映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

キーラ・ナイトレイ

素晴らしきかな、人生

素晴らしきかな、人生 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
ニューヨークでの広告代理店を経営するハワードは、最愛の娘を亡くして以来、深い喪失感から仕事もプライベートもままならない。やがて会社の業績も悪化し、ハワードの同僚たちも気が気ではない。そんな時、ハワードの前に3人の奇妙な舞台俳優たちが現れた。年齢も性別も異なる3人は、ハワードに次々に謎めいた言葉を投げかける。そんな3人との出会いでハワードの人生は少しずつ変化していくが…。

愛するものを失って絶望した男が、愛、死、時間などの抽象概念を演じる3人の舞台俳優たちとの交流によって再生していくヒューマン・ドラマ「素晴らしきかな、人生」。愛する娘の死で、心が壊れてしまったハワードを心配する仲間は、ハワードのことはもちろん、傾き続ける会社の心配もしている。そんな彼らが思いついた突拍子もない秘策が、ハワードを救うべく動き始める…というハートウォーミングなストーリーだ。主演のウィル・スミスをはじめ、オスカー俳優、ノミネート俳優たちが大挙して出演するなど、名優たちの競演が贅沢である。舞台となる大都会ニューヨークのおしゃれな風物も見所だ。傷ついた主人公の再生は、無論、いい話である。ハワードが何度も通うセラピーの主催者の女性との顛末にも感動するだろう。ただ、ハワードを救うプランが、あまりにも手が込んでいる上に、展開が都合が良すぎて、正直、引いてしまった。「プラダを着た悪魔」で鮮やかな手腕をみせたデヴィッド・フランケル監督だけに、笑いも感動も中途半端な出来栄えではがっかりさせられる。ちなみにジェームズ・スチュワート主演の名作クリスマス映画とはまったく関係ないので、ご注意を。…というか、本作にこの邦題って、どういうセンスなの?!何と言ってもこれだけの豪華キャストを集めておきながら、凡庸なお涙頂戴映画に成り下がったのが、あまりに惜しい。
【45点】
(原題「COLLATERAL BEAUTY」)
(アメリカ/デヴィッド・フランケル監督/ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット、ヘレン・ミレン、他)
(豪華キャスト度:★★★★★)
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イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 コレクターズ・エディション[初回限定生産]アウタースリーブ付 [Blu-ray]
エニグマ解読に挑んだ天才数学者の苦悩を描く「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」。3つの時代が同時進行する脚本が緻密で見事。

1939年、第二次世界大戦下のイギリス。若き天才数学者アラン・チューリングは難攻不落と言われたドイツ軍の暗号“エニグマ”の解読チームに加わる。高慢で不器用なチューリングは、天才ゆえに皆から孤立しながら作業に没頭していた。だがクロスワードパズルの達人の女性ジョーンがチューリングの良き理解者となったことで、暗号解読チームはいつしか一丸となっていく。偶然からエニグマ解読のきっかけをつかんだ彼らだったが…。

ナチスドイツの暗号を解読し連合軍を勝利に導いた人物アラン・チューリングの映画と聞くと、その偉業を華々しく紹介した伝記映画を連想すると思うが、本作はちょっと趣が違う。エニグマ解読の過程をスリリングに描く第二次世界大戦期、他者と違う天才ゆえに孤独だった少年時代、不遇に満ちた現代(1950年代)の3つの時代をほぼ同時進行させ、チューリングの偉業よりも彼の心理に重点を置いて描いているのだ。主人公は自らを孤独な環境に置くが、心の奥底では理解者を切望している。傲慢で偏屈なチューリングは、最初は典型的な“イヤなヤツ”で、暗号解読も初めはゲーム感覚だった。しかし、次第に彼の目指すものは、戦争終結と人命を救うという崇高な目的に変化する。だからこそ、暗号を解読した後、それを最高国家機密にした政府の非情さに苦しむのだ。栄光とは無縁の偉業、救える命を切り捨てる苦悩、理解者を持たない孤独、当時は罪だった同性愛など、チューリングの人間像はあまりにも複雑で悲運というしかない。では、戦後、自ら命を絶ったチューリングはゲームの敗者なのだろうか? そうは思いたくない。彼がエニグマ解読のために作った“チューリング・マシン”こそ現代生活に不可欠なコンピューターの原型。マイノリティーの哀しみとそれでも貫いた研究への情熱を、この映画で万人が知れば、チューリングは必ずや勝者となろう。社会からはみ出した天才の本質を繊細に演じきったベネディクト・カンバーバッチの演技力に脱帽した。
【80点】
(原題「THE IMITATION GAME」)
(米・英/モルテン・ティルドゥム監督/ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、他)
(ストーリーテリング度:★★★★★)
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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密@ぴあ映画生活

