映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

クリント・イーストウッド

映画レビュー「J・エドガー」

J・エドガー Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)J・エドガー Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)
クチコミを見る
◆プチレビュー◆
ディカプリオがフーバーの青年期から老年期までを怪演。伝説の男が信じた正義は現代アメリカの闇を照射する。 【75点】

 FBI初代長官のジョン・エドガー・フーバーは、70代になり回顧録を執筆する。それは、20代で後にFBIとなる組織の長に就任し、50年近く強大な権力を保ちながら、アメリカの“正義”を偏執的に信じた孤独な人生だった…。

 監督イーストウッドと俳優ディカプリオの初タッグで描くのは、権力者の功罪の物語だ。今も賛否が分かれる人物ジョン・エドガー・フーバー。FBI初代長官だった彼は、近代的な科学捜査や膨大なデータベースを構築する一方で、大統領をはじめとする要人の秘密を掌握してファイル化することで、権力を維持した。フーバーが信じた正義や公安は、時に法を曲げることさえ厭わない狂信的なもの。この複雑な人物を、ディカプリオが徹底した役作りで、不気味なほどに熱演する。時代を前後させ、老年のフーバーと、若き日のフーバーを交互に見せる演出は、謎多き人物に、深く、冷徹に切り込む手法として興味深い。

 実際、フーバーにはミステリアスな部分が多く、資料や証言でも真実は容易には見えてこない。イーストウッドは、そのことを逆手に取り、謎を残しながら描くことで、観客それぞれの解釈に委ねた。

 フーバーとはどういう人物なのか。鍵を握るのは、過保護な母親アニー・フーバー、長年の個人秘書ヘレン、腹心の部下で私生活でも“パートナー”だったクライド・トルソンの3人だ。同性愛や女装癖など、さまざまな噂があったフーバーだが、映画は、彼のスキャンダラスな秘密には焦点を当てず、絶大な権力を手にした男の強いコンプレックスと、権力者ゆえの孤独をリンクさせた。イーストウッド映画の特徴である、人物を黒々とした闇に置く撮影が、そのことをより強調し、深い渋みを与えている。

 イーストウッドの狙いは、フーバーが向き合った、禁酒法時代のギャングとの攻防や、リンドバーグ愛児誘拐事件、赤狩りなどの20世紀の事件を通して、米国近代史の光と闇を浮かび上がらせること。それが奇しくも、現代における正義の意味を検証することにつながる。

 フーバーが断行した正義とは、法を越えてまで自分を優位に置き、他者を抑圧する強引なものだった。それはかつて「許されざる者」でジーン・ハックマンが演じた、自分の正義を信じて町を牛耳る保安官の姿にピタリと重なる。そして、現代アメリカの強迫観念にも似た政治とも。市長の経験もあり、政治を知るイーストウッドは、国家の中枢にいた人物の複雑な輪郭をあぶり出すことで、米国が同じ過ちを繰り返してはならないとのメッセージを込めている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「J.EDGAR」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、ジョシュ・ルーカス、他
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

J・エドガー@ぴあ映画生活

映画レビュー「ヒア アフター」

ヒア アフター ブルーレイ&DVDセット(2枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]ヒア アフター ブルーレイ&DVDセット(2枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
死と隣接した3人の男女が巡り会う物語「ヒア アフター」。これまでのイーストウッド作品とは少し違う手触りだ。 【65点】

 仏人ジャーナリストのマリー、霊能力がある米国人ジョージ、双子の兄を亡くした少年マーカス。臨死体験をしたマリーが書きあげた本が発売され、3人は何かに導かれるようにマーカスの住むロンドンで巡り会う。死に直面した彼らが見い出す答えとは…。

 死を深くみつめることで生の意味を知る。本作のテーマを端的に表すと、こういう言葉になるが、それは決して簡単なことではない。死後の世界や、死者との交流というスーパーナチュラルな物語を、常に現実をみつめてきたイーストウッドが監督するのは少し意外で、むしろ製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの好みに近いように思う。だがイーストウッドには、信仰や宗教を隠し味にした「ペイルライダー」のような作品もあることを考えると、スピリチュアルな題材に対する興味はこの人の意識の根底にあったのかもしれない。

