映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

クリント・イーストウッド

さよなら。いつかわかること

さよなら。いつかわかること
イラク戦争を新しい視点から扱った意欲作。戦争で、父ではなく、母親を亡くした家族の再生の物語だ。考えれば女性兵士もいるわけでこういうケースもありなのだ。父娘のロード・ムービーにしたことで心の変化が繊細に感じ取れる。好青年のイメージのキューザックが体重増加して静かな熱演。亡き妻の声を求めて留守電を聞き、語りかける姿が切ない。自作以外に初めて曲を提供したイーストウッドの美しいメロディが物語に寄り添って、涙を誘う。
【65点】
(原題「GRACE IS GONE」)
(アメリカ/ジェームズ・C・ストラウス監督/ジョン・キューザック、シェラン・オキーフ、グレイシー・ベドナルジク、他)
(反戦度:★★★☆☆)

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ミリオンダラー・ベイビー

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◆プチレビュー◆
イーストウッドの作風は、レオーネ監督と組んだ影響が大きい。「ローハイド」などの“アメリカ的”な俳優が、複雑な魅力の映画を作るところがおもしろい。

LAでさびれたボクシング・ジムを経営するフランキーは、腕はいいが頑固な老トレーナー。ジムには、雑用係で片目の元ボクサーのスクラップもいる。ある日、フランキーの元に31歳のマギーがボクシングのトレーニングを受けたいと訪ねてくる。女は教えないと冷たくはねのけたフランキーだったがマギーはあきらめなかった…。

この映画は、ボクシングを題材としているが、決してスポ根や勝利を追及する物語ではない。極限状態での本当の愛情の意味を観客に問う映画なのだ。世の中の物事や人間を、白黒をつける如く、善と悪にくっきりと分けることはできないことをイーストウッドはよく知っている。

物語のテーマは、老境の孤独な男と、同じくひとりぼっちの女性ボクサーとの深い信頼関係。繊細な愛情がにじみ出る演出で、見事のひと言につきるが、それは、父娘のようなフランキーとマギーを陰で見守るM.フリーマンの存在が胸を打つからだ。カトリックの価値観、アイリッシュの誇り、不人情な家族。劇中には色々な要素が詰まっている。

試合で連勝するマギーに想像を絶する試練が降りかかり、映画はラスト30分でまったく別の物語に変化する。主人公が出した答えには賛否が分かれるだろうが、深い感動は観客が皆、共有するものだ。本当に愛する者の願いのために自ら十字架を背負った人間を、冒頭から控えめに流れるピアノの旋律が優しく包む。慈愛に満ちた傑作だ。

□2004年 アメリカ映画  原題「Million Dollar Baby」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、他

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ミスティック・リバー

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◆プチレビュー◆
悪役が似合うK.ベーコンを刑事役に据えたのがおもしろい。巧みな演出は素晴らしいが、何しろ後味が悪いのが難点。

小さな食料品店を営むジミーの娘が惨殺される。事件をきっかけに、幼なじみの3人の男が25年ぶりに再会することに。ジミーは被害者の父、デイブは容疑者、さらにショーンは刑事として。彼らは、幼い頃、路上で見知らぬ男たちに声をかけられ、デイブ一人が連れ去られて性的暴行を受けるという過去を共有していた…。

クリント・イーストウッドが監督した作品は、これで24本目。そんなにあったのかと正直驚いているが、彼が“出演しない”作品となると、本作を含めて4本しかない。圧倒的に自分が出演してしまう俳優監督で、その最高峰はオスカーにも輝いた「許されざる者」だ。一方、彼が出ない作品としては、本作が間違いなく最上のものになるだろうと確信する。

少年期の性的暴行に直接的な描写はない。ショーン・ペン演じるジミーが犯罪の世界に身を置いていた過去もストレートには描かれない。暴力を直に描写しないことで、かえって残虐性を際立たせる老練な演出だ。ミステリーの形をとってはいるが、イーストウッド監督は、犯人探しよりも3人の男たちの人間ドラマに焦点をあてている。彼らの心の奥に付けられた古い傷跡が新たな悲劇を生みだすのがやりきれない。

マッチョでアクション派スターのイーストウッドだが、彼の出演作で評価が高いものを見ると善悪を併せ持つキャラクターが多いことに気付く。勧善懲悪を好むアメリカ映画の中では異色なのだ。それは、彼がセルジオ・レオーネ監督により俳優として飛躍したことと無関係ではない。このイタリア人の寡作監督は、常に悪の中の善、善の中の悪を描き続けた。イーストウッドのスター性と、暗くよどんだ複雑な物語。アンバランスさもこの映画の大きな魅力だ。