アンナ・カレーニナ

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ロシア文学の古典をオリジナリティあふれる演出で映画化した「アンナ・カレーニナ」。人生を文字通りの舞台にたとえた演出が見事だ。

19世紀末のロシア。政府高官の妻で美貌のアンナ・カレーニナはサンクトベテルブルク社交界の華だ。兄夫婦のいさかいを仲裁するためにモスクワへと向かった彼女は、青年将校ヴロンスキーと出会い、互いに惹かれあう。最初は平常心を保とうとしたアンナだったが舞踏会で彼と再開し、禁断の恋に落ちる。夫カレーニンへの愛はなく、欺瞞に満ちた社交界にも未練はないアンナは、家庭を捨て、ヴロンスキーとの愛に溺れるが、それは同時に破滅への道でもあった…。

原作は言うまでもなくロシアの文豪トルストイの恋愛小説の金字塔。映画では、かつてグレタ・ガルボやヴィヴィアン・リー、ソフィー・マルソーなどの名だたる美女がヒロインを演じてきた。つまり万人がよく知る素材で、ストーリー展開に驚きは少ない。よく言えば古典、悪く言えば手垢のついた物語をどう面白く、新しく見せるのか。この難題に、ジョー・ライト監督は“舞台のような人生”という鮮やかな演出で答えてみせた。オペラ劇場、舞踏会場、競馬場まで内部に納める巨大な劇場セットにまず驚く。さらに、真実の恋に生きるアンナが動くその背景で、世間体や表層的な道徳観念に縛られる周囲はピタリと動きを止めるという、独創的な演出には、ハッとさせられた。さらに絢爛豪華な衣装や美術はこれ以上ないほど贅沢なもの。特にキーラ・ナイトレイが身にまとうドレスの数々にはため息が出てしまう。衣装や美術もまた、登場人物たちのキャラクターや状況を語る重要な役割を果たしているのだ。愛のない結婚生活を送っていたヒロインの初めての恋は、不倫という不道徳のため、当然のように破滅へと至る。だが偽りのない人生をまっとうするアンナの美しさは、悲劇的な恋だからこそ際立って見えるのだ。古典文学を実験精神あふれる演出で再構築したジョー・ライトの才気に感心させられる、個性的な文芸ロマンで、一見の価値がある。
【70点】
(原題「ANNA KARENINA」)
(イギリス/ジョー・ライト監督/キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソン、他)
(絢爛豪華度:★★★★★)
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アンナ・カレーニナ@ぴあ映画生活

危険なメソッド

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二人の偉大な心理学者と美しい患者との関係をスリリングに描く「危険なメソッド」。患者兼愛人をキーラ・ナイトレイが異様な表情で怪演する。

1904年、スイス。若き精神科医のユングは、尊敬する精神分析学の大家フロイトが提唱する談話療法を、美しい女性患者ザビーナに試みる。その療法は効果を発揮し、ザビーナのトラウマの原因を突き止めることに成功した。だがユングとザビーナはやがて医者と患者の一線を越え、親密な関係に陥る。それまで親子にも似た師弟関係で結ばれていたユングとフロイトだが、ザビーナをめぐるユングの葛藤により、彼らの友情にも亀裂が生じることになる…。

