、クライム・ムービーとして物語は進むが、杯を逆さにしたような塔の上での乱闘のあたりから幻覚のような気配が漂い、現実感が急激に薄れていく。やがて二人が出会ったジャングルへ戻る展開は、因果応報のギリシャ悲劇のようだ。リクウァイ監督のアート嗜好が色濃く出た作品で、スタイリッシュなミュージックビデオ・クリップ風に見ると楽しめる。
【60点】
(原題「PLASTIC CITY」)
(中国・香港・ブラジル・日本/ユー・リクウァイ監督/オダギリジョー、アンソニー・ウォン、チェン・チャオロン、他)
(リアリティ度:★★★☆☆)

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悲夢(ヒム)

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奇妙な設定はキム・ギドクの十八番だが、今回の素材は夢だ。恋人を忘れられない男ジンの見た夢が、夢遊病の女ランの現実に現れることから、二人は夢に翻弄されていく。恋人と別れたという共通点以外、ほとんど説明はないが、夢と現実、男と女が分かちがたく存在する不思議な世界に魅了された。痛みを伴う愛の描写は、以前に比べマイルドなのでありがたいが、美男美女に異様な表情を演出するなど鬼才ぶりは健在。一方が欠けると生きられない二人。だが蝶のオチは少し弱い気も。刻印士という文字を裏側に掘る職業が効果的で、劇中に登場する“白黒同色”の言葉が深い。
【65点】
(原題「DREAM」)
(韓国/キム・ギドク監督/オダギリジョー、イ・ナヨン、パク・チア、他)
(幻想度:★★★★☆)

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たみおのしあわせ

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これほどの豪華キャストなのに、作品にまったく好感が持てないのは、登場人物全員がイヤな奴だからか。悪いヤツならまだ救われるものを。子離れできない父と成り行きまかせの息子が、結婚しようと奮闘する。名作青春映画を意識したラストは、幸せな未来ではなく、大人になることを拒み過去へと逃避するものだ。不完全燃焼は狙ってのことだろうが、これでは共感は得られない。ダサいオダジョーと謎の人物・忌野清志郎は秘かにウケた。
【20点】
(日本/岩松了監督/オダギリジョー、原田芳雄、麻生久美子、他)
(ツボが違いました度:★★★★★)

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サッドヴァケイション

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作り手の、女性への畏怖と敬意を、隙のない演出でまとめて、素晴らしく出来がいい。豪華キャストも互いを殺すことなく上手く使っている。自分を捨てた母親への復讐を誓う青年と、物事全てを受け入れつつ前進する女の度量を描く物語だ。弱者への優しい視線と現実への対処が心にしみる。珍しくファンタジックなラストも好感度大だ。北九州を舞台にした前2作と関係はあるが、独立しても鑑賞できるところがいい。
【85点】
(日本/青山真治監督/浅野忠信、石田えり、宮崎あおい、オダギリジョー、他)
(女は強し!度:★★★★★)

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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

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リリー・フランキーの自伝的小説でベストセラーの映画化。ダメなボクとオトンを大きな包容力と愛情で包むオカンを演じる樹木希林が抜群に上手い。落ち着いて考えると、マザコン気味の青年の平凡な話だが「普通」が大切な今の世の中にマッチした。脚本は松尾スズキ。
【50点】
(日本/松岡錠司監督/オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、他)
(母は偉大だ!度:★★★★☆)

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蟲師

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蟲(むし)を見つけて封じる蟲師ギンコの放浪の旅を描く。物語の判りにくさに対し、映像の力は圧倒的。原作では時代設定はないが、映画版では100年前という設定。これに少々疑問は感じるが、ロケの美しさがそれを払拭する。頭で理解するより体感するのが正解だ。
【80点】
(日本/大友克洋監督/オダギリジョー、蒼井優、江角マキコ、大森南朋、他)
(映像美度:★★★★★)

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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