映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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(点数は100点が、★は5つが満点)
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どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

キャスリン・ビグロー

デトロイト

Detroit
1967年の夏。アメリカ・ミシガン州デトロイトで大規模な暴動が発生する。その2日目の夜、ミシガン州兵隊の集結地付近で銃声の通報があり、デトロイト警察やミシガン陸軍州兵、地元警備隊らは、アルジェ・モーテルの別館に乗り込んだ。しかし差別主義者の白人警官クラウスら何人かの警官が捜査手順を無視し、モーテルの宿泊客たちを脅しながら不当で暴力的な強制尋問を始める…。

米史上最大級の暴動と言われるデトロイト暴動を一晩の出来事に絞って描く戦慄の実録サスペンス「デトロイト」。数日間続いた暴動の概要は教科書などで知られているが、本作が描くのは歴史の闇に埋もれた暴挙“アルジェ・モーテル事件”だ。暴力的な白人警官たちが、ホテルに居合わせた黒人男性6人と白人女性2人の若者たちを、おぞましい方法で尋問する様はまるで悪夢のようだが、観客もまた、この惨劇の渦に放り込まれ、彼らと同じ恐怖を体験することになる。宿泊客の1人でR&Bボーカル・グループ「ザ・ドラマティックス」のリードシンガーのラリー、白人警官クラウス、民間警備員ディスミュークスの3人の視点で事件が語られるが、とりわけ、差別主義者の警官クラウスの言動とその後の裁判の行く末には、激しい怒りがこみあげる。

実話に基づく本作の時代背景は60年代。だがこれが過去の話ではなく、まるで現代の出来事のように思えるのは、手持ちカメラによる臨場感たっぷりの映像もさることながら、差別や偏見がいまだに蔓延している事実があるからだ。さらに言えば、キャスリン・ビグロー監督が今まで描いてきたような米軍爆弾処理班兵士やCIA分析官といった特殊な職業の人物の活躍ではなく、普通の市民と身近にいる警官の間に起こる理不尽な暴力を見せつけるからである。極限状態の中で感情や暴力が激化する様や、判断力を見失う心理、誰かを痛めつけることで優位に立とうとする愚行。これらは誰の身にも起こりうる恐怖なのだ。アルジェ・モーテルは取り壊されて今はもう存在しない。だがデトロイト暴動の火種は本当に消滅したのか。骨太な社会派映画で現代社会に警告を発してきたビグロー監督の真摯な問いかけが聞こえるようだ。
【70点】
(原題「DETROIT」)
(アメリカ/キャスリン・ビグロー監督/ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、他)
(臨場感度:★★★★★)


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映画レビュー「ゼロ・ダーク・サーティ」

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◆プチレビュー◆
ビンラディン殺害の裏側を描く「ゼロ・ダーク・サーティ」。ヒロインのラストの表情が報復の連鎖の虚しさを物語る。 【80点】

 ビンラディンの行方をつかめないCIAは、人並み外れた情報収集力と分析力を誇るノン・キャリアのマヤを捜索チームに加える。捕虜の証言や現場証拠から核心に迫ろうとするが、成果は上がらない。そんなある時、親しい同僚が自爆テロに巻き込まれて死亡。それを機に、マヤは狂気にも似た執念でビンラディン暗殺という職務にのめりこみ、ついに潜伏先を特定する…。

 テロ組織アルカイダの指導者にして、9.11同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン。彼の捕縛・暗殺作戦は、2011年5月2日に実行され、オバマ大統領は「正義はなされた」と勝利宣言を発表した。だがその作戦の詳細は、長らく明らかにされなかった。この作品では、米国側の情報収集の実態と、作戦の中心人物がCIAの若き女性分析官だったという驚きの事実が描かれる。

 驚きとはいっても、世紀の暗殺劇の結末は世界中が知っているし、ストーリーの大筋は、ビンラディンという悪者を正義のアメリカが成敗するという大捕物にすぎない。それでもこの映画の重量感と緊張感はズバ抜けているし、問題を含む現代史をハリウッドがエンターテインメントとして昇華する“自由度”には、いつもながら感心させられる。何より、きわめて政治的な題材を、マヤという一人の若い女性分析官の変貌を通して描く、語り口が優れている。

 映画冒頭、現場に到着したマヤは、非人道的な拷問に立ち会い、思わず目を背ける。だが、巨費を投じても一向に成果が上がらない作戦の中、同僚の死がマヤを変えた。青い瞳と白い肌の、どこか線の細い美女は、上官に噛み付き、CIA長官にも物怖じせず、冷徹な判断でビンラディンの居所を突き止め、自信たっぷりに精鋭部隊の米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)を動かして、殺害作戦を実行していくのだ。この映画は、非常に特殊な状況ながら、男社会で生き抜く一人の女性の“成長”を描いた物語でもある。

