映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

ケイト・ウィンスレット

スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
1984年、スティーブ・ジョブズは、Macintosh発表会の40分前、「ハロー」と挨拶をするはずのマシンが黙ったままなので、激怒していた。マーケティング担当のジョアンナらがカットしようと説得するが、ジョブズは絶対に折れない。そこへ元恋人・クリスアンが、ジョブズが認知を拒む娘リサを連れて現れる。混乱の中、胸ポケット付きの白いシャツを用意しろと命じるなど、不可解で強硬な要求を繰り出すジョブズに周囲は困惑するが、すべては明確な理由があった…。

パーソナルコンピュータやスマートフォンを世に送り出し、人々の仕事と生活を大きく変えたIT界の天才スティーブ・ジョブズを描いた映画「スティーブ・ジョブズ」は、ジョブズ本人ほか多くの関係者に取材した唯一の公式伝記であるウォルター・アイザックソンのベストセラー評伝をベースにしている。ジョブズという人物は、類まれなイノベーターでありながら、人として、とりわけ父親としてあまりに未熟という、矛盾そのもののような存在だ。いかにも俊英ダニー・ボイル監督だとうなるのは、表層的な伝記映画(アシュトン・カッチャー版がまさにそれ!)にはせず、1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMacという3回の製品発表会の開始直前の舞台裏に絞るという、シャープな語り口にしたことだ。伝説的なプレゼンの舞台裏の戦場さながらの様子は描くのに、本番のプレゼンの模様は大胆にも省略してしまうという潔さも面白い。そのユニークなスタイルは、本当に必要なもの以外を切り捨てたジョブズの信念とも共通するものだ。ボイル監督が目指したのは、すでに世界中が知っているジョブズの偉大な功績やコンピューター誕生秘話ではなく、転機となる3度の瞬間に肉薄することで、革新者として、人間として、父親としてのジョブズの横顔を浮き彫りにすることだった。めまいがするほど膨大な会話劇をやり遂げた、ファスベンダーやウィンスレットら実力派俳優たちの熱演も見事。終盤に、不器用な親子愛を通して父としての真の顔に迫ったことで、人間ドラマとしての深みも増している。見るものを一瞬も飽きさせないエンタテインメントに仕上がっている。
【75点】
(原題「Steve Jobs」)
(アメリカ/ダニー・ボイル監督/マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、他)
(会話劇度:★★★★★)
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スティーブ・ジョブズ@ぴあ映画生活

ヴェルサイユの宮廷庭師

ヴェルサイユの宮廷庭師 [DVD]
17世紀フランス。国王のルイ14世は国の栄華を象徴するヴェルサイユ宮殿の庭園の増改築を計画する。庭園建築家アンドレ・ル・ノートルは、何人かの庭師を面接するが、稀有な才能を持つ女性庭師サビーヌに、野外舞踏場“舞踏の間”を任せる。秩序を重んじるル・ノートルと、自由な発想で仕事に臨むサビーヌは、ことあるごとに対立するが、互いの才能を認め合い次第に惹かれ合っていく…。

個性派俳優であるアラン・リックマンが監督を務める歴史ドラマ「ヴェルサイユの宮廷庭師」は、ロマンスが中心ではあるが、実は男社会でがんばる女子応援ムービーだ。ヒロインのサビーヌは架空の人物で、事故で夫と娘を亡くして以来、孤独に生きている。彼女の作る庭は自由奔放。一方、不幸な結婚生活にしばられる宮廷庭師でル・ノートルは実在の人物で、秩序とルールを重んじる仕事ぶり。正反対の二人が惹かれ合うのはラブストーリーのテッパンで、虚実が混じり合うことでストーリーに深みが増している。監督であるリックマンも国王役で出演していて、サビーヌと梨園で語り合う場面は、傷ついた者同士のいたわりを感じる味わい深いシーンだ。歴史ものなので華麗な衣装も登場するが、サビーヌの仕事はほとんど土木作業。泥だらけ、汗だくになりながらもスカートにコルセット姿なのだから、恐れ入った。ドスコイ体形のケイト・ウィンスレットなら、土木だってきっとやれる!と妙に納得。ともあれ、男社会、貴族社会の中で、毅然と生きる庶民の女性の姿に、心を奪われた。
【60点】
(原題「A LITTLE CHAOS」)
(イギリス/アラン・リックマン監督/ケイト・ウィンスレット、マティアス・スーナールツ、アラン・リックマン、他)
(女子応援度:★★★★☆)
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ヴェルサイユの宮廷庭師@ぴあ映画生活