 運命的に巡り会う、国籍も性別も年齢も異なる3人は、皆、死によって影響を受けているが、死との“出会い”はそれぞれ異なる。マリーは東南アジアで津波に巻き込まれ、臨死体験をする。触れたのは自分の死だ。彼女は、それ以来、現実と上手く向き合えなくなってしまう。一方、死者と交信ができるジョージが自分の能力を持て余すのは、他人の死にまつわる情報に苛まされるため。「この能力はギフト(贈りもの)なんかじゃない。カースト(呪い)なんだ」。ようやく心が通い始めた愛する女性メラニーも、その力のためにジョージから離れてしまい、彼の孤独はますます深まった。この哀しいエピソードは、ジョージの能力の功罪を象徴していて、とても印象に残る。

 痛ましいのはマーカスだ。強い絆で結ばれていた双子の兄を突然失い、母とも引き離され、深い喪失感を感じている幼い少年は、もう一度兄に会いたいと願っていて、子供らしいまっすぐな思いで霊能力者を訪ね歩く。マリーやジョージのエピソードより、マーカスのそれがより切実なのは、彼が経験したのが、自分にとって大切な人に訪れた死だからだ。近年のイーストウッド作品では、愛する人を失う悲しみがしばしば描かれ、そのことがストーリーを激しくうねらせるのだが、本作ではイーストウッドの、登場人物たちを救済したいとの思いが、より強く感じられた。だからこそ、映画は、死を描きながら生を肯定するストーリーへと昇華していくのである。

 人間は死んだあとはどうなるのだろう? 誰もが一度は頭をよぎる疑問だ。イーストウッドは、ディザスター映画さながらの巨大津波をCGによってスクリーンに叩きつけて観客の意表を突いた後に、水中に、死後の世界の輪郭をぼんやり浮かび上がらせた。その不思議なビジョンはまるで夢のように静かに存在している。穏やかな死の世界と登場人物たちが、イーストウッド作品特有の渋い色彩や、そっと寄り添うように流れる音楽と溶け合う様は、コーヒーにじんわりとミルクが溶け込んでいく様子にも似て、ごく自然だ。生と死を明確に分離するのではなく、私たちの周辺に当然あるものとしての死を、肯定的に受け入れる。そのことをスピリチュアルな体験を通して描くスタイルは、リアルな人間ドラマを得意とするイーストウッドの新しい挑戦なのだ。1930年生まれの老巨匠は、映画に対して果敢なチャレンジ精神を決して忘れない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スビリチュアル度:★★★★☆

□2010年 アメリカ映画 原題「HEREAFTER」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、他


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!


映画レビュー用BRバナー

←応援ポチ、よろしくお願いします!



ヒア アフター@ぴあ映画生活

インビクタス/負けざる者たち

インビクタス / 負けざる者たち ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]インビクタス / 負けざる者たち ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [Blu-ray]
偉人マンデラの理想と希望を、ラグビーとのつながりを通して描く実話だ。1994年、27年間の投獄生活から解放されたネルソン・マンデラは、南アフリカ共和国初の黒人大統領になる。アパルトヘイトにより黒人と白人の間にできた大きな溝、激しい経済格差、国際社会でのアピールなど、さまざまな課題を抱えたマンデラは、南アの白人社会の象徴であるラグビーチームの建て直しを図り、1995年の自国開催のラグビーW杯での優勝を目指すと宣言する。

