映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

ギレルモ・デル・トロ

シェイプ・オブ・ウォーター

シェイプ・オブ・ウォーター(オリジナル・サウンドトラック)
1962年、ソビエトとの冷戦時代のアメリカ。清掃員として政府の極秘研究所で働く口の不自由なイライザは、密かに運び込まれた不思議な生き物の姿を見て心を奪われる。孤独なイライザは、周囲の目を盗んで、アマゾンで神のように崇められていたという“彼”に会いに行き、手話や音楽、ダンスなどで彼とコミュニケーションをとる。やがて二人の心は通いあうが、威圧的な軍人ストリックランドは彼を虐待し実験の犠牲にしようとしていた。それを知ったイライザは、同僚のゼルダや隣人の画家ジャイルズらを巻き込み、彼を研究所から救出しようと試みる…。

不思議な生き物と孤独な女性との種族を超えたラブロマンス「シェイプ・オブ・ウォーター」。童話の人魚姫から、「シザー・ハンズ」「美女と野獣」に至るまで、私たちは種を超えたラブストーリーに常に魅了されてきた。本作もまたしかり。しかもこの作品はファンタジーや恋愛劇といったジャンルにはとうてい収まらない広がりと深みがある。「大アマゾンの半魚人」にオマージュを捧げたモンスター映画、冷戦下の政治サスペンス、さらにはマイノリティ讃歌のドラマなど、多面性を備え、時にミュージカルやバイオレンス、ユーモアをも織り込みながら、最終的には愛の寓話へと昇華していく。異形のものへの愛は「パンズ・ラビリンス」の頃と変わらない。本作はまさしくデロ・トロ映画というジャンルなのだ。

クリーチャーは言うまでもなく、口がきけないイライザ、黒人の同僚ゼルダ、同性愛者のジャイルズなど、登場人物のほとんどは社会からはみだしたアウトサイダーばかり。彼らが緻密かつ大胆な作戦で“正義”を行う後半は一級のサスペンスで、愛の逃避行の行く先は、予想をはるかに超えた幻想譚だった。せりふがない難役を熱演するサリー・ホーキンスと、残忍な軍人の狂気を体現したマイケル・シャノンの名演は見るものの心をつかんで離さないだろう。ロマンチックな音楽や、水をイメージした流麗な映像も秀逸で心に残る。種や美醜を超えて響いてくる妖艶なラブ・ファンタジーは、アメリカが最も不安におびえていた冷戦時代が背景なのに、驚くほど現代社会を射抜いている。天才ギレルモ・デル・トロの特別な芸術作品だ。
【95点】
(原題「THE SHAPE OF WATER」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/サリー・ホーキンス、オクタヴィア・スペンサー、リチャード・ジェンキンス、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)


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クリムゾン・ピーク

クリムゾン・ピーク ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
20世紀初頭のアメリカ、ニューヨーク。10歳のとき、死んだ母の幽霊と遭遇して以来、イーディスは、霊を見ることができるようになる。ある日、母の亡霊から「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という不思議な警告を受ける。成長し作家になる夢を抱いたイーディスだったが、謎めいた英国人男性トーマスと運命的な恋に落ち、結婚。英国に移り住むことに。トーマスの姉ルシールとともに暮らすようになったその屋敷は、山頂にある広大なゴシック建築で、冬になると地表に露出した赤粘土が雪を赤く染めることから“クリムゾン・ピーク”と呼ばれていた。イーディスが新しい生活に慣れてきた頃、体を真紅に染めた亡霊たちがイーディスの前に次々に現れ、奇妙な警告をする。やがてイーディスは、屋敷と姉弟に隠された衝撃的な秘密を知ることになるのだが…。

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるゴシック・ロマン「クリムゾン・ピーク」。朽ち果てた古い屋敷、いわくありげな美しい姉弟、屋敷に隠された秘密に亡霊たちの警告…と、怪奇幻想ムード満載のミステリーホラーだが、正直、怖さはほとんとない。むしろ美しさを堪能する作品だ。母親の亡霊のビジュアルが強烈すぎてビビッたのだろうか、せっかくの警告をヒロインのイーディスはまったく活かせない。母の亡霊は、大人になり本当に危機に陥った娘をサポートするかと思えばそういうわけではない。イーディスをめぐるトーマスと幼馴染の医者アランとの恋愛描写も、中途半端な印象だ。ミステリーなので謎解きの詳細は明かせないが、終盤のバトルは強引すぎるし、そもそもこの対決、必要なのか?!と首をかしげた。だがそれでもなお、この作品に引きこまれるのは、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの美意識が画面の隅々まで行き届いていて、完璧に幻想世界を作り上げているから。さらにワシコウスカ、ヒドルストン、チャステインというキャスティングの妙が効いている。特に姉ルシールを演じるジェシカ・チャステインは、今、最もノッている女優の一人だけあって、底知れない狂気と美しさをたたえていた。物語の細部より、ダークで華麗な映像美を楽しみたい作品だ。
【60点】
(原題「CRIMSON PEAK」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、他)
(耽美度:★★★★★)
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クリムゾン・ピーク@ぴあ映画生活