 ヒロインのマヤを演じるのは、映画女優としては遅咲きながら、その演技力が高く評価されるジェシカ・チャステインだ。本作では、マヤの執念と葛藤をドライで抑えた演技で、見事に演じきった。特にラスト、一人飛行機に搭乗した時のうつろな表情は絶品。すべてが終わった後に、報復の不毛や、これからも続くテロとの戦いの虚しさが、彼女の複雑な表情から浮かび上がった。

 タイトルは午前0時半を意味する米軍の専門用語。ネイビーシールズがビンラディンの潜伏先に突入した時刻を指す。映画で描かれるCIAの活躍はどれも派手で、ヒロイックなものが多いが、リアル志向の本作では、地味で地道な情報分析が中心で、突入作戦のクライマックスさえも、カタルシスとはほど遠い。マヤの執念は、テロを聖戦と信じるテロリストに打ち勝つためには、自らも狂気に身を投じるしかないと訴えている。つくづく空恐ろしい作品だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)緊張感度:★★★★☆

□2012年 アメリカ映画 □原題「ZERO DIRK THIRTY」
□監督:キャスリン・ビグロー
□出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、他
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映画レビュー「ハート・ロッカー」

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◆プチレビュー◆
爆発物処理班の兵士を通して戦争の真実と虚無感を描く秀作。スクリーンから片時も目が離せない。 【85点】

 2004年イラク・バグダッド。ジェームズ二等軍曹は、駐留米軍の爆発物処理班ブラボー中隊の新リーダーとして赴任する。爆弾処理の腕は一級だが、平気で規則を無視する向こう見ずな彼の行動に、仲間や部下は不安を抱くが…。

 爆発物処理班の兵士の死亡率は、一般兵の5倍にもなるという。爆弾を発見すれば、過酷な暑さの中、重装備の防護服を身に付け、慎重に配線を切り信管を取り除いて爆発を解除する。そのプロセスは、見ているこちらまで緊張で身体がこわばってしまうほどだ。極限状態の中で冷静な判断を下す彼らの仕事は、常にチームで動き、互いをサポートすることで成り立っている。脚本家のマーク・ボールは、イラクで従軍記者として爆発物処理班と行動を共にした体験を基に、細部までリアリティに満ちた物語を練り上げた。戦場には、派手な銃撃戦だけでなく、爆発物処理という、ほとんど報道されない、地味だが最も危険な任務があることを、改めて教えられた。この映画の優れた点のひとつは、爆弾処理の知られざる実態を詳細に描き、広く認知させたことだろう。

 ジェームズは、これまでに873個もの爆弾を処理したエキスパートだ。実績からの自信か、はたまた過剰な正義感か、無謀な行動でチームの和を乱す。それでも彼は、仲間のサンボーン軍曹や部下のエルドリッジ技術兵と対立しながらも冷静に任務をこなしていた。だがそんな彼も、身体に爆弾を埋め込まれた少年の死体には、我を忘れる。テロ組織への怒りと、いたいけな子供の遺体の中から爆発物を取り出して処理せねばならないおぞましさ。この少年は、もしやいつも基地のそばでサッカーをしていた顔馴染みの少年なのではないか。そんな思いからの憤りは、死と隣り合わせの任務を楽しんでいるかのようだったジェームズが、まだまっとうな人間である証拠で、安堵感を覚える。

 だが、安全な場所にいる私たち観客は、非日常が日常と化してしまった戦争の真の恐ろしさをまだ知らない。限界を超える緊張がもたらす恍惚と、どんな小さなミスも許されない究極のミッションへの気概。ジェームズにとっては、それらを併せ持つ戦場だけが生を実感できる場所だ。「どうせ死ぬのなら気持ちよく死にたい」と、防護服を脱ぎ捨てて大量の起爆装置を解除する彼の行為は、勇気に見えて実際は狂気なのだ。戦争は、ドラッグのように兵士を魅了し、精神を蝕んでいく。全編を通して甘さや情緒を廃し、女性監督らしからぬ骨太な描写を貫いたキャスリン・ビグローの演出が素晴らしい。

 過去の戦争映画の秀作は、戦争がもたらす悲劇をあらゆる視点から照射してきた。そのひとつ、ベトナム戦争を描いた怪作「地獄の黙示録」の中に「戦場では故郷を思い、故郷に戻ると戦場に恋焦がれる」というモノローグがある。本作の主人公ジェームズも、米国に戻っての平穏な日常の中では、表情はうつろだ。だがイラクに戻り再び1年間の任務についた彼の目は、獲物を追う野獣のように輝いている。ここにも戦争に魅入られ後戻りできなくなった人間がいる。自爆で死ぬ敵、姿が見えないテロリスト、誰からも歓迎されない土地で爆発物を処理する米兵。いったい何のための戦争なのかという疑問と虚無感が、爆風で舞い上がる砂塵のように広がっていく。“ハート・ロッカー”とはイラクの兵隊用語で、行きたくない場所、棺桶を意味するという。爆発の瞬間を恐れながらその重圧が快楽となった人間のヒロイズムとその代償を、ドライなタッチで描いた本作、紛れもない傑作だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)緊張感度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「THE HURT LOCKER」
□監督:キャスリン・ビグロー
□出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、他


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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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