マンデラがスポーツを国家再建の鍵とみなしたことは、長期間、監獄にいながら世の中の情報や人心を把握する指導者としての優れた資質を失わなかったという事実を示している。国をひとつにまとめるという大事業はどんな国でも困難だが、人種差別により憎しみが横行する南アではなおさらのこと。マンデラは、険しい道の第一歩は、虐げられていた黒人が白人に対して赦しを提示することと主張した。この人には、寛容はむろんのこと、白人の誇りを尊重した人心掌握の読みの深さがある。さらにスポーツイベントが国際社会に及ぼす影響をも見越した政治的センスも。その一方で、誰よりも精力的に激務をこなしながら、家庭では問題を抱えて悩む姿も描き、画一的なキャラクターにしていないところが、イーストウッドらしい。

マンデラ大統領をモーガン・フリーマン、ラグビー・チームのキャプテンでマンデラの人柄に魅了されていくピナールをマット・デイモンが演じて、磐石のキャスティングだ。だが、「チェンジリング」「グラン・トリノ」と、近年、心をわしづかみにする傑作を連打している巨匠イーストウッドの作品としては、ソツのない作りではあるが平凡な出来。実話なので、大会で起こる奇跡の躍進劇にも驚きは薄い。それでも、ついに始まったW杯では、肉弾戦でぶつかる選手の声や真下からのカメラワークなど、ラグビーというスポーツの激しく美しい側面をスクリーンにとらえ、感動的なドラマに迫力を添えて仕上げている。何より、黒人も白人も一体になり、スタジアムから国全体に広がる高揚感で満たされるクライマックスには、ストレートな感動を覚えた。
【65点】
(原題「INVICTUS」)
(アメリカ/クリント・イーストウッド監督/マット・デイモン、モーガン・フリーマン、他)
(融和度:★★★★☆)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

映画レビュー「グラン・トリノ」

グラン・トリノ [DVD]グラン・トリノ [DVD]
◆プチレビュー◆
久しぶりにイーストウッド自身が監督・主演。老人と少年の静かな友情が感動を呼ぶ秀作。 【90点】

 ウォルトは、隠居生活を送る頑固で孤独な老人だ。ある日、内気な少年タオが不良から強要されて彼の自慢の愛車グラン・トリノを盗もうとし、失敗。ウォルトがタオの謝罪をしぶしぶ受け入れたことから風変わりな交流が始まる…。

 俳優兼監督の才人は多いが、目下のところ現役最高峰と言えるのがイーストウッドだ。近年の作品は傑作の連打。映像はより深みを増し、音楽は最高の脇役となり、物語は高い精神性を内包する。本作は彼の映画で頻繁に登場するテーマ“老い”を描きながら、強い贖罪意識を感じさせる人間ドラマだ。

 物語の前半はシンプルかつコミカルに進む。偏屈な白人の老人とシャイなアジア系少数民族の少年との世代と人種を越えた友情が軽やかに描かれ、笑いが絶えない。ウォルトは、毒舌家で偏見に満ちてはいるが悪い人間ではなく、昔気質の価値観を持つ典型的なアメリカ人だ。そんな彼がマイノリティの少年の人生の師となるプロットは、もはや否定できない時代の流れと米国の現実を物語る。自分の進むべき道が分からないタオに“男の生き方”を教えることは、人生の最終章を迎えたウォルトにとっても喜びとなるが、何より、勤勉で実直というアメリカ人の美徳を伝えることになる。タオや彼の姉スーとのやりとりは快活でほほえましく、イーストウッドの演出はさすがに手練だ。だが、姉弟が愚かな争いに巻き込まれたことから、ユーモラスなトーンは急変する。

 愛するものを傷つけられた主人公が、決意を秘めて立ち上がる。この流れで思い浮かべるのは名作「許されざる者」だろう。だが、イーストウッドは、老いたガンマン・マニーとは違う解決手段を主人公に用意した。自らの作品で彼が演技者となるときは、自分自身を危機に追いやりながらも、巧妙に避けてきたものが二つある。それは涙と死だ。イーストウッドは自分の映画の中で決して死なない。はたしてこのルールは本作でも守られるのか。憎しみを胸に悪徳保安官と対決したマニーや以前のウォルトなら迷わずに銃を握るが、今、彼の手にあるのは、大切なグラン・トリノと同じ滅びゆくものの誇りである。

