映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

キム・ギドク

殺されたミンジュ

殺されたミンジュ [Blu-ray]
ある晩、女子高生ミンジュが複数の男たちに無残に殺される。この事件は新聞にも載らず、すぐに忘れられてしまう。それから1年後、ミンジュの死の真相を探る謎の集団が現れる。7人組のその集団は、事件に関わった容疑者を一人ずつ誘拐しては拷問し、自分がしたことを告白させていくのだった…。

韓国の鬼才キム・ギドク監督の新作「殺されたミンジュ」は、壮絶な暴力を通して、死にゆく民主主義を浮き彫りにするサスペンスフルな物語だ。ミンジュが殺された理由ははっきりとは明かされないが、何か強大な権力の犠牲になったことは察しがつく。誘拐された容疑者たちが繰り返すのは「上からの命令に従っただけだ」という言葉だ。善悪の判断さえなしに、ただ指示されたという理由だけで悪に手を染める容疑者。一方、彼らに制裁を加える謎の集団は、社会の底辺にあえぐもので構成されているが、彼らもまた暴力に高揚し暴力におびえ、自己を見失う。容疑者と集団はいびつな形の相似形で、被害者と加害者は常に入れ替わるのだ。それは、容疑者の一人を演じるキム・ヨンミンが、劇中、1人8役を演じていることからも見て取れる。韓国の民主主義は死につつある。今のままでいいのか?!と映画は訴える。ミンジュとは韓国語で民主主義の意味だそう。そう考えると、邦題はなかなか意味深だ。原題は「一対一」の意味。国民一人ひとりが尊重されない社会で、自分とはいったい何者かと問いかけている。暴力はギドク監督が繰り返し描いてきたテーマだが、本作では、これまで寡黙でアーティスティクな作風だったのが一転、饒舌と言ってもいいほど大量のせりふがさく裂しているので、少なからずとまどった。エンディングは見る人によって解釈が異なるだろう。個人の存在が権力の闇によって踏みにじられる社会を痛烈に批判した問題作だ。
【60点】
(原題「ONE ON ONE」)
(韓国/キム・ギドク監督/マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、他)
(暴力度:★★★★★)
チケットぴあ

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殺されたミンジュ@ぴあ映画生活

映画レビュー「映画は映画だ」

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◆プチレビュー◆
暴力を媒体に現実と非現実を生きる二人の対比が鮮烈だ。この題名は鑑賞後に効いてくる。 【70点】

 俳優志望だったヤクザのガンペは、偶然出会った人気俳優のスタから「映画に出ないか」と誘われる。スタは暴力シーンで相手役を負傷させ、苦肉の策で彼に声をかけたのだが、ガンペは、本気で殴りあうのなら出演すると答える…。

 映画というのは、現実と非現実の間を揺れ動きながら進化している芸術だ。その境界線は入り組んで曖昧だが、所詮は全てが作り物。監督は俳優にリアルな演技を求めるが、映画を見る観客はそれがフェイクであることは百も承知だ。そんな中で本物を追求する映画作りとは、何とも摩訶不思議な商売である。これは出会うはずのない二人の男が、映画という交差点ですれ違った物語だ。

 傲慢な人気俳優のスタは、ヤクザより暴力的な演技が売りだが、ヤクザのガンペに言わせれば、映画の中の殴り合いなど、子供騙しのお遊びだ。そんなガンペが実は俳優になりたがっていたという設定はなかなか面白い。裏社会で生きるしかない男は、実人生とは違う生は映画の中にしかないと本能で知っている。だからこそスタが映画そのままにキメてみせた「短い人生、無駄にするな」の言葉に心を動かされてしまうのだ。これは自分のためのセリフではないか。

 ガンペとスタの二人は、対照的でありながら不可分の存在だ。まるで磁石のプラスとマイナスのようにどうしても互いに反応してしまう。黒ずくめのソ・ジソプと、白い衣装のカン・ジファン。共に韓国芸能界の人気スターが、静と動のコントラストを体現し、ビジュアル的にも効果的だ。ただ、ストーリーには不満がある。スタを陥れるスキャンダルの真相など散漫になるだけで不要だろう。せっかく、映画の中で映画を撮るという入れ子の物語なのだ。映画の虚構そのものにこだわるエピソードに絞ってほしかったと、少し残念である。