とらわれて夏

とらわれて夏 ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray]
シングルマザーと心優しい逃亡犯の愛を13歳の息子の目を通して描く「とらわれて夏」。大人のラブストーリーであると同時に思春期の少年の成長物語でもある。

9月の“レイバー・デイ(労働祝日)”の週末を控えたアメリカ東部の静かな町。シングルマザーのアデルとその息子で13歳のヘンリーは、逃亡犯のフランクと出会い、半ば脅されて自宅にかくまうことになる。最初は互いに緊張していたが、フランクは2人に危害を加えないと約束。3人は次第に心を許しあい、アデルとフランクは恋に落ちる。やがて彼らは人生を変える決断を下すのだが…。

「ジュノ」や「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン監督が、こんなに直球のラブストーリーを作るとは意外な気がする。だが、不幸な出来事が原因で夫に捨てられ、情緒不安定になった母親アデルと、フラッシュバックから推察するに、これまた不幸な過去から罪を犯したであろう心優しい脱獄囚のフランクが惹かれあうプロセスを、少年の目を通して、憧れや嫉妬をにじませながら描くのは、人生の機微を語るライトマンらしい語り口だ。家を修理し、少年に野球を教え、料理上手なフランクは繊細だが包容力がある男性。彼が追われる身であるという境遇もあって、孤独なアデルの恋心に火をつける。だが大人の2人の恋はあくまでも静かだ。一方、思春期のヘンリーは、一筋縄ではいかない美少女との初恋を経験する。ウィンスレットとブローリンという演技派2人が抑制のきいたエロティシズムを漂わせ、さすがの上手さを見せるが、ヘンリーを演じるガトリン・グリフィスが実にいい。母親の幸せを願いながらも母をとられてしまうことへの嫉妬、少年特有の優しさ、そしてエゴを繊細に表現していた。ウィンスレットは脱ぎっぷりのいい女優だが、本作では脱がないのに、最高にエロティック。ピーチパイを作るシーンはとりわけ濃密だ。3人には皮肉な運命が待っているが、幸福感が漂うエピソードが用意されているのがうれしい。成長したヘンリーをトビー・マグワイアが演じ、短い出演時間ながら鮮やかな印象を残している。
【65点】
(原題「LABOR DAY」)
(アメリカ/ジェイソン・ライトマン監督/ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、他)
(エロティック度:★★★☆☆)
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とらわれて夏@ぴあ映画生活

映画レビュー「おとなのけんか」

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◆プチレビュー◆
劇中と現実の時間が同時進行する会話劇「おとなのけんか」。芸達者4人の競演が極限の緊張感を生みだす秀作。 【80点】

 NY。11歳の子供同士のけんかを解決するために双方の親、マイケルとペネロペのロングストリート夫妻と、アランとナンシーのカウワン夫妻がアパートの一室に集まる。どこにでもある子供のけんかということで、平和的に事を収めようとするが、冷静な会話は次第にエスカレートしていき、話し合いは白熱。両家の本音が露わになり、収拾のつかない事態になっていく…。

 本作は、世界中で数々の賞を受賞したヤスミナ・レザの大ヒット舞台の映画化だ。日本でも「大人は、かく戦えり」の題で舞台化されている。登場人物は4人、舞台はアパートの一室。密室での会話劇は、ポランスキーの長編デビュー作「水の中のナイフ」の緊張感を思い起こさせるが、今回は傑作舞台劇の映画化、有名俳優の起用、自身も巨匠として名声を手にしているからか、あえて舞台風の香りを残しながら余裕をもって演出している。演じるのは、フォスター、ウィンスレット、ヴァルツ、ライリーら芝居巧者たちだ。

 和解の話し合いは、最初は冷静だったが、やがて激しい諍いに発展。それを助長させるのが、アランにひっきりなしにかかってくる携帯電話だ。携帯が鳴るたびに見せ掛けの穏やかさが一枚、また一枚と剥ぎ取られていく演出はスリリングで上手い。やがて双方の親同士の言い争いから、長年たまっていた夫婦間のうっぷん、さらには男と女の言い分まで、これでもかといわんばかりに本性がむき出しになる。めまぐるしく“敵と味方”が入れ替わり、先読みできない面白さは天下一品だ。子供以上に未熟な親たちは、実は不満と不安でいっぱいなのである。

 何より、劇中の時間と現実の時間がリアルタイムで進行する演出が効果的で、観客は、この四つ巴のバトルをリングサイドで観戦しているかのような錯覚を覚えるだろう。79分間のマシンガンのようなトークの中に、結婚、仕事、子育てなど、あらゆる問題が凝縮されている。それぞれの主張とエゴが交錯したあげく、分かり合えない不毛のバトル。アパートの一室が、ついには国際社会の縮図に見えてくる。緊張感と臨場感、そしてすべてが終わった後の独特の開放感。濃密でスリリングな時間を共有できる秀作だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ブラック・コメディ度:★★★★★

