映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

キング・アーサー

キング・アーサー

King Arthur: Legend Of The Sword
中世のイングランド。両親を殺され孤児になった青年アーサーは、スラム街の売春宿で育ち、たくましく生き抜いてきた。彼の両親の命を奪った暴君ヴォーティガンは、やがて自分を殺すであろう青年を探していたが、アーサーは、まだ、自分がかつてのイングランド王の一人息子であることを知らなかった。やがて聖剣エクスカリバーを手に入れたアーサーは、自らの過去と、亡き父王の代わりに王座を奪還する運命を知り、仲間の力を借りて立ち上がる…。

アーサー王伝説を新感覚で描いたソード・アクション「キング・アーサー」。中世の伝説の英雄アーサー王は、元祖ヒーローと言われ、小説、オペラ、舞台、コミック、アニメ、ゲームとさまざまな形で描かれてきた。映画でも数えきれないほどの作品があるが、本作は、いわばアーサー王の誕生秘話。物語の背景は、人間と魔術師が共存する混沌とした世界だが、主人公のアーサーは、格闘はカンフー仕込み、タフで仲間思いの心優しいストリート系ヒーローである。ガイ・リッチー監督は、手垢がついたストーリーを、主人公のキャラをイマドキ感満載にした上で、格調高さや文学的な趣をバッサリと切り捨てて、スピード感あふれるアクション・エンターテインメントとして描き切った。CGIも気合が入っていて、冒頭の巨大な象が登場するバトルは大迫力だし、セイレーンや湖の乙女の描写は幻想的で恐ろしくも美しい。もっとも“スラムのガキから王になれ”の下剋上的なキャッチコピーは、もともと王位継承者だった主人公の出自を思えばさほど響かず、なるべき人が王になる英国はやっぱり階級社会か…との思いがよぎった。聖剣エクスカリバーを岩から引き抜く重要なシーンで、特殊メイクのベッカムをカメオ出演させた後は、誰もが知っているカタルシスに向かって一直線に突き進む。魔術と権力に取りつかれた暴君ヴォーティガンが「今、ここにいるのもお前が原因だ。お前が俺を創った」と語るが、それがそのままアーサーの口を通して語り直されるとき、伝説や物語特有の因果応報がくっきりと浮かび上がる。華やかでスピーディー、時にコミカルでアクション満載の若きアーサー王の物語は、歴史ものはちょっと苦手な映画ファンにもおすすめの活劇に仕上がっている。
【60点】
(原題「KING ARTHUR: LEGEND OF THE SWORD」)
(アメリカ/ガイ・リッチー監督/チャーリー・ハナム、ジュード・ロウ、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、他)
(下剋上度:★★★☆☆)
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キング・アーサー

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◆プチレビュー◆
ぶ厚い氷の湖に敵を誘い溺死させる大迫力のバトルシーンは見応えあり。ランスロット役のヨアン・グリフィスは眉目秀麗なので、今後人気が出そうだ。終盤、女戦士と化すグウィネヴィアの露出度過多の衣装に唖然。

紀元415年。戦乱が続くブリテンで、ローマ軍の司令官アーサーは仲間である“円卓の騎士”とともに最後の任務を遂行する。これで自由の身になるはずが、残忍なサクソン族と戦うことに。さらには、運命の女性グウィネヴィアに出会う…。

例えコうるさい批評家から、くだらない、大味だと口汚く罵られようとも、興行的成功を収めてきっちり周囲を黙らせる。一般大衆の嗜好を単純化して理解し、その要求に明確に答えてみせるのが製作者ジェリー・ブラッカイマーだ。彼の目標はメガヒットを飛ばすこと。判りやすい。だが、今度ばかりは墓穴を掘ったのではなかろうか。

アーサー王伝説といえば、西欧では極めてポピュラーなもの。伝説には様々なものがあり、どれも魅力的な英雄や胸躍るロマンスに満ちている。今回はこのアーサー王伝説を、従来の中世ではなく、文献に基づいてリサーチしぐんと古い5世紀に設定。魔法をはじめファンタジー色はほとんどない。アーサーがローマとブリテンの両方の血を引き、アイデンティティーに悩むなど、新解釈をぶつけてきた。自らの中に眠る救世主としての資質に目覚めるあたり、マトリックスを彷彿とさせるではないか。

だが、西欧ファンタジーの基とも言える物語にチャレンジするというのに、こうまで人物描写がおざなりなのはいかがなものか。アーサーとグウィネヴィアはともかく、円卓の騎士などはほとんど名前の紹介程度だ。おまけに、欧州各国の実力派俳優を揃えたとはいえ、ビッグ・スターがいないので地味な印象は否めない。

日本ではアーサー王伝説は、魔剣エクスカリバーや聖杯伝説など断片的に知られているのが現状なので、本作の新解釈は、伝説を改めて知り頭の中を整理する意味では興味深い。だが、本家イギリスをはじめとする欧州の観客は、はたしてどう感じるか。自らの歴史に深く刻まれた英雄譚へのこの薄っぺらなアプローチを、快く受け止める者は少ないはずだ。

□2004年 アメリカ映画  原題「KING ARTHUR」
□監督:アントワン・フークワ
□出演:クライブ・オーウェン、キーラ・ナイトレイ、ヨアン・グリフィス、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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