意外な犯人と、新たに生まれた悲劇の衝撃。悲痛な思いがラストにじわりと広がり、消せない染みとなる。そこで観客ははじめて、脇役かと思われていた二人の女性、家族思いのジミーの妻と、脆い精神を持つデイブの妻が重要な役割であることを発見するだろう。男性中心のイーストウッド作品で、新しい試みのようで目を引いた。3人の男性キャストは、いずれも実力派揃い。それぞれの役を取り替えても、興味深いものになりそうだ。この映画の完成度は、深い人間ドラマと共に、キャストのアンサンブルの勝利でもある。

□2003年 アメリカ映画  原題「Mystic River」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、他

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夕陽のガンマン

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◆プチレビュー◆
レオーネ監督の早世が本当に悲しい。けれん味あふれる演出が最高だ。

人命が軽視される所では、時には殺人が金になった。そこで賞金稼ぎが生まれた。物語はこんな乾いた口調で始まる。2人の凄腕のガンマンが共通の敵に狙いを定める。その首に高額の賞金がかかった殺人犯インディオ。捕獲は生死を問わず。賞金稼ぎの一人は初老の元軍人で、モーティマー大佐。カロライナ随一のガンマンで、身なりもきちんとした紳士。彼がインディオを狙うのには別の理由がある。もうひとりは、新顔の賞金稼ぎで、現在荒稼ぎ中。目にも止まらぬ早撃ち。この2人が、時には協力し、時には騙しあいながら、インディオとその手下を追いつめる。自分の仲間までも騙して殺しながら悪事を重ねるインディオが、時折うつろな目で思い出すのは、大切にしている時計の裏側にそっと隠した写真の美しい女性。「その時計、大事にしてるが、何か訳でもあるのか?」インディオと手下の首にかけられた賞金を山分けする算段の2人の賞金稼ぎは、徐々に目的に近づくが、やがてインディオにその計画をみやぶられることに。人を殺すときの約束として、時計のオルゴールを鳴らすインディオ。その音色が鳴り止んだとき、2人は万事休すと思われたが…。

この映画、音楽が実に効果的だ。妙に記憶に残る、いかにも西部劇風で単純なメロディー。時にはバロック調の旋律も劇的に響く。さらには哀愁をおびたオルゴールの音色も混じる。「海の上のピアニスト」などで女性ファンの涙を絞り、美しい旋律を生み出す映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネが音楽を担当しているのだ。

190センチを越える長身のクリント・イーストウッドが若い。帽子にポンチョ、無精ひげにくわえタバコと、その後の彼のイメージを決定づける姿で現れる。クールなのにちょっと軽みのある演技が実にいい。

女っ気がほとんどないこの映画で唯一出てくるのはインディオがうつろな瞳で思い出す若い女性。この美しい人が物語のカギを握る。「俺の名はモーティマーだ!」と叫ぶ初老のガンマン。驚くインディオ。2人が大切に持つ、裏側に写真のあるオルゴール付きの時計で、敵のインディオは実は家族同然であることがラストで判る。

敵役インディオですら、この瞬間を待っていたかのようなラストの決闘シーンは、たまらない緊張感が走る。夕陽のガンマンは男の美学だ。「駅馬車」「真昼の決闘」「シェーン」を世界三大西部劇と位置付ける私も、プラスアルファの番外編としてこの「夕陽のガンマン」をランクインさせている。通常、マカロニ・ウェスタンは、西部劇の中でも低く見られていて、バンバン!と銃をぶっぱなし、殺した人数の多さが映画のヒットに比例するなどと言われている。しかし本作は何かが違うのだ。確かに人は沢山死ぬけれど、叙情性があるのが特徴か。特にラストは印象的。

登場人物がヒーロー然としてないところがイイ感じだ。クリント・イーストウッド扮するガンマンには名前すらない。マカロニ・ウェスタンとは日本での名称で、アメリカではスパゲッティ・ウェスタンというそうだ。

□1965年 イタリア映画 英語原題「For a few dollars more」
□監督:セルジオ・レオーネ
□出演:クリント・イーストウッド、リー・バン・クリーフ、ジャン・マリア・ボロンテ、他

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夕陽のガンマン

夕陽のガンマン
セルジオ・レオーネ監督の叙情派マカロニ・ウェスタン。ポンチョ姿のクリント・イーストウッドと寡黙なガンマンのリー・ヴァン・クリーフがまさにハマリ役。

音楽は盟友にして巨匠エンニオ・モリコーネで、コミカル、バロック、オルゴールと自在に使い分けて物語を盛り上げる。

2人の賞金稼ぎの裏切りと友情、そして胸に秘めた復讐をけれん味たっぷりに描く。悪役のジャン・マリア・ボロンテさえも深みのあるキャラクターに描かれ、観客に感情移入させる術はさすが。

クローズアップ、長回し、たっぷりと時間を使う映画つくりなどで、レオーネタッチと呼ばれる独自の作風を作り上げ、今なお映画人に大きな影響を与えるレオーネは、わずか7本の作品を残して夭折。あまりにも早い死だった。

(1965年/イタリア/セルジオ・レオーネ監督/原題「For a few dollars more」)

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