□2011年 仏・独・ポーランド合作映画 
□原題「CARNAGE」
□監督:ロマン・ポランスキー
□出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー、他
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おとなのけんか@ぴあ映画生活

映画レビュー「愛を読むひと」

愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]
◆プチレビュー◆
献身的な朗読が愛の証となる崇高な物語だ。ウィンスレットが渾身の名演でオスカーを受賞。 【90点】

 1958年ドイツ。15歳のマイケルは21歳年上のハンナに恋をする。逢瀬を重ねる二人だったが、ある日突然、彼女は姿を消してしまう。法科の学生になったマイケルはナチスの戦犯を裁く法廷の被告席にハンナを発見し衝撃を受ける…。

 この物語には3つの扉がある。まず「愛」。15歳の少年が母親ほどの年齢の女性との情事に溺れる展開は、スキャンダラスで情熱的なものだ。だが彼女にせがまれて本を朗読するという風変わりな儀式を伴う甘い日々は、突然終わりを告げる。遠い日の初恋を思い出すように始まった物語は、大学生になった主人公とハンナとの再会を通して、次の入り口へと進む。

 二番目の扉は「罪」。ハンナは戦時中、ナチスの収容所の看守として働き、今、戦犯として裁かれようとしていた。戦後生まれのマイケルの世代には、ナチズムをどう捉えるかは、いやでも背負わされる宿命的な命題だ。その上、被告は彼が初めて愛した女性である。その事実は歴史や法律の授業とはまったく違う迫力で彼に襲いかかる。だがそれ以上に重大な真実が待っていた。ハンナは、ある秘密を隠したため、無期懲役という重罪を受けることに。彼女の秘密を理解した瞬間のマイケルの衝撃は、頬を濡らす涙では語り尽くせない。

 この秘密こそが最後の扉「尊厳」だ。ハンナが朗読を熱望したことや職場での昇進を断ったことなど、物語には多くの伏線がはってある。その秘密はあるハンデキャップなのだが、もしそれがなければ、彼女は不当に重い罪を受けることも、看守になることもなかったのではないか。苦悩の末にたどり着いたマイケルの決断が朗読だった。秘密を公にすればハンナの罪は軽くなるかもしれない。だが、彼は頑なに秘密を守るハンナのプライドを何よりも汲んだ。愛する人の尊厳を何としても守ろう。生涯をかけてハンナの朗読者になろう。その覚悟は「愛している」の言葉の数倍も重く、無償の愛と呼ぶにふさわしい。

 ハンナという存在に説得力を与えたのが、若き演技派ケイト・ウィンスレットだ。どっしりとした容貌の彼女は、なるほどハンナそのもの。地味で無愛想な雰囲気を持ったハンナは、おそらく貧困が理由で満足な教育を受けていない。と同時に、下着にまでアイロンをかけるほど几帳面で、囚人に朗読させるほど知識に飢えていた。ウィンスレットは、ハンナの複雑な内面を繊細な解釈で表現し、30代から60代までを一人で見事に演じきった。

 愛と罪と尊厳。時間軸の異なる三つの扉から来た水脈は、やがてひとつに交わり、感動という名の川になる。マイケルのどこか冷めた人格、罪と裁き、ハンナが下した最後の決断。物語にはいくつもの問いがあるが、答は観客に委ねられ、それが深い余韻を醸し出す。原作の「朗読者」は、常にマイケルの立場で語られるが、映画はしばしばハンナの目線になる。これは、身を焦がす恋で始まり、胸をかきむしるほど傷つきながらも、自らの信念を貫く男女の物語だ。悲しい結末がやるせないが、映画オリジナルのラストには小さな希望の光が。優れた原作と素晴らしい映画。ここには、二つの芸術の幸福な出会いがある。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)痛ましさ度:★★★★★

□2008年 アメリカ・ドイツ合作映画 原題「THE READER」
□監督:スティーヴン・ダルドリー
□出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、ブルーノ・ガンツ、他

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映画レビュー「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
幸せを求めてもがく夫婦の姿が哀しい。タイタニックのロマンスの対極にある辛らつな家庭劇。 【75点】

 1950年代のアメリカ。郊外の新興住宅街に住むフランクとエイプリルは、二人の子供と静かに暮らしている。はためには理想の夫婦に見える彼らは、覇気のない毎日に漠然とした不満を抱き、憧れのパリで暮らすことを思いつくが…。