 グラン・トリノとは、フォード社製のヴィンテージ・カーの名称だ。よく手入れされた機能と外観は、堂々と自信に満ちて気品がある。ウォルトが自らステアリング・コラムを取り付けたと自慢するその車は、失われつつあるアメリカン・スピリットを体現し、心の奥に隠した朝鮮戦争での悔恨の念をも受け止めてくれる古き良き友だ。老人の過去と少年の未来を載せた美しい車は、劇中ほとんど走らないが、静かにたたずんで主人公の運命を見守っている。

 もし天の配剤というものが本当にあるのなら、この物語をそう呼ぼう。天は薬の調合のように、善人には良い報いを、悪人には罰を配すという。悲しいのに充足感がある。寂しいのに優しさが湧き上がる。見終わった後に、胸に染み渡る形容矛盾の感動がイーストウッド映画の真骨頂だ。アメリカを愛し憂う弔砲にも似た響きに、耳を傾けたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★☆

□2008年 アメリカ映画 原題「GRAN TORINO」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:クリント・イーストウッド、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘイリー、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!

映画レビュー「チェンジリング」

チェンジリング (アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ 出演) [DVD]チェンジリング (アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ 出演) [DVD]
◆プチレビュー◆
古典の風格を持つ秀作。子供を捜し続ける母の強い愛が感動を呼ぶトゥルーストーリーだ。 【80点】

 1928年のロサンゼルス。クリスティン・コリンズの9歳の息子ウォルターが突然行方不明に。その5ヶ月後、警察が発見し連れてきた少年は見知らぬ子供
だった。彼女は再捜査を懇願するが拒否されてしまう…。

 滑り出しは、行方不明の息子が発見されると別人だったという、どこかスーパーナチュラルな設定だ。だが表面に警察権力の非道が浮かび上がると、観客は、これは想像を絶する困難と闘う母親の物語なのだと分かる。図らずも警察と対決し社会変革の一端を担う彼女の苦悩をよそに、ストーリーは予想外の猟奇殺人事件へ。ヒロインの乗った舟がたどり着く岸辺は、はたしてどこなのか。

 汚職や暴力で悪評高いLA警察は、事件の早期解決で名誉回復を狙った上に、自らの失態を隠すため、一人の人間の人生を平気で踏みにじる。市民が正義の拠り所とする警察組織の腐敗ほど、絶望感を煽るものはない。女性の地位が低かった時代、シングルマザーのクリスティンは、警察にたてついた代償として強制的に精神病院に入れられてしまう。だが彼女の息子への愛は、どんな試練より強かった。不屈の母親を熱演するアンジーの重厚な演技が素晴らしい。

 二転三転する事件で、主人公の過酷な運命は嵐の中の小船のように揺れ動くが、映画そのものは決してブレない。物語は脇役の心理描写に至るまで丁寧で、時代考証も見事だ。わずかに不満があるとしたら、ニセの子供の背景が曖昧なこと。ここには史実を越えた解釈があっても良かったのではないか。だが、国家権力の腐敗という極めて社会派な側面を持ちながら、決して告発調にしていない点をより高く評価したい。物語を牽引するのは母親の愛情で、彼女の強い信念を描ききったところに、イーストウッドのクレバーな演出力がある。

 そこでふと感じるのは、イーストウッド作品の多くは、女性への敬意と畏怖が入り混じるという奇妙な事実だ。クリスティンの心の強さは、平静で凛としたものだが、終盤、殺人鬼に激しく詰め寄る姿は、強烈な印象を残す。初期の「恐怖のメロディ」やキャリアでは異色の「マディソン郡の橋」、秀作「ミリオンダラー・ベイビー」で描かれた、一途な思い込みが愛と渾然一体になり、ゆっくりと運命に絡め取られる女の姿とダブッてしまうのだ。息子の生存を信じるクリスティンの横顔に、母の愛と共に静かな狂気を感じるのは、過去の作品の狭間からイーストウッドの屈折した女性観が垣間見えるせいだろう。