共に精神心理学の礎を築いた偉大な心理学者ジークムント・フロイトとカール・グスタフ・ユングの二人は、主義主張の違いから袂を分かったとされてきた。本作は、その決別の影に歴史上に実在したロシア系ユダヤ人女性ザビーナ・シュピールラインの存在があったというスタンスでストーリーを紡いでいく。劇中には、深層心理をあぶり出す“言語連想テスト”やフロイトが提唱した“夢分析”など、知的なエピソードが登場するが、それらを安易に映像化せず、あくまでも会話中心で進めていく演出は、オリジナルの舞台劇を意識しているのだろう。一方で、性的トラウマを持つ美しい女性ザビーナに関しては、倒錯的なラブシーンも含めて、あくまで挑発的に描く。このあたり、精神的、肉体的な歪みを嗜好するデヴィッド・クローネンバーグ監督らしい。なるほどユングとザビーナは、愛人関係から破局に至り、ザビーナはフロイトに助けを求める。しかし、ユングとフロイトの関係性は複雑で、人種的な背景や経済力の違いなどもからみ、ひと言では語れない。そもそも、何でもかんでも性的なものに結びつけるユダヤ人フロイトと、リッチな妻のおかげで優雅に暮らしながら愛人に溺れるユングは、学問的なこと以外でも相容れない。だが、欠点があり、エゴ丸出しの二人の天才心理学者の思想に大きな影響を与えたのは、不安定だが魅力的な一人の美女だったという設定はどこかロマンチックで、スリリングな心理劇として楽しめるものだ。ユングが理性を捨ててザビーナを愛するきっかけを作る快楽主義者を演じるのは、ヴァンサン・カッセル。ごく短い出演時間だが、強烈な印象を残している。加えて、歪んだ顔で激高する姿や、Mな性癖に陶酔するなど、怪演に近い熱演を見せるキーラ・ナイトレイの演技は、異様な迫力で圧倒される。
【60点】
(原題「A DANGEROUS METHOD」)
(英・独・カナダ・スイス/デイヴィッド・クローネンバーグ監督/マイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、キーラ・ナイトレイ、他)
(スキャンダラス度:★★★★☆)
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ある公爵夫人の生涯

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雰囲気は優雅だが人物に魅力が乏しい。18世紀の英国でジョージアナは大貴族デヴォンシャー公爵に嫁ぐが、夫の無関心や不実に悩まされ、自らも不倫に走る。実情は不道徳でも表面上は世間体を取り繕う様がいかにも英国らしい。正妻と愛人が同居し親密に暮らすなど、超党派で結託する節操のない政党のようだ。スキャンダラスな親を見て育つ子供のメンタル面が思わず心配になる。ヒロインは故ダイアナ妃の祖先で、元祖セレブと呼ばれた女性。だが当時の女性は貴族でも、選挙権はおろか自分の財産さえ持てなかった。女の価値は男子の世継ぎを生むことだけという時代の不幸と言うべきだろう。内面の虚しさを際立たせるような華麗な衣装が印象的だった。
【55点】
(原題「THE DUCHESS」)
(英・仏・伊/ソウル・ディブ監督/キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランプリング、他)
(母性愛度:★★★★☆)

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映画レビュー「つぐない」

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◆プチレビュー◆
格調高い恋愛ドラマの終盤には静かな驚きが用意されている。英国の実力派俳優の演技が見事。 【85点】

 戦争の影が忍び寄る1930年代のロンドン。上流階級の令嬢セシーリアは、屋敷の使用人の息子ロビーと強く惹かれ合っていた。だが、幼く多感な妹ブライオニーの嘘により、ロビーは無実の罪をきせられ戦場へと送られてしまう…。

 事の発端はひとつの嘘。13歳の妹が姉の恋人への幼い恋心から嫉妬する。それに性への恐れや無知による誤解が加わって、彼女は言った。「いとこのローラを襲っていたのは彼よ。私はこの目で見ました」。少女時代特有の残酷さと言ってしまえばそれまでだが、ブライオニーが作家志望という設定が実に効いている。彼女が嘘をつくのは運命と言っても過言じゃない。小説家というのは、物語という嘘を紡ぐ職業なのだ。例えその嘘が、一組の若いカップルを破滅へ導き、作家自身が罪の重さを背負って生きることになろうとも。