 レボリューショナリー・ロードとは、主人公たちの瀟洒な家がある通りの名前である。幸せを具現化したその場所は、柔らかい真綿で包まれたディストピアだ。妻はかつて女優を夢見たが挫折。夫は退屈な仕事を義務的にこなすだけ。こんなはずではなかった、自分たちは特別だとの妄想にも似た思いを口に出したときから、喪失感はまるでウィルスのように二人を蝕んでいく。夫が軍隊時代に訪れたパリは、現実逃避の象徴だ。ここではないどこかに行けば幸せになれると信じる彼らは、その決心が人生の修羅場を呼び込むことを知らなかった。

 メガヒット作「タイタニック」で運命の恋を演じたウィンスレットとディカプリオ。彼らが倦怠感をかかえた夫婦の焦燥を体現するようになった成熟に目を見張る。特に、失われた夢を漠然と追う妻を演じるウィンスレットの演技は壮絶だ。不安と焦りが官能に変わる表情には凄みがある。虚ろな日々の不幸に気付いたのは夫も妻も同じだが、それでも夫のフランクは地に足を付けた現実の充足感をも知っていた。だが妻エイプリルの立つゾーンはまるで砂で作られた城のよう。ゆっくりと、でも確実に崩れていく。夫や子供を愛しているのかさえ見失い、内的に壊れ始めた罰なのか、彼女は3番目の子供を身ごもった。そのときから、夫婦の運命は決定的な悲劇へ向かって転がり始める。

 そもそも彼ら自身の夢に具体的なプランは何もない。幸せの意味やその土台を理解していないのだから当然だ。そんな夫婦の真実を見抜くのがジョンという青年だが、彼が精神を病んでいるという設定が秀逸だ。平穏で退屈な日々の虚しさと、それを払拭するパリ移住を語る二人を冷めた目で見つめ、周囲と別の意見を述べるジョン。隣人や同僚が彼らの計画を非常識と思うのが嫉妬心からだということも見抜いている。だが郊外の“理想郷”にいる人間たちは、そこがからっぽな場所だと看破し、抜け出そうとする裏切り者を決して許さない。自分たちの領域を守るためには規格外の人間を否定するしかないのだ。この物語は、実態のない夢をつかもうともがく夫婦が主人公だが、物質的な満足と見せかけの繁栄を謳歌した時代の米国の、歪んだ幸福感がにじんでいる。

 「あの人たち、やっぱり変わっていたわ」。フランクとエイプリルを理想の夫婦と称賛していた不動産屋のヘレンは、すべてが終わった後に彼らの欠点を並べ立てる。諦観の中で生きるヘレンの夫は静かに耳をふさぐ。若夫婦は、夢に押しつぶされ、世間に追い詰められ、愛にとどめを刺された。エイプリルが最後に行うおぞましい行為は、満たされない心の果てに生まれた狂気だ。監督のサム・メンデスは「アメリカン・ビューティー」で残したかすかな希望を、この美しいカップルに与えることを拒んだ。米国が輝いていたはずの時代、心のブラックホールはすでに絶望の扉を開けていた事実を突きつけるかのように。深海に沈む豪華客船より、この家庭が崩壊する轟音は心に響く。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)衝撃度:★★★★☆

□2008年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「Revolutionary Road」
□監督:サム・メンデス
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、他

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リトル・チルドレン

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決して好きな類の映画じゃないのに、あまりに上質の人間ドラマに釘付けになってしまった。物語は幸せに気付かず、大人になれない男女を描く。不倫話が軸だが、性犯罪者や元警官などの歪んだ人生をも巧みに描き、偏見や許しへとダイナミックに展開する。必見だ。
【80点】
(原題「LITTLE CHILDREN」)
(アメリカ/トッド・フィールド監督/ケイト・ウィンスレット、パトリック・ウィルソン、 ジャッキー・アール・ヘイリー、他)
(緊張感度:★★★★★)

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オール・ザ・キングスメン

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たたきあげの熱血政治家が権力を手にした途端に汚職にまみれる辛口政治ドラマ。オスカー受賞の名作のリメイクで、実力派俳優揃いだが、出来はいまいち。全ての敗因はショーン・ペンのオーバーアクションにある。オリジナル映画を知るきっかけとしてはいい。
【30点】
(原題「All the King's Men 」)
(アメリカ/スティーヴン・ゼイリアン監督/ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、他)
(無駄に豪華キャスト度:★★★★☆)

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エターナル・サンシャイン

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◆プチレビュー◆
コロコロと変わるクレメンタインの髪の色がひとつのヒント。別れる前は赤、別れた後は青、とおおまかに覚えておくと混乱しないはず。真面目な映画では、賞狙いが見え見えだったジム・キャリーだが、今回は見直した!