 チェンジリングとは、取りかえられた子供の意味。その言葉の背景には“妖精が置いていく醜い子”の伝説が宿る。ヒロインの願いは、権力に打ち勝つことではなく、我が子との再会のみ。彼女の思いは届くのか。近年のイーストウッドの語り口には、登場人物と一定の距離を置くクールな空気がある。だからこそ、ラストでヒロインに穏やかな表情を与えた彼の優しさが染み渡った。映画は、最後に事件の顛末を伝えるが、それでも主人公の人生に希望の光が当たることを願わずにはいられない。深い慈愛が漂うラストは、長く心に残るものだ。この余韻こそ、イーストウッドが巨匠と呼ばれる理由だろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)母性愛度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「Changeling」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、エイミー・ライアン、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!

さよなら。いつかわかること

さよなら。いつかわかること
イラク戦争を新しい視点から扱った意欲作。戦争で、父ではなく、母親を亡くした家族の再生の物語だ。考えれば女性兵士もいるわけでこういうケースもありなのだ。父娘のロード・ムービーにしたことで心の変化が繊細に感じ取れる。好青年のイメージのキューザックが体重増加して静かな熱演。亡き妻の声を求めて留守電を聞き、語りかける姿が切ない。自作以外に初めて曲を提供したイーストウッドの美しいメロディが物語に寄り添って、涙を誘う。
【65点】
(原題「GRACE IS GONE」)
(アメリカ/ジェームズ・C・ストラウス監督/ジョン・キューザック、シェラン・オキーフ、グレイシー・ベドナルジク、他)
(反戦度:★★★☆☆)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

ミリオンダラー・ベイビー

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
◆プチレビュー◆
イーストウッドの作風は、レオーネ監督と組んだ影響が大きい。「ローハイド」などの“アメリカ的”な俳優が、複雑な魅力の映画を作るところがおもしろい。

LAでさびれたボクシング・ジムを経営するフランキーは、腕はいいが頑固な老トレーナー。ジムには、雑用係で片目の元ボクサーのスクラップもいる。ある日、フランキーの元に31歳のマギーがボクシングのトレーニングを受けたいと訪ねてくる。女は教えないと冷たくはねのけたフランキーだったがマギーはあきらめなかった…。

この映画は、ボクシングを題材としているが、決してスポ根や勝利を追及する物語ではない。極限状態での本当の愛情の意味を観客に問う映画なのだ。世の中の物事や人間を、白黒をつける如く、善と悪にくっきりと分けることはできないことをイーストウッドはよく知っている。

物語のテーマは、老境の孤独な男と、同じくひとりぼっちの女性ボクサーとの深い信頼関係。繊細な愛情がにじみ出る演出で、見事のひと言につきるが、それは、父娘のようなフランキーとマギーを陰で見守るM.フリーマンの存在が胸を打つからだ。カトリックの価値観、アイリッシュの誇り、不人情な家族。劇中には色々な要素が詰まっている。

試合で連勝するマギーに想像を絶する試練が降りかかり、映画はラスト30分でまったく別の物語に変化する。主人公が出した答えには賛否が分かれるだろうが、深い感動は観客が皆、共有するものだ。本当に愛する者の願いのために自ら十字架を背負った人間を、冒頭から控えめに流れるピアノの旋律が優しく包む。慈愛に満ちた傑作だ。

□2004年 アメリカ映画  原題「Million Dollar Baby」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

ミスティック・リバー

ミスティック・リバー [DVD]ミスティック・リバー [DVD]
◆プチレビュー◆
悪役が似合うK.ベーコンを刑事役に据えたのがおもしろい。巧みな演出は素晴らしいが、何しろ後味が悪いのが難点。