 ストーリーは恋人たちの運命を狂わせた妹と戦争の悲劇の中でも強く愛し合う恋人たちのメロドラマとして堂々と進む。それぞれの時代のブライオニーを演じる3女優に共通の青い瞳のおかげで、時間の流れがとても自然に感じられるのは、この作品の大きな長所だ。かなり複雑な物語を、破綻なく描いてみせた監督ジョー・ライトの手腕は相当なものである。英国上流階級の、麗しいが特権的な階級意識を盛り込むのも巧みなら、ダンケルクの戦場の地獄絵図の迫力も見事。驚異的な長回しの映像は目を見張る。運命の波に翻弄されるドラマのスケールに酔いながら、誰もが引き裂かれた恋人たちの再会を願うだろう。

 映画はブライオニー、ロビー、セシーリアと、時には過去に遡って物事の源流を見せながら、視点を次々に変えていく。事実をあらゆる方向から語ってくれているかのようだ。そして再びブライオニーを登場させる。大作家となり老いたブライオニーはTVのインタビューで、小説「つぐない」は自分の遺作、韻も装飾も抜きで真実を語りたいと言う。その直後、今まで追ってきた物語が最後の最後で激しくスピンし、大きな感動は静かなサプライズに変わった。騙された驚きと崇高なカタルシスが同時に押し寄せる。このどんでん返しはあまりに鮮やかで哀しい。

 深い余韻と共に、見終わって耳に残るのはタイプライターをたたく古風な音だ。劇の脚本を書く少女、ほんのいたずらで淫らな手紙を書いてしまう青年、小説を自らの贖罪とする作家。タイプライターは20世紀初頭という時代背景を端的に表す小道具だが、現代のパソコンと違い一度文字を打ったら書き直しはきかない。そのことを踏まえて考えると“書く”という行為は、何と美しく罪深いことだろうか。すべての運命は書き手に委ねられる。神と同じ力と責任を背負う覚悟が作者にあるかどうかは別として、何かを書き残そうとするのが人間の悲しい業だ。なぜなら人は生きていくのに物語を必要とする。残酷な真実も優しい嘘も、すべて含めて“生きる”ということなのだから。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)サプライズ度:★★★★☆

□2007年 イギリス映画 原題「ATONEMENT」
□監督:ジョー・ライト
□出演:キーラ・ナイトレイ、ジェイムズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、バネッサ・レッドグレーヴ、他

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シルク

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映像は美しく、堂々と演技する日本人俳優は頼もしいが、現実感に乏しい物語だ。綺麗な絵葉書のような印象だけでは作品として弱い。19世紀の仏を舞台に、美しい妻を愛しながら、蚕卵を求めて訪れた遠い日本で魅惑的な日本女性に恋した青年の半生を描く。世界規模の合作で大作感があるが、物語は小さな詩のような掌編。無名俳優でアートに徹して作る方がふさわしかった。何より日本を美と幻想の象徴にしたことに、とまどいを覚える。
【55点】
(原題「SILK」)
(カナダ・伊・日/フランソワ・ジラール監督/マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、役所広司、他)
(映像美度:★★★★☆)

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キング・アーサー

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◆プチレビュー◆
ぶ厚い氷の湖に敵を誘い溺死させる大迫力のバトルシーンは見応えあり。ランスロット役のヨアン・グリフィスは眉目秀麗なので、今後人気が出そうだ。終盤、女戦士と化すグウィネヴィアの露出度過多の衣装に唖然。

紀元415年。戦乱が続くブリテンで、ローマ軍の司令官アーサーは仲間である“円卓の騎士”とともに最後の任務を遂行する。これで自由の身になるはずが、残忍なサクソン族と戦うことに。さらには、運命の女性グウィネヴィアに出会う…。

例えコうるさい批評家から、くだらない、大味だと口汚く罵られようとも、興行的成功を収めてきっちり周囲を黙らせる。一般大衆の嗜好を単純化して理解し、その要求に明確に答えてみせるのが製作者ジェリー・ブラッカイマーだ。彼の目標はメガヒットを飛ばすこと。判りやすい。だが、今度ばかりは墓穴を掘ったのではなかろうか。

アーサー王伝説といえば、西欧では極めてポピュラーなもの。伝説には様々なものがあり、どれも魅力的な英雄や胸躍るロマンスに満ちている。今回はこのアーサー王伝説を、従来の中世ではなく、文献に基づいてリサーチしぐんと古い5世紀に設定。魔法をはじめファンタジー色はほとんどない。アーサーがローマとブリテンの両方の血を引き、アイデンティティーに悩むなど、新解釈をぶつけてきた。自らの中に眠る救世主としての資質に目覚めるあたり、マトリックスを彷彿とさせるではないか。