 逆に評価したいのは、現実そっくりなのに現実とは異なる、映画のパラレル・ワールドを物語に活かしたセンスだ。“現場の神”である監督が、普通なら係わるだけでビビるヤクザのガンペの演技に、わざとのようにダメ出しをするなど、思わず笑ってしまう。共演女優の入水自殺場面を本気にする場面もしかりだ。映画は何度でも撮り直しがきくが、人生は一度きり。このあたりを深読みすれば、作品のメッセージも見えてこよう。

 不器用な恋や仲間の裏切りなどを経て、ついにラストシーンの撮影の日が来た。「ラストは変えない。俺が勝つ」とスタ。「おまえの好きにすればいいさ」とガンペ。映画は無事に完成するのだろうか。泥まみれの殴り合いの末に、二人の間に友情めいた何かが生まれた気配がするが、ここで油断は禁物である。新鋭監督チャン・フンの師匠は鬼才キム・ギドクだ。彼が原案・製作を務める物語が、なごやかに終わるはずはない。それまでとは桁違いに凄惨な暴力シーンで返り血を浴びた観客は、改めて教えられることになる。ヤクザはヤクザにすぎず、俳優は俳優にすぎない。そして、映画もまた映画にすぎないのだと。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)バイオレンス度:★★★★☆

□2008年 韓国映画 原題「MOVIE IS MOVIE」
□監督:チャン・フン
□出演:ソ・ジソプ、カン・ジファン、ホン・スヒョン、他

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悲夢(ヒム)

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奇妙な設定はキム・ギドクの十八番だが、今回の素材は夢だ。恋人を忘れられない男ジンの見た夢が、夢遊病の女ランの現実に現れることから、二人は夢に翻弄されていく。恋人と別れたという共通点以外、ほとんど説明はないが、夢と現実、男と女が分かちがたく存在する不思議な世界に魅了された。痛みを伴う愛の描写は、以前に比べマイルドなのでありがたいが、美男美女に異様な表情を演出するなど鬼才ぶりは健在。一方が欠けると生きられない二人。だが蝶のオチは少し弱い気も。刻印士という文字を裏側に掘る職業が効果的で、劇中に登場する“白黒同色”の言葉が深い。
【65点】
(原題「DREAM」)
(韓国/キム・ギドク監督/オダギリジョー、イ・ナヨン、パク・チア、他)
(幻想度:★★★★☆)

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ブレス

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キム・ギドクの才能はいつも観客の既成概念を超えた次元に存在する。自殺を繰り返す死刑囚と絶望した主婦が出会う物語だ。奇妙な愛の形を表すのは、極彩色の映像とフルコーラスで歌う四季の歌。セリフのない難役を演じるチャン・チェンの、生と死の間で狂っていく演技が見所だ。監督自らが神の視点のような役割で出演するのも興味深い。悲しみを抱えて終る悲劇だがギドク・ワールドを満喫できる。ありえない展開も含めて濃密な84分だ。
【65点】
(原題「BREATH」)
(韓国/キム・ギドク監督/チャン・チェン、パク・チア、ハ・ジョンウ、他)
(唐突感度:★★★★☆)

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絶対の愛

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目には目を。整形には整形を!十分美しい顔を「恋人に飽きられるから」との理由で整形し別人になるヒロインは極端だが、究極の純愛と考えると奇妙にいとおしい。時の流れに抵抗してでも愛情をつなぎとめたい女心が泣かせると同時に滑稽だ。鬼才ギドク監督らしい韓国整形事情批判である。名前や顔が変わっても愛する人が判るだろうか?!恋人同士で見るにはちょっと危険な映画かもしれない。
【70点】
(英語原題「TIME」)
(韓国/キム・ギドク監督/ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン、他)
(ここまでするか度:★★★★☆)

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弓
本国より欧米で高い評価を受ける、韓国の鬼才キム・ギドクの異色恋愛映画。釣り船の上で暮らす老人と少女の固い絆と、風変わりな純愛を描く物語である。船の上から一歩も出たことのない少女は17歳になったら老人と結婚することになっている。その日を心待ちにして生きる老人は、少しずつ、婚礼衣装を調えていく。