小さな食料品店を営むジミーの娘が惨殺される。事件をきっかけに、幼なじみの3人の男が25年ぶりに再会することに。ジミーは被害者の父、デイブは容疑者、さらにショーンは刑事として。彼らは、幼い頃、路上で見知らぬ男たちに声をかけられ、デイブ一人が連れ去られて性的暴行を受けるという過去を共有していた…。

クリント・イーストウッドが監督した作品は、これで24本目。そんなにあったのかと正直驚いているが、彼が“出演しない”作品となると、本作を含めて4本しかない。圧倒的に自分が出演してしまう俳優監督で、その最高峰はオスカーにも輝いた「許されざる者」だ。一方、彼が出ない作品としては、本作が間違いなく最上のものになるだろうと確信する。

少年期の性的暴行に直接的な描写はない。ショーン・ペン演じるジミーが犯罪の世界に身を置いていた過去もストレートには描かれない。暴力を直に描写しないことで、かえって残虐性を際立たせる老練な演出だ。ミステリーの形をとってはいるが、イーストウッド監督は、犯人探しよりも3人の男たちの人間ドラマに焦点をあてている。彼らの心の奥に付けられた古い傷跡が新たな悲劇を生みだすのがやりきれない。

マッチョでアクション派スターのイーストウッドだが、彼の出演作で評価が高いものを見ると善悪を併せ持つキャラクターが多いことに気付く。勧善懲悪を好むアメリカ映画の中では異色なのだ。それは、彼がセルジオ・レオーネ監督により俳優として飛躍したことと無関係ではない。このイタリア人の寡作監督は、常に悪の中の善、善の中の悪を描き続けた。イーストウッドのスター性と、暗くよどんだ複雑な物語。アンバランスさもこの映画の大きな魅力だ。

意外な犯人と、新たに生まれた悲劇の衝撃。悲痛な思いがラストにじわりと広がり、消せない染みとなる。そこで観客ははじめて、脇役かと思われていた二人の女性、家族思いのジミーの妻と、脆い精神を持つデイブの妻が重要な役割であることを発見するだろう。男性中心のイーストウッド作品で、新しい試みのようで目を引いた。3人の男性キャストは、いずれも実力派揃い。それぞれの役を取り替えても、興味深いものになりそうだ。この映画の完成度は、深い人間ドラマと共に、キャストのアンサンブルの勝利でもある。

□2003年 アメリカ映画  原題「Mystic River」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

夕陽のガンマン

夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD]夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
レオーネ監督の早世が本当に悲しい。けれん味あふれる演出が最高だ。

人命が軽視される所では、時には殺人が金になった。そこで賞金稼ぎが生まれた。物語はこんな乾いた口調で始まる。2人の凄腕のガンマンが共通の敵に狙いを定める。その首に高額の賞金がかかった殺人犯インディオ。捕獲は生死を問わず。賞金稼ぎの一人は初老の元軍人で、モーティマー大佐。カロライナ随一のガンマンで、身なりもきちんとした紳士。彼がインディオを狙うのには別の理由がある。もうひとりは、新顔の賞金稼ぎで、現在荒稼ぎ中。目にも止まらぬ早撃ち。この2人が、時には協力し、時には騙しあいながら、インディオとその手下を追いつめる。自分の仲間までも騙して殺しながら悪事を重ねるインディオが、時折うつろな目で思い出すのは、大切にしている時計の裏側にそっと隠した写真の美しい女性。「その時計、大事にしてるが、何か訳でもあるのか?」インディオと手下の首にかけられた賞金を山分けする算段の2人の賞金稼ぎは、徐々に目的に近づくが、やがてインディオにその計画をみやぶられることに。人を殺すときの約束として、時計のオルゴールを鳴らすインディオ。その音色が鳴り止んだとき、2人は万事休すと思われたが…。

この映画、音楽が実に効果的だ。妙に記憶に残る、いかにも西部劇風で単純なメロディー。時にはバロック調の旋律も劇的に響く。さらには哀愁をおびたオルゴールの音色も混じる。「海の上のピアニスト」などで女性ファンの涙を絞り、美しい旋律を生み出す映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネが音楽を担当しているのだ。