ジョエルは喧嘩別れした恋人のクレメンタインとヨリを戻すつもりだったが、彼女が自分の記憶を消したと知ってショックを受ける。嫌な思い出を消去してくれるラクーナ社に依頼し、自分も彼女の記憶を消そうと決意。寝ている間に思い出を追体験する施術を受けるが…。

企業に依頼して特定の記憶を消去する。この設定から見ると、近未来が舞台のようだが、SFのような背景はいっさいない。記憶操作も何となくアナログだし、どうやらこれは心の旅がテーマのようだ。だが「マルコビッチの穴」の才人チャーリー・カウフマンの原案だけあって、切なくも摩訶不思議なラブストーリーに仕上がっている。

まずキャスティングに工夫が見られる。地味で暗めなジョエルをジム・キャリーが、エキセントリックで直情的なクレメンタインをケイト・ウィンスレットが演じるが、今までの役柄から見るとお互いの性格を交換したような形だ。これをミス・キャストと見るか、新鮮と見るか。私は後者だ。キャリーの過剰な演技は苦手だったが、この映画の彼はとても自然。イライジャ・ウッドがちょっぴり曲がった役をおもしろく演じている。

キャスティングをひねった以上、物語も普通には進まない。時間軸はバラバラ、とっぴな発想と大胆な映像が満載。かなりヘンな恋愛映画に、面食らう人も多いだろう。だが、一度流れにのれば、後は主人公と一緒に記憶を遡る旅に夢中になる。季節感を大事にしていたり、小道具の丁寧な描写など、映画好きを喜ばせる細かい仕掛けが嬉しい。近くにいるのに距離を感じる二人の表情が何度も出てくるのが印象的だ。

記憶がテーマの映画は、昨今の一大潮流。大掛かりな仕掛けやCGで大金をかけずとも、優秀な脚本があれば、立派に映画になる。記憶操作は、大概、悪事を働く方向に話が進むもの。恋愛映画では、二人の仲を修復するための美しい思い出と相場が決まっている。この映画では、そんな常套手段の“記憶”を抜群のアイデアで料理した。判りやすいラブストーリーとは決して言えないが、とびきり洒落た作品だと思う。

□2004年 アメリカ映画  原題「Eternal Sunshine of the Spotless Mind」
□監督:ミシェル・ゴンドリー
□出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、イライジャ・ウッド、他

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ネバーランド

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◆プチレビュー◆
ケイト・ウィンスレットは上手い女優だが、病に倒れるにはたくましすぎないか?!どうにも死にそうには見えない。映画は、昨今流行の「泣かせてみせようゾ!」のメロドラマとは格が違う奥ゆかしさだ。見習おう、韓国映画!

1903年のロンドン。スランプ気味の劇作家ジェームス・バリは、ある日、公園で美しい未亡人とその4人の息子たちに出会う。風変わりで子供のように夢見る心を持つバリは少年たちとすぐに仲良くなるが、三男のピーターだけは心を閉ざしていた…。

「ピーター・パン」は誰もが知っている有名なおとぎ話だが、この物語が誕生するきっかけは、かなりビターなもの。映画を見ると「ピーター・パン」の物語は現実逃避などでは決してなく、悲しみは自らの力で乗り越えねばならないというメッセージが切実に伝わってくる。

劇中にはファンタジックな場面がいくつか登場するが、夢物語や浮ついたハッピー気分とは無縁の演出だ。このさじかげんが絶妙。バリとシルヴィアの恋愛をプラトニックにしたことも、映画の質を上げた要因だろう。現実は厳しく、芝居ひとつで変わるものは何もないが、想像力がもたらす心の豊かさは誰も否定できないはずだ。

実在の劇作家ジェームス・M・バリを演じるジョニー・デップが素晴らしく上手い。この人はブッ飛んだ役をやらせてもイケるが、ノーブルで古典的な役も巧みな役者なのだ。少年の面影を残しながらも、どこか冷めた表情が功を奏しているのだろう。

ピーターが心の悲しみを吐露する場面、病床のシルヴィアに芝居を見せる場面。お勧め箇所は沢山あるが、緑をふんだんに用いて色彩構成された映像にも注目だ。現実から空想の世界へと遊ぶ大人のバリと、空想を捨てて必要以上に大人びるピーター。2人の心が触れ合ったとき、ネバーランドの世界が生まれた。この映画、秀作である。

□2004年 アメリカ・イギリス合作映画  原題「Finding Neverlnd」
□監督:マーク・フォスター
□出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、ダスティン・ホフマン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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