パシフィック・リム

パシフィック・リム イェーガー プレミアムBOX 3D付き (4枚組)(10,000BOX限定生産) [Blu-ray]
深海から現れた巨大生命と人型巨大兵器の死闘を描くSFアクション「パシフィック・リム」。ギレルモ・デル・トロ監督のおたく趣味全開ながらクオリティは極めて高い。

2013年。太平洋の深海の裂け目から突如現れた巨大生命体KAIJUは、瞬く間に世界中の都市を破壊し、人類を滅亡の危機に追いやった。環太平洋沿岸(パシフィック・リム)諸国は、KAIJUに対抗するべく、人型巨大兵器イェーガーを開発する。だがKAIJUは人類をあざ笑うかのように破壊を繰り返した。10年後、敗北目前の人類はKAIJUの侵攻を食い止めるため、最後の賭けに出る。イェーガーの元パイロットでKAIJUとの戦いで兄を亡くしたローリー、戦闘経験はないが抜群の能力を持つマコら、各国の個性派パイロットたちが残ったイェーガーに乗り、人類存亡を賭けた戦いに挑んでいく…。

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督は、実は大変な親日家。特に日本のロボット・アニメや怪獣映画、特撮やゲームへの偏愛はハンパではない。本作は、日本文化へオマージュを捧げつつ、デル・トロ監督自身が大好きなモノを目いっぱい詰め込んで遊び倒したSFアクションだ。とはいえ、単なる模倣や焼き直しではない。完全オリジナルストーリーで描く途方もなく壮大なスケールの物語は、最先端VFXを駆使したそのビジュアルだけ見てもクオリティが非常に高い。人型巨大兵器イェーガーは、2人の操縦者の心がシンクロして記憶までも共有することでとてつもない力を発揮する。そこにこめられたメッセージは“信頼”だ。搭乗型と操縦型の中間のような設定がユニークで、しかもパイロットの人間性やチームワークまでも視野に入れた点は、もはや単なるロボットではなく人間の分身といえる。とはいえ、そのロボットの破天荒なまでの大きさと破壊力には圧倒されっぱなしだ。同時に悪役のはずのKAIJUへの愛も感じさせるのだから、これはもう完全にデル・トロ監督の術中にハマッたと言えよう。日本人パイロットのモリ・マコを演じる菊地凛子も堂々とした存在感だ。日本刀風の武器を仕込んだロボットがKAIJUとガチンコバトルを繰り広げるシーンには、思わず手に汗を握ってしまった。見る前は、オタク系監督の大味SFかと想像していたが、とんでもない。メカデザインのディテールの美しさとハリウッド映画ならではの超絶的なスケールというミクロとマクロが融合した一大スペクタクルだ。かつてアニメーションでしか描けなかった世界を、これだけ見事なビジュアルで完成させた実写映画ははじめてである。
【75点】
(原題「PACIFIC RIM」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、他)
(日本愛度:★★★★★)
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パシフィック・リム@ぴあ映画生活

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

ヘルボーイ ゴールデン・アーミー リミテッド・バージョン [DVD]ヘルボーイ ゴールデン・アーミー リミテッド・バージョン [DVD]
見た目はコワいが心は優しいヘルボーイは、超常現象捜査防衛局でエージェントとして活躍中。そんな中、魔界の王子ヌアダが伝説の最強軍団ゴールデン・アーミーを蘇らせようとする。怪しくも美しいクリーチャーのビジュアルが一番の見所。オスカー効果の潤沢な予算で自由に演出するデル・トロ監督の美意識が炸裂だ。美しい森の神エレメンタルが死ぬところなど、思わず悲しくなってしまう。ヘルボーイは昨今のヒーローと違い、クヨクヨ悩んだりせず闘うところが爽快。主人公はTVに出てスターになりたいなどと思っているのに、悪役は、やり方は感心しないが、人類が地球を汚したことに怒り、道徳的なことを言うあたりも面白い。…にしても白塗りのヌアダ王子が「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーさんに見えるのは私だけか?!
【70点】
(原題「HELLBOYII:THE GOLDEN ARMY」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/ロン・パールマン、セルマ・ブレア、ダグ・ジョーンズ、他)
(幻想的度:★★★★☆)