190センチを越える長身のクリント・イーストウッドが若い。帽子にポンチョ、無精ひげにくわえタバコと、その後の彼のイメージを決定づける姿で現れる。クールなのにちょっと軽みのある演技が実にいい。

女っ気がほとんどないこの映画で唯一出てくるのはインディオがうつろな瞳で思い出す若い女性。この美しい人が物語のカギを握る。「俺の名はモーティマーだ!」と叫ぶ初老のガンマン。驚くインディオ。2人が大切に持つ、裏側に写真のあるオルゴール付きの時計で、敵のインディオは実は家族同然であることがラストで判る。

敵役インディオですら、この瞬間を待っていたかのようなラストの決闘シーンは、たまらない緊張感が走る。夕陽のガンマンは男の美学だ。「駅馬車」「真昼の決闘」「シェーン」を世界三大西部劇と位置付ける私も、プラスアルファの番外編としてこの「夕陽のガンマン」をランクインさせている。通常、マカロニ・ウェスタンは、西部劇の中でも低く見られていて、バンバン!と銃をぶっぱなし、殺した人数の多さが映画のヒットに比例するなどと言われている。しかし本作は何かが違うのだ。確かに人は沢山死ぬけれど、叙情性があるのが特徴か。特にラストは印象的。

登場人物がヒーロー然としてないところがイイ感じだ。クリント・イーストウッド扮するガンマンには名前すらない。マカロニ・ウェスタンとは日本での名称で、アメリカではスパゲッティ・ウェスタンというそうだ。

□1965年 イタリア映画 英語原題「For a few dollars more」
□監督:セルジオ・レオーネ
□出演:クリント・イーストウッド、リー・バン・クリーフ、ジャン・マリア・ボロンテ、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

夕陽のガンマン

夕陽のガンマン
セルジオ・レオーネ監督の叙情派マカロニ・ウェスタン。ポンチョ姿のクリント・イーストウッドと寡黙なガンマンのリー・ヴァン・クリーフがまさにハマリ役。

音楽は盟友にして巨匠エンニオ・モリコーネで、コミカル、バロック、オルゴールと自在に使い分けて物語を盛り上げる。

2人の賞金稼ぎの裏切りと友情、そして胸に秘めた復讐をけれん味たっぷりに描く。悪役のジャン・マリア・ボロンテさえも深みのあるキャラクターに描かれ、観客に感情移入させる術はさすが。

クローズアップ、長回し、たっぷりと時間を使う映画つくりなどで、レオーネタッチと呼ばれる独自の作風を作り上げ、今なお映画人に大きな影響を与えるレオーネは、わずか7本の作品を残して夭折。あまりにも早い死だった。

(1965年/イタリア/セルジオ・レオーネ監督/原題「For a few dollars more」)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
貞子3D (最恐貞子希望)
試写室だより 12.05月上旬 (てるてる坊主)
ピザボーイ 史上最凶のご注文 (ロングバケーション DVD)
ドライヴ (ふじき78)
幸せの教室 (まちこ)
幸せの教室 (シュリ)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
震災には負けない!
リンクシェア・ジャパン 東北地方太平洋沖地震 義援金プロジェクト

犬・猫の総合情報サイト『PEPPY(ペピイ)』

icon icon
おすすめ情報

携帯アフィリエイトならリンクシェア

レビューポータル「MONO-PORTAL」

Net Office Nakai

おすすめ情報

Voiceモニター、アンケート会員募集!アフィリエイトはリンクシェア

twitterやってます!
おすすめ情報
チケットぴあ

おすすめ情報

スポンサード リンク
楽天市場
おすすめ情報

メルマガもどうぞ
メルマガ登録・解除
 
Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
いいね!もよろしく♪
Facebookをご利用の皆さん、このブログが気に入ったら、ぜひ「いいね!」ボタンをポチッと押してください。 渡まち子の励みになります!
タグクラウド
  • ライブドアブログ