韓国(朝鮮)の伝統的な民族衣装といえばチマチョゴリ。現代では洋服の普及によって、特別な日にしか着ない状態であることは、日本の和服と同じ感覚だろう。チマチョゴリは、チマおよびチョゴリからなる女性の装いだ。上半身の衣服がチョゴリ。下半身の衣服は、女性用はチマ(裳)、男性用はバジという名称。韓国では、男性用のパジチョゴリや、子供用のセクトンチョゴリなども含めて、民族衣装全体は広く「韓服」と呼ばれている。美しい色彩と柔らかい布の質感などが魅力。とりわけ、韓国の伝統的な婚礼で着用される韓服は、男女共にとても華麗だ。

映画は老人と少女の愛を描くが、キム・ギドクらしく幻想的な描写をまじえた展開で、観客を惑わせる。どこに飛んでいくか分からない弓が重要な小道具として登場するが、よく当たると評判の弓占いという設定が絶妙で、老人、少女、陸からやってきた青年の運命を象徴しているようでもある。一歩間違えると、キワモノ映画になってしまうところを、ギリギリのところでアートに昇華させる手腕がさすが。ちなみに老人と少女は、劇中、一言も言葉を発しない。セリフに頼らず、色彩の美しさと画面構成など、こだわりの映像美で勝負するスタイルがキム・ギドク流だ。

(2005年/韓国/キム・ギドク監督/原題「The Bow」)

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春夏秋冬そして春

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◆プチレビュー◆
驚異的に美しい映像は、撮影監督ペク・ドンヒョンの力によるもの。小動物を寓意的に用いるのが常だが、今回は残酷描写が少なくてホッとした。

緑深い山中の湖に浮かぶ小さな寺に、年老いた僧侶と少年が住んでいる。いたずらから生命の尊さを知った少年は、やがて成長し同年代の少女との恋と欲望を経験して、寺を出奔。彼女の裏切りを知って殺人を犯し、再び寺に戻った頃には壮年となっていた。そして季節は再び巡り来る…。

世の中には、例えそれが物理的な機能を成していないとしても尊重すべき存在があるらしい。この映画の中で、それは“扉”だ。水中に浮かぶ大門と、寺の内部の小さな扉。どちらも周囲に壁はなく、空間を遮るものは何一つないのだが、その扉を通るのは、人間の基本的な礼儀と思える。少年僧が道を踏み外すとき、彼は扉を通らない。このようにキム・ギドク作品では、セリフは少ないが物語を導くシンボルがすこぶる印象的に登場するのだ。この監督の作品にアートを感じるのはそのためだろう。

寺の四季を人生の四季になぞらえていく手法が誌的である。無邪気な殺生から重荷を背負う春、恋と欲望に目覚める夏、裏切りと罪の苦しみを知る秋を経て、悟りの冬へと向かう。そして季節は再び春になり、同じ過ちが繰り返される。人はそう簡単に解脱できるものではないようだが、それでも生の営みは愛おしい。

儒教社会の韓国では仏教は少数派だ。歴史上、弾圧されたこともあって、仏寺はほとんど山奥にある。山中の寺で起こる出来事はまるでこの世ならぬ神秘的な雰囲気さえ漂わす。映像はオリエンタルな美の極地で、さぞかし西欧でウケるだろうと思われるもの。私は何度も映像に見惚れたが、湖上の寺がゆっくりと動く場面の美しさは格別だ。漢字を解する日本人には、文字の美しさと同時に意味まで理解できるので、ちょっと優越感も。

今までのキム・ギドク作品が残酷描写や性描写で挑発的な作風だったことを思えば、本作はまるで方向を変えた癒しの映画のようにも思える。しかし、静謐な画面の中で紡がれる物語は結構生々しいもので、随所に“らしさ”が伺えた。現在、世界中から高く評価され、飛ぶ鳥を落とす勢いのキム・ギドク監督。私にとって、次回作が最も期待される監督の一人である。

□2003年 ドイツ・韓国合作映画  英語原題「Spring,Summer,Fall,Winter… and Spring」
□監督:キム・ギドク
□出演:オ・ヨンス、キム・ジョンホ、ソ・ジェギョン、他

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