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映画レビュー「パンズ・ラビリンス」

パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]
◆プチレビュー◆
現実と妄想が美しくも残酷に交錯する。どぎつくて甘美なビジュアルで描くダーク・ファンタジーの傑作。85点】

1944年のスペイン。内戦で父を亡くしたオフェリアは、冷酷な義父のビダル大尉から逃れるため、屋敷の近くの謎の迷宮に足を踏み入れる。そこで出会った牧神パンはオフェリアに、あなたは本当は魔法の国の王女の生まれ変わりだと告げるのだが…。

12歳の少女が試練を乗り越えて成長するこの物語は、ビルドゥングス・ロマンの系譜に連なるものだ。だが本作は、明るい要素とは無縁。輝く未来、同年代の仲間、可愛い動物たちなど、一切登場しない異色のファンタジーだ。ダークな映像で語られるのは、人間の醜さと強さの本質である。奇怪な姿の牧神パンは、オフェリアに3つの恐ろしい試練をクリアすれば、本当の両親の待つ幸せな魔法の国に帰ることができると言う。この提案に、本好きで夢見がちなオフェリアは、怖さと同時に嬉しさを感じてしまう。なぜなら、現実はあまりにつらいことばかりだから。物語の世界に逃避しがちな彼女は、ことあるごとに母親から「人生はおとぎ話じゃない」と叱られるが、オフェリアの空想世界は不気味な魔物がうごめく迷宮だった。ファシストの義父がいる現実に負けず劣らず恐ろしい世界なのである。映画には血生臭い残酷描写も登場し、時には目を背けたくなることも。この逃げ場のない恐怖の二重構造の構成が巧みで、少女のピュアな心を浮き彫りにさせる。現実と空想の世界はなぜか地続きになっていて、チョークで壁に描いた扉から異世界に行くなど、つなぎのセンスが抜群にいい。

この映画を堪能するためには、ヒロインの持つ特権性を理解しなければならない。オフェリアは大人への入り口に立つ無垢な少女だ。無謀さと好奇心がごちゃまぜになって、粘着質の巨大ガエルの唾液にまみれ、手のひらに目がある怪物に近づいていく。ウネウネと気味悪く動く植物の根に、優しく話しかけたりもする。おぞましいものに触れながらも、自分はそんな汚れた存在になどなりはしないと信じるのが少女特有の潔癖さ。そしてこれが彼女の冒険の原動力なのだ。夢見るのは優しい両親に愛される、光に満ちた世界。グロテスクな迷宮で、勇気をもって試練に立ち向かい、懸命に幸福をつかもうとするオフェリアがけなげだ。ヒロインを演じる新人のイバナ・バケロは、どこかシャルロット・ゲンズブールに似た顔立ちで、繊細な表情とけれん味のない演技が魅力的である。

イマジネーションあふれる独特の映像が話題だが、現実と空想がリンクするエモーショナルな物語にこそ魅了される。ゲリラ側の人間が敵にとどめをささなかったり、大尉が軍人としてスキがあることなど矛盾点もあるが、独裁政権末期の山間部のゲリラ戦など、理詰めでは理解できない矛盾だらけの世界だったに違いない。義父の魔の手を逃れ、生まれたばかりの弟を抱いて逃げるオフェリアの運命は?終盤の展開はサスペンスフルで目が離せない。そして、唐突にやってくる悲痛な運命。痛ましさに胸が張り裂けそうになるが、少女がたどりついたその場所は、さらなる高みへ昇華した金色の理想郷だったと解釈したい。オフェリアの存在こそ、人類の希望ではなかろうか。この映画に、キリスト教的教義を見るもよし。少女の成長物語として見るもよし。はたまたレジスタンス映画として鑑賞するのもいいだろう。いずれにしても、ハリウッド産のファンタジーとは全く違うテイストで、こってりと濃厚な映像世界はまさにラテン系。映画ファンなら絶対に見逃してはいけない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)残酷童話度:★★★★★

□2006年 メキシコ・スペイン・アメリカ映画 原題「EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH」
□監督:ギレルモ・デル・トロ
□出演:イバナ・バケロ、ダグ・ジョーンズ、セルジ・ロペス、他

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