だが、西欧ファンタジーの基とも言える物語にチャレンジするというのに、こうまで人物描写がおざなりなのはいかがなものか。アーサーとグウィネヴィアはともかく、円卓の騎士などはほとんど名前の紹介程度だ。おまけに、欧州各国の実力派俳優を揃えたとはいえ、ビッグ・スターがいないので地味な印象は否めない。

日本ではアーサー王伝説は、魔剣エクスカリバーや聖杯伝説など断片的に知られているのが現状なので、本作の新解釈は、伝説を改めて知り頭の中を整理する意味では興味深い。だが、本家イギリスをはじめとする欧州の観客は、はたしてどう感じるか。自らの歴史に深く刻まれた英雄譚へのこの薄っぺらなアプローチを、快く受け止める者は少ないはずだ。

□2004年 アメリカ映画  原題「KING ARTHUR」
□監督:アントワン・フークワ
□出演:クライブ・オーウェン、キーラ・ナイトレイ、ヨアン・グリフィス、他

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ラブ・アクチュアリー

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◆プチレビュー◆
この映画、クリスマス・シーズンに公開できなかったのが実に惜しい。R.カーティスは監督は初めてだが脚本家としては一流の人。どうりで名人芸だ。

クリスマス目前のロンドン。独身の英国首相とお茶汲み秘書。傷心の作家とポルトガル人のメイド。熟年夫婦や義理の父子。皆が片思いや不倫の恋に悩む毎日を過ごしていた。そんな中、クリスマスを愛に包まれて過ごすため、それぞれが精一杯の勇気を出して行動を始める…。

英国の国家プロジェクトかと思うほどの実力派豪華キャストは、総勢19名。気合が入りまくっているだけあって、群像劇ながら、話がゴチャつくことはない。良く練られた脚本に感心してしまった。シェークスピアを産んだ国が総力をあげて作り上げた自信作は、妙に大仰な歴史ものや社会派問題作ではなく、ウィットの効いたラブ・ストーリー。ハリウッド一人勝ち状態の現在の映画界に一石を投じるには、こういう作品が不可欠なのだ。イギリスのワーキング・タイトルは「ノッティング・ヒルの恋人」や「ブリジット・ジョーンズの日記」を送り出したスタジオ。お洒落で茶目っ気のある恋愛映画を作るのが実に上手い。

群像劇のお楽しみのひとつは、登場人物たちが意外な形の関係で結ばれていること。彼らがすれ違うたびに、何かが起こりそうな予感がする。この人とこの人が姉弟?彼女の上司がこの人で…とつながって、いずれは幸福なクリスマスへと収束していく。物語はあくまでテンポ良く、音楽はあくまでノリがいい。いつのまにかすっかりノセられてしまっていた。全ての人に恋愛のハッピーエンドが用意されているわけではないけれど、かわりの愛情は傍らにそっと置いてある。カーティス監督の眼差しはいつも優しい。

贅沢過ぎる顔ぶれのキャストは、皆、個性派ぞろい。よくぞ集まってくれたと思う。英国首相にヒュー・グラント、米国大統領にビリー・ボブ・ソーントンという悪い冗談のようなキャスティングが最高だ。「いじめっ子の友達はいらない。イギリスにはハリー・ポッターとベッカムの右足がある!」と横暴な米国大統領に高らかに宣言する姿に、思わず拍手しそうになった。実際にはこのセリフが言える人物は見つかりそうにない英国のアンチテーゼなのだけれど。

忘れちゃいけないのがこの人、こだわりの宝石店員を演じるMr.ビーンことR.アトキンソン。相変わらず笑わせてくれるが、彼がラストに見せる粋な計らいに期待してほしい。愛すべき楽観主義の本作の仕上げのスパイスは、まさに彼なのだ。人生はままならないが、こんな愛情たっぷりの映画に巡りあえるなら、まんざら捨てたモンじゃないと思いたくなる。劇場を出るときは思わずニッコリだ。

□2003年 イギリス映画  原題「Love actually」
□監督:リチャード・カーティス
□出演:ヒュー・グラント、アラン・リックマン、エマ・トンプソン、他

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ベッカムに恋して

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◆プチレビュー◆
サッカーの母国イギリスの女の子の夢がまぶしい。インドの結婚式の絢爛豪華さは毎度ながら驚かされる。女子プロサッカーでは米国がトップクラスであることも頭に入れておこう。

英国に住むジェスはベッカムに憧れるサッカーが得意なインド系の女の子。偶然、公園でプレイする彼女を見た白人少女ジュールズに誘われ、地元の女子サッカーチームに入って活躍するが、実はこのことは両親には内緒。なぜならジェスの家庭は伝統と対面を重んじる典型的なインド人ファミリーなのだ。コーチを巡る恋や家族とのあつれきに悩むジェスだったが、やがて両親に嘘がバレてしまう…。

思えば2002年W杯のベッカム熱は凄かった。日本中ににわか“ベッカム様”ファンが溢れ、さながらイングランドのホーム状態。病み上がりのせいもありプレイは精彩を欠いていたのだが、ルックスの良さのせいか、そんなことはおかまいなしだった。だが、この映画の主人公は違う。ちゃんとベッカムのプレーの素晴らしさを知った上で憧れているのだ。家族の反対にもメゲず夢に挑戦するのは女の子版「リトル・ダンサー」のようだが、ネックとなるのが経済的な事よりも文化の相違だからやっかいだ。

典型的なガール・スポ根ムービーで、ストーリー自体に目新しさはないのだが、いつのまにか映画の躍動感に引き込まれる。チームメイトとの友情や、コーチへの恋心なども定番だが、ヒロインがインド系であることで、家族愛や民族間の文化の違いを描き、社会問題にもアプローチする。家族とサッカーへの夢の間で悩むジェスは英国育ちのインド人。しかしインドで生まれ英国に移住した彼女の両親は、英国で自分達が味わった屈辱を思うと、娘に同じ思いをさせたくない。インド文化への誇りだってある。このジレンマがなんとも切ないわけだ。移民社会の複雑な実態は「ぼくの国、パパの国」でも描かれていたテーマだった。

珍しく普通の青年の役をするジョナサン・リース・マイヤーズに驚くが、やはりこの映画を魅力的にしているのは、大きな瞳と生き生きとした表情の、ジェス役のバーミンダ・ナーグラだ。これが本格的な映画デビューとなるが、この役のためにサッカーの猛練習をしたそうで、ドリブルでかわす姿はなかなかのもの。蹴ったボールをロー・アングルで追跡するのは、ウェゴという特殊な機械を使っている。CGにはないリアルな動きで、芝の香りと疾走感が伝わってくるようだ。

冒頭の場面で元W杯得点王のリネカーが出演する等のサービスが楽しい。ドイツに遠征して負けた時には「ドイツと英国の伝統だ。」と言って、1966年のイングランド大会での“疑惑のゴール”後、両国民が判定をめぐって真っ向から対立し、以後イングランドが伝統的にドイツを苦手としている事をサラリと盛り込む。なかなか、ツウ好みのサッカー映画だったりするのだ。デビッド・ベッカムという選手が、フリーキックと正確無比なクロスを特徴とすることもストーリーに上手く活かしている。当時、スキンヘッドだったベッカムを、ジェスの両親が“ハゲ男”と呼ぶのが可笑しい。

それぞれの立場の人間の歩み寄りの大切さと、家族と自分の夢との間で揺れ動くジェスの心を、笑いと涙で描いていく。人種や性別を超えてつかんだ夢はとびきり晴れやかだ。原題の「BEND IT LIKE BECKHAM」とは“ベッカムのようにボールを曲げろ”の意味。ベッカムの蹴るフリーキックが大きく曲がり、ゴールネットへ吸い込まれるように、自分の力で弧を描いて人生の軌道を上昇させていく姿が最高にまぶしい。

□2002年 イギリス映画  原題「BEND IT LIKE BECKHAM」
□監督:グリンダ・チャーダ
□出演:パーミンダ・ナーグラ、キーラ・ナイトレイ、ジョナサン・リース・マイヤーズ、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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